バカとテストと召喚獣 ~僕はこの歪んだ運命に抗い続ける~   作:天沙龍月

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第8話 密談 そして、遭遇

 明久side

 

 ムッツリーニへの忠告を終えて鉄人の授業をまた受けてからの昼休み。僕と雄二と秀吉、ムッツリーニは屋上に集まっていた。

 

 「あぁ~……毎日が鬼の補習になるようなものじゃないか……。」

 「そうじゃのう……、どうにかできないものか……。」

 「そうだ! もう一度召喚戦争をやって勝てば良いんだ!」

 

 なんて、バカな事を言ってみる。するとさっきまで寝転がっていた雄二が起き上がり、

 

 「そいつは無理な話だな。「どうして!?」一度負けたクラスは3ヶ月間、宣戦布告ができないルールだ。」

 「3ヶ月……!」

 

 そうなのだ。試召戦争にもちゃんと負けたペナルティは大きい。得るものも大きい分、失うものもある。負けたクラスはまずその時点でのクラスの設備が入れ替わるのだが……これはFクラスなどの下位のクラスには適応はされる事はない。まぁ、勝ったのに下位の設備を手にいれたとしても嬉しくないしね。なので、下位のクラスにはその時点での設備よりも悪い設備に入れ替わるのだ。

 そして、もうひとつ。今雄二が言ったように負けたクラスは3ヶ月間宣戦布告できなくなる。まぁ、このルールは負けてもまた同じクラスに宣戦布告して勝つ、というような事などがないようにだろう。しかし、このルールには穴がある。それはこっちから宣戦布告はできないが、あちらから宣戦布告する事が出来る、という点だ。これはルールに明記されていないが、もし、宣戦布告があちらから出来るのだとすればやり様はある。

 

 「3ヶ月なんてあっという間だ。その間に新たな作戦でも立てるさ。」

 

 ……まぁ、そこの点に雄二が気づけばの話だが……。この感じだと気づいてないんだろうなぁ。まぁ、Fクラスの代表は雄二だし、僕はそこを指摘するつもりもないので多分このまま3ヶ月を過ごす事になるだろう。

 

 「ぬあぁ~んっ! どうしてこんなことに……!」

 「……良いこともある。「ん?」一枚500円。「買ったぁ~!っ」毎度あり~。」

 「うぉ~っ! のの~っ!「お前、食費は?」おぉ~っ!!」

 

 ムッツリーニがAクラスとの代表戦の時の秀吉のラウンドガール姿の写真を持ってくる。僕は即買いし、食費としていた500円を払う。まぁ、これもバカの演技のためであるので必要な物なのだ。

 その他にも目的はある。これは一応犯罪に入る件なので僕が選定して世に出しても良いものかを確認しているのだ。……うん、まだ大丈夫だね。ただ秀吉には言ってないので立派な肖像権侵害ではあるけど、言ってしまえば高校に入る時に書く写真を使ってもいいかの書類があるよね? それは一応肖像権の許可を取っているものなのでムッツリーニが写真部に所属してれば合法的に認められるはずだ。

 

 「何を悩んでいるのじゃ?」

 「……男なら後悔しないっ!「勇者だな……。」これで次の仕送りまで1日カップラーメン1個決定だ……。」

 

 これはあながち嘘ではない。まぁ、夜食用や緊急用のカップラーメンだけどね。僕は結構料理は自分でしたい人なので食材を買って作るのだが、FFF団なんかに追われたり、雄二たちが家に泊まるなんてなった時は時間が無い事や演技の為に料理を作れないので夜中にコンビニでカップラーメン買いに行って、それで我慢する事があるのだ。まぁ、これも演技の為。仕方のない事である。

 

 「明久よ、お主何か忘れておらぬか?」

 「え?」

 

 秀吉に言われてようやく気づいた。そういえば、

 

 「ここにいたんですね! 吉井君っ!」

 「ねぇねぇ、アキ。週末の待ち合わせどうする?「待ち……合わせ?」忘れたとは言わせないわよ? クレープ奢ってくれる約束でしょ?」

 「あれって昨日ので終わりじゃないの?」

 「昨日は昨日、約束は約束!」

 

