獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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皆さんシャーリィ+鉄機隊で後は光の剣匠入れればほとんど帝国オールスターな面子を相手取れるのか?と思ったことでしょう。
その予想は正しいです。そしてその事は当然彼女たちもわかっています。
現有戦力が足りない事は百も承知。ではどうすればいいか?その答えは本編で。


邂逅

 シャーリィ・オルランドは浮かれていた。

 それもそのはず、何せ刻一刻とこちらへと近づいてくる気配はシャーリィにとってずっと再会を夢見ていた想い人リィン・オズボーン、その人なのだから。

 ずっとずっと彼との逢瀬をシャーリィは夢見てきた。かつて歯牙にもかけられなかったその瞳を自分へと向けさせるために自分を磨きに磨いて来たのだ。まだかまだかと今すぐにでもこちらから会いに行きたい気持ちを必死に抑えて、ハーメル村跡地その前の広場で想い人の来訪を心待ちにする。そしてシャーリィ・オルランドが何よりも誰よりも恋い焦がれた英雄は、ついにその姿を現した。

 

「リィン!会いたかったよぉ!!!!!!!!!」

 

 満面の笑みを浮かべてシャーリィ・オルランドは想い人に向かって手を振る。

 

「ああ、貴様の望み通りに来てやったぞ、シャーリィ・オルランド。そしてすぐにでも父と同じところへと送ってやる」

 

 そしてそんな少女からの好意に英雄は裂帛の戦意を以て応じる。

 それがシャーリィ・オルランドにとってはたまらなく嬉しい。

 ああ、自分はかつてと違いこうして想い人が直々に自分を倒すために赴く価値のある敵になれたのだと言うことだから。

 

「さてこの後に及んで出し惜しみは不要だ。貴様の父の代役が居るのならばすぐにでも出す事だ。

 よもや貴様とそこの三人のみでこの俺を、我が兄妹を、盟友を、そして姉弟子を相手取れる等と思っては居まい」

 

 シャーリィ・オルランドの自身への執着をリィンは知っている。自身との一騎打ちに眼前の敵手が拘っている事も。

 だが当然、自分と一騎打ちを行おうというのならば自分の仲間を相手取るだけの戦力を他に用意しなければならない。

 そして黄金の羅刹と蒼の騎士の双方を相手取るには鉄機隊のみでは到底役者が不足している。

 恐らく本来であればシグムント・オルランドとその部下たる他の赤い星座の大隊長がその任を担うはずだったのだろうが、それは昨夜既に壊滅させた。

 ならば当然、その代役(・・)を相手は用意しているはずだった。

 

「アハハハ、勿論!クレア義姉さん達はともかくとして流石に羅刹のおばさんやクロウの相手はデュバリィ達じゃ荷が勝つだろうから、ちゃーんとパパ達の代役はこっちも用意させて貰っているよ。

 いや、代役って呼び方は失礼かな?だってあの人の方がパパよりも強いわけだし」

 

「ぐぬっ……」

 

「ほう、それは楽しみだ」

 

 シャーリィの言葉にデュバリィが悔しげに口をへの字に曲げ、オーレリアはシグムント・オルランドを超える代役とやらの存在に喜色を顕にする。

 そしてリィンも険しい顔を浮かべる。戦鬼シグムント・オルランドを明確に超える使い手等そうは居ない。リィンの脳裏に過るのはかの光の剣匠でさえ足止めで精一杯だった魔人の姿で……

 

「出てきて!第七柱のお婆ちゃん!」

 

「ちょ!だからその無礼にも程がある呼び方は止めなさいと一体何度言ったら……!」

 

 瞬間、世界が歪んだ。

 現れたのは鎧装束の女性。兜を被っているが故にその容姿は判別できないが美しい金色の髪がたなびいている。

 だが問題なのはその外見ではない。その存在感だ。

 その身から発せられるのは魔人に匹敵する程の圧倒的なまでの闘気。

 だというのに、その闘気は魔人の放っていた暴力的な物とは真逆。どこまでも清澄で透き通っている。

 圧倒的なまでの存在感を放ちながらも、意識をしなければその場に居ないと錯覚してしまうような透明さーーーそんな相反するはずの概念が矛盾なく同居しているのだ。

 明鏡止水、神気合一。武の世界に於いて至高とされる境地、それを超えて神域(・・)にまで踏み込んだ武神がその場には立っていた。

 

「槍の聖女リアンヌ・サンドロット……」

 

 あまりの衝撃にあろうことか、リィンは眼前の敵手から意識を外し呆然とした様子でポツリとその名前を呟く。

 言うまでもなくそれは英雄にとって本来であれば、到底有りえぬ行為だ。

 一瞬の油断が死に至る戦場でよりにもよって、何よりも警戒している怪物から意識を逸らす等と。

 だが、そうしてしまう程に現れた人物は余りにも衝撃的だった。

 一挙一動に至るまで無駄のない洗練された所作。

 理へと至った者でさえーーーいや至ったからこそ畏敬の念と立場も何もかもをかなぐり捨てて教えを乞いたい(・・・・・・・)という叫びが胸の内より溢れ出す。

 それ程までに目前の存在は余りにも隔絶(・・)していた。

 

