獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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ちなみにオズボーン家は金よりも時間が貴重な超エリート一家なので
家事の時間を短縮すべくRF社製最新の導力製品が自宅に揃っています。
食洗機とかルン○とかもあります。経済を回す高所得者の鑑ですね。


光翼獅子機兵団司令官の一週間

  

 

 深夜1時00分。1時間30分の睡眠を終えたリィン・オズボーンはそっと傍らで眠る最愛の妻を起こさぬよう留意しながら起床する。妻を見つめるその表情はどこまでも優しく、慈愛に満ちたものであった。

 常人であればたかだか一時間半程度の睡眠などでは到底足りぬものだが、リィンはその特異体質によってこれだけで事足りる身体となっていた。

 

 目覚めて軽く身支度を整えると司令官としての自習の時間だ。あらゆる技術は日進月歩だ、そして将官ともなると戦いのことだけ考えていれば良いというわけではなくなる。軍事だけに囚われず、政治や経済についての知識も当然必要となってくるからだ。

 

 4時になると出発のためにの入念な身体のストレッチ、軽い型稽古を40分程度行い身体をほぐし終えると100セルジュの道のりを軽い運動がてら走り、ヴァンダールの道場へと向かう。

 

「「「おはようございます!オズボーン師範代!!!」」」

 

 到着するとヴァンダールの門下生達からの活気に満ちた挨拶がリィンを迎える。

 早朝5時にも関わらず其処には寝ぼけ眼をこするような者は誰一人として居ない。

 

「おはようございます、リィン師範代」

 

「おはようございます、リィン先生」

 

「ああ、おはようセドリック、クルト」

 

 そして門下生の中で一際目立つ金色の髪をした少年、この国の皇太子たるセドリック・ライゼ・アルノールからの挨拶を受けると稽古が始まる。本来であれば皇太子を呼び捨てにするなど許されざる不敬だが、教える者が謙っては皇太子のためにならないという事でこの措置となった。無論、時と場はわきまえている。 

 この時のリィンはあくまで皇太子の指南役たるヴァンダール流師範代としてセドリック皇太子の指導を行うのがメインとなる。変な癖がつかないように気を配りながら徹底的に皇太子への指導を重点的に行う傍ら、クルトや他の門下生の指導も行う。

 

 そうして2時間の稽古を終えるとリィンは今度は行きよりも駆け足で10分程度の時間をかけて自宅へと戻る。

 自宅へ戻ると彼の愛する妻が作り、愛娘が並べた朝食が食卓の上にところ狭しと並ぶ。

 

「おはようトワ、アルティナ。いつも君達にばかり、任せてしまって済まないな」

 

「そんなの気にしなくていいよ、リィン君は忙しいし、私はリィン君やアルティナちゃんのためにご飯を作るのが好きなんだから」

 

「いや、忙しさで言えば君の方も大概だと思うが……いや、とにかくありがとう。いつも本当に感謝しているよ」

 

  トワ・ハーシェルは専業主婦というわけでなく、彼女もまた帝国副宰相の秘書官という激務を抱える身だ。

 それにも関わらず手早くいつも美味しい朝食を用意してくれる妻にリィンとしては頭が上がらなかった。

 そうして挨拶を済ませて、談笑しながら30分程度で都合6人前程用意された(その内の4人前分は総てリィンが平らげる)朝食を平らげると、手早く三人で片付けを行う。

 そして最後に出立前に愛する妻と出掛けのキスを交わせば準備は完了だ。

 8時10分、次席副官たるアルティナと共に将官用に用意された公用車へと乗り込み、光翼獅子機兵団の司令部へと向かう。

 道中の移動時間とてリィンにとっては無駄には出来ない貴重な時間だ。

 用意された帝国の代表的なクオリティペーパー3紙と最大のタブロイド紙である帝国時報、軍の広報、政府官報そして経済紙の合計7つへと手早く目を通す。そうして20分程度の時間を掛けて帝都近郊の都市リーヴスにある光翼獅子機兵団司令部へと出勤して準備を整えると9:00より正式に一日の業務がスタートする。

 

 司令官として部隊の運用計画を立て、兵を訓練し、規律を引き締める。

 平時に於ける司令官の最も重要な役割は兵を鍛える事にある。

 領邦軍と正規軍、そうした違いが遠い記憶の彼方となるように徹底的に兵をリィンは鍛え上げる。

 

 無論厳しくするだけでは人間は付いてこない。

 「誰も彼もがお前みたいに常に全力疾走で走り続けられる奴ばかりじゃねぇんだぞ」

 という親友にして副隊長たる男の助言を参考にして、それ以外のプライベートでの飲酒、賭博といったガス抜きのための行為については法より逸脱しない限りは多目に見た。

 

