「お前は本当にしつこい飽き飽きする、心底うんざりだ」
「口を開けばみほエリみほエリみほエリみほエリと馬鹿の一つ覚え」
「みほエリに限らずお前の手でCP成したこと一度もないだろう」
(°д°)
「お前どれだけの世界線でどれだけの数のチャンスをふいにしてきた? わかるだろお前じゃもうみほエリはなさないんだ」
(°д°)<お前はなにをいってるんだ?
「いい加減自分のバカさ加減を自覚しろと言ってるんだ」
「なにも、難しく考える必要はない」
「えーと本編に加えてまほルートノンカチュルート秋山殿ルート継続ルート下半身付随ルートアンツィオルート冷泉ちゃんルート西住ルート……三次創作も加えるとヤバイな…とにかく惨敗だ、ただの一つの勝利もない」
「お前には根本的に作戦を成功させるだけの知能も運もないといってるんだ。 能力も天運もないのに目標が達成できるわけないだろう」
「普通こんな惨状になる前に諦めて普通の転生者人生を楽しむものだ、お前はなぜそうしない?」
「理由は一つ、お前は異常者だからだ」
通話を終了させ、携帯を懐にしまう。
電話越しに聞こえてきた声は、思いの外元気なものだった。
それにひとまず安心しながら、指定の席へと向かう。
「こんにちは、先日ぶりですね」
「ええ、そうですね」
待っていたのは、島田流の家元である島田千代。
今回の花壇では少なくない苦労をかけた相手であるが、遠慮というものは不要である。
こちらも苦労は背負っているし、何よりそういう間柄ではない。
「いよいよ始まりますね」
「そうね」
戦力差、8対30。
もはや試合の体を成していない、公開処刑と呼んだ方が正しい
そして、その処刑台に立たされる側に、自分の娘と、娘のために汚名を被ったあの子がいる。
もう間も無く試合が始まり、そして彼女たちは成す術もなく蹂躙されてしまうだろう。
このまま、試合が始まるのであれば。
先日、もう1人の娘が手渡してきた書類を思い出して、少しだけ唇が吊り上がる。
「ねぇ、大洗の方の選手で、天翔エミリって子を知ってるかしら」
と、この後起きるであろう奇跡に密かに期待を膨らませていると、隣からそんな言葉をかけられた。
「どうせ、知ってることを確信してるんでしょう」
「さっきの電話、あの子と話してたのでしょう。 少し聞こえました」
「盗み聞きとは趣味が悪いわね」
嫌味で返してやると、やはり千代はクツクツと笑った。
この何でもお見通しと言わんばかりの振る舞いのせいで学生時代は敵も多かったことをわかっているのだろうか。
「実は私、あの子を養子に迎えようとしたのよ」
「は?」
「断られちゃったのだけど」
いきなりの衝撃の告白にちょっと言葉が詰まった。
ようし、ようし……養子、のことだろう、迎えるって言ってたし。
「何でそんなことを」
「……愛里寿が、喜ぶと思って……あの子、本当にエミリちゃんに懐いていたから。 初めて出会った日からというものの、いつもその話をするのよ」
「だからいっそうちの子にしようと。 発想のスケールが違うわね」
「まぁさっき言ったように、一度断られちゃったんだけどね」
「……?」
一度、ということは何度も話を持ちかけたのだろうか。
実際彼女の戦い方は島田流の理念にもうまく噛み合っていると思う、勧誘というレベルならそれはおかしくないしむしろ納得がいくものだ。
だが、養子として、そこまで執着する理由は……
「……あら」
「む」
ふと、高らかに鳴り響いた声にモニターの方へ目をやると、大洗の制服を纏った上の娘が画面いっぱいに映し出されているところだった。
おそらく、日本中が注目する試合が、今から本当の意味で、始まる。
世間話を切り上げて、私たちは共にモニターへと注目した。
願わくば……
(大洗連合が、勝ちますように……)
***
「おウサギの耳みたいで可愛らしいですわ!!」
「ちょっとやめないか、ローズヒップさん」
ガタンゴトンガタンゴトンと、激しく振動する狭苦しい車内の中で。
先ほどまで複数の軽戦車から死ぬものぐるいで逃げ続けていた俺は、白馬の騎士よろしく颯爽と駆けつけたローズヒップ率いるクルセーダーに引き取られて現在平原を爆走中だった。
追手? やっこさんら全員ぶっちぎったよ。
クルセーダーの快速すごいですね。
『エミリちゃん! 大丈夫!?』
「ああみほ、だいじょーぶだ怪我ひとつないぜ。 逃げてる最中無線機落としちゃって連絡取れなくなった、ごめん。 あと携帯も世にも珍しい金属のひき肉になった」
