獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

3 / 118
軌跡シリーズの達人はジェダイのようなものと考えれば良い気がして来た。
ライトサイド(理)とダークサイド(修羅)があるし。

なので

二の型疾風:ヨーダが使っていた機動力重視のフォーム4(アタロ)
ヴァンダール流:オビワンが使っていた防御重視のフォーム3(ソレス)
アルゼイド流:アナキンが使っていたフォーム5(シエン)
原作リィンの七の型:極めるのにめっちゃ時間がかかり、極めないとただの器用貧乏と化すフォーム6(ニマーン)
そして修羅であるレーヴェやら黄金の羅刹さんは超攻撃型のフォーム7(ジュヨー)の使い手

みたいな風に考えておけば良さそうですね。


黄金の羅刹

 ルグィン伯との面談の機会は幸いにしてすぐに回ってきた。

 領邦軍の大幅な縮小と長年ラマール州を統治してきたカイエン公爵家の没落によって同州の治安が悪化。複数の猟兵団が暗躍しているという情報と、これの撃滅の要請が帝国政府より来たからだ。

 せめて3ヶ月は準備期間を貰えるというリィンの予想は些かに甘過ぎた事をリィンは苦笑と共に認めざるを得なかった。

 立っている者は息子でも使え、という事なのだろう。

 すぐさまリィンは旗下の第一連隊朱雀と元々ラマール領邦軍出身であり土地勘のあるアウグスト中佐率いる第三連隊白虎を動員。

 クレア少佐率いる鉄道憲兵隊及びレクター少佐率いる帝国軍情報局とも協力して、これを撃滅したのであった。

 そして帝都へと帰還するその前に、リィンは副官2人とアウグスト中佐を引き連れて目的の人物との会談の時間を設ける事に成功したのだ。

 

「お久しぶりです、ルグィン伯。本日はお時間を取って頂き誠にありがとうございます」

 

「何、予備役に回って暇なのでな。むしろ貴殿にわざわざ足労をかけた事を申し訳なく思っているよ。

 敗軍の将(・・・・)など、それこそ帝都に呼びつければ事足りるだろうにな」

 

 不敵に笑うその姿からは一片の覇気も損なわれておらず、敗軍の将という言葉から連想されるみすぼらしい様子とは無縁であった。

 

「まさか。そのような事等余りに弟弟子(・・・)として礼を失した行為でしょう」

 

「そういえば貴殿は今、ヴァンダールの剣に引き続き、我が師父たる《光の剣匠》よりアルゼイドの剣も授かっている最中との事であったな。

 兄弟弟子に関しては挙げだせばきりが無いほどに居る身だが、双方での弟弟子というのは私にとっても初めての経験だ。

 既に理へと至った身でありながら、貪欲にさらなるその高みを目指す貴殿のその強さへの飢えとさえ言える、その向上心。

 一体どこから来ているのか、良ければ聞かせてはくれぬかな?」

 

 口元を釣り上げながら、推し量るようにその羅刹とまで称された圧倒的な覇気をリィンへと叩きつけながらオーレリアは問いかける。

 傍で控えるアルティナとミハイルの両名は冷や汗をかきながら緊張した面持ちとなり、アウグスト中佐はかつての上官の変わらぬ有り様に懐かしそうに顔を綻ばせる。

 

「そう大したことではありません、ただクロスベルでかの《風の剣聖》と剣を交える機会があり、そこで思い知っただけですよ。

 《理》など所詮は通過点に過ぎぬ事を。自分の目指すべき至境にはまだ、遥か先があるのだという事を。

 そしてエレボニアの剣たるこの身に敗北は許されない。ならば更なる高みへと至るためにヴァンダールと双璧を為すアルゼイドの剣を学ぶというのは、当然のこと(・・・・・)ではないでしょうか?」

 

 叩きつけられた黄金のその闘志を受け流すかのようにリィンは微笑を浮かべて応じる。

 そしてそんなネジの外れた結論を当然の事のように言う弟弟子へとオーレリアは笑みを零して

 

「いやはや、これはずいぶんと的外れな事を聞いてしまったな。

 確かに、高みを目指して羽ばたき続けるなど当然のこと(・・・・・)であった。

 いかんな、どうにも小人閑居して不善をなすというのを地で行ってしまっていたらしい。

 そして、かつての部下が良き上官へと巡り会えた事を寿ぐとしよう。私も一安心というものだよ」

 

