獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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にわかにハリポタ熱が高まり、トム君を光堕ちさせていたが為に更新が遅れてしまいました。
多分リィン・オズボーンは組分けされる場合グリフィンドール。

例によって至宝だとか眷属関連でちょこちょこ原作と変わっている部分があります。


誓い

 休暇の初日、ホテルの自室に荷物を置くと一家三人でセントアークの有名所を散策。白亜の旧都という名前は伊達ではなく趣きのある町並みを存分に堪能する。

 そして二日目、散策に出るという名目でイストミア大森林を訪れたオズボーン一家はその奥地にて目的の人物との邂逅を果たしていた。

 

「お初にお目にかかります。魔女の眷属(ヘクセンブリード)が長、緋のローゼリア殿。

 こうして会談の機会を設けて頂けた事感謝致します」

 

 ドライケルス帝の記憶の中にあったその姿の違いに多少の面を喰らいつつもその動揺を表に出す事無く、リィンは丁重に挨拶を行う。

 

「汝が今代の灰の起動者か。話はエマから聞いておるーーー随分と無茶苦茶ばかりする起動者で困っておるとな。

 全くドライケルスの奴めと言い、ヴァリマールのやつが選ぶ起動者というのはどうしてそうも無茶をする奴ばかりが選ばれるのか」

 

 かつての獅子戦役の折の獅子心皇帝の事を思い出しているのだろう。懐かしみながらも魔女の長は嘆息する。

 

「己が身を可愛がっている男に真の勝利を掴み取る事など出来はしない。

 果たしたいと思う大望があるのならば、絶対に守りたいと願う愛する人が居るというのならば無茶の一つや二つ通して道理を覆して当然でしょう」

 

「ぬし……本当にドライケルスの奴めに似ているのう……」

 

「それはまあ、彼の御方の記憶を自分は継承しておりますので」

 

「おーうそうじゃったな。エマから聞いたぞ。

 全く先代の起動者の記憶をまるごと継承するなど本当に無茶をしおって。

 しかもこうして直接会ってみればわかったが、汝《呪い》にまで侵されているではないか。

 よくもまあそうやって平然として居るものだのう」

 

「自己を強く律してさえいれば、このような囁き声ただのうっとおしい雑音でしかありません。

 まあ確かに四六時中囁きかけてくるので少々気が滅入りはしますが」

 

 平然とした様子で言い放つリィンの様子にローゼリアは若干引きつった笑みを浮かべると同時にこんな規格外の存在の導き手を未だ半人前であった孫娘に任せた事を深く反省した。無理をしているとか強がっているとかそういう領域ではない、目前の男は本気で言っているのだ。ーーーなるほど、これは確かに逸材だ。かつての盟友の記憶を継承して居ながら、それに呑まれなかった事も納得する他ない。

 

「さて、ローゼリア殿。こうしてわざわざ長直々に出向いて頂けたという事はこちらの申し出を受け容れて頂けたととってもよろしいのでしょうか?」

 

「ーーーその前にヌシに問わねばならぬ事がある」

 

 先程までの親しみやすい空気から一変。

 魔女の眷属の長たるに相応しい風格をその身に纏いながらローゼリアはリィンを見据える。

 

「ヌシは一体何のために騎神という力を求めた。何のためにそれを振るう」

 

「総ては祖国とそこに住まう愛する者達の幸福と繁栄のために。その為にこの身と力は存在します」

 

「それはつまり、己が祖国の為であれば他国への侵攻も厭わぬという事か?」

 

「無論。それこそが軍人の役目なれば。それが我が祖国にとって必要だというのならば全力を以て遂行するのみです」

 

 一切の迷いの感じられない強い意志の宿った返答。

 それを聞いた瞬間にローゼリアは思わず顔をしかめる。

 

「ですが、それはあくまで必要ならばーーー例えば共和国が女神の七至宝の力を手に入れんとしておりその力を以てこちらへ侵攻をかけてくる可能性があるといった場合の話です。

 現在の情勢に於いてこちら側から共和国に侵攻をかける理由はありません。世界征服だの、大陸統一だのというのは幼少期に思い描く絵空事のようなもので、実際にそれをやるとなればむしろ不利益の方が大きいですから。

 既に経済、軍事双方に於いて共和国相手に我が帝国の優位は確立され、和平も結ばれました。この状態でこちらから仕掛けるなど正気の沙汰ではありませんよ」

 

