獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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アルタイル要塞攻略はアレです。
銀○伝でいうイゼ○ローン攻略、ベル○ルクで言うドル○レイ攻略みたいなもんです。
そして現在やっている章はエレボニアの黄金時代、つまりは黄金時代編です。


軍事的勝利は麻薬に似ている

【速報】共和国軍撃退!クロスベルにて帝国軍が圧勝!

 クロスベルより朗報が届いた。帝国政府は共和国よりの侵攻の憂き目にあっていたクロスベル方面にて我ら帝国が大勝を収めたと発表。悪逆なる侵略者によって脅かされていたかの地に平穏が取り戻された。

 

◆共和国侵略の橋頭堡を喪失◆

 悪逆にも我ら帝国の領土足るクロスベルへとその魔の手を伸ばしてきた宿敵カルバード共和国は6月10日、タングラム要塞へと侵攻。これに対し、クロスベル総督たるルーファス・アルバレア卿が自ら最前線にて迎撃。さらにこの年の離れた“盟友”の窮地に我らエレボニア帝国の英雄、灰色の騎士ことリィン・オズボーン少将が帝国最精鋭たる光翼獅子機兵団を率いて駆けつけ、戦いの火蓋は切って落とされた。

 巧緻極まる防御戦術を以て敵の攻撃を尽くはねのけるルーファス総督、積極果敢にして神速の速攻を以て侵略者達を散々に打ちめかすリィン少将と両者は開戦当初より素晴らしい連携を以て共和国軍を圧倒。形勢が不利と見るや、共和国軍は数々の卑劣な戦法を以て激しい抵抗を行い、2週間に渡る激戦となった。

 そして6月23日、最後の大博打へと打って出た共和国軍を相手にルーファス総督とリィン将軍はまるで示し合わせたかのように共に先陣を切り、将兵を鼓舞。悪逆なる侵略者の野望は帝国の誇る勇者達によって見事打ち砕かれたのであった。。

 侵略者を見事撃退した二人だったが、実は更なる深慮がそこには存在した。共和国との交戦の最中、ヴィクター・S・アルゼイド准将率いる別働隊が敵の侵攻の橋頭堡たるアルタイル要塞の奪取に成功。散々に打ち負かされて這這の体で帰った共和国軍も流石に交戦を断念、此処にクロスベルでの戦いは我ら帝国の大勝を以て幕を下ろした。

 

 

ーーー帝国時報特別号より抜粋

 

 

 クロスベルでの帝国軍の大勝が伝わると帝国は当然のようにお祭り騒ぎとなった。

 鮮やかな軍事的勝利と若き英雄程民衆を熱狂させる物はない。

 宿敵共和国を打ち破ったルーファス・アルバレアとリィン・オズボーンの両名はありとあらゆる美辞麗句を以て讃えられた。片やアルバレア公爵家の当主、片や革新派のリーダーたる鉄血宰相の嫡男。内戦の際には文字通り不倶戴天の仇敵として激突しあった両者が見事な連携を以て、侵略者たる共和国を打ち払い固い握手を交わし合うその様は帝国人に貴族派と革新派、そうした垣根によって争っていた時代が終わった事を何よりも雄弁に知らしめた。

 

 帝国政府はこの両者を始めとする今回の戦いの功労者達への恩賞を惜しまなかった。

 リィン・オズボーンは史上最年少の少将から中将へと昇進し、ルーファスと共に熾煌翼獅子最高綬章が授与される事となり、人々はこの若き二人の英雄を《帝国の双璧》として讃えた。威風堂々としたリィンと貴公子然としたルーファスというその外見から経歴も何かもかも対照的でありながらも、固い絆で結ばれた二人の英雄の友情に帝国民は夢中となった。女性たちの間ではルーファス派とリィン派一体どちらかという言い争いがしばしば起こったが、当の2人が固い友情で結ばれて居る事も相まって、最終的には落ち着くのが常であった。

 

 リィン・オズボーンとルーファス・アルバレア以外にも無数の英雄が居た。

 別働隊を指揮してアルタイル要塞を陥落させたヴィクター・S・アルゼイドは准将から少将へと昇進し、要塞を攻略するための決め手となる新兵器を開発したG・シュミット博士とその補佐を務めたマカロフ教官とジョルジュ・ノーム共々金翼獅子大綬章が授与される事となった。

 その他リィン・オズボーン指揮の下で戦った光翼獅子機兵団の面々、ルーファス・アルバレア指揮の下で戦った総督軍の面々でもその功績に見合った勲章が送られ、昇進を果たしていた。

 

 そして英雄は何も最前線で戦っていた者たちだけではなかった。

 ルーファス総督と総督軍の不在時にクロスベルにて暗躍していた共和国の工作部隊と人知れず暗闘を繰り広げ、そのテロを未然に防いだ功労者としてクロスベル警察、情報局、そして鉄道憲兵をそれぞれ率いたロイド・バニングス軍警少佐、レクター・アランドール少佐、クレア・リーヴェルト少佐とその部下たちもその功績を以て昇進を果たした。