 チラリとかつて自分の下で働いていた部下の方へとオーレリアは視線をやる。

 その表情には部下を慈しむ聖母の如き慈愛へと満ちていた。

 

「ええ、自分は本当に恵まれております。

 黄金の羅刹に灰色の騎士と、1人だけでも得難き幸福と言える

 素晴らしき上官に2人も巡り会う事が出来たのですから!」

 

 そしてアウグスト中佐は先刻の猟兵団を撃滅させた、その見事なまでの手腕を思い出すかのように頬を紅潮させて興奮した様子で話す。

 基よりアウグスト・フェルデンツという男は単純な男である。

武門の名家フェルデンツ伯爵家に生まれ落ちた彼は、次男という立場から当主としての貴族間のしがらみの調停は父、そして次期当主たる兄が受け持ち、専ら彼は剣術を始めとした武に打ち込む事が出来た。

 その事から貴族というよりは武人としての気質が強く、武人として尊敬に値すると感じたものに対しては貴族、平民の別なく敬意をはらうし、逆にどのような大貴族であろうとも敬意に値しないと感じれば公然と非難を行う(彼の父と兄がその度に苦笑しながらフォローに回っている事は言うまでもない)、「粗にして野だが卑にあらず」を地で行く人物なのだ。

 それ故、内戦中敵対する立場であり、彼より年少の人物であり、貴族勢力からは「鉄血の孺子」「灰の孺子」と呼ばれて忌み嫌われるリィンを上官として仰ぐ事に彼は大した痛痒を覚えなかった。

 なにせリィン・オズボーンは理に至りし達人なのだから。武に携わり、自身もフェルデンツ流剣術の皆伝たる身としてそれがどれほど凄まじい事なのか、アウグストは良く理解しているし、実際にその異名に違わぬ武勇をアウグストは戦場で目の当たりにしている。

 故にこそ内戦時敵対していた彼からの是非部下に加えたいと言う誘いに乗る事に、アウグストはなんら抵抗を覚えなかった。

 あるいは彼の敬愛する上官たるオーレリアが尚も現役であれば、迷ったかも知れないが、そのオーレリアは内戦時の責任を取り予備役へと退き、父と兄からも「帝国の英雄たる《灰色の騎士》殿の下でお前が活躍してくれれば、貴族に対する民衆からの反感も多少なりとも和らぐであろう」と積極的に後押しされた事によって彼の返事からNoという選択は消えた。

 そうしていざ加わってみれば、司令官としての灰色の騎士の器量もまた素晴らしいものであった。

 此処にアウグスト・フェルデンツは自分より10近く年少の司令官に完全に心服したのであった。

 

 

「本来であればうちの妹を嫁にでも貰ってくれと頼むところなのですが

 オーレリア将軍は女性であり、リィン将軍の方は既婚の身。

 中々どうして上手く行かぬものです」

 

 半ば冗談で、半ば本気でアウグストは告げる。

 アウグストは妹煩悩な男で、「最低限俺に勝てるような男でなければフリーデルの夫として認めん!」等と公言している男である。

 そして一方のフリーデルはフリーデルで在学時代にされた数々の告白を「私は強い男の人がタイプだから、私を真っ向勝負で打ち破れたら考えてあげるわ♪」と一刀両断で斬り捨ててきた女傑である。

 それを思うとおそらく、彼女の恋愛対象足り得る存在はおそらくそう多くは存在しない事であろう。

 

「妹煩悩で知られている貴官がそこまで言うとはな、どうやら灰色の騎士殿は本当に良き将のようだな。

 改めて礼を言わせていただきたい、灰色の騎士殿。

 行き場を失っていた我が部下達にその武を奮う場を与えてくれた事をな」

 

 瞬間その場に居合わせた者は瞠目する。

 黄金の羅刹と謳われし、誇り高き女傑が真摯にその頭を下げたのだから。

 内戦の以後ラマール領邦軍は当然のように苦境に立たされた。

 当然の事だろう、何せラマール領邦軍は皇帝へと謀反を興した大逆犯クロワール・ド・カイエンの忠実な手駒であったのだから。

 加えてそれに加担した近衛軍は領邦軍の精鋭から選抜されたものであったが、中でもラマール領邦軍出身の者が過半を占めていたのも考えれば、その逆風は他の領邦軍にも増して凄まじい事となる。

 何より、領邦軍を維持するための最大のスポンサーであったカイエン公爵家が没落したとあっては、その勢力を維持する事は出来ず人員の大規模な削減に踏み切らざるを得ない状態であったのだ。

 