「……経済だの軍事だのと言われてもいまいちピンと来んのじゃが、要はお前さんとしては自分の方から仕掛けるつもりはないという認識で良いんかの?」

 

「ええ、その認識に間違いはありません。

 そうーーー共和国相手の全面戦争など不利益の方が余りに多すぎる。

 それをやるなど狂気の沙汰としか言い様がないでしょう。

 だが、それをやろうと動いている者がいる。

 私はその理由を突き止めるためにこうしてお話を伺いに来たのですよ、ローゼリア殿。

 貴方は先程私を指して呪いに侵されていると評した。

 それだけではない、獅子戦役の折にはかの獅子心皇帝と槍の聖女とも轡を並べて戦った。

 そして先の内戦の際には貴方の孫娘たるエマ・ミルスティン嬢を灰の導き手として遣わした。

 ーーーまるで騎神の目覚めとその後に起こる戦いを予期していたかのように。

 貴方ならば知っているはずだ、この帝国の巣食う闇について」

 

「……それを知ってヌシは一体どうするつもりじゃ」

 

「先程言ったはずです、私がこの剣を振るうのは祖国とそこに住まう愛する者達を守る為だと。

 それを阻む存在が居るというのならば、全霊を以て斬るのみです。

 そのためにもローゼリア殿、貴方の知る総てを私に教えて頂きたい。

 そしてその上でかつて獅子戦役の時のように共に手を取り、立ち向かって欲しいのです」

 

 リィン・オズボーンからの返答、それを聞いてローゼリアは思案するかのように腕を組む。

 彼女の心の中にあるのは果たして目前の人物を信じても良いのかどうかというその点だ。

 虚偽を弄しているようには見えない。呪いに侵されながらもまるで痛痒を感じていないかのように平然としているその様は亡き盟友を彷彿とさせるものだ。されど必要が無ければと目前の人物は言った。つまりそれは、必要があればやるという事ではないか。そして女神の七至宝とは帝国だけに存在するものではない。

 それこそ先程例えに挙げていた通り、帝国の敵国もまたそれを手中に収めんと動いてもおかしくはない。

 そうなった時かつて起きた焔の至宝と大地の至宝の激突、それがまた繰り返されるのでは無いか、そんな不安がどうしても湧き上がってしまう。

 されどこれから起こる出来事はかの獅子戦役さえも上回る規模のものとなる世界の終焉に繋がりかねないことだ。それに対して自分達魔女の眷属のみで対抗できると思える程ローゼリアは思い上がって居ないし、楽天家でもない。で、ある以上目前の人物からの誘いはローゼリアにとっても渡りに舟という他ないもので……

 

「……汝を信じよう。我が友ドライケルスの意志を継ぎし、今代の灰の起動者よ。これより我らが里に案内しよう」

 

 その言葉と共にリィン達は魔女の里であるエリンの里へと案内されるのであった。

 

 

・・・

 

 エリンの里へと到着したリィン達は二手に別れた。

 リィンはローゼリアへと付いて行き、アルティナとトワはエマに連れられて里の中に存在する工房に向かった。

 ーーー曰く、自分の身を蝕む《呪い》を和らげるための物を作っており、その最後のピースを埋める者は対象となる人物への強い愛情を抱いている者が作るほうがより効果があるからとの事である。

 

「ーーー始めに2つの至宝があった」

 

 ローゼリアが語りだしたのは神話や伝説、お伽噺とされるようなお話ーーーそれが総て真実であるという途方もない話。

 女神より焔の至宝と大地の至宝を授けられた焔の眷属と大地の眷属の対立の果てに、二つの至宝同士が激突した事。

 大地を焦土へと変えた激しい戦いの果てに相打ちという形によってそれが決着し、《鋼の至宝》、《巨イナル一》呼ばれる二つの至宝が合わさってしまった全く別の存在へとなってしまったのだと。

 

 しかもこの《鋼の至宝》には相打ちとなる前に二つの至宝の中に存在した意志も引き継いでしまっていた。

 ーーーすなわち、敵を滅ぼせ(・・・・・)という意志。

 他ならぬお前たちが自分に求めた事だろうと言わんばかりにそれは接触した人間の闘争心を駆り立てた。

 

