たどり着いた場所は深い地の底。
途中途中に戦力をいちいち配置しても各個撃破されて終わるだけだと判断したのだろう、抵抗らしい抵抗を受ける事もなく黒キ星杯の最深部、そこにリィンたちはたどり着く。
「リィンさん!」
絶対的な信頼を抱く“英雄”、それを見たアルティナは目を輝かせながらその名を叫ぶ。
「アルティナ、無事で何よりだ。早速だがお前に確認したい事がある、お前を攫ったのはジョルジュ本人の意志によるものか、それとも何者かに操られた結果かどちらだ」
たどり着く前に殺されるという最悪の事態、それを避けられたことに安堵しながらもリィンはアルティナへと問い質す。それによって“友”への対処を決めねばならないと。
「ジョルジュさんはリィンさんたちを裏切ったわけでもだましていたわけでもありません!操られて利用されただけです!そこに居る地精の長、黒のアルベリヒによって!!」
「そうか、ならば良し。ジョルジュ、気にするなとは言わんが余り気に病むな。別段お前のやった行いで誰かが死んだわけでもないし、ましてやそこにお前の意志が介在していなかったのだとするのならばそれはお前の責任ではないーーー償わせるべき存在は別に居る」
友に対する温かみの宿った視線から一転、リィンは苛烈なる視線を犯人たちへと向けて
「宰相、貴方を逮捕する」
「ほう、罪状は?」
実の息子より叩きつけられた闘志、それに対してギリアスは何ら臆する事無く不敵な笑みを浮かべる。
「先帝ユーゲント陛下弑逆の罪、そしてセドリック皇太子殿下誘拐の咎で。
帝国宰相と言えどーーーいいや帝国宰相ならばこそ死以外には償いようのない大罪だ。
そしてそこの地精の長、貴様にはその共犯の容疑がかかっている」
「ククク、皇帝弑逆の罪か。確かに事実無根とは言えないがそれを言うならば貴方も同様ではないかね将軍閣下。
貴方は黒の史書の予言をご存じだった。そしてその上で此処で乾坤一擲をかける為にあえて皇帝を見捨てる事を決めたのだ。それが
我々が皇帝を殺したというのならば貴方は皇帝を見殺しにした、違うかね?」
アルベリヒの言葉を受けてクルト・ヴァンダールの眼が驚愕で見開かれ、兄弟子の方へと向けられる。
嘘だと言って欲しいとその瞳は語っていた。
「---その通りだ。陛下は我が子を守る為に自らを捨て石にすると覚悟し、貴様らが陛下を殺し、私はその犠牲を必要なものとして割り切った。私が臣下として主君を諫める務めを果たさなかった、それは事実だ」
だが弟弟子のその希望を叶える事はリィンには出来ない。
何故ならばリィン・オズボーンが皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノールの死を已む得ないものと割り切って切り捨てた事は事実なのだから。
「だがなればこそ、
総ての元凶たる黒の騎神イシュメルガ、奴を討ちこの帝国を呪いから解放する。
それこそが俺が
だが優先順位を間違えるな。貴殿が此処に来た目的、それを思い出せ」
「………了解です」
動揺した心、それを理性によって律してクルト・ヴァンダールはどうにか目前の相手へと意識を集中させる。
「……殿下、いいやセドリック。何故君はそちらに居るんだ?
今の言葉は聞いただろう?皇帝陛下……君の御父上を殺したのは今君が味方しようとしている宰相達なんだぞ!」
「セドリックか……随分と馴れ馴れしい呼び方をするじゃないかクルト・ヴァンダール
内戦の時に為すべきを果たす事も出来ずに僕の守護役をクビになった身で」
「……ッ!」
「まあ良い、質問に対する答えを返そうかクルト・ヴァンダール。
君もリィン将軍も何か勘違いしている、先帝陛下を殺したのは共和国だ。
だからこそ僕は皇帝として亡き父、亡き先代の無念を晴らすべく共和国を滅ぼす。
そして大陸を統一した皇帝としてこの大陸に秩序と安寧を齎すーーーそれこそが僕の為すべき使命なのさ」
「セドリック!」
「馴れ馴れしいと言っているだろう、クルト・ヴァンダール!身の程を弁えろ!
