クラス代表決めで連敗するオリ主   作:林太郎

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8話 平静

「うわ、だいぶひどくやられたね」

 

 日曜日。一夏とシャルロットに連れられて見舞いにやって来た俺は、保健室のベッドで未だに安静を命じられている凰とセシリアを見て驚いた。二人のベッドに挟まれて置かれているテーブルに抱えていた菓子類を積むとその気遣いにセシリアが礼を言った。

 

「ダメージレベルいくつよ」

 

「C以上、ですわ」

 

「C!?直んのそれ」

 

 トーナメントまでにはどうにかなりそうだと答えるセシリアの声には明らかに元気がない。自分の相棒と言えるISをひどく破壊され、そうとうショックだったろう。

 

「体の方は?あとどのくらい寝てなきゃなんないの?」

 

「あと二日ですわ」

 

 腕の包帯が痛々しかったが、単なる打ち身のようだった。ISのことがあるから簡単には良かったねと言えず、ふーんと適当に相づちをうった。

 

「しっかしあの女、ドイツの代表候補なんだろ?イギリス代表候補と中国代表候補のIS壊して問題になんないのかね」

 

「昨日本国の方から正式に抗議したそうですが回答はまだのようで」

 

 ヤンキーだなドイツはとまたも雑な返しをしながら先ほど机においたお菓子に手を出す。というのもセシリアも凰もそれらに手を出す様子がなくて、凰はともかくセシリアは遠慮しているのかもなと思ったからだ。。クッキーの上にチョコが置いてあるお菓子の箱をあけて中の台紙ごと取り出し、食べなと言いながらそれを机に置いた。

 ベッドの住人たちは各々礼を(セシリアは割りかしはっきりと、凰はぼそっと)言ってそれを手に取る。

 

「それはそうとお前と鈴、仲直りうまくいってるんだな」

 

 一夏を見ると満面の笑み。

 

「まーね。話してみたら意外と面白いやつでさ」

 

 嘘はつらつらと口からでる。

 

「お、いいじゃんいいじゃん。なんの話をするんだ?」

 

「お前の話とか」

 

「え!?俺!?」

 

 ももの辺りに何かがぶつかった。見ると凰が必死になって足を伸ばしベッドの外に出して俺を蹴っているのだ。短い足で、ご苦労なことだ。

 

「もっと他にあるでしょ!」

 

 眉をつり上げてそう言う。頬を少し赤らめていた。

 

「そう、この前お前が言ってた小籠包、旨かったぞ」

 

 凰にそう言うと、一瞬おどろいた顔をしたがすぐに切り替えてきた。

 

「あ、行ったの?」

 

 どこか演技くさい声色だ。控えめに言って、下手。

 

「昨日ね。この三人で。フカヒレも━━」

 

 急に保健室のドアがあき、雪崩のごとく女子生徒が中に押し寄せてきた。

 

 口々に「織斑くん私と組も?」だとか「私とデュノアくんなら優勝できるよ」だとか「大田くんのペアにしてほしいな!」だとか。興奮した様子で声を張り上げている。療養スペースで騒いでんなよ。

 状況が飲み込めないので、近くにいた女子に優しい声色を心がけて話を聞いた。すると紙を一枚差し出される。今年度の学年別トーナメントは二人一組のタッグマッチ形式であることが記されていた。

 

 俺は一夏とシャルルの顔を見た。拳を構える。二人はキョトンとしている。

 

「グー、パーで」

 

 そこまで音頭をとると二人も理解したらしい。拳を構えた。

 

「別れましょ」

 

 俺、パー。一夏、グー。シャルル、グー。

 

 それを見ていたシャルル、一夏ファンはすごすごと退室していく。

 

「大田くん、組も!」

 

 残った女子生徒の一人が声をかけてきた。それをきっかけに周りの生徒も自分の存在をアピールした。その中に覚えのある一重の女が居ないことに安堵する。

 

「ここ保健室だよ。そういうわちゃわちゃしたのは後でね」

 

 やんわりとした口調で言うと、小声で少し不満げに返事をしてみんな肩をすぼめて帰っていく。その背中があまりに哀愁漂うものだから「明日の放課後、教室来て」と声をかけてしまった。女子生徒は振り返り、笑顔で、しかし無言で頷くと軽い足取りで部屋を出ていった。あの中から一番優秀なのを選べばいいや。

 

 

「一夏さん、わたくしと組みませんか?」

 

 保健室のドアが閉まるとセシリアは一夏に声をかけた。遅れをとるまいと凰も似たようなことを言う。

 

