後輩の女の子に久しぶりに会ったら、なぜか懐かれました。
よくわかんないよね。
しかも、新しい部屋がまだ改装中とかで、いっしょに寝ることになったし。
これってボクが危険というより、命ちゃんのほうが危険なんじゃないかな。
ホームセンターに置いてあったベッドは、ホテルとかにあるような豪華なやつで、少女ふたりが入っても十分な大きさがある。
「先輩……ふへへへ……かわいい……お人形さんみたい」
速攻で夢の世界に旅立った命ちゃん。
いつもクールだけど、内心はすごく素直な子なんだ。
鉄仮面のような無表情さと攻撃性も、身を守るための鎧で、いまの命ちゃんは純心無垢な女の子って感じ。
この子はこの子で不安なんだろうなと思う。
でも、これってすごくまずい状況なんじゃないかな。
もしも寝ぼけて……あるいは寝ぼけてなくてもちょっとした冗談で……、その……ボクに無理やりキスとかしたら感染しそうだよね。それはまずい。すごくまずい。
命ちゃんを守ると誓ったのに、速攻でマモレナカッタとか洒落にならない。
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キスで感染
映画『28週後...』では、レイジウィルスに感染しているものの発症しない、ある種の免疫を持っている妻とキスをし、夫のほうはあっさり感染、発症してしまう。夫の視点からすれば、妻は普通の人間に見えたけれども実は感染していたというパターンであり、夫は妻を愛していたが、その夫の手によって妻は殺されてしまうのである。ある種の悲劇とみることもできるだろう。経験的帰納法に従えば、ホラーでは90パーセント程度の確率でリア充はみじめにむごたらしく死ぬ。
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では、命ちゃんにちゃんと話すべきだろうか。
聡い子なんで、言わなくても察しているかもしれないけれど、ボクの口からきちんと、
――ボク、ゾンビだよ。よろしくね。はぁと。
とか言うべきだろうか。
普通だったらえんがちょ案件だよね。
ゾンビってばい菌だし。ばい菌はキタナイものだ。エミちゃんと同じように隔離されて拘束されてしまう。いや、命ちゃんがそんなことをするわけない。でもそうならない保証はない。
裏切られるというのも少し違うかもしれないけれど、ボクがボクであるということが受け入れられないかもしれない可能性がある。
――それはいやだな。
そんな思考を繰り返す。
結局、もやもやした気持ちのまま、ボクは眠れずにいる。
ほかにも言ってないことがある。
女の子になっているのは隠し切れないからそのまま伝えたけれど、ボクがゾンビに襲われないことや、ゾンビを操れることは、直接的には言ってない。
命ちゃんがボクの不利に動くとか思ってるんじゃなくて、単純に嫌われるかもしれないのが怖かったんだ。
キャミソールに短パン姿になったラフな格好の命ちゃん。
ボクは命ちゃんに抱き枕のような形でおなかのあたりをホールドされている。
背中のあたりには高校生らしい柔らかな感触があたって、ボクは心臓の鼓動がそのまま伝わるんじゃないかと危惧した。
からみつく足。後頭部あたりから無理やり吸引されるボク。
あの……命さん。起きてないよね?
「ぐへへー。先輩成分……ほじゅー」
ヤバイ……。これは別の意味でヤバイよ。
今夜は寝かせないぞってスタイルですか。そうなんですか!? そうなんですかぁ~~~~~~っ!?!?
