獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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原作ではイシュメルガが呪いそのものであるかのような描写が多く見受けられましたが当作における設定では基本的に下記のような感じです。

鋼の至宝:大地の至宝と焔の至宝の激突と無限相克により誕生した力の塊

呪い:大地の至宝と焔の至宝が消滅する前に各々の眷属に命じられた「敵を滅ぼせ」という人の持つ敵に対する憎悪だとかそういう想念が残留したもので人の中にあるそうした感情を増幅させて闘争に駆り立てるもの。

騎神:鋼の至宝を制御するために大地の眷属である地精が作った鋼の至宝の持つ力の受け皿で魔女の眷属や聖獣二体の協力も得る事で鋼の至宝の力をなんとか分割する事に成功。

黒の騎神イシュメルガ:地精が何とか失われてしまった大地の至宝を取り戻せないかなぁと思って意図的に作った最強の騎神。最強に作った=鋼の至宝とより深く繋がっている=呪いの影響も他の騎神に比べて大きく受けるという事で結果として呪いによって用意された思考AIがバグり独自の精神生命体に進化という大惨事を招いた。なんという事をしてくれたのでしょう。

暗黒竜:七体の騎神でも受け皿になりきれなかった鋼の至宝から漏れ出た力と呪いが魔獣の形となって顕現。英雄帝ヘクトル・ライゼ・アルノールがその命と引き換えに討ち果たして、大地の聖獣アルグレスがその身を以て封じた事で鋼の至宝も大分落ち着く(巨イナル一の中に呪い自体は残留していた七体の騎神はそれと繋がっているため己が起動者を闘争へと駆り立ててちょこちょこ騎神同士の激突が発生するが暗黒竜なんてものが顕現してガチで人類存亡の危機に陥るような事態に比べれば大分マシの意)。自らをいざという時に封印してのけるであろう大地の聖獣が実質消えた事でイシュメルガ君「待っていたぜ!この時をよぉ!」とばかりに暗躍しはじめ、とりあえず当時の地精の長だったアルベリヒ君を洗脳。以降黒のアルベリヒとしてイシュメルガの忠実な手駒として働く事になる。

なので鋼の至宝の力は実質七体の騎神+大地の聖獣が封じていた暗黒竜の呪いで八分割されていたというわけですね。で大地の聖獣が死ぬことでその身で頑張って封じていた呪いが帝国中にばら撒かれる事になるのが本来の巨イナル黄昏だったわけですが、当作の場合だと死にかかったイシュメルガ君が「うおおおおおお死なねぇ!!こんなところで死んでたまるか!!!この世を統べる神に……俺は成る!!!」と気合の力で大地の聖獣が封印していた呪いを吸収してイシュメルガ・プロヴィデンスとして覚醒しましたと大体こんな感じの状況です。


蜘蛛の糸

 

 アルティナ・オライオンは認められなかった。

 理性では敬愛する英雄の語った内容は筋が通ったものである事を理解している。そして彼女が敬愛する英雄がそこらの凡夫とは異なるのはそうした責任から決して逃げることなく果たさんとするその在り方にあるのだという事も。

 

(でも……それでも……リィンさんが死ぬなんて絶対に間違っています……!)

 

 何故ならばリィン・オズボーンは常に祖国のために戦ってきた英雄なのだから。それが罪だというのならば軍人という職業は成立しなくなってしまうではないか。軍人が祖国のために他国の軍人を殺すのが悪だというならそうした軍人の働きによって安穏と繁栄を享受出来ている者達も同罪という事になるではないかーーー等とアルティナ・オライオンは考えてまずリィン・オズボーンに死を以て償わねばならぬような罪はないと判断する。死すべき罪がない以上はリィン・オズボーンが死ぬ等というのは間違いであるーーーとそういう思考だ。

 その思考には大きな履き違えが存在する、リィンが語った通りこれまで戦場で果ててきた者達、リィンが殺して来た者達とて別段死すべき罪があったから死んだわけではない。ただ彼らは彼らなりの祈りと譲れない理由を抱き戦場に出てきて巡り合わせが悪かったから死んだだけなのだから。リィン・オズボーンもまた自らの願いをかなえる為に己の命を使わねばならぬ局面が来た、ただそれだけの話なのだ。むしろその命を賭そうがその祈りを叶えることなく果てる者の方が大半なのは思えば、たかだが己が命一つを捧げる覚悟をするだけで帝国が建国以来悩まされ続けた邪神の軛を断ち切れる可能性がある事、それ自体が彼が破格の英傑である事の証左と言えるだろう。

