とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

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戦兎「天才物理学者の桐生戦兎は、万丈龍我と共に学園都市での新生活を送っていた。そんな中、常盤台の超電磁砲こと御坂美琴共に妙な女性と遭遇するのであった」

佐天「脱ぎ女ですよ絶対!!」

戦兎「いやいや、ちょっと変な人だけど普通だって。」

初春「先生が言っても説得力ありませんね・・・」

佐天「戦兎さん、ちょっ、上着に手をかけてなにを!?」

初春「駄目ですよ!?この作品全年齢対象なんですから!!」

戦兎「ちょっと!?映像ないからって勝手なこと言うんじゃないよ!俺は脱がないから!」

万丈「マジ暑いんですけど!この警備員ベストくそ暑い!!脱いじまうか!!」

戦佐初「お前が脱ぐんかい!!」

木山「私の名前や、とある少年も出てくる第11話、読んでくれたまえ」

美琴「また持ってかれてるし」


第十一話 飛翔する銃口

まったく同時刻。

戦兎は先ほどのベンチに座っていた。

 

「AIM拡散力場か・・・」

 

ビルドフォンに表示しているのは力場に関する資料。美琴達がスカートを洗っている間、女子トイレで待つのもあれなので元の場所に戻り資料を読みふけっていたのだ。

 

「んー、なーんか思いつきそうなんだけどなー、もやもやする・・・」

 

先ほどAIM拡散力場の話を聞いた時から、何かに気付きそうな、でも気付かないような変な気分なのだ。普段から発明をしている戦兎からすれば、インスピレーションがあと一歩のところで出てこない状況というのがとてもむずかゆい。

 

「それにしてもあいつら遅いな・・・まあ洗濯するようなもんだからしょうがないのか。」

 

と言いつつカバンからいくつかの物を取り出す。

 

「・・・コイツらの謎もまだ解けてないんだよなあ」

 

言いつつ手に持ったのはフルボトルだった。

 

「ゴリラ、ハリネズミ、タカ、ガトリング、掃除機・・・別に有機物に偏っているのは関係ないよな・・・」

 

学園都市にやって来てから倒したスマッシュは5体。そのすべてから成分を採取し、すべてが浄化され、見慣れたボトルに変化したのだ。

 

「(美空のバングル・・・ベルナージュの力と浄化装置があって初めて、ボトルはフルボトルになる・・・。しかし実際にこの街ではエンプティボトルで採取した途端に浄化された)」

 

このことから予測できるのは、

1戦兎にベルナージュの力が移った。

2戦兎自身に不思議な火星パワーが備わった。

3学園都市だから。

 

「3はともかく、1、2はないな・・・」

 

1の場合、戦兎自身に変化―美空にバングルが付いたような変化が現れて然るべきだし、2の場合は同じく戦闘の末にボトルを回収した万丈にも同じ現象が起きたということになる。二人揃って不思議な力に目覚めるなんて確率は、途方もなく低い。

 

「となると3ってことになるが・・・うーんそれもどうなんだろうな・・・」

 

ボトルを解析して分かったことだが、ボトルの構造自体は戦兎と万丈が持っていたラビットやドラゴンのボトルと同一の物。即ち、A世界で戦兎たちが集めていたボトルと同じものなのだ。つまり、学園都市由来の技術が使われている、というわけではない。

 

「うーん、わからない、もやもやする」 

 

髪を掻き毟りながらつぶやいた時だった。

 

「キャー!!」

 

という悲鳴が戦兎の思考を遮った。

 

「なんだ!?」

 

悲鳴の元を探すために辺りを見渡す。すると、美琴達が入っていった施設のすぐ傍で女性がうずくまっていた。

 

「ッ!!ネビュラガスか!!」

 

黄色いガスが女性の周りに漂い、次の瞬間身体が発光し、

 

「グウゥゥゥ!!!」

 

スマッシュへとその身体を変質させた。

 

「か、怪物だー!!」

 

周りの人々が逃げ惑う。スマッシュ―ダイヤモンドスマッシュは近くのガードレールに光線を照射する。するとガードレールは無数のダイヤモンドとなり、

 

「ガァ!!」

 

スマッシュはそれらを蹴りで放ち攻撃した。ダイヤモンドの一つが逃げ遅れた男子学生の背中まで迫る。

 

ガキン!!