 姫路さんと島田さんがちょうどやってきて週末の予定を聞いてきた。そうだよね、昨日のは約束とは全く関係ない扱いにされるだろうとは思っていたけど、島田さんも僕の演技のお財布事情がやばい事に気づいているはずなのに奢らせるとは中々にSっ気があるのではなかろうか。

 まぁ、奢るって言っちゃったのは僕だしホントはお金の心配なんてする事はないので良いけど。

 

 「私もご一緒して良いですか? ……実は吉井君と一緒に観たい映画があるです……。」

 「僕の……食費がぁ~!」

 

 僕は泣きながら叫ぶ。姫路さんも来るのか? まぁ、いいけど。だけど、僕と観たい映画って一体なんだろう? 恋愛ものでない事を願おう。

 

 「で? どうするのアキ?」

 「駅前の噴水でどうかな……?」

 

 僕は泣きながら答える。あそこなら誰でもわかるだろう。

 

 「分かったわ。瑞希もそれで良い?」

 「はい、大丈夫です。」

 

 あれ? そういえば島田さんがこの頃、姫路さんの事を瑞希って呼ぶようになってる。女子っていつのまにか仲良くなってるよね。

 

 「よし、それじゃあ明久の予定が決まったところで教室に戻るか。」

 「そうじゃの。」

 「……戻る。」

 

 雄二が声をかけ、皆が教室に戻っていく。僕もそろそろ泣き止んで行くとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、放課後

 

 「よぉ~し、それではこれで帰りのHRを終わる。各自、帰るように。」

 

 西村先生が教室から出ていく。それまで静かにしていた生徒たちが騒がしくなる。僕もそろそろ動くか。

 

 「おい明久、今日はどうする?」

 「ごめん、僕今日ちょっと先生に呼ばれててさ。」

 

 雄二が声をかけてくる。雄二は帰り支度は終えて、もう帰る気満々だな。まぁ、先生に呼ばれてるのは嘘だけども。

 

 「そんなの気にするタイプだったか? そんなの良いから帰ろうぜ?」

 「いや、今の成績についてなんだって。来なかったから親を呼ぶってさ……。」

 「それなら仕方ねぇな。ま、せいぜい退学になんないようにな。じゃ、ムッツリーニ帰ろうぜ。」

 「……分かった。」

 

 雄二も成績の事を出されると信憑性がついたみたいで困り顔をしていた。それで結局ムッツリーニを誘って帰るようだ。僕は雄二たちやクラスメイトが帰ろうとしている教室を後にし、職員室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 「失礼しまーす。」

 

 程なくして職員室に着いた。職員室に入ると先生全員がこっちを見て騒がしくなる。目的の先生は……あ、来た来た。

 

 「吉井、職員室に何の用だ?」

 「いや、職員室じゃなくて鉄人に用があってきたんです。」

 

 そう、僕が用があったのは西村先生その人だった。

 

 「俺に? お前が? 何だ?」

 「ここではちょっと……外に出ませんか?」

 「……ほう、良いだろう。」

 

 僕と西村先生は職員室の外に出る。そう、ここでは話せない事である。なぜなら、

 

 「……何だ? 吉井?」

 「ちょっと、耳を貸してもらえますか?」

 「あぁ……。」

 

 西村先生は耳をこちら向ける。よし、これなら良いだろう。

 

 「ちょっと補習室を貸してほしいんですけど……良いですか?」

 「何故だ?」

 「ちょっとあっちの用事で使いたいんです。」

 「……ふむ、分かった。」

 

 僕が耳打ちでそう言うと、西村先生は了承してくれた。西村は職員室に戻り鍵を取りに行った。多分、建前としては僕を補習する為に使うってところだろう。

 ちなみに西村先生は僕の状況を知っている一人だ。学園の先生で知っているのは学園長、高橋先生、西村先生の3人だけである。

 何故なら学園長は兎も角、西村先生や高橋先生は信頼出来ると思っているからだ。だから、こういう事は西村先生に言えば大体了承くれる。だから、僕にとって西村先生が学園での最大の協力者である。

 