 だがそうした理屈もアルティナにとっては何の慰めにもならないのだろう。アルティナ・オライオンがリィン・オズボーンの死を許容できないのはただただ大切な家族の死を喜べるはずがないという人として余りにも当然の想いに起因するものなのだから。

 

「トワさん!このままではリィンさんが!何とか……何とか他の方法を探さないと!」

 

 ならばこそアルティナ・オライオンが取った行動はこれまた順当なものであった。何があってもリィン・オズボーンの死を認められないであろうもう一人の家族、トワ・オズボーンへと縋ったのだ。

 

「アルティナちゃん……大地の聖獣さんのところに……アルグレスさんのところに行こう」

 

 そう理屈ではないのだ、人を突き動かす感情というのは。ならばこそそれがどれだけ論としては筋が通ったものであり、仕方のないことなのだとしてもおいそれと諦めることが出来ないのはトワ・オズボーンもまた同じであった。

 

「ローゼリアさんもフランツさんもこの件に関しては私たちよりもはるかに事情に通じていて出来る事だって私たちよりもはるかにいっぱいある。だから私たちがやみくもに考えてみたところであの人たちが思いつかなかったような名案を思いつく、なんてことは難しいと思う」

 

 トワ・オズボーンはトールズ士官学院を次席で卒業した英才でアルティナ・オライオンも席次3位の立場にある。先ずもって優秀と言えるだけの能力が両者には備わっている。だがそれでも帝国の誇る頭脳G・シュミットとその愛弟子たちと技術的な分野での造詣を競った場合遠く及ばないのは語るまでもない事実である。そして今回のような裏の事象に対する知識という部分に於いても当然のようにそれを専門としている魔女の眷属達には遠く及ばない。

 そんな自分が今から付け焼き刃の知識を身に着けて藻掻いたところで両者が見いだせなかったような策を閃くことが出来ると思うほどにトワ・オズボーンは自惚れてはいない。ならばこそ頼るべきはあの会議の場に居合わせなかった人智を越えた超常の存在に他ならないとトワ・オズボーンは結論づける。

 

「でもアルグレスさんはその身を以て呪いを900年間もの間抑え込んでいた女神が遣わした聖獣。そのアルグレスさんならリィン君の心臓の中からイシュメルガだけを隔離させる方法もひょっとしたら何か想いうかぶかもしれない」

 

 無論これは希望的観測も良いところだ。しかしそれでもわずかでも希望があるのであればそれに縋りたくなるのこそが人というもの。足掻きもしない内に最愛の人の死を仕方のない事だと諦める事はトワには出来なかった。

 

「だから行こう、アルグレスさんのところへ。休んでいるところに申し訳ないとは思うけど、リィン君の生死がかかっているんだもん」

 

 故にそんなトワの様子は同じくリィン・オズボーンの死を諦めたくないアルティナにとってはこの上なく頼もしいものに映り……

 

「はい……!お供します」

 

 万感の想いを以て頷いた後アルティナは頼もしき義母と共に大地の聖獣を訪ねるのであった。

 

・・・

 

「……なるほどな、汝らの望みは理解した」

 

 さすがは女神の遣わした聖獣と言うべきだろうか、大地の聖獣アルグレスは疲弊しきったその身を少しでも回復させるための眠りを妨げた小さき来訪者達に怒りを見せる事もなく、真摯にその願いへと耳を傾けてくれた。

 

「結論から言おう、可能性としては極少という他ない、だがそれでも汝らの望みを叶える手立てに一つだけ心当たりがある」

「!?本当ですか!」

 

 アルグレスより垂らされたたった一つの希望の糸、それを前にトワとアルティナの表情が目に見えて輝き出す。

 

「うむ。(われ)が持つ権能に大地の檻というものがある。これは本来この次元にでは顕現しえぬものを封じ込めるための檻の役割を果たすもので、我はその力を以て呪いを抑え込んでいたわけなのだが……この力を用いれば灰の起動者の魂と癒着した黒のみをこの次元へと顕現させることも可能だろう」

 

 黒の騎神イシュメルガは自らの器を滅ぼされた瞬間に霊的な繋がりを有してるリィン・オズボーンの心臓へと乗り移り、そこを起点にリィン・オズボーンの肉体と最終相克に勝利した灰の騎神を乗っ取りにかかる。それを防ぎ確実に黒の息の根を止めるために、黒が自らを乗っ取りにかかったまさしくその瞬間に自らの心臓を外の理によって作られたレーヴァテインを以て潰し、自らの心臓諸共黒を焼き払う事こそがリィン・オズボーンの計画だ。

