かかし男「人として恥を知りな恥を!」
ゼノ&レオ(なんでか知らんが他はともかくこの二人だけには言われたくない)
「アーちゃんを返せーこの変質者ーーー!」
アルティナを捕らえている黒のアルベリヒに向けてミリアム・オライオンはアガートラームを駆りながら怒りの突貫を行う。
「おおっと悪いがここは通さへんでちびっ子」
「契約に基づき我らには彼を守る義務があるのでな」
しかしそこにゼノ・クラウゼルとレオニダス・クラウゼルの両名が立ちはだからんとする。
「ならその道を切り開いてやるのが義兄貴の努めってな」
「行ってくださいミリアムちゃん!」
負けじとクレアとレクターの両名が立ちはだかった二人を相手取りミリアムの道を切り開く。
「変質者呼ばわりは酷いな、これでも君たちの産みの親と言える存在だというのに。基より君たちはそのために作った道具だ。ならばそんな君達をどう扱おうが所有者である私の勝手だろうに」
「ベーッだ!そんなの知ったことじゃないもんね!僕はミリアム・オライオンでアーちゃんはアルティナ・オライオン!どっちも帝国軍情報局所属の仲良し姉妹!おじさんみたいな変質者を親に持った覚えなんかないやい!良いからアーちゃんを返せーーー!」
「やれやれ、余り荒事は得意ではないのだが、しかし娘の躾をするのも親の努めというものか」
---まあまあイリーナ、アリサも反省しているみたいだしそれ位で良いじゃないか
ーーーもう、貴方は少しアリサに甘すぎるわ。叱るべき時はちゃんと叱らないとこの子の為にもならないわよ
一瞬
何故ならばこの地の底には呪いより生まれし瘴気が充満しているから。
この世の総てを呑み込まんとする黒き焔はある一人の男の抱いた妻や娘に対する細やかな愛情、それを余りにも呆気なく焼き尽くす。
アガートラームが繰り出した渾身の一撃、それをアルベリヒの操る異形の戦術殻が受け止める。
「ほう、これは驚いたな。予想を上回る戦術殻との同調能力だ。
これならば74ではなく君でも問題はないのかもしれない。
どうだろうかOZ73、74を妹と想うのなら彼女の代わりに君が犠牲になってくれるつもりはないかな?
そうすれば彼女が死ぬ必要はなくなる。君が彼女を真に妹だと想うのなら、それこそ姉としての在るべき姿だとは思わないかね?」
「全ッ然!全くこれっぽっちも!思わないね!妹が変質者に攫われたんだったら姉としてやるべきことは変質者の要求を呑むことじゃなくて、その変質者をぶん殴って妹を取り返すのが役目だよ!!」
アガートラームと異形の戦術殻ゾア=バロールが主人に代わり激しい格闘戦を繰り広げる。
「だがそれは果たして現実的に可能な事かな?
イシュメルガ様の虚無の力を切り裂いた事は確かに驚嘆に値する。
しかし、それはようやく最低限勝負の土俵に立てたというだけの話。
圧倒的に優位な側なのは依然変わりなくイシュメルガ様の方だ。
彼の英雄と聖女の勝利の可能性はまあ万に一つと言ったところだろう」
「だったらその万に一つを一発で引き寄せるのがリィンだよ!」
「……74に続き君もそれか、全く君たちは少々英雄の放つ光に目を焼かれ過ぎではないかね?
どれほど優れて居ようとあくまで彼は人間に過ぎない。ならば神たる存在に挑んだ末路がどうなるかなどわかり切っていると思うのだがね?」
「良い年してヘンテコロボットなんかを神と崇めているおじさんよりはマシだろー義妹がお義兄ちゃんを信じる事の何が悪いって言うんだよー」
ミリアム・オライオンは一歩も引かないし、自分の命を投げ出す気もない。
何故ならばミリアム・オライオンは信じているから。
リィン・オズボーンが黒の騎神イシュメルガを打倒する事を。
ならばこそ自分の役目は囚われの妹を助け出す事に他ならない、そう考えている。
「……貴方達は自分が一体何に加担しているのかわかっているのですか?」
立ちはだかる西風の大隊長であった二人の猟兵。
それと交戦しながらクレア・リーヴェルトは苛立ち混じりに問いかける。
「まあ大まかに程度やけどな」
「世界の終わりを始める儀式、そう聞いている」
「ッ!?それがわかっていながら何故貴方達は加担しているんですか!
どんな悪事を為そうとしていようともそれに従うのが猟兵としての流儀だからとでも?