 そしてある意味でそこに目をつけたのがリィンであった。 

 端的に言えば、リィンはリストラの憂き目に合うこととなったラマール領邦軍の精鋭達に《光翼獅子機兵団》という再雇用先を用意したのだ。その数実に凡そ5000、光翼獅子機兵団の半数にも及ぶ数であった。

 当然、難色を示す者達も居たが、それらを総てリィンは「光翼獅子機兵団の兵士たちを正規軍、領邦軍の別なくこの帝国に於いて最も忠勇なる騎士達を集める事は陛下の勅命である」という皇帝の威光を存分に借りる事で押し通したのであった。

 故にこそオーレリアは目前の弟弟子へと素直に感謝していた。

 

 オーレリア・ルグィンは槍の聖女を凌ぐ武勲を求めて内戦へと身を投じた野心家だ。

 それは国家の為に存在する軍人というよりは、己が名誉の為に戦う武人としての側面が強いもので、ある意味では軍人たるリィンとは決定的に相容れない部分を含んでいる。

 しかし、それでも彼女は情を介さぬ冷血漢でも礼節を知らぬ野蛮人でもない。

 多くの兵士から信望を集めた紛れもない名将だ。

 故にこそ当然、自分の野心へと付き合わせる事となった部下たちの将来を慮る情とて持ち合わせている。

 行き場を無くしかけていた自らの部下達の面倒を引き受けてくれたリィンに感謝をするのは当然の道理と言えた。

 

「別段礼を言われるような事ではありませんよ。

 私は陛下の勅命に従い、領邦軍と正規軍の別なく優秀な人材を取り立てただけの事。

 当然の事です」

 

「そうか、当然の事(・・・)か」

 

 真実そう思っているのだろう、平然とした顔で応えるリィンをオーレリアは興味深く眺める。

 当然の事、なるほど確かに当然の事だろう。彼の部隊に正規軍と領邦軍の区別なく優秀な人材を集めるというのは皇帝直々に発表した事なのだから。

 だが、世の中というのは往々にしてそうした当たり前の事を現実にするのに多大な労力を擁するものである。

 実際今回その当然の事を押し通すためにリィンが払った労力と買った反感は決して少なくないものだろう。

 それは何も外部からだけではない、他ならぬ彼が率いる部隊の内部の方もそうだ。

 何せ領邦軍と正規軍はほんの数ヶ月前に殺し合った仲なのだから。

 誰もがアウグストのように単純な、もとい恨みを引きずらないような性格ではなく、幾ら内戦が終わったと言っても、それらの隙がそう簡単に埋まるはずもない。

 当然、領邦軍出身者と正規軍出身者が混在する事となる彼の部隊の中の軋轢とそれを統御する事となる困難さは通常の部隊の比ではないはずだ。

 それにも関わらずそうした内部の軋轢を豪腕によって纏め上げ、外部からの反発を実績を叩きつけて黙らせ、どこまでも雄々しく突き進んでいくその様はある人物を彷彿とさせるもので……

 

(なるほど、鉄血の継嗣とはよく言ったものだ)

 

 今更ながらにオーレリアはリィン・オズボーンがかの鉄血宰相の愛息子にして後継であるのだと認識する。

 さてそうなってくると問題なのは目前の人物が父親の手駒で終わる模倣作(デッドコピー)に過ぎないのか、それともその超克を目指す真作なのかという点だが……

 

「そしてこの宝剣は未だに完成させるのには重要なピースが欠け落ちた状態です。

 本日、訪ねさせてもらったのはその最後のピースを埋めるためです」

 

「ほう……」

 

「オーレリア・ルグィン伯爵、貴方に我が《光翼獅子機兵団》に加わって頂きたいのです」

 

 放たれたリィンの発言、それらはまるで雷の如き衝撃をオーレリア以外の列席者達へと齎した。

 

「な、正気ですか閣下!?」

 

 驚愕と共にミハイル大尉は己が上官に対して詰め寄る。

 

「至って本気だとも。

 皇帝陛下は我が部隊の設立に際して、領邦軍と正規軍の別なく最も忠勇なる騎士を集めた宝剣とすると仰っていた。

 ならば、《黄金の羅刹》を欠いては画竜点睛を欠くというものだろう」

 

「しかし、閣下。閣下は既にアウグスト中佐らを旗下に加える際にも三長官の方々と激しくやりあったと聞いています。

 この上、ルグィン伯まで加えるなど、もはや宣戦布告をしているにもふさわしいではありませんか」

 