「それこそが《呪い》、ヌシならばその身を以て良く知っているじゃろう。ーーーそしてそなたのように強固な意志で以てそれを御せる者など当然ながら圧倒的少数派。そのまま放置すれば、生き残った総ての人間が呪いに侵され、人が滅びる事となるのも時間の問題と言える状態であった」

 

 あらゆる封印の試みが失敗に終わった大地の眷属と焔の眷属は《鋼の至宝》の完全なる封印を諦め、発想を転換させた。すなわち、その力を分散させ受ける器を用意すれば良いのだと。そうして七体の騎士人形ーーー騎神は生まれた。

 そうして焔の眷属と大地の眷属、相争った二つの勢力の調停に尽力した調停者たる初代アルノールとその血筋が二柱の聖獣に認められ、多くの民に請われる形で皇帝へと即位したーーーと此処で終わればただの昔話で終わるところだっただろう。

 

 しかし、この話には続きが存在した。

 七体の騎神に力を分割して尚、《鋼の至宝》の呪いは抑えきれなかったのだ。

 その結果が800年前の暗黒竜の顕現であった。

 大地の聖獣、緋の騎神テスタロッサ、英雄帝ヘクトル・ライゼ・アルノール、多くの犠牲と引き替えに暗黒竜は討ち果たされて、同時に大地の聖獣が自らの身を呈して《呪い》を封じ込めたが為に一時の平穏がエレボニアの地に戻った。

 しかし、払われた代償は大きかった。魔女達はその戦いで長を失い、帝国は偉大なる英雄帝を始めとした多くの勇士を失いーーーそして地精はその姿を消した。《巨いなる黄昏》という世界の終わりを予言するかのような不吉な言葉を残して。

 

 それからも帝国ではいくつもの戦乱が巻き起こった。内部にて無限の相剋を繰り返し、際限なく力を高めていく《鋼の至宝》の力は決して制御する事が出来ず、度々溢れ出し、人々を惑わし、闘争へと駆り立てた。かくして巨イナル騎士の伝承は生まれた。時にその呪いにより力に溺れた者が戦乱を巻き起こし、そんな戦乱を魔女の導きを受けた善なる起動者が収める。帝国の歴史はーーーその繰り返しであり、それが極まったのが250年前の獅子戦役であった。

 

「詳細についてはドライケルスの記憶を継承したヌシには今更妾が語るまでもあるまい。

 無二の親友であったロラン、最愛の恋人であったリアンヌ、その他多くの仲間を失いながらもドライケルスはオルトロスを打ち破り、獅子戦役を平定し、役割を終えた灰の騎神を封印した。

 じゃが、この話には続きがあってのう。命を落としたはずのリアンヌはその半年後蘇ったのじゃよ。死んだはずの人間が蘇るーーーどうじゃ、そなたならば何か思い起こす事があるのではないか?」

 

「我が父ギリアス・オズボーンは騎神の起動者であり、聖女リアンヌ・サンドロットと同様に蘇った。それが致命傷を負ったはずの父が生きていた理由であり、内戦の間姿を見せなかった理由でもある」

 

 ギリアス・オズボーンは内戦中動かなかったのではない、動けなかったのだ。

 恐らく父はカイエン公の行動をほぼ見抜いていた。その上でまんまと暴発したところを自ら鎮圧する事で貴族派を失墜させると同時に自らの名声を高めて、自身の独裁権力を確立するーーーそれが本来の予定だったのだろう。

 だが、その計算は狂った。自身の想定を超えた復讐者の弾丸にその身を貫かれた事によって。蘇るまでの間に2ヶ月の時間を要してしまったという事だろう。

 そう、父が騎神の起動者であると考えれば総てに説明がつくのだ。

 一軍人に過ぎなかったはずの父が宰相に就任するや否や老練な名政治家もかくやという手腕を見せたのも。致命傷を負ったにも関わらず甦った事も総て。

 

「そして十中八九そなたの父は帝国の呪いにその身を侵されていると考えていいじゃろう。

 かつて獅子戦役の折、オルトロスがその役目を果たしたように。

 地精の言う《巨いなる黄昏》を齎す為に動かされておるーーーそういう事じゃろうな」

 

 そうしてローゼリアは古びた黒い装丁の本を取り出す。

 

「これは《黒の史書》、アルノール家が保有しており、更には帝国に時折出現するアーティファクトじゃ。

 巡回魔女には外の世界の情報収集の他にこれの回収も任せておる。

 これはつい先月、エマが見つけた最後の史書でのう。苦労の果てにようやく解読を終えたのじゃよ」

 

