三五三鎮守府の軌跡―救済には悪意をもって   作:多々良ひつじ

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もう、やめてくれ

――うて

 

その瞬間、それは同時に起きた。

 

「ハイ?」

 

 あまりの急展開に第二金剛は、間の抜けた声を出す。

 曙が天龍を砲撃した。

 当然、駿河の指示に従ったわけではない。極度の緊張状態に置かれていた曙が、駿河の声をきっかけに、反射的に砲撃してしまっただけだ。

 まさかの砲撃に、天龍は驚くどころか今までの興奮ぶりはどこへやら。一切の感情を顔からそぎ落とし、至極当然と眼光を鷹よりも鋭くさせると、艤装刀を鞘から抜き放つ。

 抜刀術とでもいうように、抜かれた刀の剣先が、鞘の鯉口を小さく鳴らす。

 神速への加速。

 その一太刀は、曙の砲口から頭をのぞかせた砲弾を捉え、砲口へと押し戻した。

 連装砲は当然爆発。吹き飛ぶ連装砲が、構えた曙の腕を鎖にして、ハンマー投げのように曙自身を部屋の隅へと投げ飛ばしていく。

 

「は? ガッ――グフッ」

 

 閣下元提督の顔は、無理やり大きく右へと振り向かされていた。

 自身に何が起きたのか全く理解できていない顔だが、遅れてきた痛みに思わず声が漏る。

 

「うて」

 

 再び駿河が呟く。

 

「ブッ」

 

 今度は口へ激しい衝撃と痛みが、閣下元提督を襲った。無慈悲な力の奔流に抵抗の隙間も無く、左へと頭を向かせられる。そうされながらも閣下元提督の視界に、原因が映りこんだ。

 か細い腕が一つ。拳を握りしめ天へと突きあげられていた――潮の肩から伸びた腕が。

 

「バビボ」

「うて」

 

 三度の駿河の声。

 閣下元提督は、ハッと慌てて腹下に敷く潮を見やる。

 見なければ少しは違ったかもしれない。

 振り上げられた潮の右拳は、見下げてくることで差し出された閣下元提督のアゴ先を捉えた。閣下元提督の頭だけが後ろへと跳ね上がる。

 アゴを砕いた潮の拳は止まらず。そのまま天を再び殴りつけた。

 ぜい肉に埋もれた閣下提督の目が、グリンと白目を向く。ゆっくりとのけ反り倒れる。それにより出来た仰角によって、撒き散らされた不愉快な体液は、潮の腹へと落ち、へその窪みへと集まっていった。

 

「うて」

 

 背から倒れていく閣下元提督と紐でつながっているように、潮は上半身を起こしていく。起ききった上半身はそこで止まらず更に前傾になり、その勢いのまま閣下元提督の顔へと拳をめり込ませた。 

 駿河の声は続く。

 その声に従い、潮はマウントをとったまま、肉塊を殴り続ける。

 

「おい! 大丈夫か!」

「それ以上は、駄目デース!」

 

 沈黙した曙を抜けて、天龍は駿河へと走った。第二金剛は潮へ。

 潮を止めようと第二金剛は、振り上げられた右腕を掴む。

 別に閣下元提督を救ったわけではない。また、潮を助けたけい訳でもない。ただ、殺してしまうと証言が取れないから――という訳でもなかった。全ては御剣の為だ。

 もし、ここで閣下元提督が殺された場合。起因が閣下元提督にあったとしても、御剣の監督責任が問われる事は、必至だからだ。

 

「うて」

 

 潮は躊躇なく、まだ自由な左拳を振りぬく。右腕を掴む第二金剛へと。

 

「待って下サーイ。私は、味方デース」

「うて」

 

 目標を取らえられなかった左拳を引き戻すさず、潮はそのまま裏拳と第二金剛へ振り回す。

 

「ちょっと、そちらの提督を止めて下サイ! これでは危ないデース」

「うて」

「おい! 何言ってるんだよ。もういいだろ! な! ……返事をしてくれよ!」

 