だとしたら猟兵というのは犬と同義語ですね」
彼女の愛する義弟はこの一戦に全てを賭して挑んでいる。
父である鉄血宰相ギリアス・オズボーンを帝国の為に討つとそう決意した。
クレア・リーヴェルトは知っている、リィン・オズボーンが一体どれほど父を尊敬し慕っていたかを。
クレア・リーヴェルトは覚えている、英雄となる前のあどけない笑みを浮かべていたどこにでもいる普通の少年であったリィン・オズボーンを。
だからこそ想いを馳せずには居られない、一体リィン・オズボーンがそう決意する為にどれほどの葛藤を要したのかを。
だからこそ許せない、どちらの側に正義があるのかを理解しながらも猟兵の流儀等という言葉を
「……ま、言いたいことはわからんでもないけどな。それでもそれが俺たちの職業意識ってもんや。それを犬呼ばわりするっていうのならまあ好きにすれば良い。猟兵なんざそうやって罵倒を受けてなんぼの仕事やからな」
「左様。基よりここは戦場。そして我らはその戦場を故郷とする戦士。自己の正しさを証明したくば言葉ではなく力を以てする事だ」
「このっ……!」
「落ち着けよクレア、犬に人の道理を説いたところでどうにもならねぇよ」
氷の乙女という異名はどこへ行ったのか頭に血が昇りかけた相方をレクターは諫める。
口調こそ常と変わらず飄々としているが語っている内容は辛らつそのものだ。
「結局こいつらは自分で何が正しいかどうかも考える脳みそがねぇのさ。
自分たちの雇い主が今何やろうとしているのか、それで何が起こるのか、そういった事を真実自分の頭で考えちゃいない。何が正しいかを自分で考えて決めるってのはストレスがかかる事だからな。
それなら雇い主に従うのが猟兵の流儀だ誇りだとそんな言葉に逃げて最初から考える事を放棄しちまうのが一番楽なんだよ。なぁそうだろ?違うっていうんなら答えて見ろよ、お前らの雇い主様の
演技半分本心半分でレクター・アランドールは目前の二人を嘲弄する。
「「………………」」
そんなレクターの挑発の言葉に対する二人の回答は無言であった。
それは挑発に乗るつもりはないという意図であったのか、はたまた返す言葉がなかったのか。
「俺の方は言えるぜ、アイツが俺たちの自慢の義弟が正しい事をやろうとしているって胸を張ってな。
だからよぉ邪魔すんじゃねぇよ、義兄貴分としてこちとらそんなアイツの手助けをしてやらなきゃならねぇんだ!そうだろうクレア!」
「ええ、レクターさん!」
常ならざるレクターの挙げる熱き雄叫びに対してクレアもまた万感の想いを以て頷く。
そうして立ちふさがる障害を打ち砕かんと二人は意志を高め、その戦いは激しさを増して行くのであった……
・・・
「どうだクルト!これが僕が手に入れた力だ!!」
苛烈な剣戟を受けてクルト・ヴァンダールは後退を余儀なくされる。
「どうだアッシュ!ユウナ!ミュゼ!君たちは四人がかりで僕は一人!それでも僕の方が君たちの上を行っている!ぬるま湯に浸かったままであれば決して手に入らなかった力だ!!」
ミュゼ・イーグレットの放った弾丸それを躱し、それに併せて行われたユウナとアッシュの連携攻撃それをも難なく捌いてセドリック・ライゼ・アルノールは歓喜の咆哮を挙げる。
一対四というどちらが有利か火を見るよりも明らかな状況に於いて押しているのはセドリックの側であった。
そしてその事実にセドリックは歓喜に打ち震える。身体の内より溢れ出てくる圧倒的な力と今目の前で広がる光景はまさしく自分の選択の正しさを証明するように思えた。ましてその対象につい先日自分を圧倒した相手が含まれていれば尚更だ。
「……そんなに嬉しいのかセドリック」
「はぁ?」
追い抜いたはずの相手に四人がかりで押されるという状態、本来であれば悔しさに満ちていて然るべきはずなのにそんな様子を微塵も見せない態度、それがセドリックを苛立たせる。
「
「負け惜しみかい?嬉しいに決まっているだろう、何故ならば今こうして君たちが四人がかりで僕一人に後れを取っている事それこそが僕の選択が正しかったというーーー」
「そうか、なんというか君の目標は随分と
「……なんだと!」
「だってそうだろう?僕たち四人を一人で押す事が出来ている、それが一体何だって言うんだ?僕たち四人を一蹴する事が出来る存在なんて今この場にいくらでもいる。そんな程度の存在なんだよ、今の僕たちは。悔しいけどね」