 あーもうマジでしんどかったわ等と年寄り臭さ全開でボヤいた後にローゼリアは改めて口を開く。

 

 

「そしてこれにはこう記されておった。

 『ーーー贄により古の血が流されし刻、《黒キ星杯》への道が開かれん。

  穢れし聖獣が終末の剣に貫かれ、その血が星杯を充たす刻、《巨いなる黄昏》は始まらん』とな」

 

「古の血ーーーこの帝国で最も古き血脈と言えばそれは」

 

「うむ、調停者にして皇族たるアルノールの血筋じゃろう

 政に疎い妾ではあるが、それでもアルノールの人間がこの国に於いてどのような役割を果たしているか程度は知っておる。ーーー他国の人間によって害されるような事になれば、どのような事態となるかもな」

 

「もしも皇族弑逆の犯人が共和国の人間である等となれば皇帝陛下は無論の事、三殿下の誰であったとしても開戦の理由としては十分過ぎるでしょうね。

 帝国民は烈火のごとく怒り狂い、戦争に反対するものは皇室への忠義を持たぬ不敬者として罵倒される事となるでしょう」

 

 当然、共和国側は身に覚えが無いので全面的に否定するだろう。

 何せカルバード共和国には皇族を害して得られるメリットなど無い。

 今帝国を動かしているのはギリアス・オズボーンであり、皇族を害したところで得られるのは帝国民からの憎悪だけだ。

 もしも共和国にとって是が非でも死んで欲しい人間が居るとするのならば、それは一番手にギリアス、二番目にリィンと言ったところだろう。

 そう頭が働く者ならば勘づくだろう、何かがおかしいと。だがそれでも大多数の民衆は政府の発表をそのままに信じるだろう。

 何せギリアス・オズボーンは皇帝の忠臣にして寵臣なのだから。そのギリアスが皇帝に背く事などまず有り得ない。

 そして彼にはその気になれば白でも黒に出来るだけの権力が存在するのだから。

 情報局を使ってその手の工作を行う事も、証拠を捏造する事も朝飯前だろう。

 

「そして穢れし聖獣。これは呪いに侵された大地の聖獣と見てほぼ間違いないじゃろう。

 大地の聖獣はその身を以て呪いを封じておる。それが消え去る事となれば必然的にその呪いは外へと溢れ出す。

 そしてそれはこの帝国の総てを覆い尽くす事じゃろう」

 

「皇族弑逆により好戦的な機運が国民の中で高まり、そして呪いは人々の闘争心と好戦性を増幅させていくーーーそうなればもはやそれを止められる者は居なくなる」

 

「行き着く先は共和国との全面戦争というわけじゃな。しかも大地の聖獣が消え去ればもはや呪いを抑える存在は居なくなる。呪いに煽られるがままに人々は果て無き闘争を繰り返すーーー《巨いなる黄昏》とは良く言った物じゃのう」

 

 導き出された結論にある程度の説得力がある事をリィンは認めたが同時に、それと同じ位の疑念が頭を満たしていた。

 本当にーーーそうなのだろうか?あの父(・・・)が自分が跳ね除けられている程度(・・)のものを御す事も出来ないのだろうかと。

 更に言えば、もしも父がそうした呪いに侵されているというのならば、そんな父を信認して宰相の地位を任せている皇帝の態度は不可解だ。

 父を解任したところで、今度はかつてのオルトロスのように自身が呪いに侵されて操られるだけだと思っているとーーーそんな理由なのだろうか?

 

「終末の剣というのは?」

 

 疑念を表には出すこと無くリィンは話を続ける。

 

「わからぬ。じゃが、女神の遣わした聖獣は並大抵のことでは死なぬーーーどころか傷さえつけられぬ。

 力の問題ではない。女神がこの世に敷いた《理》の問題じゃ。地精がそれを開発せんとしている事はわかるのじゃが……ちなみに史書の別の箇所に於いては《根源たる虚無の剣》とも称されておったぞ」

 

「根源たる虚無……」

 

「古の言葉に於いては《Originator Zero》とも言うのう」

 

「………!」

 

 ローゼリアの言葉を聞いた瞬間にリィンの脳裏に過去の出来事が過ぎる。

『僕はミリアム!OZシリーズの最新作だよー!工房からおじさんのところに届けられて、おじさんからは君たち皆の妹になるって言われたんだ。よろしくねー!』ーーー初対面の時にそんな事を天真爛漫な妹は告げていた。