そうなりました。
☆=
ピピピという音で、朦朧とした意識が覚醒するのを感じた。
枕元にある時計の音だった。
ホームセンターの中は薄暗いままだ。朝になってもそれは変わらない。
引きこもりのカーテンしめっぱなしのボクの部屋と同じく、あえて電気をつけたりはしないからだ。
ただ、真っ暗なままなのも怖いので、足元にはところどころランプがついている。入り口のところは分厚い遮光カーテンで覆っていて、光が漏れないようにしているようだ。
そんなわけで朝。
ボクは命ちゃんに抱きつかれっぱなしだったわけだけど、結局一睡もできなかった。ちょっと眠いけど、ゾンビ的特性なのか、徹夜でもそこまできつくはない。寝ようと思えばすぐにでも寝落ちできそうだけどね。
まあ後輩の危険には代えられないので、今日お部屋ができるまでは我慢する。
「ふぁあああああっ」
ホールドされている腕を丁寧にはずし、ボクはうーんっと伸びをする。
ちょっとおへそが覗いちゃった。
「先輩……おはようございます」
命ちゃんが目を覚ました。
なんでボクのふとももを撫で回してるんだろう。
「うん。おはよう。あのさ……命ちゃん」
「ん。なんですか?」
「冷静に考えて、みんなの前でその先輩ってヤバくない?」
「そうですか? ちっちゃな先輩とか興奮しません?」
「興奮するのは一部の奇特な趣味の人だけだと思うんだけど」
「頼れる先輩感と甘やかなロリ成分が合わさり最強に見える……っ!」
「みえねーよ!」
わけがわからない。
命ちゃんがいつのまにかロリコンになってました。
美少女高校生がロリコンとか業が深すぎるだろ。
お兄ちゃんはそんなふうに育てたおぼえはありませんよ!
「先輩限定なんですけどね……」
「いやまあそれはいいけど、やっぱり変でしょ」
「もう既にみんなの前で何度か言ってる気がしますけど」
「ずっと言い続けられるのはやっぱり違和感があるよ」
「わかりました。じゃあ、緋色ちゃんって呼びますよ」
「うん。お願い」
「あ、その『うん』ってところすごくかわいいです」
「……さよですか」
なんか、ボクが女の子になってからグイグイくるよね。この子。
☆=
朝になると恒例だけどボクの髪の毛がすごいことになっていた。
ボクって毎朝スーパーサイヤ人3になるんだよね。わかる?
まあいいんだけど、ともかく爆発しちゃうわけです。
それで、今、ボクはベッドに腰掛けて、命ちゃんに髪をといてもらっている。
ブラシが通るたびに、どこからともなく湧き上がってくる眠気がすごい。
反則なぐらい気持ちいい。
「先輩。髪の毛……誰にといてもらってたんですか?」
突然、呟くように語りかける命ちゃん。
「え?」
「だって、ここにきたとき、すごく綺麗だったじゃないですか。誰かにといてもらってないと、あんなになりませんよ」
「ふ……ふにゅ……」
そんなことで、簡単にバレちゃうの?
女子力ってすごい。
まさかボクも、ゾンビなお姉さんにセットしてもらってましたなんて言えるはずもなく、ただただ、難聴のふりをしつづけるしかなかった。
「先輩が言いたくないってことはわかりました」
「う……うん。ごめんね。ちょっと言いにくい事情があってさ」
「まあいいです。しばらくは私がセットします。それで許してあげます」
え、これって許すとか許されるとかそういう次元の話なの?
