僕の友人がヤンホモだった。 作:ぐ腐腐
「佐々木君。折角会ったのだから一緒に見に行かないかしら?」
「おい」
「………あら?今何か声が聞こえてきたけれど気のせいかしら」
「おい、空気扱いすんなよ。ちゃんとここにいるだろ、お前の目は節穴か?」
「ああごめんなさい、貴方人間だったのね?てっきり人の形をした虫だと思っていたわ」
「はぁ?いきなり話しかけてきて何だよこの女。咲人、こいつ放っといてもう行こうぜ」
「あら佐々木君は私と一緒に猫のエリアを周るのよ。邪魔者の貴方は消えて」
目の前で口喧嘩していて、未だにヒートアップさせていく二人を見て僕はどうしてこうなったんだ、と頭を抱えていた。
事の始まりは比企谷君がららぽーとで開催している動物と触れ合えるイベントに行ってみたいと言ったことからだった。
特に用事もなく、最近はあまり比企谷君と出かけることがなかったため直ぐに了承した。
そしてやってきたららぽーと。イベントのせいか人が溢れており、比企谷君が震えていたのを手を繋いで抑え、比企谷君が見たいと言っていた猫がいるエリアに向かった。
そのエリアに向かっている際、何処からか視線を感じて振り向いたら彼女がいたのである。
彼女は雪ノ下雪乃と名乗り、何故か僕の名前を知っていた。
恐らくだが、苗字も同じなため雪ノ下陽乃さんから教えてもらっていたのだろう。
雪ノ下さんは少し前に僕が犬に襲われそうになっているところを救われて、感謝していると僕に言った。
うーん、あの時のわんちゃんはただ戯れようとしてただけだと思うんだけど。
ということは言わずに、一応感謝は受け取った。
そしてその後、比企谷君が僕に「もう行こうぜ」的なことを言ったことからこの口論が始まった。
「咲人は俺と一緒に周る約束をしてたんだよ。ぽっと出のお前になんで咲人を渡さなきゃいけないんだ」
「佐々木君は貴方なんかより私と周りたいと思っているはずだわ。彼、優しいから」
「あ?お前に咲人の何がわかるんだよ。大体お前の乗ってた車に轢かれたから怪我したのに、そんなこと言える資格…」
比企谷君。
「え、さ、咲人…?」
それはダメだよ。あれは僕が勝手にやったことで雪ノ下さんには一切の非なんてない。だからそんなこと言っちゃダメ。
僕が思わずそんなことを口にすると、比企谷君は見るからに萎れていき、その代わりに雪ノ下さんが得意げな表情になった。
雪ノ下さんも、いきなり初対面の人に虫扱いはダメだよ。
「……そうね。悪かったわね比企谷君」
「え、お、おう。……俺も悪かったよ」
二人は渋々といった感じだが、きちんと互いに謝ることができた。うん。やっぱり喧嘩は良くないよね。しかも僕が原因なら尚更止めないと。
ほら、仲直りも済んだし折角だから三人で周ろうよ。
「まあ、いいけど」
「ええ私も文句は無いわ」
じゃあ二人が見たいって言ってた猫ちゃんの所に行こうか。
僕が早速向かおうとしていた猫ちゃんのエリアに歩き出そうとすると、比企谷君が不機嫌そうな表情で左手を差し出してきた。
ああ、手ね。忘れてた。
僕も自然な感じで手を握り、比企谷君が指を絡めてくる慣れた感覚を味わう。
それじゃあ今度こそ行こうかと足を踏み出せば、次は比企谷君に握られている手とは逆の手が何かから握られた。
「おい!何してんだよ!」
「あら、ダメかしら?」
「ダメに決まってんだろ!」
「そう…佐々木君は私に手を握られるのは嫌かしら?」
じっと見つめてくる雪ノ下さんに、ジトっと見てくる比企谷君。
え、えーっと、まあ嫌ではないかな。
「咲人…」
「ふふ、惨めね比企谷君」
「あ?」
「ん?」
何か僕の周りだけ凄く空気がピリピリしてるよ。やめて!僕の手なんか何も価値なんてないんだから喧嘩しないで!
あと比企谷君は薄っすらと笑いながら僕の耳元で囁くのはやめて!
え?後でお仕置き?
………なんか
***
佐々木咲人君。
彼を最初に知ったのは、入学式の日の朝のことだった。
彼は赤信号なのに飛び出してきた犬を身を呈して守ってみせた。死ぬ危険すらあるのに、だ。
彼のその勇姿は見惚れてしまうくらい魅力的なものだった。あの覚悟を決めたような表情、そして絶対に救ってみせるという気迫。
私は彼を見て、胸の奥底からとある感情が湧き出てきた。
それは、彼を私色に染めてみたいという独占欲。初めての感情だったが、不思議と嫌な感じではなかったことを覚えている。
そしてその後、ショッピングモールで彼に救われた時は運命とさえ思った。
犬に怯えていた私を横から優しく介抱してくれた時は思わず彼を押し倒したくなった。
そしてまた今日、再開できた。
やっぱり彼とは赤い糸で結ばれているのだ。
あの比企谷君という子は邪魔だったけれど。
再開して何より嬉しかったのは、彼が私のことを覚えていてくれたことだった。
それに、負い目を感じていた彼を轢いたことも私には非はないと言ってくれた。
堪らなく嬉しくて、堪らなく愛おしかった。
今すぐにでも家に連れ帰り、じっくりと時間をかけて私のモノにしたかったが流石に人の目もあるところでそんなことは出来ない。だから我慢した。
「ふふっ、佐々木君。貴方は絶対に私のモノにしてあげるわ」
ゆっくりと、ゆっくりと時間をかけて。
それまでは我慢しててあげるから。
***
「咲人」
比企谷君の家に入るなり、押し倒された僕。
直ぐ近くに比企谷君の顔があり少しでも動けばキスしてしまいそうなくらいの近さだ。
比企谷君はビクビクしている僕の反応を見てニヤリと笑うと、そのまま僕の弱点と化してきた耳をはむっ、と甘噛みしてきた。
ひ、比企谷君!?
「はむっ、ん、あぇ、れろ…ちゅ♡」
ちょ、ちょっと何して、っあ!
「何って……お仕置きに決まってるじゃん…あむっ」
え、あれ、ほんとだったの…?
「ん、咲人は俺だけ見てればいいんだ」
比企谷君……
「ほら、ここ弱いんだろ?」
比企谷君の嫉妬深さに少しだけ身震いさせていると、突然比企谷君が耳の中に舌を入れてきた。
ぐちゅりという音が右耳一杯に広がる。そして、蛇のように唸る舌が小刻みに耳の中を揺らした。
そのまま比企谷君は味わうように舌を転がし、執拗に舐ってきた。
味わったことのない感覚と、その感覚の気持ち良さに恐怖を覚えてその後のことは覚えていない。
数分後、僕は息を切らし、比企谷君は満足そうに笑みを浮かべていた。
ひ、ひきっ、がや、くん…
「ふふっ、咲人顔真っ赤だぞ?可愛いな」
……もう知らないっ!
「やっぱり可愛い」
少しだけ可愛いと言われて嬉しかったことなんか知らないったら知らない。
最近リアルの方で体調を崩しており、更新が遅れておりました。
今はもうだいぶ治ったため、少しずつ更新をしていきたいと思います。
次回辺りに戸塚きゅんを出したい。