 「さて、行くか。」

 「はい……。」

 

 僕は戻ってきた西村先生に連れられて、職員室を後にする。そして少し歩いてから、

 

 「……西村先生。」

 「……何だ?」

 「……後で良いのでまたアレをくれませんか? 前のがもう無いんです。」

 「……吉井、お前……アレを作るのにどれだけ先生方が苦労すると……。まぁ良い。分かった、後日宿題に混ぜておく。」

 「……ありがとうございます。」

 

 と小声で会話をする。アレというのは別にエッチな物とかではない。だけど、僕には必要な物なので用意して貰えないと苦しいところだったので嬉しいところだ。そんなことをしていると補習室が見えてきた。アレについては後だ。

 

 「……西村先生が中にいてくれるとありがたいんですが……。ただ、隠れてて欲しいんです。相手が相手なので。」

 「……お前がそう言うならそうしてやろう。」

 「……ありがとうございます。」

 

 補習室の中に入り、西村先生が補習室の段ボールのタワーの後ろに隠れる。そして、僕はスマホを見て少し待つ。程なくして誰かの廊下を走る音が聞こえる。そしてここの扉の前で止まった。

 

 「はぁ、はぁ……ここで、良いのよね?」

 

 扉の前から女子の声が聞こえてくる。来たようだ。

 

 「……失礼します……。あ、吉井君っ!「しー」……ごめんなさい。……待ったかしら?」

 「いや、大丈夫。それで? 予定としてはどんな感じなの?」

 

 扉を開いた少女は木下さんである。木下さんはAクラスから走ってきてくれたようで息が上がっていた。そのせいか顔が少し赤い。

 

 「えっとね……10時にこの座標に来て欲しいんだって。」

 「う~んと? ここは……? ちょっと調べるね。」

 

 木下さんが渡してきたのはメモ帳の紙だった。そのメモに書いてある座標を地図アプリで調べる。だが、出てこない。いやこれは……そういう事か。僕はその座標を違うアプリで起動して入力する。するとようやく店舗が出てきた。

 

 『ヴェリタス アウテム レリクーム』

 

 出てきたのはラテン語で休みの真理という意味の喫茶店だった。なんともセンスのあるようなないような名前のお店だな……。まぁ、ここなら電車で行けばそんなにかからないだろう。

 

 「分かった?」

 「うん。ここに10時に来れば良いんだね?」

 「うん、そう……。」

 

 あれ? 木下さんがあまり気分が良くなさそうだ。どうしたんだろう?

 

 「木下さん、どうかしたの?」

 「え? いや、ちょっとね。ただ、この日あたしは来ないでって言われてるから……。」

 

 木下さんが苦い顔をしてる。それはちょっとおかしくないか? 木下さんが誘っているのに木下さんが来ないなんて……。それに木下さんが可哀想だ。

 

 「そう、なんだ。それはなんというか……ごめん。」

 「いや、良いの。多分、あたしがいるとできない話なんだろうし……。」

 

 木下さんの表情が暗くなる。それを見ているとなんとも安心して欲しいような気がして来る。そうだ、

 

 「木下さん、ちょっと目、瞑ってくれる?」 

 「え!? 分かったわ……。」

 

 木下さんが顔を真っ赤にして目を瞑る。こうして見てるとホントイタズラしたくなるのは僕だけではないはず。僕はそんな衝動を掻き消して木下さんの髪に触る。

 

 「ふぁっ!? 吉井、くん?」

 「ごめんね、いやだった?」

 「嫌じゃ、ないけど……恥ずかしい、かな。」

 

 僕が何をしているかというと木下さんの髪を撫でている。優しく優しく、子供をあやすように。少し子供っぽいけどね。そのまま少しの間、木下さんの髪を撫でていた。

 

 「それじゃあ、目を開けて?」

 「え? もう、やめちゃうの……?」

 「時間もそんなにないからね。ごめん。」

 「……分かったわ。」

 

 髪を撫でるのを止めると、木下さんはちょっとムスッとしていた、可愛いなぁ。僕が何であんな事をしたかというと、何となくああすると木下さんが喜んでくれると思ったからだ。