『OZシリーズ最終にして最高傑作』ーーー監視塔の攻略に於いて義娘は自身をそんな風に称していた。

 Originator Zero……OZ……まさかあの2人がそれ(・・)だとでも言うのだろうか。

 

「うん?どうした、何か気づいた事でもあったのか?」

 

「……いえ、あいにくと。ですが敵の狙いについては大まかに読めました。

 ローゼリア殿、一つお聞きしたい。地精の本拠地についてご存知でしょうか?」

 

「それに関してはこの800年探し続けたが手がかりすら掴めて居ない状態でのう」

 おそらくこちらの霊視を避ける場所に築いておるんじゃろうが……」

 

「わかりました。それではローゼリア殿の方はローゼリア殿のやり方で地精の本拠地を探って下さい。

 こちらはこちらで出来る限りの事は致します。

 皇族の弑逆を宰相閣下が目論んでいるというのならば、こちらはそれを逆用するまでの事。

 有無を言わせぬ形で証拠を抑え、皇族弑逆未遂の容疑で逮捕する。

 そして宰相閣下より地精の本拠地を聞き出し、少数精鋭を以て襲撃をかけて地精の連中を一掃する。

 そうすれば、当面の危機は凌げるはずです」

 

 最もそれでは根本的な解決にはならぬだろう。

 呪いの源たる《鋼の至宝》をどうにかしない事には、同じことが繰り返されるだけだ。

 だがしかし、それをなんとかするために世界に終わりを齎す等本末転倒だろう。

 根本的な解決法を探るのは、対症療法にて当座の危機を凌いでからだ。

 

「ーーー此処に盟約は交わされた。共に尽力するとしよう、灰の起動者」

 

「ええ、この世界を終わらせぬ為にも」

 

 

・・・

 

 ローゼリアとの会談を終えた後、リィン・オズボーンの胸中には激しい葛藤が渦巻いていた。

 根源たる虚無の剣とはOZシリーズの事を指すのではないか?そんな馬鹿げた考えが浮かんでしまったからだ。

 

(そんな馬鹿な……もしもそうだとするならば何故奴らはそんな最重要と言える存在を死ぬかも知れぬ戦場へと送っているんだ)

 

 そう、余りにも道理に合わない。

 それほどまでに重要な存在だというのならば、普通命の危機に晒される事が当然の軍人という任に就かせはしないだろう。

 つまり、ミリアムとアルティナは奴らにとっては例え失ったとしても代わりが効かない駒ではないということだ。

 だからこそ、自分の頭の中に過った考えは悪手であり悪魔の囁きだ。ミリアムとアルティナを殺す事でどうなるかや地精側がどう対応するかを見るーーー等と余りにも馬鹿げている、文字通りの愚考だ。

 

 そう自らに言い聞かせながら、リィンは2人が居るという工房へと歩みを進める。

 そうして店へと入ると、こちらに気づいたアルティナはその瞳を輝かせてトタトタとこちらへと歩いてきて

 

「リィンさん!これ、トワさんと一緒に作ったんです!少しでもリィンさんの助けになれればと思って」

 

 渡されたのは綺麗な水晶のペンダント。

 そしてはにかむ義娘の姿はリィン・オズボーンの頭を過った愚考(・・)を完全に吹き飛ばした。

 

「ーーーありがとう、アルティナ。大切にするよ」

 

 笑顔と共に告げた礼の言葉にアルティナは顔を輝かせながら、そっと何かをねだるようにその頭を差し出す。

 そんな可愛い娘の頭をリィンは優しく撫でてやり、トワ・オズボーンはそんな2人の様子は優しく微笑みながら見守る。

 

(そうだ、娘を犠牲にする親が一体どこに居るというのか)

 

 必ずや守ってみせる。この国の未来を。妻を。友を。そして娘を。

 護るべき温もりを確かにその手に感じながら、リィン・オズボーンは静かに胸の中で決意の炎を燃やすのであった……

 




「皇帝陛下の神名の下、宰相、貴方を逮捕する」
「私を脅すか獅子心将軍」
「皇帝陛下が処分を下す」
「皇帝はこの私だ!」
「まだ違う」

予言を防ぐってフィクションだと大体失敗するよね。
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