 わかりやすく戸惑う一夏。もめるベッドの住人。内心あきれながらその問答を見ているとシャルロットが耳打ちしてきた。

 

「空気読んだ方がいいのかな」

 

「でもそれだとさっき退散してった子達にとっては面白く無いかも」

 

 それにシャルロットが空気を読み、一夏とのペアを解消し、俺と組むことになったら明日の放課後、俺目的で来るやつらにも頭を下げなくてはいけなくなる。

 

 あーそうかもとため息をついてシャルロットはあきれた目で一夏を見た。俺もそれにつられて彼を見る。

 

 相変わらず、友達としてセシリアと凰に接している男の姿がそこにあった。

 

「鈍感つーか」

 

「わかっててやってるんじゃないかと思えなくもないよね」

 

 二人揃ってため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見舞いを終えた翌日の放課後、俺は集まった生徒(保健室にいた人数より増えている)に小さな紙を配り、名前を書くように指示し、ビニール袋の中にそれらを回収した。回収後、中に入った空気を抜かずにビニール袋の口を絞るようにして持ってシャカシャカと十数回ふった。その間あつまったメンバーと一夏とシャルロットは緊張した面持ちでビニール袋を見ている。

 

 本当は能力で選びたかったのだが集まった人数の関係からかなりの時間がかかりそうだったのでこうなった。「ISの適性がAの人!」と呼び掛けていく方法も考えたが周りからの評価が気になり実行には至らなかったのだ。

 

 

 袋の口を開け手を突っ込んで中の紙をかき回して、祈りながら一枚をつかみ取る。俺を囲む生徒たちが静まるのを感じた。二つにおられたその紙を目の前で広げて、書かれた名前を呼ぶ。

 

「相川清香」

 

 やった!と彼女は喜びをあらわにし、俺の前に出てくる。同じクラスの顔見知り以上の存在。仲がいい友人。昔から一夏を巡る戦いが起こり話し相手がいないときや、ふとした休憩時間に話す三人組の一人。

 

 実技の授業で他の生徒が操縦するのを見ていると、うまい生徒や下手な生徒は、なんとなく覚えているものである。しかし彼女の操縦を一切覚えていないので、おそらく能力は平均的。とりあえずはボーダーライン。

 

「あの子、織斑くん派だよね?なんで紙入れてんの」

 

 後ろから声がした。振り向くと悔しそうに口元を結んだ、気の強そうな一重の子が俺の肩の辺りを、つまりおそらくは相川さんを睨んでいた。

 

 思わず息を飲んだ。見覚えのある顔。間違いなく先週俺に告白してきた女だったからだ。

 

 この子をたしなめるのも、相川さんをフォローするのもめんどくさい。でも放置しておくのが一番ややこしい。名前も知らないこの女と相川清香では、明らかに相川さんの方が優先順位が高いのでフォローを入れることにした。

 

「え、このくじ引きって俺の恋人を探すものだったの?」

 

 知らなかったなーと、乾いた笑いというものをイメージして笑顔を作る。

 女子生徒は目を伏せた。その周りの生徒にも動揺が走る。そしていたたまれない空気になった。

 

「はい解散!」

 

 手を叩きながら言うとみんなのろのろと動き始めた。

 

 人数が減ったので相川さんに話しかける。

 

「で?俺に心変わりしたわけ?」

 

「いやいやいや。織斑くん推しだけど。その場のノリで入れて」

 

 じゃあ布仏さんたちも入れたんだろうかと思っていると「なんかごめんね」と申し訳なさそうに言われた。

 

「なに?一夏派で、ってこと?」

 

「いやいやいや。さっきのやつ。ありがとうね」

 

 さっきのやつだってわかってて言ったんだよ。こうやってしんみりした空気になるのが目に見えてるから避けようとしたんだよ。どうするんだよこの空気。苦手だ。

 

「気にしないで~」

 

 笑って言うと安心したように彼女も笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、一夏への部屋へお菓子を持ってお邪魔した。もうこれは半ば習慣づいているとも言える事だから、アポをわざわざとらなくても良くなっていた。今回もその例に漏れず、急な訪問となったが彼は当たり前のように受け入れた。

 

「ちょうど亮太郎の話をしてたんだよ」

 

 シャルロットにそういわれた。一瞬だけ緊張したが、期待していた話もそうでない悪い話も、こうして俺に打ち明けないことに気付きすぐに解けた。

 

「なんの話さ」

 

 聞くとシャルルがにこにこと笑った。一夏もどこかいたずらっぽい笑みを浮かべている。

 

「いやさ、お前と相川さん、くっついたら面白いのになって」

 

「なんでやねん」

 

 一夏の言葉を間髪入れずにさらり否定する。自分の発した言葉が淡白なものだったのに対して心中はそう穏やかでなく、シャルロットが俺に、俺の期待していたような感情を抱いてはいないことを確信し、とにかく、不快な色に染まっていた。

 

「だってほら、お前昔っから相川さんと仲いいじゃん」

 

「相川さんっていうかあの三人組とでしょ?