 天龍は第二金剛に言われるまでもないと、うなだれる駿河の顔を覗き込む。駿河の瞳に、自分が写り込んでいる事が見えるほどに近づいて。

 

「見えてねえのか……」

 

 駿河の両肩を掴み、天龍は誰にと言う訳でもなく、そう呟く。

 

「うて」

 

 駿河は意識を取り戻していなかった。

 

「うて」

 

 うなされる様に、ただうわ言を繰り返していただけだった。

 

「うて」

「もう、いい。もう、やめてくれ」

 

 壊れた機械のようにそう繰り返す駿河を、

 

「う――」

 

 天龍は自身の口でふさいだ。

 

 □ □ □

 

 時間は、二二時に差し掛かろうとしていた。

 

「さて、これで逃走は、――出来ませんねっ」

 

 ゴキュンと鈍い音に合わせて、床に寝転ぶ閣下提督閣下元提督の体が弾む。大淀の足が乗る閣下元提督の膝からは、不自然に曲がった。

 

「……念のため、もう片方もしておきましょう」

 

 閣下元提督の無事な膝に大淀は足を乗せると、缶を潰す様に踏み砕いた。

 大淀の顔からは、何の感慨も感じない。さながら事務処理をしているかのようだ。

 

「腕も潰しておきますか?」

「ちょ、大淀っ」

 

 明石が駿河の胸へと固定帯を巻く作業を中断して、大淀を呼び止める。

 

「ああ、やり過ぎになりますか?」

「う、うん」

「でも、既にやり過ぎているんです。少しくらいソレが増えても、問題ないですよね」

 

 粘度のある笑みを、大淀は明石へと向ける。

 

「え? いや、そんなわけ……そうかな?」

「何、説得されているのよ! 大淀も、それくらいにしておきなさい」

 

 すっかり包帯のとれた――まだ、ところどころ傷の赤みが残っているが――叢雲が、明石をたしなめながら、大淀を閣下元提督から引き離す。

 

「ところで明石? いつの間にこんなものを作っていたの?」

 

 叢雲は、駿河が横に置かれている紺のチョッキを指さした。

 

「それ、バリィ作。提督がつくらせてみたい」

「増設バルジを使った防弾防刃チョッキねー。確かにこれなら、人間の拳銃程度なら至近距離でもびくともしないわね。腹に銃弾が向かってくれればだけど」

 

 怪しい商品を見るように、片目を閉じ見る叢雲。その視線の先には、マッシュルーム効果を起こして増設バルジに張り付く銃弾があった。着弾の衝撃に表布がはじけ飛んだせいで良く見える。凹みどころか、カスリ傷も見られない。閣下元提督の殺意は、艦娘のソレへとは届かなかったようのだ。

 

「しかし、本当に人間離れしているわね。いったい何キロあんのよコレ?」

「無理クリの作品で、重さもそうだけど。厚さも抑えられなかったって、バリィが言ってな」

 

 固定帯を巻く作業に戻った明石が、叢雲の感想に受ける。

 

「あたし達なら重さも感じない程度だけど……人間なら、んー、叢雲が戦艦クラスを引船して遠征している感じ?」

「はあ? なにそれ。本当によく動けたわねコイツ」

 

 叢雲は前髪を掻き上げると、そのまま頭を手で押していくように頭を反らせた。

 

「で、どこにも砲撃を受けた跡が見つからないんだけど。撃ったのよね――」

 

 のけぞらせた頭を戻すことなく、叢雲は横へと見下げる。

 

「――曙」

 

 中破状態のまま、椅子へと拘束されている曙へ、侮蔑を惜しまずに。

 

「……そうよ。私は敵を撃ったわ。三度。クソ提督。潮。天龍」

 

 明らかに死んだ目つきになっている曙は、笑みに綻ぶ口から淡々と述べている。

 

「どうなの? 天龍?」

 

 叢雲は姿勢を変えず、顔を曙の反対へと傾ける。ただその目は、可哀そうなものを見るような憐憫の眼差しだった。

 