 

 綺羅星の如く現れる無数の英雄*1に帝国の民衆は夢中となった。

 内戦の傷跡はどこかへ行き、彼らの多くにとって戦争とは娯楽(・・)となった。

 第二次クロスベル戦役、北方戦役、ノルド高原の会戦、そして今回の第三次クロスベル戦役。

 相次ぐ歴史に残る大勝を前に、彼らにとって戦争とは戦えば自分たちが必ず勝つものとなった。

 彼らにとっての戦争とは帝国の最新兵器が共和国の旧式兵器を圧倒し、帝国の名将が共和国の愚将を叩きのめし、帝国の勇者が共和国の惰弱な兵士を蹴散らすものなのだ。

 新聞や導力ラジオのマスコミもそれを後押しした。芸術分野、娯楽分野では英雄と戦争を賛美をするもの、戦意を高揚させるものが人気を博した。

 何せ帝国の優位を誇る行為については軍も政府も後押ししてくれる、熱した大衆に冷水を浴びせる行為よりも、大衆を煽る行為のほうがはるかに()であり、なおかつ売れる(・・・)のだから当然と言えよう。

 特に芸術分野に於いてはそれまでパトロンとなっていた多くの貴族が困窮に喘いでいることもあり、新たなスポンサーを見つけなければならない多くの芸術家がそれに同調していた。

 「共和国は既に砂上の楼閣である!」「今こそ我ら帝国は宿敵を打倒してこの大陸に秩序を齎す時である!」そんな威勢のいい文言が紙面を踊り、主戦論が帝国を飲み込みつつあった。

 

「良い気なものですな。一体このように威勢の良いことを述べている連中の中に、真に最前線で祖国の為に命を賭す覚悟のあるものがどれほど居るのやら」

 

 副参謀長を務めるゾンバルト大佐は吐き捨てるように安全圏で威勢の良いことを言っている自称愛国者たちを侮蔑する。

 百日戦役で父を失い、掌を返したようにバッシングを受けた彼にとっては一方的に軍人に期待を押し付け、自らは命を賭ける度胸も無い者達など最も侮蔑して止まぬ者たちでしか無いのだ。

 

「私も軍人です。ちやほやされて嬉しくないと言えばそれは嘘になりますが、そうして煽てに乗った結果今度は共和国の首都を我々だけで攻略して来い等と言われる事になってはたまりませんなぁ。いえ、司令官閣下ならば出来てしまいそうなのが怖いところですが」

 

 部下の毒舌を宥めるかのようなやんわりとした口調で参謀長を務めるローレンツ准将は苦笑を浮かべながら、複雑な心境を吐露する。

 

「余りに鮮やかに勝ちすぎたか……」

 

 珍しく参ったような口調でエレボニアの国民的英雄足るリィン・オズボーン中将はため息をつく。

 

 クロスベルを併合した事でエレボニアは超大国となった。そして三度に渡る共和国相手に収めた勝利は長年対等であった両国の間に明確な優劣が生まれた事を大陸中に知らしめた。

 そして人間の欲望というのは限りないものだ。相次ぐ戦勝を前に多くの帝国の民にとって、戦争とは外交の失敗が齎す“悲劇”ではなく“娯楽”となりつつあった。

 戦争とは外交の手段とされている。ただしそれはいわゆる最後の手段なのだ。

 それは一度戦争が起これば多くの人命が失われるという倫理的な問題も当然なのだが、何しろ長期的に見れば不経済(・・・)なのだ。

 短期的に見れば戦争の特需によって軍需を始めとした産業の活性化が起きるかも知れない。

 しかし、西ゼムリア大陸に於ける主要国は既に経済的に強く結びついている。

 それは緊張関係にあり、長年の宿敵たるエレボニア帝国とカルバード共和国とて例外ではない。

 現在不況に喘いでいるとは言え、それでもカルバード共和国という市場は帝国の資本家達にとって魅力的な存在であり、なればこそ両国の中継貿易の場となったクロスベルは大陸有数の金融都市として発展を続けたのだから。

 帝国にとって宿敵たる共和国を相手に優位を確立する事は悲願であった、だが共和国に崩壊されてしまっては困るのだ。金融と貿易によって深く結びついている共和国の混乱は帝国経済に悪影響を及ぼすし、難民が帝国に押し寄せることも考えられる。

 両国の貿易の中心地たるクロスベル併合等という暴挙(・・)に帝国が踏み切れたのも、そもそもその前の段階でディーター・クロイスの暴挙(・・)によって貿易都市としてのクロスベルの信用が地に堕ちたからに他ならない。

