空は真っ青に晴れている。
正に秋晴れ。
木々の変化からも季節の変わり目を感じつつある今日この頃、本来なら休みである学校に来ていた。
その理由は新しい試験召喚獣の試運転。
学園長の頼みともあり断れず、渋々その役目を引き受けたのだ。
受けたのは代表と愛子、そしてあたしのAクラス組と坂本君、土屋君、秀吉、明久、島田さん、姫路さんのFクラス組の計9人。
Fクラス組は以前にも似たようなことをしたことがあるらしく非常に嫌がっていたが、なるほど。
あたしももう二度としたくない。
あれやこれやと試運転した召喚獣を消すべく動き回りやっとのことでその仕事を終えたのだがーー
『ねぇ、久しぶりに隠れんぼでもしようよっ!』
ーーこの愛子の一言により即時解散とはいかなくなった。
高校生らしからぬ発言に、あたしは当初渋ったが思いのほか皆が乗り気で断るに断れず参加。
今現在、隠れ場所を探している次第である。
「まったく愛子ったら…。あたしだって暇じゃないのに…」
学校全体を使った隠れんぼで隠れる時間は5分。
開始後鬼が探しにかかる時間を含めても、その鬼が愛子であることを考慮すればそろそろ隠れないとマズいだろう。
「……ここでいっか」
たまたま通りかかったのは図書室前。
もう時間もないし仕方ないだろう。
ガラガラと扉を開ける。
肌寒い空気と共に図書室特有の匂いが漂ってきた。
う〜んこの匂い結構好きなのよね。
落ち着くというか、安心するというか。
気分を沈めたり和みたい時などよくここに来る。
と、呑気なことは考えいられないのだった。
どこか隠れやすい場所はないものかときょろきょろしていると、図書室の隅に見覚えのある後ろ姿があるのが確認できた。
「明久……?」
「あ、優子だ。優子もここに隠れるの?」
なにやらせっせと段ボール箱を動かしているその姿。
やはり明久だったようだ。
図書室の隅。
本来なら新しく入荷した本を一時的に入れておく段ボールが置いてある場所だ。
あそこに隠れる場所はなかったはず……と思いきや。
「にししっ、ここって僕の秘密の隠れ場所なんだよね。優子も隠れる?」
積み重ねられた段ボール箱に隠れた木棚。
その裏はからっぽで人が1人2人入れるだけのスペースがあった。
しょっちゅう図書室には来てるけど、こんなの気がつかなかった……。
「鉄人から逃げるときにたまたま見つけた場所で今でもよく使ってるんだ」
物凄いドヤ顔の明久。
これは今度西村先生にこの場所を教えてあげなければ。
「本当に明久はこういうことに関しては長けてるわよね……」
咄嗟の判断力だとか、機転の利き方とか。
それをもっと学問の方にも生かしてほしいものなのだが、明久にはきっと無理な話なのだろう。
ともかく、折角教えてくれた場所だ。
今は有難く使わせてもらおう。
開けてくれた場所を通って木棚に背をつけるように座る。
明久が段ボールを元に戻すと薄暗くなり、作業を終えた明久があたしの隣に座る。
目測より少し狭かったのか、肩は密着状態だ。
前ならこの状況にドキドキしていたのだろうけど、今はそんなこともない。
図書室の静けさの中、時計の秒針の音だけが耳に響いていた。
…
……
………
…………
……………
きゅっ
手を握られる感触。
隣を向けば少し顔を紅くした明久と目が合う。
「あ〜……ダメだった?」
「別にいいわ。ちょっと驚いただけ」
そういいつつ、仕返しとばかりに明久の肩に頭を乗せた。
少しだけ肩がビクつくのが分かる。
可愛いやつめ。
「……優子ってさ」
「なに?」
「最近ダイエットしなきゃーとか言ってるけど、必要ないよ」
「……何を根拠に言ってるのよ」
「手、かな。小ちゃくて指が細い。病気になっちゃうよ?」
「これでも秀吉に負けてるの。男に負けてたまるかっての」
「あはは……。秀吉と比べるとね…」
「……ま、でも」
今小さいと言われた手を握り直す。
……あたしの手が小さいんじゃなくて明久の手が大きいのではないだろうか。
「明久がいいならいいわ。別に秀吉に負けてても」
周りの評価はそんなに沢山いらない。
明久に見て貰えてたらそれで。
「その代わり『もう飽きた』とか言ってごらんなさい。ぶっ潰すわ」
「神に誓ってもそんなこと言わないよ」
だから、今は釘を刺しておく。
こんなあたしだから。
周りこそ明久はあたしには釣り合わないとか言ってるけど、本当はあたしの方が明久に釣り合わないことを知ってるから。
それでも明久のことが大好きだから。
こうして、繋ぎとめておく。
今握っている手だけじゃ足りないくらいの想いで。
「他のところにふらふらって行っても、必ず戻ってくること。忘れるんじゃないわよ?」
「他のところになんていかないよ。優子が可愛いすぎるから、ずっとここに居たいもん」
「………ば〜か」
そんなクサイ台詞を言うやつがまだいたとは。
そしてそんなクサイ台詞にドキドキするやつがまだいたとは。
照れ隠しの呟きと共に、明久の手を抱く。
秋特有の肌寒い感覚の中、アタシはほんのりと暖かい明久の体に身を寄せた。