「お初にお目にかかります、今代の灰の起動者ーーードライケルスの意志を継ぎし獅子の子よ。 

 その名は遠き昔に呼ばれた名。今の私の名はアリアンロード。偉大なる盟主より第七柱を拝命し、幻焔計画の奪還を果たさんとする身です」

 

 自らの今の立ち位置を告げるアリアンロードの言葉に忘我に陥っていた英雄の瞳に再び闘志が宿りだす。

 そして自らを見据える瞳の中に懐かしさを覚える闘志を感じ取り、アリアンロードはほんの少しだけ微笑を浮かべる。それでこそ(・・・・・)だと。まるで我が子の成長を寿ぐ母親のように。

 

「わからないな。何故貴方ほどの方が身食らう蛇等という犯罪組織に与する」

 

「至って簡単な事。国という軛に囚われては為し得ぬ事がこの世には無数に存在するからです。

 国という共同体が齎す利益、それを私は否定しません。国の齎す秩序という寄る辺無くして生きる事が出来るのは一握りの強者のみ。多くの無力な民草を守護せんとするならば国というものは確かに必要でしょう。なればこそ、かつて伯爵家当主であった私は祖国の行く末を託しうる王へとこの身を捧げました。そしてその決断は決して間違っていなかった。彼は獅子心皇帝と謳われる程の偉大なる皇帝となり、内戦によって荒れ果てた祖国に秩序を取り戻し、繁栄を築き上げました」

 

 誇らしさとともにアリアンロードはかつての記憶を懐かしみながら告げる。

 それはリアンヌ・サンドロットにとって決して忘れる事なき黄金の記憶だ。

 

「そしてその時にリアンヌ・サンドロットという帝国とアルノール家に身命を捧げる事を誓った騎士は死んだのです。今、この場に居るのはその残骸。つまらぬ未練ーーー譲れぬ意地によって突き動かされる一人の女。自らの望みを果たす為ならば、この国がーーーいえ、大陸そのものが焦土と化すことすら厭わぬ悪鬼羅刹、それが今の私結社の第七柱アリアンロードという存在です」

 

 しかし、それはもはや過去の事だとアリアンロードは断じる。

 獅子心皇帝に仕え、槍の聖女と謳われた高潔なる騎士リアンヌ・サンドロットは既にこの世に居ない。

 今、この場に居るのはその残骸に過ぎないのだと。

 

「……ッ!?」

 

「マ、マスター……?」

 

 常に無い主の様子にデュバリィは思わず動揺の声を漏らす。

 しかし、アリアンロードはそんな部下の態度もまるで意に介さぬように淡々とした様子で告げる。

 

「何をそんなに驚いているのです、デュバリィ。

 よもや私を聖者か何かの類だとでも思っていたのですか?

 だとするならばそのような思いは今すぐに捨て去りなさい。

 今の私はこの世に残した未練を果たす為ならば手段を選ばぬ亡霊ーーー悪霊の類です。

 貴方が真に誇りと共に光の道を歩みたいと願うのならば、早急に縁を断ち切る事です。

 生者が亡霊に囚われて良いことなど、有りはしないのですから」

 

「あ……う……」

 

 冷然と告げられた言葉にデュバリィは動揺を顕にする。

 しかし、アリアンロードは言うべき事は言ったとばかりにこちらを睨みつける男の方へと視線を向ける。

 

「さて、これが私の貴方の質問に対する回答ですが、今度はこちらからの質問ーーーいえ、勧誘です。

 灰の起動者リィン・オズボーンよ、結社へと所属するつもりはありませんか?貴方であれば執行者ーーーいえ、使徒とて十二分に務まる事でしょう」

 

「有り得ないな。寝言は寝て言う事だ。それとも、既に痴呆が始まったのかな?何せ私としても数百年単位で生きているご老人に会った機会など貴方を除けば一人しか心当たりは無い。だとしたら、申し訳ない事をした。早急に永遠の眠りに就かせて差し上げるので安心して頂きたい」

 

「マ、マスターに対してなんと無礼な!増上慢にも程がありますわ!!」

 

 主君に冷然とした態度を取られた事による動揺はどこへいったのか。

 リィンの挑発の言葉にデュバリィは面白いように反応する。

 そしてそんなデュバリィからの非難をリィンは鼻で笑う。

 

「大帝陛下と共に獅子戦役を終結に導いた槍の聖女リアンヌ・サンドロットには幾らでも敬意を払おう。

 だが、その残骸にまで敬意を払う謂れはない。まして未練を果たすために愛する帝国を焦土に変える事も厭わぬ存在などとあっては討滅すべき悪霊でしか無い。本来であれば教会の聖職者の仕事なのだろうが止む得ん。この私が女神の身許に送ってやろう」

 

 彼我の力量差を感じ取りながらもリィンはそう宣言する。

 何故ならば、目前に居るのは敵なのだから。

 そして獅子将軍リィン・オズボーンは帝国最強の騎士なのだから。

 例え相手がどれほど強大だろうとそれを前に怯むが如き柔弱さは許されないが故に。

 

「意気や良し。ですが、今宵私がこの場に来たのは露払いを務めるため。

 貴方の相手は私とは別に存在します」

 

「そうだよリィン!さっきから私の事無視して第七柱のお婆ちゃんばっかり見ちゃってさ!