そうさ……父上を殺したのは共和国の連中なんだ!共和国でなければならない!」
ーーーでなければ僕のせいで父上は死んだことになってしまうからと。
強い言葉の裏に漏れた罪悪感に苛まれている言葉、それを聞いた事でクルトは押し黙る。
身の程弁えろと言われてしまえばクルトには何も言えなくなってしまう、何故ならばクルト・ヴァンダールは子爵家の次男坊に過ぎずセドリック・ライゼ・アルノールは皇太子であり直に皇帝となる身なのだから。主君にそう言われてしまえば臣下として言えることなど何もなくなってしまう。
必死に父を殺したのは共和国なのだと罪悪感に苛まれる姿、それを見てしまえば友としてはどうしても迷ってしまうから。本当に事実を直視させる事がセドリックの為なのかと。
故にクルト・ヴァンダールは押し黙ってしまう。
ーーーそういう役割に囚われた態度があの馬鹿を追い詰めたんじゃねぇのか?
瞬間、過ったのは悪友にして親友の言葉。
それがクルト・ヴァンダールの心を奮起させる。此処で押し黙ってしまうようではもう自分は生涯真の意味であの日の誓いを果たす事が出来なくなってしまうと思ったが故に。
「いいや、
秩序と安寧?わかっているはずだセドリック、君が今から進もうとしているのは多くの嘆きと怒りを生む流血の道だと!!」
「
「馬鹿言ってんじゃねぇ!大勢の人間をてめぇの
ふざけた事言ってんじゃねぇぞセドリック!どれだけテメェがそれに憧れていたのか、どれだけテメェが悩んでいたのか俺にはわからねぇ。
けどなぁ
そう決して認められはしない。
自分がダチと認めた男がそんな
アッシュとて馬鹿ではない、自分が暴走している時に自分をボコボコにしてくれた
だが
「そうだよセドリックくん!そんなの……そんなの
セドリック君言ってくれたよね……私が凹んで落ち込んでいた時にもっともっと語り合いたい事がいっぱいある。だから待っているって。私、嬉しかったんだよ。皇太子である貴方が属州の人間だって私の事を見下さないで接してくれた事が。私たちの……クロスベルの誇りを理解しようとしてくれたことが。なのに今のセドリック君は誇りだけじゃない!多くの人の命を踏みにじる道を往こうとしている!ねぇセドリック君、本当にそれがセドリック君が憧れた“英雄”の姿なの!?」
痛切な叫びをユウナ・クロフォードは挙げる。どうか優しさという強さ、それを思い出して欲しいと。
「黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!
たかだか
皇太子という生まれながらにこの国を導く使命を背負わされた立場の重責が!」
「ええ、そうですね。王とは孤独な者。臣下ではきっと真の意味で殿下が背負う重責を理解する事は出来ないのでしょう。ですからどうか、少しずつで構いません。私たちにもそれを肩代わりさせて下さい。それが
「うる……さい……何が友達だ。君たちにそんな風に馴れ馴れしく言われるような覚えは僕には……僕……には……」
「お願いですセドリックさん!自分を取り戻してください!思い出してください、私たちが一緒に過ごした掛け替えのない日々を!!」
そんな級友たちがやたらと馴れ馴れしい態度でしゃべる度に浮かんでいくセドリックにとって覚えのないはずの記憶。
それらが浮かぶたびにセドリックを頭痛が苛む。
胸の内より叫び声が聞こえる。
もう止めよう、これ以上罪を重ねてはいけない。大切な家族や友人を殺して得る血まみれの栄光に一体何の価値があるのかーーーと。
「クルト……アッシュ……アルティナ……ユウナ……ミュゼ……」
忘れてはならない忘れられない大切な思い出、そして友の叫びそれらがセドリック・ライゼ・アルノールを呪縛から解き放とうとするーーー瞬間、セドリックを黒い瘴気が包み込む。逃しはしない、お前の魂もまた自分の物なのだと言わんばかりに。
そしてセドリックの脳裏を過るのは炎を纏った英雄の姿。その英雄が武神を相手に繰り広げた神話の如き死闘の姿。それらが総てを焼き尽くす。友と過ごした想い出も、その時心に抱いた温かな想いも総て、英雄への焦がれが焼き尽くす。
「僕はもう……決めたんだ!この道を往くと!!それを君たちが阻もうというのならば蹴散らすまでだ!!!」
故にさあ目前に立ちはだかる障害を粉砕しろ。例えそれが心通わせた友であろうとも!
