獅子心将軍リィン・オズボーン   作:ライアン

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今話は色々と原作の設定を改変して独自設定のオンパレードの山です。


憧憬と屍の道

「-------------」

「嘘……嘘です。リィンさんがこんな……」

 

 黒焦げとなった灰の騎神。

 それを目の当たりにした事でクレアとアルティナの顔が一瞬にして蒼白と化す。

 震える瞳と何よりも喪失の恐怖に満ちたその表情は何よりも目前の光景が信じられない……いや、信じたくない事を物語っていた。

 アルティナ・オライオンにとってリィン・オズボーンは絶対的な存在である。

 不可能を可能にする、そこらの量産された似非ではない真の英雄。

 苦戦する事はあれど、それでも最後には必ずそれを乗り越えて見せる不屈の存在。

 ---それがアルティナ・オライオンがずっと見続け、何よりも尊敬して止まぬ自分の()であった。

 そのリィンが騎神まで持ち出しながら、ここまで一方的にやられるなどアルティナにとっては文字通り天地がひっくり返るような衝撃。

 そんな事は文字通りアルティナにとってはあり得ない事なのだ。

 

「嘘、嘘ですよねこんなの。お願いですリィンさん!冗談を止めて立ってください!!」

 

 必死の形相でアルティナは叫ぶ。

 己が父を。立って。負けないでと。

 ただ声援を送る事しかできない己が弱さを呪いながら。

 しかし、そんな言葉は届かない……否、ピクリと黒焦げになった騎神の指先が動き出す。

 

 そして

 

「……オ………オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

 雄たけびと共に立ち上がる。

 終わりではないーーー終わってなどたまるものかと限界などとうに超えているはずなのに気力を支えにして。

 

「!?リィンさん!」

 

 絶望に彩られていた少女の表情に希望の光が灯る。

 やはりこの人こそ不滅の英雄なのだとーーー無邪気に信じる。

 

「立て!クロウ!!まだだ!まだ終わっていない!こんなところで終わるわけにはいかないんだよ、俺たちは!」

 

 そして立ち上がった英雄が今度は己が相棒に対して呼びかける。

 出来ないなどとは言わせない、立て。立って共に戦え。お前は俺の親友なのだからそれが出来ない等とは言わせないーーーと脅迫にも似た重すぎる信頼をぶつける。

 

 そんな言葉をぶつけられてクロウの胸の中に去来したのはまずふざけるなという想いであった。

 自分が出来るからといって他人にもそれが出来るなんてナチュラルに思うんじゃねぇよと。

 

 思えばこいつは何時もそうだ。平気な顔で無理難題を俺に押し付けやがる。

 ーーー出来ると判断したからこそ信頼して任せているだけ?

 ふざけるな、前進だけが人生みたいな顔して突っ走る上に当然のようにこっちがそれに付いてくると信じやがって。

 こちとらお前のような英雄じゃないんだよ。国の為だの民の為だの、そんなの全く以て柄じゃないし、出来る事ならば一生遊んで暮らしていたいんだよ。

 ああ、もう嫌だ。疲れた。決めた。今度という今度こそ辞めてやる。

 贖罪だの義務だのもう知ったこっちゃねぇ。

 それが罪だって言うなら好きに裁いてくれよ女神様。

 もう俺は疲れたんだよ、本当に。

 身体中のあちこちが痛いし、無理して起き上がったところで状況は絶望的。

 どう考えたって勝ち目なんか存在しない。

 そんな事くらいわかっているだろーーーお前頭良いんだから。

 どうして成績はぶっちぎりに良かったのに、時々異様に馬鹿になるんだよお前は。

 ーーーしかもそんな無茶苦茶を毎度毎度無理やり現実に変えちまいやがる。

 平気な顔で全力で突っ走りやがって。 

 ---全く、本当に。

 

「……全く……毎度毎度、ついていくこっちの身にもなりやがれ!この親友(バカ)が!!!」

 

 気合の喝破と共にクロウ・アームブラストは立ち上がる。

 親友からの()()に応えて。

 

「全く……本当にとんでもねぇ上司だぜ。地獄に居る悪魔だって、きっとてめぇよりは優しいだろうさ」

 

「出来ない奴にやれとは言わんよ、俺は。お前だからこそ出来ると俺は信じた。そしてその信頼に見事お前は応えた。何か俺は間違ったことをしたか?なあ、親友」

 