 

「でも特に相川さんと仲いいだろ」

 

 否定はできない。布仏さんのペースに合わせるのはちょっとめんどくさいと思うことがたまにあるし、谷本さんは話すときにどこまでいじっていいのかわからないかったりして会話があんまり楽しくないと感じることもある。

 

 そうすると確かに、相川さんといるのが一番楽しいのかもしれない。しかしまぁ。

 

「あれは友達。それに織斑派だって豪語してんもん。絶対無いよ、お互いにそういう感情」

 

 持たれてたらなんだか裏切られたような気分がするかもしれない。

 

「お前らはどうなの?二人でくっついちゃえば?」

 

 話題を変えたくて、あとシャルロットのことをそう見ていないんだとどうしてか示したくなってそんなことを言った。

 

 反応は予想通り。一夏はしれっとしていてシャルロットはわかりやすくあわてふためいた。

 

 わかりきっていたことなのにその反応を見て、やっぱり嫌な気持ちになる。投げやりになっていたことは確かだ。けど言わなければ良かったと後悔する。

 

 だからといってここで会話を切り上げるのは不自然だからもう何回か適当な事を言わなければならなかった。「いっしょに住んでて全く無いってことは無いでしょ」とか「実際行き合ってる感じするし」とか「相性いいと思うけど」とか。

 その度にシャルロットが恥ずかしそうな反応をするものだから俺の言葉と中身はだんだん距離が離れていく感じがした。内外の温度差を感じた。喉の乾きを抑えるために一夏に渡されたジュースを頻繁に飲んだ。表情がひきつっているような気がしたがどうにもできなかった。

 

 とにかく、どうにかその話題を乗りきって訓練のこととかセシリアと凰が予定より早く退院できそうなこととかを話して部屋にもどった。

 

 あまり先程のことを考えないようにしながら寝る支度をする。そしてベッドにもぐって明かりを消したときに、端末が振動した。

 

 ディスプレイに表示されるシャルロットからのメッセージ。

 

『僕と一夏ってホントに相性いい感じする?』

 

 俺は見るや否や電源を落として、枕に顔をうずめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペアが決まった翌日の放課後。相川さんとの訓練を終えた俺は更衣室のシャワーを浴びた。着替えて外に出ると近くのベンチに腰掛けて、首にかけたタオルで頭を拭く。そして相川さんがシャワー室から出るのを待つ。この学園のシャワーを室は一つ一つが小さな脱衣場とシャワールームが一緒になっている。それが十もあることにIS学園の貴族趣味を感じたのも一ヶ月も前のことだ。

 今日の訓練で浮き彫りになった課題を整理し、今後の訓練内容を話し合う。そのために彼女を待っているのだが、なかなか出てこない。おかげでシャワーを浴びながら考えた訓練内容を三度も推敲する時間ができた。

 

 ふと思い出して、シャルロットからきたLINEに返事をしなくてはと端末を取り出す。だが彼女とのトーク画面の一番下には昨日のメッセージは無く、代わりに彼女がメッセージの送信を取り消したという表示があった。ほっとした。

 

 しかしそれにしても遅い。こういうときはなるべくはやく済ませるのがセオリーではないのか。

 

 ドアノブが動いて相川さんがタオルで優しく叩くようにして髪を拭きながらやっと出てきた。シャワーの温度で頬が暖かい色になっている。

 

「おまたせ!待った?」

 

「待った」

 

「そういうときはさー」と冗談めかして怒る彼女。実際、結構待ったのだ。本当の事を言って何が悪い。

 

 「行くよ」と言ってそそくさとラウンジを目指す。後ろからパタパタと足音をならして俺に並ぶ相川さん。相川さんとなら会話に困る心配がないからいい。

 

「このトーナメントで優勝したら織斑くんと付き合えるって知ってた?」

 

「知ってる。でもそれ、ほんとなの?」

 

 実はさ、と事の顛末を教えてくれる。

 

「へー、あの箒がねぇ」

 

 俺は布仏のテキトーさよりも、箒の踏み出した一歩の方が気になった。

 

「それちゃんと一夏は意味わかってんのかな」

「どうだろうねー」と相川さんは苦笑する。

 