よくわからないんだけど、ベッドのところで女の子座りしている命ちゃんを見返すと、その視線は絶対者の視線だった。逆らってもしかたない。
「ありがと」
と、ボクは返す。
ボクとしても髪の毛がボンバー状態でみんなに見られたくないので、ちょうどよかったよ。家の中で待機状態のお姉さんには少しだけ申し訳ないけど。
髪の毛をセットしてもらいながら、ボクは暇な時間を情報交換にあてることにした。ボクが知っておくべきなのは、このコミュニティについてだろう。
ここにいるみんなの第一印象はクセは強そうだけど、まだ常識と倫理を保っているように見える。
「みんなの印象ですか……。難しいですね」
命ちゃんは少し考えているようだった。
まあ、ボクと同じであまり他人とコミュニケーションを積極的にとる子じゃないからね。無理ならいいんだけど。
「感覚的なものになりますが……、まず大門さんは体育会系ですよね」
「まあ、それはそうだね」
「筋肉好きそうですね」
「そうかもね……」
「あの人は、たぶん自分が好きなんだと思います」
「誰だってそうじゃないの?」
「だって、自衛隊員ですよ。軍隊じゃないけどほとんど軍隊じゃないですか。軍隊では、歯車であることが求められます。なのに、彼はここにいる」
「歯車じゃなくて、自分がトップになろうとしたってこと?」
「そうかもしれないってだけです」
「このコミュニティのトップになって何がしたいんだろう」
「単純に権力が好きなんじゃないですか」
「権力ねぇ。たった7人を好き勝手動かせてもたいして意味ないと思うんだけど」
「それは、先輩や私が権力にあまり興味がないからですよ」
「そうかな。そうかもね」
命ちゃんの人物評価はわりと手厳しいな。
「次は、小杉さんですが、この方は率直に言って、あまり好きじゃないです」
「えー、そうなの?」
小杉豹太。
ひょろ長い20代前半の男の姿を思い出す。
自信のなさそうな様子だったけれど、悪い人には見えなかったけどな。
「あの人は、視線がちょっと気持ち悪い気がして……」
いわゆる生理的にダメってやつか。
そればかりは感情的なものだし、論理とか理性とかの展開じゃないからな。
なんともいえないよ。
命ちゃんのせいじゃないし、小杉さんのせいでもない気がするな。
「それだけじゃないです――」
「なにかあったの?」
「うまくいえないんですが、小杉さんは言い訳をする人だと思うんです。前に、常盤恭治さんが妹を助けに行くというときに、いっしょについていく人をつけるべきかという話題になったんです。小杉さんは、いの一番に拒否しました。もっともらしく、ここのことを最も知っているのは自分だからって――。ただそれだけのことなんですけど、なんとなく嫌だなと思ったんです」
「みんな自分のことが大事なのはしかたないと思うけど……」
「でも、先輩は私のことを守ってくれるんですよね」
「それはそうするよ」
「先輩は前のときもそうでしたけど、自分より私のことを優先しますよね」
「ううーん。そう思ってるつもりだけど、それはたまたまボクの中の優先順位がそうなってるってだけで……」
「その優先順位が問題なんじゃないですか」
「まあ……、そうかもね」
命ちゃんのいわんとしていることもわからないでもない。
ただ、保身をするのが人間だとも思う。
ボクは――、ボクの趣味において、単純に命ちゃんの価値をボク自身よりも上においているだけだ。
小杉さんがどういう価値基準を置いているかはわからないけど、自分の価値が最上だとして、だからといってそれが悪だとは思えない。
ただ、命ちゃんの趣味に合わなかっただけだ。
「姫野さんはどうなの?」
「姫野さんは普通の人って感じです」
「普通の人?」
「普通に自分のことがかわいいし、普通に男の人に媚びるし……、別に悪い人ではないけれどもいい人でもないという意味で、普通です」
「よくわかんないな……」
「普通の女ってことですよ」
「ますますわからん」
「女の子になったのにわからないんですか?」
「まだ初心者だもん」
「先輩がお子様っぽいです」
「お子様ってゆーな!」
まったく。ボクがまるで……まるで幼女だって言われてるみたいだ。
こう見えても、命ちゃんよりも年上なのに。
「そうだ。恭治くんはどうなの?」
「常盤さんは、シスコンじゃないんですか」
「あー」
「まあ、それはその人の人柄どうこうって話じゃないですね。常盤さんは、たぶん自分の中にそれなりの正義というか、そういう基準がある人なんだと思います」
「そうかな?」
「ええ。ですから、たぶん――この事態に一番心を痛めているのは彼なんじゃないかって気がします」
「命ちゃんはどうなの?」
「私は――、そうですね。世界が滅んでくれてせいせいしていますよ」
☆=
朝にはみんなが無事を確かめあうために、リビング兼執務室に集まることになっている。
執務室はホームセンターの奥まったところに一番スペースをとるように構えられていて、バックヤードにも一番近い。
大門さんはいつものように机に座って、オートマティックピストルを磨いていた。自衛隊からいくつか銃を持ってきたのかな。
