獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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リィン将軍「ユウナ・クロフォード?クロスベル自治州出身で帝国への反骨心強め?お、殿下の周囲に今まで居なかったタイプでええやん。殿下の視野を広げるには持ってこいやな!うーん、採用!!!」
ユウナ「何の変哲もない一般家庭出身の私が皇太子殿下育成の為の庶民サンプルとして英雄に選ばれた」      


受け継がれる獅子の魂

 年が明けた七耀暦1206年、遅れて北方戦役の殊勲式がバルフレイム宮にて執り行われた。

 殊勲式の場に於いて皇帝ユーゲントⅢ世は改めて自身の騎士の功績を讃えて、勲章という形によってそれに報いた。

 リィン・オズボーンの軍部に於ける声望は確立され、もはやその手腕を疑う者は存在し得なくなった。

 そしてノーザンブリア併合によって少将へと昇進したリィンはノルド高原会戦では昇進こそしなかったもののある意味では昇進よりも有り難い実を得る事が出来た。帝国の最高意思決定機関たる帝国軍統合参謀本部、そこに最高評議員として名を連ねる事となったのだ。帝国軍参謀本部は帝国軍の最高機関であり、そこの最高評議員に名を連ねるという事はすなわち、国防方針の策定に関われるという事を意味する。

 

 そして北方戦役とノルド高原の会戦という二つの戦いで有無を言わせぬ実績を叩きつけたリィンは万を辞して幕僚たちと共に作り上げた機甲兵運用のドクトリンを提出した。基より灰色の騎士に憧れる傾向のあった熱心な若手参謀の多くはこぞってこれを学び、ドレックノール要塞司令官ゼクス・ヴァンダール大将、ガレリア要塞司令官オーラフ・クレイグ大将の両名の援護射撃も加わり、もはや機甲兵のその有用性を疑う者は事此処に至ってはほとんどおらず、機甲兵を戦車と共に主力運用していく事が年が明けてからの最初の会議で決定されたのであった。

 そして機甲兵運用の第一人者たるリィン率いる光翼獅子機兵団が平時に於いてその教導を行う、教導隊の任を担う事も併せて決定した。

 

 仕事が増えて更に多忙となったリィンであったが、彼の仕事は他にもまだ存在する。

 次代皇帝たる皇太子の教育という決してなおざりにする事は出来ない極めて重要な仕事が……

 

・・・

 

「リィン先生!お久しぶりです!!」

 

 殊勲式の後の会食の場で尊敬の念を顕に若き皇太子セドリック・ライゼ・アルノールは久方ぶりに自身の師たる若き英雄と再会していた。その表情と瞳は憧憬と好意に満ちており、若き英雄が皇太子から並々ならぬ好感を抱いている事を列席者達に教えるには十分であった。

 

「セドリック殿下、ご壮健そうで何よりです。

 殿下の指南役を拝命していながら、長らくその任を務める事が出来なかった不明をこの場にてお詫びさせて頂きます」

 

 セドリックと呼び捨てにする事はしないし出来ない。今この場では師と弟子の関係ではなく、皇室に忠誠を誓った軍人と皇太子であるからだ。こうした場まで師と弟子の関係を前面に押し出しては、皇太子からの寵愛を良いことに増長していると列席者に受け取られるだろう。オリヴァルト皇子から全面的な信頼を受け、ただの君臣を超えた絆が存在するミュラー・ヴァンダールとて公的な場では必ず皇子の事を殿下、副宰相閣下と呼んでいるのだから。

 

「いえ、先生のご活躍は自分も聞いています。皇太子として、貴方の祖国への献身に心からの敬意と感謝を改めて示させて頂きます。本当にお疲れ様でした」

 

 若き皇太子はそうして丁重に礼を行う。

 その所作は見事なまでに洗練されており、動作の一つ一つにまで自信と覇気が満ちている。

 かつてどこか柔弱な印象を与えた繊細な少年の姿はそこには無く、溢れんばかりの力強さがそこには漲っていた。

 

「そう言って頂けると助かります。

 何にせよ、年が明けてからは改めて私が不在の間にどれほど殿下が成長されたか改めて確認させて頂きましょう」

 

「わかりました。この半年間僕もクルトも決して遊んでいたわけではないという事を証明して見せましょう」

 

「頼もしい事です、しかし2月にはトールズの入学試験がありますが、そちらの方の対策は万全ですかな?」

 

「ご心配なく。そちらの方も当然抜かり無くやっていますよ。

 「剣術等というのは結局のところ匹夫の勇、学ぶ事は決して無駄ではないが僕のような立場の人間であれば他にも学ぶべき事はたくさんある」という先生の金言しかと胸に刻んでいますよ」

 

 微笑を湛えながら答える皇子の姿には虚勢ではない、努力を重ねたものが持つ確かな自負が存在して居た。

 そんな教え子の姿にリィンは誇らしさと安堵を感じる。

 