「ごはんとか買い物とかに付き合ってってことだって思ってそう」

 

 相川さんの言葉に心から頷く。あいつならやりかねない。

 

「俺とシャルルは鈍感なふりをしている説を唱えてる」

 

 相川さんは楽しそうに笑った。

 

「なにそれ、全部わかっててやってるってこと?織斑くんゲスすぎー!」

 

「この説、否定したくてもしきれないでしょ?」

 

 相川さんはしきりに頭を縦にふった。

 

「めちゃくちゃ面白いね、それ」

 

 でしょ、と相づちを打ちつつ、なんとなく後ろを振り向く。

 

 人がいた。そして俺はどうにか笑顔がひきつるのを防いだ。できるだけ自然に向き直り声のボリュームを落として相川さんに話しかける。

 

「そのまま聞いてて。絶対に振り向かないで」

 

「どういうこと?」と疑わしげに聞いてきた。

 

「くじ引きで俺のペア決めをしたとき、相川さんとちょっと揉めた他クラスの子、覚えてる?」

 

「うん」

 

「その子がいま後ろにいて、相川さんを睨みながら歩いてきてる」

 

 相川さんからの返事はない。ちらりと表情を確認すると強ばっていた。少ししてから弱々しい声で相川さんが言う。

 

「このままラウンジ行くの?わたし、嫌だよ。あの子を気にしながら話すの」

 

「そうだね」

 

 言ってから考える。そして俺の部屋に行くという提案をすると彼女が頷いたからそうすることになった。  

 

 角を曲がると後ろから聞こえる足音がはやくなった。一瞬だけ顔を見合わせた。相川さんの顔は、見事にひきつっていた。そしてそのまま二人で走って部屋まで逃げた。

 

 部屋に入ると相川さんは「怖かったー!」っと叫び、俺はドアの鍵を閉め、チェーンまでした。

 

 部屋の奥にいくと、彼女はすでにベッドの端に腰かけていた。

 

「実は俺、あの子に先週コクられたんだよね」

 

「ホントに!?」

 

 俺は話の種として詳細を教えてあげることにした。こういうネタ好きそうだしね。というより、誰かに話さないとやってられない。こんなにめんどくさい子だとは思っていなかったのだ。

 

 俺は彼女にジュースをコップに入れてもっていき、そして話し出した。

 

 時は一週間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きです。付き合ってもらえますか?」

 

 目の前にいる女子生徒はそう言った。放課後の屋上。だんだんと暗くなってきたが風はまだ暖かい。

 

 一重の細い目は少しつり目ぎみ。顔はでかい。低い鼻のできものを化粧で必死にごまかしているのがわかる。髪はキレイだし前髪も決まっているから、可愛くなろうと努力してるのもわかる。どうせ性格も悪くはないんだろうって思った。

 

 けど、彼女を作るなら君よりもっとずっと可愛い子を俺は選べるんだ。

 

 なんてこと言えるわけもなく、とりあえず、ごめんとだけ小さく伝えた。

 

 目が一瞬だけ見開かれ、そしてうつむく。

 

「うん。わかった。でも、どうしてかだけ聞かせて?」

 

 必死に涙をこらえているのが、声の震えを通じて伝わってきた。

 

 その一。顔が好きじゃない。

 

 その二。誰だお前。

 

 その三。今はそんなことしてる場合じゃない。

 

 まともに使えそうなのはその三だけだし、これも忙しい時期が過ぎたらOKみたいな意味合いが出てしまう。

 

 俺はほんの少しだけの罪悪感と引き換えに、こういうときに一番便利な嘘をつくことにした。

 

「ごめん。俺、好きな人いるから」

 

 彼女は大きく鼻をすすり上げた。泣き声がもれだす。

 

「泣かないで。ほら」

 

 泣かないで。早く訓練したいから。という気持ちを込めてハンカチを差し出す。それを受け取った彼女は途切れ途切れにありがとうと言うと、涙を拭いていく。

 

 落ち着くまで俺は彼女のそばに立っていなくてはならなかった。三時間くらいに感じたが、本当はそれよりずっと短かったのだろう。

 

「その人と付き合ってるの?」

 

 感情が大分落ち着いてから彼女はそうきいてきた。俺はそれを否定する。架空の女と付き合っているなんて発言、痛すぎる。

 

「ずっとその人のこと、おもってるの?」

 

 聞いてこいつはどうするつもりなんだろうか。あんまり根掘り葉掘り聞かれると、いまさっき産み出したキャラクターなものだからぼろが出てしまうかもしれない。そう思った矢先、一瞬だけ、ほんの一瞬だけシャルロットの顔がちらついた。彼女と出会ったのは最近だということも。そういうのを全部否定したくて、逆のことを言った。