「今日は部屋の改修をしてもらおうと思う。飯田くんと緋色ちゃんも一人部屋があったほうがいいだろう」
「あの、私としては緋色ちゃんと同じ部屋でもいいですが……」
命ちゃんがそんな発言をするが、大門さんはじっと見つめたあと、首を横に振った。
「いや、やはりひとり一部屋は必須だろう。もしもの時の防衛という意味でも、ひとつの部屋にかたまっていないほうがいい」
そういうもんかな。
推理小説とかでは、ひとりになったところを狙われるほうが多い気がするけど。
でもプロが言うならそうなのかもしれない。
あるいは、分散していたほうが徒党を組まれにくいと思っているのかもしれない。例えば、ボクや飯田さん、そして恭治くんはコンビニからの新規参入者で、そういったつながりがある。このつながりが派閥とか徒党につながれば、大門さんとしては管理がしにくいってことなのかもしれない。
管理という言葉を思い描くと、胸の奥がざわつくような感覚がした。
でも、命ちゃんの足の怪我が治るまでは、ここを動くわけにはいかないだろう。
「もう部屋の間取り自体はできている。あとはその部屋に生活必需品を運ぶだけだ。午前中いっぱいぐらいで、おそらく終わるだろう」
「今後のことはどうするんです?」と飯田さんが聞いた。
「ここのことを少し話しておくべきかもしれないな。まず、食糧事情だが、私が自衛隊駐屯基地から持ち帰ったものと、近所のスーパーやコンビニから集めたもので、今ここにいる者全員でも一ヶ月程度は持つ。太陽光パネルと蓄電池なんかもあったから、屋上に設置すれば、電気がこなくなっても大丈夫だろう」
「ゾンビは駆逐できますかね」
「それはわからんな。まず、政府見解が正しければ、日本だけでも1000万人から3000万人近くはゾンビになっている。対して、自衛隊員は全国20万人だ。単純にこの自衛隊員数を戦闘員と考えても数が足りん」
「ほとんどのゾンビは家の中に閉じ込められてるって話ですけど」
「確かにな。しかし、政府のお偉方が決めた方策は、まずは自分達のお膝元の確保だ。要するに首都、関東圏の制圧を目指している。よりにもよって一番人口密集地である首都を解放しようとしているんだ。どれだけ時間がかかるか想像もつかん。その間、田舎のほうは打ち捨てられるという寸法だ」
「じゃあ、ここのゾンビが駆逐されるのはずっと先……」
「そうなるだろう。それに、今いるゾンビだけじゃないだろうしな」
「ゾンビに噛まれたらゾンビになるってことですか」
「それもあるが……、この世界のルールはもう変わってしまったんだよ」
大門さんが眼光に力をこめて言う。
その言葉に飯田さんはすっかりと射すくめられてしまったようだ。
そう――、ボクもね。
うすうす気づいていたんだけど。
この世界のゾンビになった人は一割とも三割と言われているけど。
でも、ゾンビになっていない人も。
誰ひとり例外なく。
そう、老若男女かかわりなく、全員、みんな、みんな。
――感染している。
ゾンビウィルスに感染している。だから、死ねば、『生』に翳りが生じて、ゾンビになる。たとえ噛まれていなくても、ゾンビによって傷つけられていなくても、ゾンビウィルスがもたらす『死』に抵抗ができなくなれば、ゾンビになるんだ。
大門さんは机のところで指を組み、口元を隠すようにして続けた。
「日本で言えば、毎日3000人程度だ」
「え。なにが……?」
「死者だよ。もちろん、この数はどんどん減っていくだろうし、しかも戦闘力はそこまでない高齢者ゾンビだと思われるが、やつらはどんどん数を増していくんだ」
「そんな……」
「しかし!」
大門さんはとりわけ大きな声を出す。
「悲観し絶望するには早いとも思っている。ゾンビが増え続けるといっても、我々も奴らに対抗するだけの知恵と力をつけるだろうし――、奴らも無限に増え続けるわけじゃない。いずれ事態は沈静化するだろうと考えている。人間は強い。オレはそう信じている」
飯田さん他、みんなの中にほっとした空気が流れる。
へぇ……。
わりとしっかりしているんだなと思った。
さっき聞いたばかりの命ちゃん人物評に照らして、大門さんを見てみる。
自分の王国を作りたいのか。
それとも、本当にこのちっぽけな町の住民のために残ったのか。
それはわからなかったけれど、決断をする人というのは、こういう緊急時には頼りになるのは確かだ。
一方、傍らにいる小杉さんは、あいかわらず影が薄い。
小杉さんは大門さんの存在感の前ではかすんでいるようだったけれど、その視線の先には、命ちゃんがいた。
うーん。視線の矢印を伸ばしてみると、白い太ももあたりになるんだよね。
ボクが見ているのに気づくと、すぐに視線を逸らした。
狭い部屋だから偶然かなとも思うけど、あの視線って――。
でも男だったら、多少はしかたないよねって思うし、ボクだってそう。誰だってそうだと思っちゃう。
そんなんじゃ甘いよって言われそうだけど。
そんなこんなで、みんなして午前中はDIYすることになった。
DIY! DIY!