 そして軍備等備えていなかったクロスベルと違い、共和国には全盛期に比べ遥かに弱体化したといえ未だ健在な空挺師団がいくつも存在する。

 正式に侵攻するとなれば、当然彼らは死にもの狂いで抵抗する事だろうし、長年の宿敵だけあって共和国人の帝国統治に対する反発等というものはノーザンブリアとクロスベルの比ではない。トドメとばかりに敵国の奥深くに侵攻して制圧する行為は迎撃戦に比べて兵站に多大な負荷を要する事となる。共和国との全面戦争等というのは帝国にとって割に合わない(・・・・・・)ものなのだ。

 そもそも武力というのは実際に振るうのは下であり、本来であれば威圧して相手に譲歩させるためにこそ用いるものだ。共和国が躍起になって攻めて来たのも、既に共和国は帝国に頭を垂れて慈悲を求めねばならぬ立場になったという事を認められぬが故のもの。

 そして三度に渡る勝利によって、もはやそれは過去のものであり、帝国の覇権が揺るぎないものである事を大陸中に知らしめた。既に威を十分に知らしめたのだ。ならばこそ次にすべきは慈悲を示す事に他ならない。

 窮鼠猫を噛むという言葉が意味する通り、追い詰め過ぎれば思わぬ逆襲を喰らう事となるのだから。

 そう理性ある者ならば判断するところなのだが、如何せん今の帝国では多くの者が軍事的勝利という極上の美酒に酔ってしまっていた。そしてその酔っぱらい共に冷水を浴びせる事は、今のリィンでは物理的な距離が原因で不可能であった。何せ、今のリィンは……

 

「とはいえ、我ら軍人は皇帝陛下ひいてはその信認を受けた帝国政府の意向で以て動くのみです。

 我ら帝国がどう動くかは陛下と政府が決定すべき事であり、我らは現状皇帝陛下の勅命に従い、クレイグ大将閣下と共にこの地で共和国の再侵攻に備える以外にありますまい」

 

「そうだな、貴官の言う通りだアーヴィング中佐。最前線にいる我らではどうしようもない事なのだからな」

 

 信任する首席副官の言葉にリィンは頷きを以て返す。

 現在リィン・オズボーン率いる光翼獅子機兵団は援軍に来たオーラフクレイグ大将率いる第四機甲師団と共に奪取したアルタイル要塞へと駐留して共和国軍の再侵攻へと備えている。

 当然ながら此度の遠征軍が共和国軍の全軍ではない為に、国内に残っている部隊でこの要塞の奪還に動く可能性があったからだ。

 無論今まで散々虎の尾を踏んだ結果どうなったかを考えれば、その可能性は極めて薄いものの、だからといってせっかく手に入れた敵の橋頭堡をがら空きにするわけにも行かない。

 そしてクロスベル総督たるルーファスは何時までもクロスベルを空にしておくわけにはいかない、その結果このような措置となっていた。

 

 その結果現状リィンには本国で吹き荒れる共和国併合論について為す術がない。

 何せ現在リィンがいるのは最前線、本国との距離があまりに遠く離れているし、マスメディアの取材に応じて冷水をかけようにも、麗しの盟友たるクロスベル総督閣下が「今、我が盟友にして我らの英雄たるリィン中将は最前線にて敵に備えておられる。取材ならば彼に代わって私が応えよう。なので、どうか中将を敵に集中させておいて頂きたい」等と発言してこちらに来るマスコミを制限している始末。これでは政治的な手など打ちようもなかった。

 

「まあ我ら帝国の指導者は英明なるユーゲント皇帝陛下とあのオズボーン宰相閣下です。

 どこぞの国ではあるまいし、民意等というあやふやなものに惑わされる事無く必ずや正しき御聖断を下す事でしょう」

 

「……ああ、そうだな」

 

 共和国の現状を当てこするように告げた副参謀長の言葉に頷きつつもリィンの言葉にはある疑念が宿っていた。

 本当に(・・・)そうだろうかと。宰相たる父は本当にそんな常識的判断をしてくれるだろうかと。

 

「皇帝陛下と宰相閣下、そして副宰相閣下ならば必ずや正しき決断をして下さる事だろう」

 

 そうしてリィンは諦観を抱いた皇帝でも、鋼鉄の意志を宿す宰相でもなく、盟友たる副宰相に望みを託す。

 きっとあの人ならば、最前線で動けぬ自分に代わってなんとかしてくれるはずだと、そう信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨコセ……ヨコセ……我ノモノダ……貴様モ……」

 

 この要塞を落とした日より聞こえ始めた、胸の内より響く自らを深淵へと引きずり込もうとする悪意の結晶の如き囁き声をねじ伏せて……

*1
それも何れも美男美女ばかりである




まあゼムリア大陸のように国同士の貿易が活発で、経済が深く結びついていて、国際協定や国際法もきちんとあるっぽくて、使う言語も信仰する宗教も同じって状態で、人類社会は統一政体によって一つに纏まっていないとならないみたいなイデオロギーが主流ってわけでも無いのに、わざわざ大陸統一するメリットってあんまりないよね。外宇宙からの侵略者が来るから強力な統一国家を樹立しないとならないみたいな状態ならともかく(フラグ)
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