 トワもリィンより一つ上だって話だし何なのリィンってば!年上趣味なの?」

 

 ぷくりと頬を膨らませながらシャーリィは踊り出る。

 こうなるから嫌だったのだとシャーリィは思う。

 アリアンロードは余りにも隔絶した存在だ。

 彼女を前にすればあらゆる武人は平静で居られなくなる。

 何故ならば、彼女は人の身でありながらも執念と修練によって神の座にまで踏み込んだ人類の到達点とも言うべき存在だから。

 武に携わる人間であれば決して無視する事が出来ない。

 だからこそ、シャーリィはできれば頼りたくなかった。

 だってそうだろう?想い人の視線が自分以外の女に釘付けにされている事を許容できる女が一体どこに居るのか?

 この人を前にすれば想い人の視線は自分ではなく彼女の方を向いてしまうーーーそう思っていたからこそ本来は此処で頼るつもりはなかったのだ。

 だが、それでも想い人との逢瀬を楽しむ為にはどうしても助っ人が必要だった。

 そしてそれは生半可な実力者では務まらないーーー何せ敵には愛しの英雄に匹敵する使い手が二人も居るのだから。

 そしてシグムント亡き状態でシャーリィが頼れる存在と言えばアリアンロード位であったのだ。

 彼女ならば、劫炎とは違い愛しの英雄を掻っ攫うような大人気ない真似はしないと信じられたが故に。

 

「安心しろ。シャーリィ・オルランド、貴様は今日この場で俺が殺す。

 それがあの内戦の日に貴様を生かす事を選んでしまった俺の責務だからな」

 

「!?うん……うん!うん!そうだよね!リィンは英雄だもんね!今のシャーリィを放っておけるはずがないよね!」

 

 叩きつけられる殺意と鷹の如き鋭き眼光。

 それを受けてシャーリィの瞳から涙がこぼれ落ちる。

 それは悲しさ故のものではない。歓喜の涙だ。

 歯牙にもかけられなかったかつてとは異なり、愛する英雄が自身を討滅すべき敵と認識している事。

 それがシャーリィは嬉しくて嬉しくてたまらないのだ。

 生きていて良かった!女神様ありがとう!とそうらしくもなく殊勝な気持ちにさえなっていた。

 

「となれば、聖女殿は我らの相手をしてくださるということか。

 フフフ……アーハッハッハハッハッハ!弟弟子孝行はするものだな!

 よもやこのような好機に巡り会えるとは!このオーレリア・ルグィン!全身全霊を以て武の至境へと挑ませてもらおう!!!

 往くぞアームブラスト!出し惜しみなどするなよ!そんな事をすれば即座に死あるのみだ!」

 

「ええいくそったれ!こうなりゃ自棄だ!デスティニー・ブルー!」

 

 我が世の春が来たと言わんばかりに喜びに溢れたオーレリアとは対照的に何故どうしてこんな事になってしまったんだと予期せぬ強敵を相手にヤケクソ気味にクロウ・アームブラストは己が切り札を解き放つ。そうでもしなければ一蹴されて終わるとわかるが故に。

 

 そして鉄機隊の三人と獅子の騎士の三人も昨夜と同様に向き合い

 魔竜は宿願の成就を前に涙を流しながら歓喜の咆哮をあげる。

 

「この瞬間が、ずっと欲しかった。ずっと、ずっと、求めていた……この時だけを。貴方と契るこの瞬間だけを求めてひたすらに走ってきた。今こそ受け止めて!私を見て!貴方の為だけに磨き上げた私の全てを!始めよう、私たちの愛の逢瀬を!」

 

「ああ、そして終わらせてやる。愛する妻に浮気を疑われたくはないのでな。

 厄介極まりないストーカーとの関係は今日この場にて綺麗さっぱり清算させて貰うとしよう」

 

 どこまでも冷然と英雄は応じる。

 そうしてシャーリィ・オルランドとリィン・オズボーンは三度目となる死闘を開始した。




転移なんてものが使えて現有戦力で足りないならそりゃ援軍の一つや二つ要請するよねという話。
ちなみにルトガーさんは今作だとこっち来てません。
パッパが私の息子は最強なんだ!精神で別のところに送っているからです。

というわけで第2ラウンドは
リィン・オズボーンVSシャーリィ・オルランド
オーレリア・ルグィン+クロウ・アームブラストVSアリアンロード
獅子の騎士VS鉄機隊です。

新Ⅶ組は置いてきた。修行はしたが正直この戦いには付いてこれない。
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