 「期待こそが人を育てます。私が今日の地位にまで至れたのも、ひとえにミヒャールゼン閣下が私に目を掛けてくださり続けたからです。閣下の期待に応えたい、そんな想いが私を成長させてくれました。帝国の英雄たる准将閣下に憧れる者はこの部隊には数多く存在します。そんな准将閣下より期待されれば、兵たちは自然とその期待に応えようと奮起する事でしょう」

 第四連隊玄武隊長たるモルト中佐の言葉を参考に、頻繁に直轄部隊以外の各部隊の教練も行い、向上した者を皆の前で賞賛し、伸び悩んだ者を励まし、隊員一人一人に「自分は君たちの努力を見ている」と伝える。過程ではなく結果で判断されるのが世の中であればこそ、その過程を褒められる事は結果を褒められるよりも大きな喜びを齎すのだ。

 失敗についても怠慢や無気力によるもの以外は大目に見る。「失敗をしても俺がフォローしてやるから気にするな」という態度を上司が取ってこそ、部下は心置きなく挑戦する事が出来るのだ。加えて失敗した事そのもの自体を叱責すると、失敗した事そのものを隠蔽しようとする輩が出るという問題も出てくるからだ。

 

 そうして種々の業務をこなすと12時。多くの人間にとって念願の昼食の時間帯だ。

 食事は日々を生きるための糧であると同時に活力でもある。

 腹が減っては戦は出来ぬという言葉など古来よりも兵士に良い食事を取らせる事の重要性を訴える言葉は多い。

 それ故に《光翼獅子機兵団》で出される食事はかなりの力を注いでいる。

 Ⅶ組が特別実習でガレリア要塞に赴いた際には戦時用の戦闘糧食が出されたが、アレは士官候補生達に対するお試しコースのために特別用意されたもので、駐屯する兵士が普段からアレを食べているわけではないのだ。

 

「と最もらしく理由をつけていますが、案外リィン殿(・・・・)が不味い飯が食べたくなかっただけではないのですかな?」

 

 参謀長たるローレンツ大佐は愛嬌のある笑顔を浮かべながら、冗談めかした様子で告げる。

 その巨軀の前にはそれにふさわしい特盛のハヤシライスが存在する。

 

「その通りだ。よくわかっているじゃないか、流石はローレンツだ」

 

 そしてそんな参謀長からの言葉にリィンは笑いながら応える。

 その前には通りがかった者達が思わず二度見するような量の料理が並んでいる。

 

「指揮官は兵士と共に在らなければならない。兵たちに粗食に耐える事を押し付けるならば、自分も粗食に耐えるべきだし、自分が美食にふけるならば兵たちにもそれを分かつべきなのだ」

 

 同じ釜の飯を食った仲という言葉があるように、共に食事を取るという行為が産む連帯感というのは案外バカにならないものだ。

 故に《光翼獅子機兵団》では士官、下士官、兵卒と区別すること無く同じ食堂で食事を取る事を推奨している。

 無論、うっとおしい上官が居てはせっかくの憩いの時間が台無しにしてしまうので、食堂で階級や立場の事を持ち出すのは厳禁だ。

 いわゆる無礼講の場という奴である。

 

「そして、貴方は粗食に耐えたくないがために、美食を分かち合う方をお選びになったと」

 

「そういう事だ。不満かな?」

 

「いえいえ、小官と致しましてはその方針に全面的に賛成するものであります。

 俺も嫌な思いを味わっているんだからお前らも耐えろという上司よりも、全員いい思いが出来て笑顔になれる職場にしてくれる上司の方がはるかに良いですとも」

 

 部下との談笑を楽しみながら40分程度かけて5人前ほどある昼食を片付けるとリィンは15分程度の仮眠を取る。

 昼食後の10~20分程度の昼寝は午後からの業務の集中力を高めるというレミフェリアのとある医学者の研究を元にしてのものだ。

 

 そうして午後の13時。昼食も含めて1時間の休憩を終えて再びリィンは午後の業務を行い始める。

 無論司令官ともなると当然ながら現場にだけ出ていれば良いわけではない。

 帝国政府、帝国軍参謀本部、情報局と言った各種方面との会議、調整、そして書類の処理等こなす仕事は多岐に渡る。

 戦時に於いてはとっさの対応力を、そして平時に於いては管理者としての長期的な視野を求められるのが司令官であり、将軍という職業だ。

 そしてその采配には常に数千数万の部下の命を左右する事になり、負ければそれまでの称賛が一転遺族からの罵倒へと変わる。これほどまでに過酷な職業というのもそうは存在しないことだろう。

 

 そんな中で弱冠19歳という本来であればペーペーの新米士官たる少尉に過ぎないのが当然の年齢でありながら、リィン・オズボーンはこの上なく上手くやっていた。

 それこそ黄金の羅刹をして“統率の天才”等と言わしめる程に。年齢には明らかに似つかわしくない司令官としての器量をリィン・オズボーンは既に有していたのだ。

 