「キスした。キスした。キスした。キスした。キスした。キスした。……」

「天龍ちゃんからしたのよね? 天龍ちゃんからしたのよね? 天龍ちゃんからしたのよね? ……」

「これは当分駄目ね。龍田も程々にしなさいよ」

 

 壁へとしゃがみこんでいる天龍は、両耳を手で押さえた格好で、壁に向かって呟き続けている。

 その横では、同じようにしゃがみ込みこんだ龍田が、天龍の耳を押さえる手を通すように、耳元でと語り続けていた。

 

「あんたも、対抗してキスしようとしてんじゃないわよ。大淀」

 

 大淀が、ブーブーと不満を表明。

 叢雲は大淀に構っていられないと、顔を伏せる。

 黙って駿河を見ている事が出来ないのか、その状態へとなった事柄を無意識に口にする。

 

「本当に、どうやって防いだのかしら? 明石に弾薬を抜いてもらったけど、曙の残弾管理の申告に不正が無ければ、ちゃんと弾薬消費がされているって事だし……」

「妾が防いだからの」

「なら、なんで潮の時はしなかったのよ?」

「その潮とやらを巻き込めば出来たが。それは不味いのであろう?」

「そうよ。当たり前でしょうが!」

 

 乱された感情に顔を上げた叢雲は、大淀とその視線を絡ませた。

 

「叢雲? 突然、何んです?」

「え? あれ? 今誰かと話して……」

 

 見回せば、何事かと叢雲を見てくる大淀と明石。我関せずの龍田と我余裕なしの天龍と、

 

「空耳?」

 

 口元の微笑み崩さない曙の姿。

 

「ったく。吹雪は、いったいなにを考えているのよ……」

 

 曙を始め、朧、漣が営倉を出れたのは吹雪の手引きだと、微笑の般若……鳳翔によって朧、漣からゲロらせていた。曙が先に到着したのは、その吹雪が曙の艤装だけ用意していたからだ。朧と漣は、部屋まで取りに行っった故の出遅れだった。さすがに吹雪一隻で、道具も無く、三隻分の艤装、兵装を運ぶことは出来なかったのだろう。

 吹雪の『見ていられなかった』との発言はともかく、結果として最悪の事態と成りかけている。

 当然、吹雪の営倉入りは、免れない。

 しかし、朧、漣もだが、状況が状況だけに、変に隔離せず、他の艦娘と同様に大食堂に置くことで、監視を容易にした方が良いとの判断となったわけだ。

 曙については、危険な精神状態にあるとして、それこそ営倉への隔離が望ましい処だが、“不安要素は目のつく処に”と、“大食堂でここでの事を吹聴されても困る”との判断から、この場所――医務室での監視となった。

 

「んっ、うんん。……それで、曙はこのまま?」

「はい。提督次第ですが、解体処分に値すると考えますので」

 

 大淀の声はひどく乾いている。

 無理もないかと叢雲は内心で吐露しながら、自身がここへ来た時を思い出す。

 天龍が駿河のうわごとを、もっとも有効な手段で止めた直後、医務室へと数隻が走り込んできた。叢雲、龍田、大淀、明石、の順で。

 叢雲が見たのは、

 吹き飛ばされた扉。 

 中破状態で呻く曙。

 下半身丸出しの閣下元提督に、マウントをとる全裸の潮と、その腕を掴む第二金剛。

 壁にもたれ崩れている駿河。

 彼に涙を流しながら口づけてる天龍。

 

「はあ?」

「まあ! 天龍ちゃん、だいた~ん! 舌も入れているのかしら~?」

 

 驚きすぎて間の抜けた声を出した叢雲のすぐ後ろから、次いで来た龍田の声。

 

「! バ、馬鹿野郎。そう言うんじゃね――うぷっ」

 

 龍田は、何事も無いように天龍へと駿河へと近づくと、慌てふためく天龍の流れた涙の痕が残る両頬を手で挟み、再び駿河へとキスをさせた。

 

「……天龍ちゃんを泣かせた事。絶~対に、ゆるさないから~」

 

