獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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辞めて!マクバーンとリィンが全力で激突したら戦いの場所になったオルキスタワーも燃え尽きちゃう!
お願い死なないでオルキスタワー!あんたが此処で死んだらあんたを立てるのにかかった建造費はどうなっちゃうの?
ローンはまだ残っている。ここを耐えれば結社に勝てるんだから!
次回「オルキスタワー死す」デュエルスタンバイ!

ちなみに魔剣アングバール使用時のマックさんは通常攻撃が大体リィン将軍のSクラ級の破壊力を持っています。クソゲーですね!まあリィン将軍も敵にするとクソゲーなのでチートとチートがぶつかり合う事でバランスが取れます。
共和国辺りは対消滅してくれることを心の底から祈る事でしょう。


理想を語る資格

 時刻はすでに深夜、空に浮かぶは優しく照らす月明かり。

 暦は未だ五月。未だ初夏とすら呼ばれていないこの季節は一年を通しても過ごしやすいと称される季節に他ならないだろう。

 だというのにクロスベル州の行政の中心たるオルキスタワーの屋上は今や灼熱の地獄と化していた。

 噴き出す爆炎。立ち上る炎の渦。火炎を従えながら君臨するは結社最強たる魔人《劫炎》のマクバーン。

 戦闘を開始してわずか数分、タワーの屋上はもはや爆撃を喰らったに等しい有様と化していた。

 魔人から立ち昇る黒き焔は空気中の水分さえもたちどころに蒸発させていき、周囲のものを溶かしてゆく。

 制御が出来なければそれこそ自らの足元さえも溶かしてしまい、たちまちのうちに魔人は地中への潜行を開始する事にさえなるだろう。

 当然、そのような場所で生命あるものが存在できるはずもなくーーー

 

「どうした劫炎、この程度か」

 

 否、ただ一人魔人を相手どり英雄が疾走する。

 その身に纏う鬼気によって魔人の発する焔を掻い潜りながら、閃光の如き光剣の乱舞をたちまちのうちに魔人へと浴びせていく。

 それらは一刀一刀が“必殺”と呼ぶに相応しい鋼鉄さえをも両断する剣戟。

 緩急を織り交ぜ、技巧の粋を凝らしたそれが魔人の振るう魔剣をすり抜けていく。

 生身で受け止めればたちまちのうちに致命へと至る事は疑いようがなかった。

 

「は、そりゃこっちの台詞だぜ英雄!()()()()()じゃこの俺には届かねぇ!!!」

 

 しかし、それは魔人の身に纏う焔によって阻まれる。

 その身に衝撃を与え、多少の痛みこそ齎したかもしれないがーーーそれでも皮膚さえ裂けず依然魔人の姿は無傷。

 それはかつて心臓を貫くことが出来た2年半前の戦いが魔人にとっては欠片も本気を出していなかったことを示す光景だ。

 

「そおら、今度はこっちの番だ!」

 

 最強とは即ち最も強き者。技などという小細工を必要とするのはすなわちそうしなければ敵を倒せぬ弱者が必死に研いだ牙であるーーーそう言わんばかりに振り下ろされた一撃は芸術的とさえいえるほどに洗練された英雄の剣に比べればどこまでも力任せの荒々しいものだ。両者の振るう剣を観賞用の剣舞として見たならば、百人中九十九人がリィン・オズボーンの振るう剣の方が美しいと評するだろう。

 しかし、これは互いの美しさを競う芸術ではなく、命の奪い合いである殺し合いである。振るう剣に求められるはどこまで効率的に敵を殺傷できるかーーーそれに尽きる。そしてその点で見れば、マクバーンの剣は圧倒的とそう評する以外になかった。

 

 ただ剣を振り下ろしただけでまるで砲撃が放たれたかのような爆炎が巻き起こる。

 本来は半径約四アージュ程度の殺傷圏内しか持たぬ筈の剣という武器から放たれた単純な一撃が、前方四セルジュを焼く広範囲攻撃へと昇華する。魔人にとっては本当に何気ないただ剣を振り下ろしたその一撃が英雄の放つ奥義焔の型・朱雀と同等の破壊力を有しているのだ。

 余りにも出鱈目すぎるその攻撃を前に英雄は瞬時に研ぎ澄まされた戦闘感覚によってその火勢が最も弱いところを見抜き、光刃によって炎を切り裂き突破。すれ違いざまに魔人へと攻撃をお見舞いする。