 どうだ見たかこの野郎ーーーそんな意志を込めて笑いながらクロウは言い放つ。

 見るまでもないーーーお前ならばできると俺は信じていたとリィンもまた応える。

 絶望的な状況で尚立ち上がり、不敵に笑う二人の姿は彼らが紛れもない英雄であることを示す姿にほかならないだろう。

 

「ああーーー本当、大したもんだよお前たちは。

 アレを喰らって生きて居るだなんてな。誇っていい事だぜ

 そして、無駄に苦しませちまった詫びだ。

 今度こそ、楽にしてやる」

 

 しかし、事態が解決したわけではない。

 自身の必殺技を喰らいながらも生存した二人の勇者。

 それを目の当たりにした魔神は確かな敬意を払い、今度こそトドメを刺さんとする。

 そしてもはや気力だけで立っている二人には奥義を放つ力など存在しない。

 直撃を受ければ、今度こそ跡形もなく消滅してしまう事は疑いようがない。

 

「---待って、マクバーン。その二人をそのまま殺してしまうのは余りに勿体ないわよ」

 

 そんな魔神に対して静止の言葉をかけたのはクロウもよく知る存在、自らの導き手足る魔女ヴィータ・クロチルダであった。

 それは旧知の存在足るクロウを助けるためのものだっただろうか?

 魔女という肩書を持ちながらもヴィータ・クロチルダという女性は情深いところがある。

 旧知のクロウの命の危機に際して思わず助け舟を出したーーーという可能性は決して0ではないだろう。

 だが、それにしては彼女の纏う雰囲気はどこか悲壮さを感じさせるものであった。

 

「……そりゃ、俺自身そう思っているがよ。

 けどしょうがねぇだろ、こうなっちまったらもう俺自身でさえどうにもならねぇ。

 俺をこうした目の前の二人を消し飛ばさなければ人間の姿には戻れねぇ。

 まあ気つけの一発でも貰って記憶が戻れば、他の方法も()()()()かもしれねぇけどな」

 

 衰えぬ戦意で以て立ち上がった二人の勇者を、惜しむ気持ちを滲ませながらマクバーンは語る。

 その言葉にはもはや首を刎ねられて、身体を塩に変えられた怒りはない。

 先ほど放った自身の必殺を見事生き延びて、絶体絶命の窮地にあってなお諦めぬその不屈の雄姿に対する敬意がそれを上回ったのだ。

 だからこそマクバーンの方も本来であれば「それに免じてこの場は見逃してやろう」などと言ってやりたいところではあるのだ。

 だが、それは出来ない。

 あちらの頃の記憶がない状態のマクバーンにわかるのは、一度こうなってしまえば自分をこうした敵を殺さなければ人間の状態には戻れないーーーただ、それのみなのだ。

 そして当然だが三人が展開している世界を守るためにマクバーンを隔離している結界は何時までも保つわけではなく、それが消えてしまえばマクバーンはただそこに存在するだけで世界を侵す災厄。

 故にマクバーンとしても大変に遺憾なことに、目前の二人を殺す以外にもはや手立て等ないのだ。

 そんな理屈を結社の第二柱たる深淵がわからぬはずがないのだが……

 

「ええ、当然それは私もわかっているわ。

 だけどあなたにとっても最善は一方的にその二人を殺す事ではなく、その状態の貴方を満足させてくれる相手と思う存分にやり合って記憶を取り戻す事ーーーそうよね?」

 

「ああ、そりゃそれがベストさ。こちとらその為にこうやってお前らに協力してやっているんだからな。

 だけどそいつは現実問題不可能だろうがよ?あの一撃を喰らいながら立ったーーーああ、それは大したもんだと思っているぜ。嘘じゃない。

 だが、そこでおしまいだ。此処から俺を相手にやり合う事なんざどう足掻いたって不可能に決まっているだろうがよ」

 

 魔神の言葉は純然たる事実だ。

 今の二人は立っている事さえが奇跡と言える状態。

 此処から魔人に手傷を負わせる事も、食い下がり続ける事も如何に不可能を可能にする英雄と言えど絶対に不可能なのだ。

 ーーー今の状態のままでは。

 

「ええ、でもあの二人には二人も知らない起死回生の一手がある。

 するかどうかはあの二人次第だけどね。

 それを見届けずに終わらせてしまうのは余りにも勿体ないでしょう?」

 