 そうして18時になると定時となり一日の業務は一先ず終了となる。

 発足したばかりの部隊である《光翼獅子機兵団》の司令官たるリィンには想像を絶するような業務量となっている。

 しかし、それらを総てリィンはその卓越した処理能力を総動員し、副官たるアーヴィング大尉とオライオン少尉の協力も得ながら、余程の非常時で無い限りは定時以内に終わらせる。

 

 そうして通常業務が終了するとゾンバルト中佐を筆頭とした作戦参謀ら、そして特別顧問たるオーレリア客員将軍の協力を得ながら機甲兵運用に関する研究と戦闘教義の策定という業務を毎日凡そ2時間程行う。新兵器たる機甲兵は未だ明確な戦闘教義が正規軍には確立しておらず、オズボーン・ドクトリンとでも言うべき、機甲兵の運用戦略を確立することがリィン達の目的だ。

 これを完成させ、かつ実戦でその効力を実証させた時リィン・オズボーンらの軍部に於ける立場は盤石なものとなるだろう。そのための業務であった。

 

 夜20時。そうして二時間の残業を行い、完全に一日の業務を終えたリィンは手早く栄養補給を済ませると部隊の練武場へと向かう。

 

「来たか、リィン」

 

「お疲れ様です、先輩」

 

 出迎えるのはヴィクター・S・アルゼイドとその娘たるラウラ・S・アルゼイドの両名。

 朝とは違い、自分自身の剣を高めるための時間がこれからの時間であった。

 

「それではお願い致します、師範」

 

「うむ、それでは今宵も始めるとしよう」

 

「我が弟弟子は今宵は師父と剣を交える様子。ならばラウラ、貴殿の相手は私だな」

 

「……胸をお借り致します」

 

 アルゼイド流を学ぶと言っても、既にヴァンダールの皆伝に至り、理にまで至ったリィンの場合は当然とうの昔に基礎固めは済んでいる。

 そのため手とり足取り教える事などはせずに、必然手合わせをしながら実施で学んでいくというものになる。

 以前はリィンとヴィクターがそうして剣を交えているとラウラは見取り稽古と自主稽古をする以外が無かったのだが、5月よりオーレリア・ルグィンという帝国最高峰の剣士がもう一人加わった事で、それは解消された。

 リィンがヴィクターと剣を交える際にはラウラはオーレリアと、リィンがオーレリアと剣を交える日はラウラはヴィクターと交えるようになったからだ。

 

 そうして22時30分。2時間の稽古を終えたリィンは20分の時間を掛けて200セルジュの道をクールダウンも兼ねて疾走して自宅へと帰宅する。行きと違い、公用車を使わないのは当然深夜となるからだ。

 帰宅するとシャワーを浴びて、20分程度湯船に浸かりながらストレッチを行い、一日の疲れを癒やす。そうして軽く日常生活の雑務を終えると、寝室に居る妻へと互いに一日お疲れ様。おやすみと挨拶を行い、深夜23:30に眠りへと就く。

 

 これがリィン・オズボーンの月~金までの大まかな一日の流れである。

 

 土曜日は司令官業務がセドリック皇太子への教育へと置き換わり、司令部には夕方に少し顔を出すだけとなる。

 そうして夜中になると各種方面とのパイプ作りの時間となる。

 帝国の政界、財界、軍部に巣食う海千山千の狸共達主催の会食へと参加して、各方面へと顔を売る。

 

 そして日曜日、この日はリィンにとっては貴重な心の洗濯の時間、最愛の妻を筆頭とした家族との時間だ。

 この日ばかりはヴァンダール流師範代でも、皇太子の教育係でも、光翼獅子機兵団司令官でもないただのリィン・オズボーンへとなる。

 

 早朝六時、自習と身体を鈍らせないための軽い稽古を終えるとリィンは朝食の支度をする。

 無論、平日トワへと任せきりだった分の埋め合わせのためだ。

 そうして七時になり起きてきたトワとアルティナと共に朝食を取り終えると、三人で集中して家の清掃等を手際よく行う。

 

 10時までに身の回りの雑事を終えると、其処からは心の洗濯の時間だ。

 弁当を持って郊外にピクニックに行くこともあれば、博物館や帝国劇場、そして音楽鑑賞に出かける事もある。

 そうして余暇を過ごした後は夕食の時間だ。

 ハーシェル雑貨店に顔を出す事もあれば、クレイグ家に顔を出すことも、あるいは自宅にクロウやレクター、クレアやミリアムらを招く事もある。

 

 そうして八時になると其処からは夫婦の時間だ。

 2人分入るには十分な広さの浴室に一緒に入り、互いに身体を洗い合う。

 1時間ほどの長い入浴を終えると、2人は寝室で身体を激しく重ね合い、そのまま眠りにつく。

 

 これがリィン・オズボーンの一週間の過ごし方であった……

 




19:30頃のアルティナちゃん「どうやらそろそろ私はお邪魔虫のようですね。アルティナ・オライオンは先にお風呂に入ってクールに自室へと引っ込みます」
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