 しかし、それらは先の焼き直しとなる。そして劫炎の炎は着実に英雄の身を焼き削る。

 

 戦闘を開始してから英雄と魔人の攻防はひたすらにそれを繰り返していた。

 良く食い下がっているとーーーそう英雄を讃えるべきだろう。

 攻撃、防御、回避ーーー英雄の行うそれら総てに技の介在していないものは存在しない。全身全霊を振り絞り続けながら行うそれは一つ一つが極限の集中力を要する至難の業。一撃でも直撃を喰らえばその時点で終わり、余波だけでもその身を焼くそれはもはや人の形をした太陽を相手どっているようなもの。そう、怪物ならば打倒する事が出来るーーー人には例え不可能だったとしてもそれを為してこその英雄なのだから。

 

「どうした、このままじゃお前はジリ貧だぜ」

 

 だが劫炎のマクバーンはもはや怪物という枠さえ超越している。余りにも出力差が圧倒的過ぎる。

 英雄が鬼気を全開にして、技巧の粋を凝らし、振るう剣へと闘気を集束させてようやく魔人が何気なく振るう攻撃の余波を突破することが出来るのだから。

 攻撃を必死に回避し防ぎ続けているリィンと直撃を喰らっても大したダメージを受けず、傷もたちどころに修復されるマクバーン。

 精神にしても肉体にしてもどちらの消耗が激しいかなど論評にさえ値しない。

 このまま続ければリィン・オズボーンの側が敗亡の淵へと転がり落ちていくのは自明の理というものであった。

 そう、そんなことは誰に言われずとも英雄自身が理解している。

 

 ならばこそ

 

「ああ、そうだな。どうやらこのタワーに居た人間の避難は粗方完了したようだ。

 ならばこそーーー小手調べはこれにて終わりだ。往くぞ劫炎、これから先が貴様の望んでいた()()()()だ」

 

「へぇーーーそりゃまた……」

 

 楽しみだと言おうとした言葉は最期まで発せられる事はなく()()()()()()マクバーンは即座に纏う黒焔を頸へと()()()()()

 そして、英雄の振るわれた光刃はそれを突破して傷を負わせる。

 それの意味するところはただ一つーーー今の英雄の振るった攻撃は魔人の命に届き得たという事だ。

 もしも魔人がその身に過った勘に従って防御していなければその首は両断されていただろう。

 

「ククク………ハハハ……ハーハッハハハハハハハハハハハ!!!!

 

 そして久しく味わなかったそれを前にしてマクバーンは笑う。笑う。笑う。

 いつ以来だろうか、こんな気分はと感慨に浸りながら大いに笑う。

 

 先ほどまで届かなかった刃が何故突如として魔人の身を守る焔の壁を突破しえたのか?

 その答えは至って単純ーーー敵の防御を突破できるようにただリィンも出力を上げ、集束度を高めたとただそれだけの事である。

 無論そんな事は本来であれば出来る事ではない。すでにリィン・オズボーンは己が精神と肉体が耐えられる臨界点までその鬼気を高めている。

 故に、ただ徒に自らが繋がる騎神より力を引き出せば、待ち受けるは精神の決壊。その身は英雄から鬼へと堕ちるだろう。

 しかし、それはあくまでその鬼気を常時高めればの話だ。

 

 リィンが更なる高みへと至るために為した選択、それは瞬間的かつ爆発的に動作を行う箇所のみの鬼気を高める事だ。

 移動の瞬間にはその足へ、攻撃の瞬間にはその剣へと。口にすればそんな基本中の基本とさえいる単純な事。

 しかし、それは当然大きなリスクを伴う。

 瞬間的にかつ部分的にとはいえ、それはすなわち己が限界を超え続けているという事。

 限界を超えた代償はその身に反動となって現れる。

 そもそも人体というのは全体を使ってバランスをとるもの。

 一点のみを強化するような真似をすれば当然その反動が強化した以外の場所へと襲い掛かる。

 移動の度、攻撃の度に毛細血管が破裂し、筋繊維が断裂していく。

 発するその鬼気が自らの内臓を焼く。

 ……その苦痛は常人であればとうに発狂し、戦場にて果てる覚悟をした戦士でさえもがその場にて悶えて然るもの。こんな苦しみを繰り返す位ならば、いっそ一思いに殺してくれとそう願うだろう。