 

「うん、まぁ、ずっとかも」

 

 彼女は顔をあげた。その目には何やら決意の光がこもっていた。鼻をすすってから、しっかりとした声で言う。

 

「じゃあ、私も。私も亮太郎くんのことずっとおもってるから」

 

 気持ち悪い。素直に諦めろ。

 

「それだったら良いよね?」

 

 良くないと言えるわけが無い。

 

「うん、わかった」

 

 彼女は満足したように頷くと、屋上の出口に向かって走っていった。

 

 足音が充分遠のいてから、大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 と言うのが本当の話なのだが、俺はこれに都合のいいように墨を塗って相川さんに話した。

 

「てか大田くん、好きな人いるんだ」

 

「その場しのぎの嘘に決まってるでしょ」

 

「うわ、女の敵だ」

 

 笑って言う彼女に「相川さんもこのくらいやるでしょ」と言うと、こっちを見てニヤリと笑った。

 

「あの子にそのうち刺されるんじゃない?相川さん」

 

「それ冗談になってないから」

 

「何人かで固まってれば大丈夫だろ」

 

「そうだけどさー」

 

 彼女が空にして手に持っているコップを無言で受け取っておかわりをつぐ。

 

「じゃあもっと分かりやすく一夏にアタックするんだ。そうすりゃあの子もわかってくれる」

 

「そしたら織斑派に刺されるよ」

 

「ホントだ。すげぇ。相川さんどうやっても刺されるじゃん」

 

「その理屈はおかしい」

 

 二杯目が彼女の手にわたったところで、彼女が「よし!」といった。

 

「じゃあ本題に入ろう」

 

 相川さんから切り出されるとは思っていなかった。驚きが顔に出ていたようで、それを指摘される。思っていたことを正直にいうと彼女は笑った。

 

「やるからには勝たないとね」

 

 彼女の言葉に心底ほっとしたのは言うまでもない。

 

 まずは遠距離型の相手に対する立ち回り。これは彼女もわかっていた問題点で、距離を詰めようにも今の相川さんでは厳しいし、相手が上手かったなら俺だって危ない。だから遠距離型を先に二人で狙って潰す方針になった。それはもう片方をフリーにすることを意味し、場合によっては思いがけない一撃をくらうことにも繋がる。周りを見てダメージを減らさなければならない。

 

 つまり、遠距離対策としては距離の詰め方、近距離攻撃のコンビネーション、ハイパーセンサーの活用、敵行動の予測、回避行動を訓練することになった。

 

 次に挙がったのは個々の技術問題。お互いにとびきり早くは動けないし、相川さんは近接戦闘にも不安が残る。

 織斑先生に頂いたISの試合の動画を彼女にも見てもらうことである程度の立ち回りを把握してもらい、あとは訓練でものにしていくことに。そしてできるだけ早く近接戦闘のコンビネーションを身に付けることが要求される。

 

 毎回の訓練を動画にとり問題点をあらうことにもなった。

 

 話し合ったあともまだ相川さんは部屋に居座って、別に俺も嫌ではなかったから色んな事を話した。特別な話をするわけでもなく、ただ普通に、俺が一夏やシャルロットとするような話を。

 

 気がついたらもう遅い時間になっていた。

 

「部屋まで送るわ」

 

 そろそろ帰ると言う彼女にそう伝えると少し安心したような表情をした。さっきの女がいたら怖いものな。

 

 廊下に出てみたがあの女の姿はなく、なんの問題も起こらずに彼女を部屋に送ることができた。

 

 ドアが閉まる前に部屋の中から谷本さんの「朝帰りすると思ってたー」という声が聞こえた。

 

 部屋に帰ってもまだなんとなく寝る気にはなれなかった。

 

 タッグマッチ当日までにものになりそうなテクニックや合わせ技を動画ファイルをあさって探し、簡単にまとめることにした。

 

 あと二週間で結果がでる。それが少し不安であり楽しみでもあった。




書けなくて休載を検討しました。

だらだら書くしかない部分があって、書くのがつまらなくて、それが今回の話で。

それとプロットを書いたはいいけど、終着点に辿り着くまでの過程が何だか気に入らなくてってのも理由です。

今回書いてもこっから先つまらんよなって思ったりしました。

でも生んだキャラクターの責任は取らなきゃって思って、プロット書き直して、取り合えずこれでいいかなって形ですが、のろのろ書いてます。のろのろです。

けどエタりはしない。

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