『そっか、よかった……』
「ふわふわですわ!」
「ちょっとやめないか」
無線から響いてくるみほの声に応答しながらも、俺は頭上から髪を弄ってくるローズヒップを何とかいなそうと試みる。
しかし狭い車内では俺の居場所がローズヒップの席のそばしかなく、残念ながら逃げることは叶わない。
ピロシキはまぁ、とりあえず後だ。
『天翔さん、どうも。 継続のアキです。 ごめんねー、ミカの無茶振りで大変な目に……』
「いえいえ、おきになさらず。 無茶には慣れてますから」
『黒森峰の頃からは考えられんな』
『エミリ、そっち行ってから随分はっちゃけたわよね、戦車道ではいつも堅実だったのに』
「それらの責任はみほに押し付けます」
『えぇ!?』
くりくりと髪の毛をいじくり回されるこそばゆさに耐えながらも、無線から聞こえてくる様々な声に何とか返答する。
さて、じゃれ合いはともかくそろそろ本題に入るべきか。
「さて……みほ、私は今からカール自走臼砲を粉微塵にしてこようと思うんだけど許可をもらえるかい?」
『は?』
『うん、いいよ』
『ええぇぇ!!?』
俺とみほの問答に、無線の向こう側から大量の叫びが聞こえてきた、まあ、そうなるな。
「驚くほどのことじゃありませんよ。 今の私たちにとってカール自走臼砲の撃破は最優先課題です」
『それはわかりますわ』
『そうね、排除しないとこっちが一方的に行動制限されちゃうし』
「あのー……かぁるじそーきゅーほうって、作戦会議の時から思ってましたけど何なんですの?」
みんなで相談していると、頭上からそんな声が。
どうやらローズヒップはカール自走臼砲のことを知らなかったらしい。
「そうだな……簡単に説明すると、凄まじい火力、死ぬほど鈍足で、10分に一発しか撃てないだめな兵器」
「あんまりつよくないですわ」
「だったはずなのに改良されてどういうわけか自動装填装置が付いてるからとんでもない速度で一撃必殺攻撃をふらしてくる傍迷惑な、もはや戦車とも呼べない代物さ」
「……? 戦車でないならなぜこの試合に出てますの?」
「なんとしても大洗廃校させたいおじさんが敵チームの戦力に無理やりねじ込んだのさ」
「ずっこい!」
「どうどう」
ローズヒップを宥めながら、とりあえず思案する。
まず俺のスタンスとしては、カール自走臼砲は一刻も早くこの世から消し去るべき危険物である。
だって怖いもん。
作中だとアレのせいでけが人が出ると言ったことはなかったけれど、あの砲弾が万が一直撃したら普通にヤバイだと思う。
なんというか、人が乗ってる乗り物に行っていい仕打ちじゃない。
アレで万が一誰かが怪我したりトラウマ植え付けられたりとかそういうことを考えると最優先目標であるのは確定的に明らかだ。
『それに、あんなの放置しておいたらその射程範囲内だとうかつに戦えないわ!』
『こちらの位置を把握された場合、一方的に砲撃されてしまいますからね。 とにかくなにがなんでも破壊して、条件をイーブンにしなければなりません』
カチューシャとノンナの言う通り、生命的な意味での危険性に加えて戦術的に考えてもめちゃくちゃ厄介だ。
あの四次元ポケット自走臼砲は豆まき感覚で砲撃してくる。
それらの脅威から身を守るには射程圏内では一切戦闘しないか、近距離のドッグファイトに持ち込まなければならない。
こちらだけ一方的に戦術を制限されるのは良くない、非常によくないことだ。
「というわけで、まずカールを排除することから始めたいわけだ」
『うん、それはわかるけど…天翔ちゃんはどうやってそれを撃破するつもり?』
「中に忍び込んで操作系統を奪って崖から叩き落とします」
『ちょっとまって』
アッサムさんに待ったをかけられた、なんだろうか。
『何もかもがおかしいわ、まず忍び込むってなに?』
「先ほども言ったようにカール自走臼砲は泣けるほど鈍足ですから、向こうのチームが最初に配置してたポイントからろくに移動できません。 つまり向こうも絶好の配置ポイントから無理に少し動かすくらいならいっそそこに腰を据えるでしよう」
『私たちが放置するならそのまま火力を叩きつけて、狙ってくるなら厚くした守りで迎え撃つ、かな』
『その場合、カール自走臼砲の守りに裂かれる分敵の攻撃部隊の数が減りますわね』
『しかし、射程圏内での戦闘ではいつくるかもわからない支援砲撃に警戒を強いられる』