 しかし、それをリィン・オズボーンは胆力によってねじ伏せる。

 力で上回る目前の魔人に勝つにはこれ以外にないのだと。

 そして灰の騎神ヴァリマールはそんな己が起動者の万象をねじ伏せんとする()()()()()に応える。

 起動者の意志に呼応して騎神より流れ込む霊力ーーー物質を司る大地の至宝の力がその自壊していく肉体を修復していく。

 ならばこそ戦闘の続行には支障なしーーーただその戦い続ける限り繰り返される負傷と再生に伴う()()()()()()()()()()()

力なき者は死あるのみの戦場に於いて、なんと安い代償なのかと英雄は不敵な顔を浮かべながら、その魂を限界を超えて燃焼させる。

 

「良いぜ!期待以上だ!最高だぜ英雄!!」

 

 そしてそんな現れた自身を熱く滾らせてくれる益荒男を前に魔人は歓喜する。

 こいつが相手ならばあるいは自身の本気を受け止めてくれるのではないかとーーーそんな期待を抱いて。

 

「今の内に笑っていろーーーじきにそれも出来なくなる」

 

 英雄の心に燃え盛るのは何としてもこの魔人を討たねばならぬという使命感。

 劫炎のマクバーンは余りにも()()すぎるのだ。

 こと殲滅能力という点に於いてこの男に右に出る者はなく、おまけに転移等というふざけた能力も有している以上、何時この男が帝国の首都を襲撃して、都を灰塵にしたとしてもおかしくはないのだ。

 何せ目前の男が所属しているのはかつてリベール王国の首都を襲撃した結社なる秘密組織。

 目前の男がそんな事をしないと断言するには余りにも希望的観測が過ぎるというものだろう。

 実際今こうして目前の男はエレボニア帝国クロスベル州の行政の中心たるこの総督府オルキスタワーへ襲撃をかけて来たのだから。それだけで殺さねばならぬ理由は十二分にある。

 なればこそ、こうしてこの場で自らが巡り会えたことはむしろ僥倖。

 不遜でも自惚れでもなく今や自分こそが帝国最強の使い手なのだから。

 自分が討てぬのであれば、それは他の誰にも討てぬという事。

 小手調べと職員が退避するまでの時間稼ぎが終わった英雄は必滅の意志を高めていく。

 

「良い答えだ……さあ俺を熱くさせてくれ英雄!!!光の剣匠の時のような萎えるオチは勘弁しろよ!!!」

 

 そうして()()()()()はただただその戦いの規模と激しさを高めて、自分達以外のあらゆる物を灰塵へと変えながら、殺戮の舞踏を演じるのであった。

 

・・・

 

「不要って……どういう事……」

 

 忘我の面持ちでユウナは呟く。今目の前の人物が発した言葉を信じられないーーーいや、信じたくないとそういわんばかりに。

 

「あら……貴方は……なるほど、そういえばエリィが語って居たことがありましたわね。

 自分たちを慕ってくれる可愛い後輩が居ると自慢気に。なるほどーーーあなたがそうですのね」

 

 そしてそんな帝国の取るに足らない一士官候補生、されどいささか特殊な立場に置かれた少女に気づいたマリアベルは嗜虐的な笑みを浮かべる。さながらちょうどいい使い捨てのおもちゃを見つけたかのように。

 

「どういう事も何も至極単純な帰結でしょう。かつてこの地の支配権を巡り共和国と争ったのも既に昔の話。一年前のそこの総督閣下とご盟友の活躍によってこの地は正式に帝国の領土となりました。そしてそうなれば何時までも帝国に忠誠を誓わぬ“クロスベルの英雄”等、政府にとってみれば()()()以外の何物でもない。かといって直接処罰するようなことをすれば、ようやくこの地の人間に対しても信じさせる事に成功してきた生まれを問わず実力さえあれば引き立てる総督閣下の実力主義に対して疑念が浮かび上がる。だからこそ、()()()()にして()便()に人々の記憶から消え去る方法の方をこそ選んだーーーそうですわよね、ルーファス総督閣下」

 

「そんな……そんなのって……」

 