「この……大馬鹿野郎が!」
「主君が道を過とうとしているのならば命を懸けて諫めるのが臣下の務め。
そして友人が間違った事をしようとしているのならば
「そっちがその気ならこっちも荒療治でいかせて貰うんだから!」
「ええ、この手のノリが殿方の専売特許だと思われては困ります。女の子にだって譲れない意地はあるのですから!」
「みなさん……セドリックさんを……セドリックさんをお願いします!」
「任せておいてよ、アル。そして帰ろう。6人全員そろって、私たちのトールズに」
優しい言葉と共にそっと囚われのアルティナへとユウナはウインクをして。
そうして5人は激突は開始した。
言葉に載せきれぬ想い、それらをぶつけ合うかのように……
・・・
「わかっているのだろうなリィン、セドリック殿下をあそこまで追い詰めたのは他ならぬお前だぞ。
お前は自らを国家の忠実な剣と規定し、公職にある者には自らと同様である事を求めた。確かにそれは必要な存在ではあるのだろう。
上に立つ者としての義務を果たす事無く己が私欲の為にしか動かぬ者など、市井の民であるならばいざ知らず上に立つものとしては無益どころか有害。そういう点に於いてお前のような者が国家にとって有益であり必要であるという事は確かだろう。
だが同時にお前の在り方は上に立つ者の精神を追い詰める。容赦のない正論とその正論の体現者程人を追い詰める存在はない以上それは必然だ。
お前は皇族もまた一人の人間であることを忘れ、殿下の心に寄り添う事無くただただその地位に相応しく在る事ばかりを殿下へと求め続けた。それが殿下をここまで追い詰めたのだ」
「耳が痛いな全く以て貴方の言う通りだよ。皇太子殿下の師を拝命していながら、私はセドリック・ライゼ・アルノールの心に寄り添う事をしなかった。そしてその結果がこれだ。穴があったら入りたい気分というのはこういう事を言うのだろう」
司令官として多忙だったから、皇太子の師という役割以外にも為さねばならぬ事が無数にあったからとそんな事は言い訳にしかならない。真に多忙でその任に堪えうる自信がないのであればその時点で辞退しておくべきだったのだから。
「だがまだ手遅れではない。幸いなことに不出来な師の尻拭いを良く出来た教え子たちがしてくれるようなのでね、そちらは彼らに任せ私は私の義務を果たそう。帝国を支配し続けた邪神、黒のイシュメルガをこの手で葬り去る事によって」
戦意が親子の間でぶつかり合う。
父は問う、果たして本当にそれを果たすことが出来るのか見せてみろと。誰一人として為しえなかった神殺しという偉業を出来るものならばやってみろと。
もはや問答はするだけ無粋というもの。事此処に至れば力以外にそれを示す手段はないのだから。
故に戦いのステージに上がる資格を宿した者たちは高らかに叫ぶ己が力の象徴足るその名を。
「来い!ヴァリマール!」
「来な!オルディーネ!」
「出でよ!アルグレオン!」
「来るがいい、イシュメルガ!」
「おいで、テスタロッサ!」
「来な、ゼクトール!」
現れるは6体の騎神。
出現したその強大な力に反応して呪いによって穢れし聖獣が目を覚ます。
「聖獣殿、貴殿の相手は我らが務める」
「我が弟弟子に婿殿、そして聖女殿は為さねばならぬ事があるのでな。しばしお付き合い願おうか」
そしてそれをシュミット博士が開発した専用機*1へと乗った光の剣匠と黄金の羅刹が迎え撃つ。
「それじゃあ始めよっか猟兵王!メインディッシュの前の前菜程度には楽しませてよねぇ!!」
「バルデルのところの姪っ子か……全くとんでもないじゃじゃ馬になったもんだぜ。全くこれじゃあいつも草葉の陰で……泣かねぇか、むしろ大喜びしそうだ」
闘神を継ぐ者と蘇った猟兵王、共に
「それでは始めるとしようかリィン、帝国のーーーいいや、世界の命運を賭けた戦いを」
「往くぞギリアス・オズボーン!勝つのは俺たちだ!」
此処に世界の命運を賭けた戦いの火蓋が昏き地の底で切って落とされた。
対イシュメルガ:リィン・オズボーン、クロウ・アームブラスト、アリアンロード(ローゼリア、蒼の深淵、エマの魔女トリオの援護在り)
対猟兵王:シャーリィ・オルランド
対聖獣:光の剣匠&黄金の羅刹withシュミえもん開発の専用機
対アルベリヒ&西風コンビ:クレア、レクター、ミリアム
対セドリック:クルト、アッシュ、ユウナ、ミュゼ
勝てる!勝てるんだ!!!