「ああ、それはそうだ。私の目的はあの方々から軍部の主導権を奪う事にあるのだからな」

 

「なぁ!?」

 

 まるで夕飯の献立を伝えるかのように平然とした様子で告げるリィンにミハイルは完全に絶句する。

 アウグストは上官のその覇気に興奮を顕にして、アルティナは自分はただ准将の意志に従うだけだと淡々とし、オーレリアは口角をつり上げていた。

 

「今後、機甲兵部隊は間違いなく我が帝国の主力兵器となっていく。

 しかし、お三方はどうにも頭が固く、かつ内戦時に虜囚の身とされた事が余程頭に来たご様子。

 それ故現状、乗り手の育成が進んでいない事も相まって、機甲兵の配備が進んでいるのはオーラフ大将が率いる第四機甲師団、ゼクス大将が率いる第三機甲師団という一部の師団に留まっているのが現状だ」

 

 新兵器の導入というのは当然一朝一夕では行かない。

 使い手の育成もそうだが、まずそれを使う指揮官の側の意識改革が進まぬ事には。

 そして現在の帝国軍の三長官は長年の戦車乗りとしての経験と誇りから、機甲兵という新兵器の導入に及び腰な部分があった。

 無能な者が元帥まで登り詰められるはずもない、彼らは皆国の宝とも言える優秀な人物だ。

 しかし、どんな人間にも老いという者は存在する。そして老いというのは人から柔軟性と適応力というものを奪い取っていく。

 要は生粋の戦車乗り達は飛空艇という新兵器には対応する事は出来たが、機甲兵という新たな兵器には残念ながら適応出来なかったという事なのだろう。

 おそらく、それには自分たちを虜囚とした憎き貴族たちが用いた兵器という恨みも少なからず関係はしているだろう。

 機甲兵が完全に主力兵器となれば、必然早くからそれを使いこなした領邦軍の兵士、貴族将校たちが再び活躍の場を見いだせる事となるのだから。

 

 かくして帝国正規軍は大きく別れる事となった。

 片や積極的に機甲兵の主力兵器としての導入を推し進めんとする者達、片やあくまで戦車を主力兵器としての運用に拘る者達。

 前者の中心人物がオーラフ、ゼクス、リィンであり、後者の中心人物が三長官である。

 当然、権力を握っているのは後者である以上、前者の側が劣勢である。

 それでも曲がりなりにもやりあえているのは前者の側の三人に内戦時の“英雄”としての名声が存在するからに他ならない。

 

「お三方が退くまでゆっくり待つという手もあったが、往々にして拙速が巧遅に勝るのが戦いというもの。

 となれば、説得が困難な頭の固いご老人方に目覚めて頂くには有無を言わさぬ結果を叩きつけるしかあるまい。

 そしてそれには貴方の協力が必要不可欠なのです。オーレリア・ルグィン伯爵。

 何せ、現在エレボニアに於いて最も機甲兵の運用に精通しているのは貴方とウォレス将軍なのですから」

 

 更に言えばリィンが三長官を蹴落とそうとしているのは何もそれだけではない。

 帝国宰相の傀儡と化した三人の軍部への影響力を削ぎ落とし、自分たちが主導権を握るためである。

 機甲兵の有用性を知っている父が三長官への貸しを使い、導入を後押ししないのはリィンにとっては些か予想外ではあったが。

 

「そして、ウォレスが統合地方軍という重責にある以上、予備役となり()な私に声を掛けるのは当然の成り行きというわけか」

 

 クックックと愉快そうな笑い声を立てながらオーレリアは応じる。

 当然のように上を蹴落とそうとしている意図を告げたこと、そしてそのためにぬけぬけとこの自分を利用しようという意図を隠しもしない大胆な様は彼女にとって好感に値した。

 何せそれは、かつて頭の固い上を蹴落としてラマール領邦軍司令官の座を手に入れた彼女にとって、余りにも懐かしいものであったから。

 

「加えて言えば、貴方に抑止力となって頂く事を期待しているからです」

 

「抑止力?何に対してのだ?」

 

()に対してのです」

 

 涼し気な様子で告げられたリィンの言葉に居合わせた者達は皆目を丸くする。

 今度は豪胆なるオーレリアでさえも、その例外ではなかった。

 

「知っての通り、現在私には多くの特権が与えられています。

 祖国と皇帝陛下の御為、祖国に仇なすもの、巣食う寄生虫共を断罪する裁きの刃、それが私です。

 しかし、その私自身が暴走(・・)しないという保証は存在しない。

 そうなった時、副司令官たるアルゼイド子爵と共に私を止めてくれる存在が必要になってくる。

 そのためです」

 