「何をそんなに驚いているんですか?こんな事予想して然るべき事だったでしょう。

 世界を動かすのは何時だとて一人握りの強者であり弱者は強者の敷く理に従うーーーそれがこの世の真理です。だからこそ我々はかつて零の御子という至宝の力によって帝国と共和国という強者に挑む道をこそ選んだのですから。ですがそれを彼らは否定しました。そうなればこの地は帝国と共和国ーーーいずれかの強者に従属する以外の道などあるはずはなく、そんな中で“クロスベルの独立”だの“誇り”だのと唱えても煙たがられるだけに決まっているじゃありませんか。そしてその道を選んだのは他ならぬ貴方の尊敬する彼らですよ?だって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を阻んだのですから」

 

 余りにも性急かつ強引でそして穴の多いやり方であれど、それでも独立騒動とを主導したイアン・グリムウッドとアリオス・マクレインがクロスベルという土地を帝国と共和国の支配から解き放つ為に動いたことは否定できない事実だ。

 もしも特務支援課やヘンリー・マクダエルが彼らに反発するのではなく、全面的に協力することを選んでいればーーー共和国と帝国が混乱から立ち直れていない間にクロスベルが一致団結していればクロスベルの独立は成っていた()()()()()()とマリアベルは嗤いながら告げる。

 そこには大望を打ち砕かれたものがそれを阻んだものに対する怒りがーーー込められては()()()、あるのはただただ()()()()()()()()だ。

 

「それは貴方たちが余りにも強引なやり方で多くの人を犠牲にしたからじゃない!」

 

 しかし、ユウナはそれに猛然と食って掛かる。

 ディーター・クロイスを自作自演で赤い星座にクロスベルを襲撃させ、罪もなき人々を犠牲にしたーーーどころかかの教団事件にさえ関わっていた。

 それに対して反発して逮捕に動いた支援課の行いはなんら非難に値するものではないと。

 

「お父様も言ったことですが、何も犠牲にせずに大望を果たす事など出来はしませんわよ。

 帝国の宰相閣下にそちらの総督閣下、そして獅子心将軍閣下が今日の地位を築くために如何程の血を流したことか。それでも帝国の民衆は無邪気に彼らを讃えているじゃありませんか、世の中等そんなものです。

 ()()()()()()()()()()()()()()なら皆喜んで()()()()()に捧げるもの。今私の父が非難されているのは手段を誤ったからではなく、ただ()()()()()その一点に尽きますわ。

 勝ってさえいればきっと()()()()()()も含めたクロスベルの民衆の大半はそれこそ今でもディーター大統領万歳!と父の事を讃えていたのではありませんこと?」

 

 マリアベルの語った言葉は詭弁だろう。何故ならば、彼女の言葉はロイド・バニングス達が彼女たちの邪魔をしなければ()()()()()()()()()という前提に基づいている。

 しかし、現実はそう甘くはない。零の至宝の力は確かに強大だが帝国には同じく至宝の力を得た騎神が存在するのだから。

 そして機体の性能が互角だというのなら勝敗を別つのはそれを操作する人間。

 敵を殺戮する事に長けた英雄と呼ばれる人種が駆る騎神と敵の命さえも思いやってしまう心優しい少女が操る神機ーーー激突すればどちらが勝つかは目に見えている。

 今のクロスベルが曲がりなりにも平和を保っていられるのは、同じクロスベル人の手によってディーター・クロイスらが逮捕されるというある種の自浄が働いた為だ。

 それがなければ帝国のクロスベルへの対応はより苛烈なものになっていただろう。

 そしてイアン・グリムウッドが行っていた碧の大樹計画も同様だ。何故ならば彼らは知る由もないが、帝国には因果さえも改変する鋼の至宝が存在するのだから。

 鋼の至宝の力によって碧の大樹計画も頓挫していた可能性は極めて高いのだ*1

 そういう意味で特務支援課の面々はやはり紛れもないクロスベルを救った英雄とそう言えるだろう。

 

「あ、う………」

 

 しかしその瞬間ユウナの脳裏に過ったのはそうした反論の言葉ではなく「帝国に併合された時はどうなるかと思ったけど、思ったよりもそう悪いもんでもないのかもしれないね」ーーーそう()()()()()で語った母の姿。

 それが「そんな事はない!」と反論を発する力をユウナから奪い去る。未だ彼女はただ無邪気に()()()()()()だけの未熟な少女に過ぎないが故に。

 マリアベルの揺さぶりに対しても揺らぐことのない、確固たる信念ーーー彼女の憧れた者たちが有しているそれに至っていないのだ。

 