例えばこれがヴィクター・アルゼイドならオーレリア・ルグィンならクロウ・アームブラストなら、そしてリィン・オズボーンなら勝負になる事もなく一瞬で決着がついて終わるだろう。
セドリック・ライゼ・アルノールが強くなったといってもそれは10の力が20になったとそんな程度の話。100以上の力を持つ者達からすればそんなものは
「なぁセドリック、本当に
「……ッ!」
「まあわかんねぇでもないぜ、強くなった実感を得るっていうのは最高の気分だよな。
それがあるからこそ血反吐ぶちまける地獄のような訓練にだって耐えられる。
だから別にお前が今それを感じた事を責める気はないぜ、どうもここ最近色々と鬱憤も溜まっていたみたいだしよ。けどお前もわかってんだろ、そっちの方に関しちゃいくらでも上を行っている奴なんざ要るんだぜ?」
「そして君は皇太子でありユーゲント陛下亡き今、皇帝と為る身だ。
改めて聞くぞセドリック、そんな少しばかり人を殺すのが上手くなった程度で本気で英雄に為れると思っているのか?あのリィンさんを、そして兄君であるオリヴァルト殿下を真の意味で超えられると思っているのか?」
「黙れぇ!」
怒りと共に叩き込まれた剣戟、それをクルトは今度は押される事無くいなすように捌く。
「いいや、黙らないね!いい加減に気づけよセドリック!そっちじゃないんだよ!君が進むべき道は!
リィンさんは将軍で、君は皇帝だ!王である君が誇るべきはそんな匹夫の勇なんかじゃないはずだ!騎神という一騎当千の力を持つ超兵器の担い手であった英雄帝と獅子心皇帝と違ってね。
そしてその程度の事を君が理解していないはずがない。それにも関わらず君がどうして頑なにそれに拘るのか、僕には何となくだけどわかるよセドリック」
「黙れ……それ以上言うな……」
「自信がないんだろう!王としての器でオリヴァルト殿下を超える!
だからオリヴァルト殿下ならば決して選ばないであろう道を往こうとしているんだ!」
「黙れと言っているだろう!」
セドリックの振るう剣とクルトの振るう剣それが次第に拮抗していく。
それはある意味で必然だろう、今のセドリック・ライゼ・アルノールは半ば呪いに呑まれている状態だ。
いわば心技体の内体だけが強化されたものの、心に於いては弱くなり、技も成長したわけではない。
ならば必然としてどれだけその攻撃が苛烈で早くとも次第にその攻撃は見切られていく。
心技体の内の心と技に於いてクルトはセドリックを上回っているのだから。
「黙って臣下として付き従い続けた結果が今だ!本当はもっと早くに僕らはこうやって想いをぶつけ合うべきだったんだ!だけど僕はずっとそこから逃げていた。怖かったからだ……皇太子である君の不興を買う事が」
そうクルト・ヴァンダールは恐れていた。皇太子であるセドリックからの不興を買う事が。
ロラン・ヴァンダールのように寄り添う等と誓いながらも真に対等の友だとは思っていなかった。
ヴァンダールの名を自分が穢してしまう事をずっと恐れていたのだ。
「もう逃げない、真の意味であの日の誓いを僕は果たす!獅子心皇帝に寄り添ったロラン・ヴァンダールのように対等の友として君と向き合って見せる!僕だけじゃない、みんな同じ気持ちだ!」
「いい加減目を覚ませやセドリック!お前の往こうとしている道に誰が夢見ている!テメェの見せようとしている背中に憧れている奴や続こうとしている奴が一人でも居るのかよ!」
アッシュ・カーバイドが気合の喝破と共に振るった一撃がセドリックの右手の剣を弾き飛ばす。
「セドリック君……もう止めようよ、似合ってないってセドリック君にはそんな道」
ユウナ・クロフォードの振るった一撃、それが左手の剣を弾き飛ばす。
「手荒いですが、気つけの一撃ですーーーセドリックさん、どうか自分を取り戻してください」
そして放たれたミュゼの導力ライフルの一撃、それがセドリックの仮面を撃ち砕いた。
感情を律せぬ未熟者では守護の剣を十全に扱う事は出来ぬぅ!(呪いでパワーだけブーストしても技のキレが落ちて攻撃が単調になるので序盤をしのげばある程度以上の使い手ならそのうち慣れる)
感想欄でも答えましたがアルベリヒはその辺があんまりわかっていません(技術者であって戦闘のプロフェッショナルではないので戦闘力だとかをスペックでしか測れない)