 現在リィン・オズボーンは清廉潔白にして紛れもない法の守護者としてその剣に曇りはないという自負が存在する。

 しかし、未来永劫そうである保証はないのだ。基より自身に潔癖なところがあるのをリィンはよく知っている。

 悪と腐敗を嫌い、それらを断罪している間に気がつけばそれに酔いしれ、誰も住む事の出来ぬ一点の汚れもない純白の世界へと化していた、等という可能性も大いにあり得るのだ。

 自分の能力に相応の自負は当然あるが、それにしても自分が無謬にして完全無欠な存在であると考えるほどにリィンは思い上がっていない。

 無論、そうした暴走を防ぐためにも副司令官にアルゼイド子爵が居るのだが、自分とアルゼイド子爵が戦えば勝利の天秤がどちらに転ぶかはわからない以上、念には念を入れておくべきというもの。

 あらゆる点でオーレリア・ルグィンを招き入れる事は、多くの負債を補ってあまりあるだけの利点が存在するのだ。

 故にこそリィンにとっては至極論理的な思考の下導き出されたこの上なく妥当な提案であったのだが……

 

「ありえません」

 

 自己評価と周囲の人間の評価というのは往々にしてずれるのが世の中というもの。

 

「リィン准将が間違えることなどありえません」

 

 そんな事は有り得ない事なのだと、最も忠実なる副官をこの時初めて、己が上官にして兄でもあり、父でもある存在に対して反論していた。

 少女の瞳と言葉には揺らぐ事なき信仰(・・)が存在した。

 その信仰の告白を前にリィンはどうしたものかと頭を抱え、オーレリアは何処か面白そうにして、ミハイルとアウグストの2人はどこか遠い目を浮かべる。

 

「そうは言うがな、オライオン少尉。私とて人間である以上時にミスとてある。

 故にこそそのミスを糺してくれる方は必要なのだ。

 決定的なミスをしないにしても、そうした厳しい視線で見張る存在が居ない場合どうしても人間は仕事が雑になるものだ。

 それらを防ぐためにも伯爵のような方に入っていただきたいのだよ」

 

「……それは、ただ指示に従う私では閣下のお役に立てないという事でしょうか?」

 

「そうではない。私は単に求める役割の違いをしているだけだ。

 貴官は十分に私の助けとなってくれている、自慢の副官だよ」

 

 自慢の副官と言われた言葉にあからさまにアルティナはホッとした様子を見せてその矛を収める。

 

「申し訳ありません、伯爵。お見苦しいところをお見せした」

 

「何、気にする事はない。ーーー容易く1万もの兵を統率してのける“天才”も中々どうして“子育て”には苦労しているようだな?」

 

「ええ、何もかもが手探りの状態ですよ。それで如何でしょうか、私の手は取って頂けるでしょうか」

 

「ふむ、そうだな。基より余りの暇さ故に婿探しも一興かと旅にでも出ようかと思っていた身。

 他ならぬ弟弟子からの求めとあらば、応じるのも吝かではないがーーー」

 

 そこでニヤリとオーレリアはもはや堪えきれぬとばかりに抜き身の剣気を放つ。

 

「その前に一勝負応じてもらおうか。

 私に勝てたら、等という条件はつけぬ。

 だが、貴殿の持つ意志と覚悟、それを示してもらおう。

 灰色の騎士の器は、この黄金の羅刹という剣が収まるだけのものだという事をな」

 

「ええ、良いでしょう。

 元より言葉だけで貴方を説得出来る等とは思っていませんでしたから。

 そして示してみせましょう。

 皇帝陛下より賜りし、十七勇士筆頭の座は決して飾りではないという事を」

 

 叩きつけられた剣気、今度はそれに対してリィンは真っ向から応じる。

 此処に灰色の騎士と黄金の羅刹、帝国でも最高峰の使い手たる2人の剣士の激突が決まるのであった……

 

 

 

 

 

 




つまり今作は三作目なので

(初っ端でリィンにやられるルーファス)
ギリアス「じき代わりの息子がやってくる」
リィン「俺はヴァンダールの道から外れているような気がする」
トワ「2人で子どもを育てよう!」
ヴィクター「宰相、貴方を逮捕する」
ヴァンダイク「お前の帝国も一日限り」
ミュラー「選ばれし者だった!」

な展開が……!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。