「……面白ぇ。そんなものが本当にあるんだったら願ってもねぇ。

 お望み通り少しだけ待っていてやるよ。ただ手短に済ませろよ。

 そう長くは保たねぇだろ、この結界もよ」

 

 ほんのわずかな期待を滲ませながら、そうしてマクバーンは自分の中で猛る衝動を努めて抑え込む。

 そして魔女ヴィータ・クロチルダは決意に満ちた目を二人の英雄へと向けて語り出す。

 

「時間がないから手短に説明させてもらうわ。

 クロウ、リィン君。あなたたち二人は今、疑似的な相剋状態にある。

 既にその騎神が焔と大地の至宝が混ざり合った鋼の至宝の力を受ける器として作られた物だという事は婆様から聞いているとは思うけど、そうして別たれた鋼の至宝がまた一つに戻るために行われるものこそが相剋ーーーこの世界を終わりに導く壮大な蟲毒の壺ね。

 私はそれを何とか最小限の規模で済ませられないかと試みた。それが煌魔城で貴方たち二人の激突を導いた理由よ」

 

「だが、その結果は引き分けという形で終わった。

 そして俺たちは共に顕現したE.O.Vを倒したが、テスタロッサが吸収された形跡もない。

 つまりは失敗に終わったという事か?」

 

 突如として真意を語り出した魔女を警戒し、訝しがりながらも、リィンは問いかける。

 諦めないと吠えても状況は絶望的。両者が会話をしている間も頭をフル回転させていたが打開策は見つからず。

 もはや藁にも縋る思いであった。

 

「いいえ、言ったでしょう。あなたたちは既に疑似的な相剋状態にあると。

 確かにどちらか一方に完全に吸収されたわけではない以上、相剋が果たされたわけではない。

 だけどそれは貴方たちの間で完全に決着が付けられていないからこそ。

 ---つまり、真の意味で決着が付けば、その瞬間に相剋は果たされる。

 今、この場でもね」

 

「おい、ヴィータ……まさかお前が言いたいのは……」

 

  自らの胸の中に存在する後ろめたさーーーそれを誤魔化すように魔女はクロウの言葉をさえぎってまくしたてる。

 

「そして、その相剋の決着とはどちらか一方の起動者の明確な死に他ならず、相剋が果たされた瞬間に勝利者たる起動者と騎神は敗北した側の魂までを吸収して新生を遂げる事となる。

 灰と蒼は騎神の中では最弱だから、今の彼を相手どるには少々厳しいかもしれないけど、それでも今の状況に比べれば幾分かの光明は生まれるはずーーー得意でしょう?数万分の一の勝機を掴みとるのは?」

 

 そうして魔女はその瞳に悲壮な決意を宿して決定的な言葉を告げる。

 

「蒼の起動者クロウ・アームブラスト、灰の起動者リィン・オズボーン。

 この場で相剋を果たしなさい。それが蒼の深淵ヴィータ・クロチルダが貴方たちに示す事のできる、たった一つの起死回生の手段です」

 

 親友の屍で道を作る事。

 それこそが、閉ざされた道に活路を開く唯一の手段だと魔女は勇者へと囁くのであった……

 




理想の続きが見たいならお前は何を差し出せる。
魔女は甘く囁いた。屍で道を作れ。

当作における相剋はガチの喰らい合い。
決着をつける方法は片方の明確な死によってのみ。
そして負けた側は勝った側にその魂まで全て吸収されて文字通り勝者の糧となる。
つまり原作のように騎神だけ吸収して起動者を生かすとかは不可能なガチの殺し合いです。

過去の戦いはあくまで予行演習だったためその辺が不完全に終わり、負けた側は例のノスフェラトゥ状態へ。
リアンヌ様だけはその魂が一際傑物だったので、不死者に。
ヘクトル帝はテスタロッサ君が呪われてバグったため、そのまま死亡。
そしてリィンとクロウは煌魔城での時の激突によってヴィータ姉さんの狙い通りに見事疑似的な相剋を果たしていたので、後はどちらかが死ぬだけで決着がついたとみなされて死んだ側は生きている方へと吸収されるわけです。
以前感想欄で返答した「リィンとクロウは死んでも既に不死者とならない」の理由はこれです。
どっちかが死んだ時点でもう片方に吸収されるわけです。

ヴィータさんの努力は無駄ではなかったわけです!感動的ですね!!
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