「やっほーアーちゃん!久しぶりー!!!」
溌剌とした様子でトリスタ駅より現れた青髪の少女ミリアムは満面の笑みを浮かべながら自身の妹へと挨拶する。その表情はどこまでも親愛に満ちている。
「お久しぶりです、ミリアムさん。いい加減、そのアーちゃんという呼び方は辞めて頂きたいのですが……」
「ええーいいじゃん別に。だってアルティナって名前長くて呼びにくいしさ。アーちゃんの方だって別に僕の事をミーちゃんって呼んでくれても良いんだよ?」
「呼びません」
「アーちゃんってば真面目だなぁ。そんな風に肩肘張っていると疲れちゃうよ?」
「私としてはこれが通常運転です。むしろ、こうして貴方と接している方が疲労が蓄積されていくのですが……」
「またまたー本当はお姉ちゃんに久しぶりに会えて嬉しいのに照れちゃって」
「照れてません」
道行く通行人が思わずクスリと笑みを溢してしまうような心温まる姉妹の交流が行われる。
そうして一通りスキンシップが終わるとミリアムはキョロキョロと周囲を見出して
「うーん、それにしてもこうしてここに来るのは久しぶりだなー何だか懐かしいや」
この常に明るい少女にしては珍しく、どこかしんみりとした様子で言葉を漏らす。
「確か元々は当時学院にいると推測された帝国解放戦線のリーダーである《C》の正体を探るために来られたとか」
「そそ。結局クロウに上手い事してやられちゃったから任務としては大失敗に終わっちゃったんだけどね。
でもおかげでⅦ組の皆に会えたから、そういう意味じゃある意味クロウに感謝かな」
「ミリアムさんは、本当にⅦ組の皆さんの事を大切に思っているんですね」
「うん!みんな大好きだよ!アーちゃんはどう、友だち出来た?」
「……友人と断言できる程かはわかりませんが、同じ班の皆さんとはそれなりに友好的な関係を築けていると自負しています」
「そっかーそれを聞いて安心したよ。アーちゃんってば人見知りだから、クラスでポツーンと独りぼっちになって淋しくて泣いていないかともうお姉ちゃんは心配で心配で……」
「泣いてません」
やはりこの人は苦手だとそうアルティナは思う。
リィンにしてもトワにしてもクレアにしても彼女が深く接してきた人物と言うのは皆理知的な大人ばかり。
彼らに子ども扱いされる事についてはアルティナは納得する他ない、実際彼らに比べればひよっこも良い所なのだからーーー特に既に軍の重鎮たる将官にまで登りつめた保護者の場合尚更である。
しかし、目前の人物にお姉さん風をふかされるのはどうにも納得がいかない。
背丈も年齢もそうは離れていないし、座学の分野ではむしろ自分の方が上回っているのではないかとさえ思える。
なのに何故少々生まれたのが自分よりも数年早かったと言うだけでーーー等とアルティナの中で不満が燻りだすが、そんな妹の不満などまるで気にしていないかのような晴れ渡った青空のような笑みをミリアムは浮かべて
「にしし、それじゃあアーちゃん今日はよろしくね!姉妹水入らずで交流を深めるためにレッツゴー!」
「………」
意気揚々としたミリアムとは裏腹にどこまでも冷めた様子をアルティナを見せる。
そんな妹の様子にミリアムは不満げに口を尖らせる。
「もう、アーちゃんってばノリが悪いよ。そこは「ゴーゴー!」とでも言ってくれなくちゃ!」
「ごーごー」
「うーん、もっと気合を入れて欲しいところだけど。ま、良いか。
僕はお姉ちゃんだからね。妹の態度にいちいち目くじらを立てたりしないんだ!」
棒読みの見本のような抑揚の無い妹からの返事を受けてミリアムは苦笑する。
こうしてオライオン姉妹による学院散策が始まるのであった……
・・・
「それじゃあアーちゃんはまだ部活は決まっていないんだ?」
学院への道、そこを仲良く歩きながら2人の姉妹は言葉を交わす。
「はい、リィンさんやトワさんと同じ生徒会にしようと思っていましたら「自分自身の理由」を見つけなければ駄目だと学院長に諭されてしまいまして……」
「?そんなの自分が生徒会活動をやりたいからで良いんじゃないの?だから生徒会を志望したんじゃないの?」
「やりたい……?私は生徒会活動をやりたいのでしょうか……?」
「ええ……そこを聞かれてもお姉ちゃん困っちゃうなぁ。
それをやりたいのかどうかはアーちゃんにしかわかんないだからさぁ。
じゃあ逆に聞くけどアーちゃんはなんで部活動なら色んなところがあるのにわざわざ生徒会にしようと思ったのさ」
「それは……リィンさんとトワさんが在学時代に所属されていたからで……楽しそうにその頃の思い出を度々語られていたからで……」