 真っ黒い笑顔を駿河に向けて。垂れ下がる駿河の手を、己の首に当ててながら。

 その後に大淀、明石と来室。

 大淀は、天龍、龍田に抱きしめられる、息も絶え絶えの駿河を見つける事に。そこで、天龍から事の次第を――曙の砲撃を聞くことになった。

 よく狂乱しなかったものだ。と叢雲は思う。怒りが過ぎた結果か。大淀は、怒ると冷めていくタイプなのかもしれない。とも。

 

「なのに、私は……」

 

 叢雲は思い返す。

 自分達以外の艦娘も、当然ここへと押し寄せた。が、理解に努める叢雲の横をすり抜けて、龍田がそれを止めた。

 それで皆が納得したわけではない。特に、最後に到着した完全武装の朧、漣の二隻は、食い下がった。暴走しかけた二隻を、龍田の様子を察した鳳翔や龍驤等の空母組が説得。しぶしぶとだが、朧と漣は、引き下がった。

 ただ、営倉入りしていたはずの。しかも艤装まで持ち出した行為に、そのまま説教タイムへと流れるようにシフトしたのは、言うまでもない。

 乗りと勢いからか、非常事態を大淀は宣言。

 各艦娘は大食堂に集合待機。

 一部は、チームを組んで〇八〇〇までの館内巡回を実施となった。

 

 現状の配置を整理すると、こうだ。

 

 【医務室】

 秘書官代行――叢雲(那珂が秘書艦だが、御剣から離れるわけにはいかない為)

 救護員――明石

 提督補佐――大淀

 天龍のいじくり……フォロー ――龍田

 行動不能――天龍「キスした。キスした。……」

 反逆罪の疑いにて拘束中――曙

 ベッドで安静――潮

 

 【倉庫】

 警戒、倉庫番――夕張「きっと抜け穴がどこかにあるはず(床を叩きながら)」

 

 【館内巡回組】

 哨戒班――高雄、愛宕、摩耶、鳥海、飛鷹

 哨戒班――妙高、川内、神通、隼鷹

 番犬班――古鷹、加古、夕立、時雨、龍驤(リード持ち)

 

 【執務室】

 秘書官として御剣への対応――那珂(本当は大淀に任せたかったが、飛び出していってしまい。出遅れゴール。MC能力が問われ中)

 御剣の接待――千尋「先生がいるのに、レッスンが受けれないなんて」

 

 【大食堂】

 鎮守府に居る他艦娘全員集合。

 世話役――鳳翔、赤城、加賀、間宮、伊良湖

 用心棒――満潮「私以外に誰がいるのよ」

 

 と、いった具合だ。

 第二金剛は、叢雲達の入室に「有也に報告してきます」と、入れ替わりに出て行った。

 閣下元提督は初めに言ったように、床に放置されている。一見するとコード等をまとめる結束バンドに見えるモノで、両手を腹の前に固定されている。本来なら、後ろ手に拘束するのだが、閣下元提督の体型がそれを拒んだ結果だ。

 まな板のマグロならぬ豚だが、膝が踏み砕かれた際に反射行動があったことから、死んではいないのだろう。

 尚、ズボンは履いていない。

 誰も履かせたがらなかったのも理由だが、閣下元提督の下についているモノが、腹のぜい肉と足のぜい肉に埋もれて、見ようとしても見えない。なんとも精神衛生上好ましい姿だった為、放置を満場一致で決定。

 

「最後の一線は越えられなかったみたいで、よかったです」

 

 大淀はそう言いながら、駿河の隣のベッドで眠る潮の体を綺麗にしいく。

 閣下元提督に執拗に顔へ殴打を受けたが、所詮は人間のした事。無傷とはいかないが、所々を赤くされた程度だ。まあ、味わった痛みや恐怖を外傷の程度から推し量ることは出来ないが。

 

「で、整理すると。あちらの金剛からの話では」

 

 叢雲は指を一本づつ立てていく。

 