「そうですか、それは何よりです。トールズに入学するまでの3ヶ月足らずの間ですが、私の出来る限りの事はさせて頂きます」

 

 3ヶ月後には目の前の皇太子はトールズ士官学院へと入学する事となる。

 そして自分と同様に多くの学友と共に、この国に於いて最高峰の教師達から教えを受けて大きく成長していく事だろう。結局自分が目前の皇太子を指導できた時間はほんの半年足らずの短い時間になってしまったが、それでも目前の皇太子は自分の課した地獄のような修練から逃げる事も無かったし、皇太子としての立場を振りかざすような真似もしなかった。そんな目前の教え子にリィンは確かな好感を抱いていた。不敬ながらもクルトと同様に、あるいは弟のようにすら。

 

「その事なんですが、実は先生にお願いが有るんです。

 トールズ入学後もご指導いただくわけにはいかないでしょうか?」

 

「殿下、そうまで私を買って頂ける事は嬉しいのですが……」

 

「お忙しい事は百も承知です!自分がとんでもないワガママを言っているのも!

 でも、それでも僕はリィン先生が良いんです!!!」

 

「……何故そこまで?トールズの教官方は皆優秀です。

 心配なさらずとも方々のご指導を受ければ、十分に殿下は成長する事が出来るでしょう」

 

 トールズ士官学院は皇族の男子が通う事となる名門中の名門だ。

 当然そこに居る教官達は皆この国に於ける最高レベルの人物ばかり。

 そう思えばこそ、リィンは娘のような存在である少女にもそこに入学する事を勧めたのだから。

 

「……初めてなんです。皇太子だからと身構えずに僕としっかりと向き合ってくれたのは、家族以外だと先生が。

 他の方々は皆僕が皇太子だからとどうしても遠慮していました。クルトだってそうでした、対等の友になってくれるとそう言ってくれたのに、いつしか友ではなく臣下として僕に接するようになっていました」

 

 皇太子という立場、それがセドリックにはまるで牢獄のように感じられた。

 皇太子なのに、男子なのにと散々に姉と兄と比較されて柔弱な事を馬鹿にされた。

 その癖自分が皇太子だから、そうした言葉を真っ向から言う事もできずに陰口を叩く。

 兄と姉はそんな自分をいつも助けてくれた。有難かったし感謝もしている。

 だけど、それが同時に惨めでたまらなかった。この国の皇太子だと言うのに守られるばかりの自分が。

 そんなセドリックにとって雄々しさに満ちたリィンは憧れであった。

 かの宰相の息子だからと向けられる期待、悪意、それらを総て飲み干して外野がどう言おうと自分はこの道を進むのだと言わんばかりの覇気に満ち溢れたその様子はたまらなく眩しく映った。

 自分もこの人のようになりたいと、そう思い、願った。

 

「でも、貴方は違った。どこまでも真っ直ぐに僕と向き合ってくれた。

 クルトもそんな貴方のおかげで再び僕に友として接してくれるようになった。

 貴方は僕にとっての憧れであり、目標なんです。

 だからどうかお願いします、リィン先生。

 僕が一人前になるその日まで今しばらく、ご指導頂けないでしょうか」

 

 そして事もあろうに皇太子はその場で臣下であるリィンに対して深く頭を下げる。

 どよめきがその場に溢れる。皇太子がリィンに憧れているであろう事は彼を指南役に指名したことからも明らかであったが、まさかこれほどまでとは思わなかったのだ。

 

「……どうか御顔をお上げください殿下。臣下である私に向かって殿下のような方がそう容易く頭を下げるものではありません」

 

「いえ、僕は今臣下ではなく、己が師に対して頼み込んでいるんです。ならば、教えを乞う側としてこの程度は当然でしょう!」

 

 

 セドリックは譲らない。これが実質的にyesと応える以外の選択肢を目前の師から奪い取る行為だと理解しながらも、周囲の空気や視線それら総てを利用するつもりであった。

 そんなたくましく成長した教え子にリィンは嘆息する。目前の皇太子が自身に頭を下げた瞬間にリィンからyes以外の選択肢は消えたと言っていい。

 何故ならば、断りでもすれば必然リィンには厳しい目が向けられるのだから。「皇太子殿下が頭を下げてまで頼み込んだというのにそれを断るとは!」と。皇太子からの寵愛を良いことに増長していると受け取られるだろう。

 だが、そんな風に自分から選択肢を奪い去った目前の教え子に不思議とリィンは不快感といったものは受けなかった。

 それはそうした自分の立場を利用した搦め手まで使えるほどに目前の皇太子が成長した事とそんな手を使ってまで自分の教えを求めるほどに慕われているというその事実に確かな喜びが存在したからだ。