 だがもしもアルグレスの言う通りに大地の檻とやらの力で以て黒のみをリィン・オズボーンの魂から分離させる事が大地の檻へと封じ込められた黒のみを討つ事が可能となる、リィン・オズボーンが死ぬ必要はなくなるというわけだ。

 

「だが大きな問題が二点ある。一つ目はまず灰の起動者が自らの魂から黒のみを切り離すためには黒の呪いを相手にしても己を強く保つ事の出来る強固な精神力が必要となるだろう」

「リィンさんなら問題ありません!そんな事はリィン・オズボーンという英雄にとっては朝飯前の事です!」

 

 アルグレスの伝えた懸念をアルティナは一蹴する。その眼にはリィン・オズボーンの敗戦を目の当たりにしてもなお揺らぐ事なき信仰が宿っていた。

 

「……そうだな。彼の者は確かにヘクトルにも引けを取らぬ破格の英傑、確かにやってのけるかもしれん」

 

 そんなアルティナの言葉をアルグレスも否定しない。聖獣たるアルグレスは知っている、女神が愛してやまぬ人の子達の中には時として破格と言う他ない英傑が現れる事を。ヘクトル・ライゼ・アルノールというその命と引き換えに暗黒竜を打ち倒した英雄の雄姿をアルグレスはかつて目の当たりにしたのだから。

 

「……二つ目の問題と言うのは?」

 

 光明が見えた事ですっかり浮かれた様子のアルティナとは異なり、不安を滲ませながらトワはアルグレスへと続きを促す。

 

「二つ目の問題点、それはこの力を用いて黒を顕現させる際に灰ではなくイシュメルガめが不完全ながらも巨イナル一の依り代となってしまう危険性が高いという点だ」

「ど、どうしてですか?だってその場合最終相克は灰の起動者であるリィン君の、ヴァリマールの勝利で終わったわけなんだからヴァリマールが巨イナル一になるはずなんじゃないですか?」

「順を追って説明しよう。七体の騎神へと力を分割されていた巨イナル一が本来の状態へと戻ろうとするものこそが相克である。故に本来であれば敗退した騎神は勝利した騎神へと起動者共々その力を吸収されるのが定めとなる。

 ここで問題となるのが黒の奴めは既に独自の精神生命体とでも言うべき存在となり単純にその器を滅ぼされただけでは消滅に至らぬという点だ。そして奴のその命は我が封じていた暗黒竜の呪いをも吸収した事で巨イナル一の中にある呪いと深く結びつきもはや呪いそのものと言って良い領域にある。すなわち理の外の力を持つ剣にてその命脈を絶たぬまま黒を顕現させた場合奴は依然として力の太源たる巨イナル一との繋がりも持ったままという事だ。その状態で大地の檻を以て奴をこの次元に顕現させるという事はすなわち巨イナル一の依り代となるための器をそのまま奴に与えてしまうということ。

 灰もまた己が起動者に感化された事で強き意志に目覚めたとは聞くがそれでも黒の執念には残念ながら届くまい。そうなれば巨イナル一が顕現する依り代となるのは黒の可能性が高い、そう我は判断する。せめてもの救いは灰が健在なため完全なる錬成には至らぬという点だろうがな」

 

 故に必然的に待っているのは二度目の死闘。搾りかすとなった灰を駆りリィン・オズボーンは不完全ながらも巨イナル一として顕現したイシュメルガを再び討たねばならないのだ。如何に黒が己が起動者を失ったとはいえ余りにも絶望的と言って良いだろう。

 

「それでもリィンさんなら……リィンさんなら勝ちます!あの人は負けたりなんてしません!」

 

 アルティナ・オライオンの中にリィン・オズボーンを疑うという文字は未だ存在しない。敗北したところを見せられたとしてもそれは変わらない。何故ならば子どもにとって親とは絶対的な存在で彼女は未だ親離れどころか反抗期さえも迎える前の子どもなのだから。

 

「……そうだな。人の子の強き想いは時として信じられぬ奇跡をも起こす。我はそれをよく知っている。故に不可能だとは決して言うまい。故に灰の起動者が、否、汝ら人の子らがその希望を掴み取るべく足掻く事を選んだのであれば全霊を以て助力しよう」