 抉る。抉る。マリアベル・クロイスは嬉々としてユウナ・クロフォードの心を斟酌する事無く抉り続ける。

 それは厳しい現実を知ってその上で飛翔を願う激励などではなく、ただただそうするのが()()()()()。この無邪気などこか自分の心を苛立たせる少女の顔が歪んでいくその様にたまらなく溜飲が下がるから。

 その舌鋒を緩める事無く、少女の心を抉っていく。

 

「基よりクロスベルとはそういう地です。

 そんな呪われた地に生まれた者たちが真に誇り高く在りたいと願うならば、帝国と共和国という強者に縋らず己が足で立ちたいと願うのならばそれこそ“力”を手に入れるしかありません。そしてその道を彼らはーーーいいえ、()()()は否定しました。

 そうなれば残された道が強者に従う以外に残らぬ事など当然の事ではありませんか。だからこそ私は言っているのですよ、()()()()()()()()()()()()()()()

 強者の慈悲に縋って成り立つ公正さなど、強者の都合によって覆されて当然のことではないですか。だからこそ、貴方はそうして()()()()()()()()()()()()()生き方をこそ選んだのでしょう?」

 

「違う!そんなんじゃない!私がトールズに入ったのは……」

 

 少しでもクロスベルの人が幸せになれるようにと告げようとした少女の青臭いされどまっすぐな宣誓をマリアベルは遮り、嘲笑いながら告げる。

 

「中から帝国を変えるつもりだとでも?わからない人ですね、それをしようとして今飼い殺しにされているのが()()()()()()()()()じゃありませんか」

 

 瞬間、マリアベルはそれまでの愉快気な口調から一転して冷ややかな顔を浮かべて

 

「貴方のような才や力を持ち合わせていないどころか、その()()()()もただ彼らに憧れただけという()()()()()が、()()()()()出来なかった事を成し遂げられるとでも?思い上がるのも大概にすることです。力も覚悟も伴っていない偽善者の言葉など聞くに値しませんわ」

 

「あ、ああ……ああああああ……!」

 

 告げられた呪詛に対して抗うだけの気概をもはやユウナは持ち合わせていない。

 何故ならば、自身の無力さをこの上なく痛感させられていたのは他ならぬ彼女自身だったから。

 もがけばもがくほど自分が立ち向かうものの強大さを実感してしまったから。

 憧れの英雄の背中というずっと追いかけ続けてきた最後の支えさえ奪われしまえば、もはや立つことさえ出来ない。

 

「ユウナ!」

 

「ユウナさん!」

 

 そんなユウナへとクルトとミュゼが駆け寄る。

 帝国人である彼らに何が言えるわけでもない。

 そんなことは彼らとて百も承知だ。

 ()()()()傷ついた友人に駆け寄るのは帝国人だのクロスベル人だのといったくくりの前に()()()()()()()()()だと信じて。

 そしてそんな心暖まる光景を目にしたマリアベルは心底侮蔑しきった声で

 

「良かったですわねぇ。()()()()()()()のお友達に恵まれて。そうやっていつまでも優しいぬるま湯に浸かりながら、夢でも見ている事です。

 ああ、語ってはいけませんよ。理想を語る資格があるのはそれを実現するに足る力を備えた()()()()なのですから」

 

 あなたにはそれが決定的に足りていないのだと才覚に恵まれて己が大望の為ならば祖国も親も友人さえも切り捨てられるロクデナシは告げるのであった……

 

  

 

 

 

 

*1
それを抜きにしてもキーア・バニングスの精神が結局持ち堪えられず破綻するというかつての幻の至宝と同じ結果をなぞる事となる可能性が高い




煽リストの悪役を書くのは楽しいノーネ(善人には言わせられない事を容赦なく言わせられるから)

まあ皆さんおわかりかと思いますがマリアベルの語った言葉はぶっちゃけほとんどがユウナを煽るためのものです。
この人はそもそもクロスベルの独立とか割とどうでも良いと思っている方ですので。
なのでリィン将軍が遭遇した場合は「うるせぇ死ね」ってやります(そして多分その対応が最適解の女)

次回、折れてしまったユウナに代わり理想を語るに足る資格を有する男クロスベル総督ルーファス・アルバレアがマリアベルへと立ち向かう……!
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