それは……『DO IT YOURSELF』を意味する。
日曜大工をおしゃれな感じに言い直した言葉だ。
「飯田さん。このベッドはこの位置でいいっすか」と恭治くん。
「ああ、うん。こっちの角度がいいかな」
男の人たちで重いものは運ぶ。
たぶん、ボクも筋力的には大人に匹敵するというか、大人を凌駕するとは思うんだけど、あまり変な力を見せびらかしてもしょうがないからね。
もくもくと小物を運んだよ。
ゴミ箱。ハンガー。小さなテレビ。
なんとテレビはまだ使えます。
ビックリすることにいまだに放送してました。
しかも国営放送だけじゃなくて民放もまだやってます。いくつか放送中止のところもあるけれど、テレ東がアニメやってて感動した。
ちなみに放送しているのは何年か前に再放送していたムーミンだった。
スナフキン……かっこいいよね。
「電気とか、ネットとか……テレビとか……いつまで持つのかな?」
ボクは命ちゃんに聞いてみた。
「そうですね。ネットで情報を収集する限りでは、なぜかゾンビは電波塔とか、発電所とか、そういったインフラに直結する施設にはあまり近づかないようです」
「ふうん。そうなんだ」
それってボクが――。
ボクという無意識が、そうでありたいと願っているからかな。
人間もまだ捨てたもんじゃないというか。
人間の文化や文明に心惹かれているものがあって、壊したくないって思っているからかな。
「ただ、いくらゾンビがそういった施設に近づかないからといっても限度はあると思います。例えば、佐賀には原発がありますよね。原発には当然それを動かすだけのエネルギーが必要なわけです」
「ウランだっけ」
「そうです。それらは輸入で頼ってるわけですけど、今後日本まで運ばれるとは思えません。したがって、燃料がなくなっていずれは停止します。原発の場合は、早めに停止させないとメルトダウンなどの危険もありますし、管理が出来なくなる前に完全停止させるということも考えられます」
「うーん。具体的にはどのくらいで止まりそうなの?」
「二ヶ月ぐらいでしょうか」
「えー、そのくらいなの」
不満である。
遺憾の意を表明したい。
ボクの場合、インターネットがないと生きられない世代なんです。
今もスマホ持ち歩いてるし……、最近はお気に入りの動画製作者さんがいなくなったり、更新停止したりしてるのが微妙に哀しい。
「先輩の困り顔って、なんだか反則ですよね……もっとめちゃくちゃにしたくなるというか」
「やめてよ。そんな怖いこというの」
「怒った顔もかわいいとか反則」
なんだよ。ボクは反則のカタマリか。
「ほら、あんたたちもっと手を動かしなさいよ」
姫野さんが呆れたように声を出した。
誠にごもっともなことだったので、ボクたちは「はーい」といって、すぐに仕事を再開した。
しかし、なぜだろう。
ボクの部屋がお姫様みたいなレースつきベッドで占領されているのは。
命ちゃんを見ると、ニヤっと笑って「先輩にはお似合いです」と言われた。
はかったな。
はかったな。命ちゃん!