 

 大地の聖獣アルグレスはそんなアルティナの様を愚かと笑ったりはしない。余りにもか細い希望だからと諭すような真似もしない。人が人を大切に想う気持ちは決して理屈等ではないと知り、そんな想いが奇跡を起こす様を見てきたから。そんな奇跡が起こる様を彼自身も見たいと願うが故に。女神が遣わした聖獣は人の子の営みをそうして見守るのみだ。

 

「トワさん、これならきっと……きっと何とかなります!リィンさんが戻ってきたら伝えましょう!」

「……そうだね、アルティナちゃん。伝えてみようリィン君と皆に」

 

 喜色を露にするアルティナとは異なりトワの心に過るのは果たして夫が自分が生きるためにこんなか細い可能性に賭けるような真似をするのかという疑念だ。かかっているのは世界の存亡、失敗してしまえば文字通り世界が終わる。そんな状況に於いてそれでもたった一人の命を救うために可能性に賭けてみる、その事が間違いだとトワは思わないし、思いたくない。

 たとえそうして誰かが自分達のあずかり知らないところで大切な人を犠牲にしてめでたしめでたしなんて納得できない!と叫んで助ける事を選んで、もしも失敗した結果世界が滅びる事になったとしてもそれを非難するような事をしたくはないとそう考えている。

 だって大切な人なのだから。それを助けられる可能性が見えたのならそれに賭けて見たくなるのは人として余りにも当然の事ではないか。

 

 ーーー今度こそ俺は失敗するわけにはいかないんだ、踏みにじってきた数多の屍に報いるためにも

 

 だけどそれは自分のトワ・オズボーンの理屈だ。自分の最愛の夫を突き動かす理屈はきっと違う。大勢の人をそれが祖国のためだからと殺して来た自分には果たさないとならない責任があるのだと頑として譲らない姿が想像出来る。自分達のこの想いをぶつけてもあるいは彼を困らせてしまうだけなのかもしれない。

 

 ーーーそれでも、それでも私は貴方に生きて欲しいよリィン君

 

 だって大切な人なのだ。トワ・オズボーンはリィン・オズボーンを愛しているのだ。だから可能性が見えた以上はそれに賭けて欲しい。自分達のために生きて欲しいのだ。故に彼女もまた譲れぬ想いを英雄にぶつける事を選ぶ。夫を愛する妻として、人として当たり前の想いを。

 

 ーーーこれまで、私は多くの命を奪って来ました。多くの部下を死地へと送り死なせて来ました。もしも私は私の部下が私の立場になっていた場合その部下に対してこう言っていたでしょう「すまないが君のその命を祖国へと捧げてくれ。遺族には決して不自由はさせない。その死は決して無駄にはしない。だからその命を捧げてくれ」とね。そうしてきた男がいざ自分の命が秤に乗った途端その命を惜しむようでは筋が通らぬというものでしょう。責任を果たさなければならぬ時が来た、ただそれだけの事です。

 

 だが忘れる事なかれ。そうして数多の祈りを砕き突き進み続けたが故に彼は英雄と謳われるようになった男だという事を。かつてトワ・ハーシェルのワガママを聞き届けた時とは全く状況が異なるという事を。

 そしてそんな英雄を殴り飛ばしてでも人に戻そうとしてやったであろう無二の友であった男は、もうこの世に居ないのだということを……




地獄に堕ちたカンダタの善行を評価してお釈迦様は地獄から救い上げるための蜘蛛の糸を垂らしてくれました。しかしカンダタは自らの行いによってその糸をプッツリと断ち切ってしまいましたとさ。

クロウが生きていたら何が違ったかと言うとそもそもヴァリマールとオルディーネの相克が疑似相克状態で完全なる相克が果たされていない状態だったので大地の檻で封じたイシュメルガが巨イナル一として顕現したところでかなり不完全なる状態で顕現する事になっていたわけですね。それこそ魔女の眷属や大地の聖獣さんの援護貰った上で灰と蒼で最強のフュージョンした状態で挑めばまあ起動者であるパパボーンも失ったし行けるんじゃね?位のラインにまで。で、クロウが一緒に居る時のリィン将軍は割と楽天的になるところがあるというか「俺達が揃っていて出来ねぇことなんてねぇぜ!」モードになるのでいっちょやってみっか!モードになった可能性もあったよという話。でもクロウはもう死んだのでry
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