「①うちの提督が金を隠していて。 

 ②それを咎めた豚が返り討ちにあって。

 ③曙が豚の味方をして。

 ④潮が豚に「抱いて」と、せまった。

 ⑤と豚が言っていた。

 ――どんなストーリーよ、このエロ小説。で、明石。どうなの?」

「いやー、潮が『抱いて』はないよね」

「そっちじゃんなくて、こっち」

「ああ、機械にかけたわけじゃないから、絶対じゃないけど。内臓にダメージは無い……と思う。呼吸に水音が混じってないし、肺もちゃんと膨らんでいる。骨の何本かは、間違いなくヒビが入っている。所々ひどく熱を持っているから。提督の事だから頭は庇ったと思うけど、肋骨はともかく、頸椎、背骨、腰骨。そこら辺の損傷が怖いわ」

「で、要は?」

「絶対安静。直ぐにでも検査をする必要がある。現状、意識が無いのが脳へのダメージのせいなのか判断できない」

「どこまで行っても人間か」

 

 叢雲は駿河の固定帯にまかれた胸に、その手を添える。

 

「当たり前よね。化け物じみていても、私達とはそもそもの造りが違うんだから」

「私じゃここまでしか……医療設備があるのは大きい処だけだからね。直ぐにでも病院にって、思うんだけど。まだ運べないの?」

「そうですね。現状、御剣提督の指示を待つしかありません。不明瞭な事故が起きている以上。私たちの独断で提督を運んだとしても、そのまま治療もされず拘束される恐れがあります」

 

 明石は、不要になった固定帯を巻き直しながら、大淀へと確認する。

 大淀が答えた通り、閣下元提督の事もあり、三五三鎮守府責任者の駿河の意識がない状況においては、同じ提督の御剣の指示を待つしかなかった。

 たとえその選択が愚考だったとしても、御剣に無断で事を起こせば、三五三鎮守府の艦娘の独断が御剣を巻き込んだ。と、されかねないからだ。

 御剣の大本営――元帥の受けは良い。そもそも、御剣を引っ張ってきたのは、その元帥の一人だ。

 尚、内部での事件を、“事故”と表現する団体は少なくない。

 

「現状では、搬送すらも怪しいわよね。良くて軍医が来てくれる可能性くらいか……まだ、指示がもらえないのかしら?」

 

 天井の先、執務室がある方を叢雲は見上げた。

 

「真相については、それほど複雑にならないと思います」

 

 机の上に置かれている煤けた雑ノウ――肩掛け鞄――へと、大淀は顔を向ける。

 

「そこに転がる金塊についている指紋の採取が終われば、誰の仕業だったのか。簡単に分かるでしょう」

「だね。私達には指紋なんてないしね」

 

 自分の手を開いたり閉じたりしながら、明石は大淀の説を補強する。

 

「問題は、どうやって御剣提督に渡さないかよね~」

 

 天龍をいじって……フォローしていた龍田が、しゃがみこんだ格好のまま、背中越しに話し掛ける。

 

「え? どいう事? 御剣提督に問題でも?」

「あの提督自身の事はともかく、あの提督が頼った人に悪意がないとは限らないし。悪意が無かったとしても、好意からこの人を貶められたら面白くないものね~」

「好意?」

 

 明石の疑問に、龍田は変わらず背中で答えていく。

 

「第二の艦娘全員。御剣提督にゾッコンなのは有名よね~」

 

 龍田は天龍を抱きしめると、天龍ごとかがめた体を前後に揺らしだす。

 

「愛の為なら全ては許される。なんて、考えてる娘もいるかもね~」

 

 『愛』の言葉に、天龍は龍田の腕の中で身を一瞬固くする。

 確かに。

 今回の第二金剛の行動にも、その片鱗が見えた気がする。ひょっとしたら、御剣を助ける為なら汚名をかぶる事も、悪事に手を染める事もいとわない者が、出て来ても不思議ではないのかもしれない。

 

「ちなみに、私はそっち派~」

 

 その場に居た全艦は、『そうだろうね』と内心で納得した。

 

「出撃要請です!」

 

 医務室の扉が勢いよく開かれた。

 

 

 

 

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