にこやかに誇らしげに語る2人の様子を見てアルティナ・オライオンは漠然と自分もそうするべきだとそう思ったのだ。
なにせスポーツにも芸術にもアルティナには関心というものが存在しなかったから。
必然、アルティナは当然のように両親へと倣おうとした、さながら親鳥へと続く雛のように。
しかし、それでは駄目だとヴァンダイクに言われてどうしたものかと考えていたわけなのだが……
「なんだ、ちゃんと理由ならあるじゃん」
「え……?」
「リィンとトワがやっていて「楽しそう」だと思ったから。それだって立派な“理由”じゃないの?」
なにをそんなに悩んでいるのだろうかこの子はとでも言わんばかりの様子でミリアムはきょとんとした顔を浮かべながら告げる。
「それは“理由”なのでしょうか……?他者を納得させる場合に必要な理由というのはもっと合理的かつ客観性を持ったものが必要なのでは……?」
「アーちゃんってば考えすぎだよ。僕が調理部に入るときも一応理由は部長から聞かれたけど「美味しいものが大好きだからでーす」って言ったらあっさりとOK貰えたよ?」
笑いながら告げるミリアムとは対照的にアルティナはどこか呆気に取られたような表情を浮かべる。
「ま、そんなわけだからさ。あんまり難しく考えずにアーちゃんの思いをガツンと学院長にぶつければ良いんだよ!ガツンとさ!」
「私の思い………」
自分の想いが何なのかそれを問われればアルティナの答えはただ一つだった。
「私の中に一番大きな思いが何なのかと問われればそれはリィンさんのお役に立ちたいという思いです。
道具に過ぎないはずの私をあの人は“家族”だと言ってくれました。
だから私はそんなあの人の背中に追いつき、クロウさんやトワさんのようにあの人を支えられるようになりたい。
その背中に追いつくためにもリィンさん達が在学時代に経験された生徒会活動を私もやってみたいと思った……それが、きっと私の中にある思いです」
「バッチシじゃん!」
おずおずとした様子で口にするアルティナにミリアムはにこやかに笑いながら肯定する。
その上で念のためにとばかりに確認を行いだす。
「でもさ、聞きたいんだけどアーちゃんはリィンの話で生徒会に興味を持ったみたいだけど、他に何か興味を持った部活とかは無かったの?」
「それは……どうなのでしょうか?
私はリィンさんとトワさんの会話を聞いた時から自分も学院に入ったら生徒会に入るものだと思っていましたから」
リィンの足跡を追うこと、それはアルティナにとってはもはや無意識の内に決められた確定事項であった。
それを一度自分自身の理由を示せと言われて突き詰めて言った結果先程の“理由”が存在する事に気づいたわけだが、漠然と自分は生徒会に存在するものなのだと端から決めていたアルティナに当然ながら、他の部活に目を向ける余裕などあったはずもないのだ。
「そういう事なら、これから一緒に色んな部活を見て回ろうよ!今日は自由行動日なんだからちょうど皆部活で青春の汗を流しているところだろうしさ!」
「ですが私は生徒会に……」
入る事が既に
「入るとしても他の部活がどういう活動をしているのかは知っておくのは無駄にはならないよ!
というわけでレッツゴー!」
そうしてアルティナが“無駄”と断じた時間が始まる。
「どうだいアルティナ、水の中で身体動かすのって気持ち良いだろう?」
「まあ確かに悪い気分ではありませんね」
それはアルティナにとってリィンとトワから以前より聞かされていた生徒会での話以上に心動かされるものではなかったが……
「チェックメイトですね」
「え?アレ?嘘?マジで?」
「マジです」
「……強いな。流石と言うべきか。アルティナ、次は僕とやろう」
「構いませんが、手加減は出来ませんよ」
「言うじゃないか。こちらも本気で行かせてもらおう」
それでも過ごしたその時間は決してアルティナにとっては“不毛”なものではなく、確かな充実感を彼女に齎すのであった……
個人的に考えるチェスの腕前
ギリアス:指し手だのなんだとの例えられているし、前世ドライケルスでどうもチェスは帝国貴族の嗜みっぽいのできっと強い
ルーファス:どう考えても強い。
クレア:チェスやトランプゲームの類いは滅法強い事がⅢで書かれている
レクター:普通に強そう
リィン:ドライケルスブースト前までは普通。ブースト後は強い
トワ:頭いいし多分結構強い
アルティナ:演算能力とかが高い設定となっているのでかなり強い
ミリアム:弱い(確信)
これは家族でチェス大会やったらミリアムが終始ふくれっ面になりますね……