『どこまでいってもカールが邪魔ですね』
『余計なちゃちゃいれて……役人め……!!』
「だからこそ、私が行く価値がある。 最悪でも敵部隊の偵察ができるし、うまくいけばそのまま1輌撃破、敵の動揺も誘えるだろう」
『エミリちゃんなら、できる』
『そうね! ニンジャなら間違いなくできるわ!!』
『そのニンジャへの厚い信頼はなんなの……』
ともかく、方針は決まった。
まず俺はこのままローズヒップのクルセーダーで、カール自走臼砲が配置されているであろうポイントに向かう。
ある程度離れた距離からは単独で行動し、敵チームの偵察、あわよくばカール自走臼砲を奪取しそのまま永遠に使い物にならなくなるように崖下にポイする。
完璧だ。
『ローズヒップ、エミリカスに携帯無線機を貸してあげなさい』
「わかりましたわ!」
「いまエミリカスっていったかフッド」
『私の事をまともに呼ばない仕返しです。 無線機壊さないように、あなた個人に弁償させますから』
「極力気をつけるさ……じゃあ、ローズヒップさん、お願いね」
「まっかされましたわー!!」
『エミリちゃん、気をつけてね』
『天翔殿……無茶しちゃダメですよ』
「ん」
短く返事して、通信を切る。
さぁ、おそらくこの試合で俺の最高の見せ場になるであろうカール自走臼砲単独撃破チャートをお披露目である。
転生者なんだから人生1度くらいはデタラメやったっていいだろう……ね?
***
「……ふむ」
というわけで到着したのはカール自走臼砲が配置されている石橋を覆う壁である。
英傑よろしく壁に張り付いた状態から単眼鏡で様子を確認しているのだが、なるほど、なるほど……
「みほ。 こちらエミリ、聞こえる?」
『こちらあんこうチームです、どう? エミリちゃん』
「カール自走臼砲を肉眼で捕らえた。 どうやら護衛に5輌引きつれてるらしい。 なかなか固いな……」
原作だとパーシング3輌に守られていたはずだったが、こちらに作戦を盗み聞きされた影響か護衛の数を増やしているらしい。
やはり、位置を看破された以上下手に弄らずむしろ餌にするくらいの気概らしい、強気な配置だ。
『地形的にも攻め込むには少し厄介だね……エミリちゃん、予定通りお願いしていい?』
「いいとも、やってやる」
俺はグローブを締め直して、ぐっと握り拳を作った。
制圧自体は実に簡単だ、中に入り込んで武装してる選手たちの武器を全部スクラップにしてやればいい。
選手を拉致するような危険な真似はしてはいけないと言われているがじゃあ体に触れなければいいのだ。
そもそも反則スレスレのことは先に
あの狭苦しい車内では俺対策で配備されてる長銃もろくに扱えまい。
制圧した後は選手の方々には自主的に降りていただく。
その後俺は単独でカールを運転し、谷底にポイだ。
よもや卑怯とはいうまいな……
「では今からミッションを開始する」
その言葉を最後に無線を切り、俺は視線を周囲に向けた。
護衛についてる戦車の車長たちは、いずれもキューポラから顔を覗かせながら周囲を警戒している。
だが、まぁ視線のだいぶ上にいる、崖に張り付いている人間など簡単に見つけられるはずもなく。
俺は音を立てないように静かに崖を上り石橋にたどり着く。
そしたら後は石橋の裏側に張り付いていけば確実に見つからない。
さながらトカゲのように石橋を渡り終えた俺は一気にカールに接近し、出入口のハッチまで辿りつくことに成功した。
え? マジ? 順調すぎない? 危なげがなさすぎる……
まぁ今更悩んでも仕方がない。
作戦通り、俺はこのまま突入することにした。
大声出しながら突っ込んで、慌てふためいてる間に火器全部破壊すればいけるだろう。
とりあえず最初の難関をほぼ確実に突破したことに安堵しつつ……
ハッチを引き上げ、中に飛びこんだ。
「こんちわ──────────ー!!!」
「待ってたよ、エミリ」
愛里寿がいた。
「なんで?????????」
その直後、バタンと俺が突入したハッチが閉じられた。
嫌な予感がする。
冷や汗を垂らしながら振り向くと、ガッチリと閉じたハッチに、明らかに通常のカール自走臼砲には備え付けられてないめちゃくちゃ頑丈なロックがかかっていた。
「……」
「……」
「閉じ込められた!」
「罠だよ」
その直後に、チャキリと音がした。
今度はなんだ。
振り向けば──
愛里寿がこちらに銃を向けていた。
あ、これやば──
パァン