 この前の様な頭に響くようなものではなく、直感のような感じだった。

 まぁ、木下さんが喜んでくれたから良いけど、こんなこと島田さんとかにやったら殺されそうだ。

 

 「それ以外に何か予定はある?」

 「いいえ、今回は会って話すだけらしいから。」

 「分かった。ありがとう。」

 「~っ!!」

 

 あ、木下さんがまた真っ赤になった。可愛いなぁ。

 

 「それじゃ、あたし代表たち待たせてるからっ! これで!」

 「うん、それじゃあね。」

 

 そのまま、走って補習室を出ていってしまった。廊下を走る音が遠ざかると西村先生がでてきた。

 

 「まさか、あの木下とお前がそういう関係だったとはな。」

 「いや、多分西村先生が考えている事は違いますよ? 僕にとって木下さんは唯一の手がかりなんです。」

 「手がかり? 何のだ?」

 「僕の記憶のですよ。西村先生も知ってるでしょう? 僕が小学3年生から以前の記憶がないのは。」

 「そうだったな。そうかそうか。まぁいい。吉井、さっきの事は見なかった事にしてやる。お前も早く帰れよ。」

 「はい。」

 

 僕は西村先生が補習室の鍵を閉めるのを手伝い、職員室まで西村先生を見送って帰る事にした。

 そういえば、何故西村先生に補習室の中にいて貰ったかというと、まぁ警戒の為だ。僕はまだ木下さんを完全に信頼している訳ではないからね。もし、木下さんに裏の繋がりがあったとして僕を貶めようとしたりしているなら、西村先生に言質をとって法廷に提出してもらう事も出来るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それではな、吉井。」

 「はい、では。」

 

 西村先生とともに職員室の前まで来た。ここで西村先生と別れ、僕はFクラスに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 「もう、誰もいないなぁ。まぁいいや、僕も帰ろう……。」

 

 Fクラスの教室に行くと誰もいなかった。まぁ、皆すぐ帰りたいだろうしね。秀吉とかは部活に行っただろうし残る人はいなかったのだろう。僕はまだ教室に潜んでいるムッツリーニを無視して、自分のミカン箱の隣から鞄を取り教室を出る。そのまま何事も無く学園の校門を出た。

 今日は食材の買い出しもしないといけないので、早めに歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいま~、誰もいないけど。」

 

 僕は買い物袋を両手に持ちながらドアを開ける。流石に買いすぎたかな? 重い……。

 食材の買い出しの時にも学園の誰とも会わず帰ってこれた。今日はラッキーだ。いつもはFFF団とかが見張ってるから買えない。なので、泣く泣くネットで注文するのだが……。今回は誰もいなかったので普通に買えた。姫路さんとも家が近くなので、遠出した甲斐があったというものだ。

 

 さーて、カップラーメンの残りもあるし今日はどうするかな~? 食材を冷蔵庫に入れながら夕飯のレシピを考える。まぁ、普通に軽食になるだろうけど。食材を入れ終わり、制服から料理が出来るような私服に着替える。青いチェックのポロシャツに黒いズボン、そしてエプロンを着る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 料理を終え、いつも通りテレビの前のテーブルに料理を置き、テレビをつける。

 

 『~今回、事件の関与を否定していたA社のCEOである佐藤氏は~』

 「ふ~ん……。」

 

 この頃、日本の経済はどうも怪しいなぁ。僕は作った料理を食べながらニュースを見てそう思った。まぁいいや。うん、今回も美味しい。その後、料理の後片付けをしてお風呂に入った。寝巻きに着替えて勉強を少しして、ベットに入り早めに寝ようとした。

 

 ブー、ブー

 

 スマホにメッセージが来たようでバイブで起きた。一体誰だろう? メッセージの送り主を見て、少し考え返信して寝ようと目を閉じる。

 

 ーもうちょっと我慢しててね。

 

 そう思いながらいつの間にか僕は寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、僕は早めに家を出た。他の学園の仲間に会わない為だ。だが、そのせいで通勤ラッシュに当たってしまい、満員電車がちょっとキツかった。しかし、なんとか目的の店がある近くの駅に降り立ち腕時計を見ると約束の10時にはまだ早かった。なので朝食をまだ摂っていなかったので、駅の中の飲食店に入る。