 

「どうか、御顔をお上げください。殿下のお気持ちは十分に良くわかりました。

 そこまで言われるのなら、このリィン・オズボーン非才の身ながらもう今しばらく、殿下への指南を謹んで務めさせて頂きます」

 

「!ありがとうございます、リィン先生!!!」

 

 尊敬する師からの受諾の言葉、それを聞いた瞬間にセドリック皇子は弾かれたように顔を上げる。

 その表情は喜びに満ちあふれていた。

 

「ただし、私は何分多忙の身故教官職のみに従事する事は出来ません。

 その事はどうかご承知下さい」

 

「ええ、それは勿論!」

 

 喜びに満ち溢れた皇太子の様子を目に収めて出席者達はささやきあう。

 次代皇帝からの寵愛、ノーザンブリアに於いて示した軍人の枠に留まらぬ政治家としての力量。

 ギリアス・オズボーンという偉大なる革新派の指導者、その後継者はもはや完全に決まったと。

 帝国とそして自分たち革新派の繁栄に対する確信と共に祝杯をあげ、次代の指導者と積極的に交流を持とうとするのであった。

 

 かくしてリィン・オズボーンのセドリック皇太子が在籍する事となる特科Ⅶ組の主任教官への就任とその補佐役として彼の推薦で蒼の騎士クロウ・アームブラストの副主任就任が決まったのであった。

 

 

・・・・

 

(単純な成績順のみで決める……というのは余り得策ではないな)

 

 そして現在リィンはその皇太子の指南役、Ⅶ組主任教官としてクラスの編成をどうするかで頭を悩ませていた。

 優等生ばかりで周囲を固めるというのはセドリック皇太子の成長に余り寄与しないように思えた。

 何せそうした人物と接する機会など彼には山程あるのだから。

 それに既に同じクラスで当確しているクルト・ヴァンダールがそうした真面目な優等生なのだから、同じタイプとばかり接しても彼の視野を広げる事にはならないだろう。

 更に言えばそうした優等生程、どうしても「皇太子」という彼の立場に身構え、臣下として接してしまうだろう。友として求められていたクルトが気がつけば、そうなってしまっていたように。

 

 リィンの脳裏に浮かぶのは自分にとっての無二の相棒たる男。

 ああした対等の友こそがセドリック・ライゼ・アルノールの成長には必要なのだ。

 それだけではない彼は皇太子としてこの国を統べる以上、多くの事を知らなければならない。

 帝国に併合された属州出身者の思い、内戦で没落する事となった貴族の思い。それらを余すこと無く総てだ。

 とは言え、トールズ士官学院は名門中の名門。近年では志願者が倍増して更にその傾向は増している。

 そうした自分の親友たちのような変人(・・)共を求めて入学者リストを確認し続ける。

 

(まあ、こんなところか)

 

 担当する事となる特科Ⅶ組。そこに在籍する生徒は粗方定め終えてリィンは人心地つく。

 まず入学者の内皇太子を含んだ席次上位10名、これは全員当確だった。

 何せ口幅ったい言い方だが英雄たる自分が主任を務め、皇太子が在籍する事となる特科Ⅶ組というのはある種のブランドだ。故に入学の際の席次上位10名は当確とする事、これはまず確定であった。

 そしてそれ以外の人選に関しては幅広く集めた。

 

 地方出身、中央出身、ジュライ出身、ノーザンブリア出身、クロスベル出身、貴族、平民まんべんなく選んだ。

 皇帝という地位はすなわちそうしたこの帝国に属する総てを背負うという事なのだから。

 そしてそうした垣根を超えて友誼を結び、共に世の礎を築いていく事。

 それこそがかの獅子心皇帝の願いであり、トールズ魂と呼ぶべきものなのだから。

 

(願わくば、彼らも素晴らしき青春を送れますように……)

 

 そうしてリィンは立てかけてある写真を優しい瞳で見つめる。

 それは卒業式の後の打ち上げで撮った写真。リィン・オズボーンにとって決して忘れる事のない、掛け替えの無い青春の思い出が映し出されたものであった……

 

 

 

 




セドリック皇太子ってぶっちゃけ本校よりも分校に来たほうが成長に+になったんじゃねと思った結果、分校生はもう皆七組所属に。エイダとフリッツ、その他の優秀な原作モブ君といった優等生達もそこに加えてバランスが良い。

セドリック皇太子、クルト、アルティナ、アッシュ、ミュゼ、ユウナはそのクラスの中の第一班みたいな形ですね(同じ部屋で寝る事になる仲。勿論男女別だよ!)

ちなみに入学時の席次は
首席:セドリック殿下
次席:クルト
3位:アルティナ
4位:エイダ
5位:フリッツ
  ・
  ・
  ・
10位:ミュゼ(手抜きモード)

位の想定です。
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