 

 

 

 

 

 「ご馳走さまです、とても美味しかったです。」

 「お粗末さん。レシピは他の奴には秘密だぞ。」

 「はい。では、また来ます。」

 「気をつけてな~。」

 

 入った店は料理の勉強も合わせて中華料理店で中々のボリュームではあったが、何とか食べきりレシピも教えて貰えた。店主の人が話しやすい、親切な男の人で中華料理の勉強したいと言ったら厨房の中に入れてくれて、そのまま料理を作ってくれた。わざわざ適度にポイントを書いた紙まで書いてくれて本当にいい人だった。ここのお店にはまた来ることにしようと決めた。

 

 

 

 

 店を出ると丁度良い時間になっていたので、その足で約束のお店に行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ~、何名様ですか?」

 「二人です。もう一人は後で来ます。」

 

 お店に着くと、そこは結構おしゃれなお店だった。喫茶店らしい落ち着いた雰囲気の色を使った壁と丁度良いくらいの間取り、レトロなテーブルとイスのセットにジャズの音楽。大人な雰囲気のお店だ。まだ他にお客があまり居らず少し閑散としていたがそれも雰囲気の一部となっていて面白い。

 一応、大人に会うという事で白いYシャツに黒いジャケットを着て、Gパンを履いていて良かった。雄二たちにこの服装で会ったら、笑われそうだけど。

 エプロンを纏った女の店員さんが応対してくれる。黒い長髪を後ろで編んでいる、素敵な人だ。

 

 「席はどういたしましょう? 今ならテラス席が開いておりますが……」

 「じゃあ、テラスで。もしかしたら中の席に変わるかもですけど。」

 「かしこまりました。では、こちらへ。」

 

 店員さんに連れられテラス席に行く。テラス席を選んだ理由は二つ。一つ目に自分が着いている事を知らせるため。もう一つは今日は天気が良く空気が澄んでいるため、緊張をほぐすためである。やっぱり知らない人を話すとなると緊張するからね。

 テラス席は適度に太陽の光が当たる良い席だった。店員さんも良い席を用意してくれるものだ。

 

 「ご注文をお伺いします。」

 「じゃあ、コーヒー。ブラックでお願いします。」

 「かしこまりました。ごゆっくりおくつろぎください。」

 「はい、ありがとうございます。」

 

 店員にコーヒーのブラックを頼み、この席に誘導してくれた事にお礼を言う。すると店員さんは顔を赤くしながらお店の中に戻ってしまった。何か可笑しなところがあったのだろうか? 

 まぁいいや。僕はテラス席から望める景色を見ながらコーヒーを待つ事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お待たせいたしました。ブラックコーヒーです。」

 「ありがとうございます。」

 「どうぞ、ごゆっくり。」

 

 数分ほどでコーヒーが来た。先程と同じ店員さんが持ってきてくれたようだ。一口飲んでみるとコーヒー独特の苦味が口の中に広がった。しかし、酸味はなく惹きたての豆を使っている事が分かった。うん、美味しい。

 まだ約束の時間には少し時間があるので、僕はこのコーヒーを楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕がコーヒーを半分ほど飲んだ頃、お店の方からこちらに来る足音が聞こえた。足音のする方に振り向くと、

 

 「君が吉井君?」

 「……そうですけど。」

 

 肩まで伸ばされた少しハネのある綺麗な赤い髪、炎が宿ったような赤い吊り目で優しそうな顔付。スルッと細長い体で白くキメの細かい肌。赤いシャツに黒いジャケット、黒いスパッツに膝上の黒いスカートのどう見てもカリスマの女性がそこにいた。

 

 「あの娘から話は聞いてるよ。私は櫻田 茜。よろしくね。ちょっとここでは話しづらいし、中の席に移ってもらって良いかな?」

 「よろしくお願いします、別に構いませんよ。」

 「じゃあ、行こうか。」

 

 僕は櫻田 茜さん?に付いていき、お店の中に入って行った。

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