 

と、召喚したドリルクラッシャーのガンモードから放たれた光弾がダイヤモンドを打ち抜いた。

 

「早く逃げろ!!」

 

ビルドフォンから同じく召喚したバイクヘルメットを被って顔を隠した戦兎が言う。周りの学生たちが悲鳴を上げて逃げる中、戦兎はビルドドライバーを装着した。

 

「白昼堂々変身するのはまずいんだけどな・・・」

 

言いつつ両手にボトルを持ち、振る。トランスジェルソリッドを十分に刺激し、シールディングキャップを開く。

 

【ラビット】【タンク】

 

【ベストマッチ!】

 

ボトルの装填によって待機音声が鳴るのと同時に、ボルテックレバーを回し、スナップライドビルダーを展開する。

 

【Are you ready?】

 

「変身!!」

 

【鋼のムーンサルト!ラビットタンク!】

 

ビルドラビットタンクフォームへと変身した戦兎は、ブレードモードへとなったドリルクラッシャーで切りかかろうとするが、ダイヤモンドの散弾によって思うように近づけない。それどころか散弾が近くの自販機や、異常を検知してやってきた警備ロボが早くも被害に遭っている。すぐに避難させたおかげか周囲に人の姿がないことが唯一の救いか。

 

「とは言え、こんな市街地でまたあんなのぶっ放されちゃたまんねえしな・・・ってあぶなっ!」

 

大きなダイヤモンド片が戦兎の鼻先をかすめる。ラビットハーフボディの脚部、ホップスプリンガ―による跳躍で距離を取り続けるが、このままでは街が壊され放題だ。

 

「遠距離戦ってことなら・・・コイツっしょ!!」

 

と攻撃を回避、あるいはドリルクラッシャーで防ぎつつ、戦兎は二本のボトルを取り出した。左手でラビット、タンクのボトルを外し、右手のボトルの内一本を左手で持ち直し、振る。

すると周囲に無数の白い数式が漂い始めた。キャップを開き、新たなるボトルをドライバーにセットする。

 

【タカ】 【ガトリング】

 

【ベストマッチ!】

 

最高の相性を知らせる光と共に、ボルテックレバーを回転させる。ボトルと同じ、オレンジとメタルカラーの成分がスナップライドビルダーを通って、それぞれのハーフボディを形成した。

 

【Are you ready?】

 

「ビルドアップ!」

 

掛け声とともにラビットタンクフォームの上から新たなボディが装着された。

 

【天空の暴れん坊!!ホークガトリング!!】

 

仮面ライダービルド ホークガトリングフォーム。

遠距離戦、及び空中戦において優れた機動力を発揮するベストマッチフォームである。

 

「さあ、実験を始めようか」

 

【ホークガトリンガ―】

 

そう言って専用銃、ホークガトリンガーを召喚し、背面の翼―ソレスタルウィングを展開して地面を蹴る戦兎。内蔵ブースターによってその身体を一気に空へと運ぶ。

 

「ウガァ!!」

 

宙を舞うビルドに向かって再びダイヤモンドの散弾を放つスマッシュだが、それはすべて、巨大化したソレスタルウィングによって弾かれた。距離を取ったことによって威力が弱まった状態であれば十分に防御できるという戦兎の読み通り、空中にいる間は散弾は通じず、周囲へ被害が出ることもない。

 

「とは言え、防戦一方ってわけでもないんだよ」

 

そう言ってホークガトリンガ―の中央に位置するリボルマガジンに手をかけ、回転させる。

 

【10!20!30!40!】

 

音声と共に十発ずつ弾丸が生成、装填されていく。四回転分、つまり四十発まで装填したところでホークガトリンガーをスマッシュに向け、

 

「ロックオン、だ」

 

銃の前部に搭載されている照準装置―サードアイホークによって照準が定められたまま、引き金を引く。

瞬間、タカを模したオレンジ色の光弾、バレットイレイザーが発射される。光弾は左右に分かれながらスマッシュに接近し、着弾する。

しかし、ボディもダイヤモンド級なのか、40発の弾丸を食らってもスマッシュはビクともしない。周囲に爆発による黒煙が立ちこめただけだった。

 

「ギギ・・・ガ?」

 

反撃の為、空中を見たスマッシュは、そこに先ほどまでいたビルドがどこにもいないことに気付く。

 

「こっちだ、よ!!!」

 

と光弾の発射と同時に高速飛行した戦兎は、スマッシュの背後にまわりガトリングハーフボディの脚部―ガンバトルシューズで勢いよくその身体を蹴りあげる。表面を覆う特殊火薬による爆発力でスマッシュは空へと舞った。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

【10、20、30、40、50・・・】

 

先ほどの装弾を超える回数、リボルマガジンを回転させる。と同時に宙を舞うスマッシュの周りに球体上の隔離空間が現れる。

 

【70、80、90、100(ワンハンドレッド)!フルバレット!!】

 

引き金を引く戦兎。瞬間、100発分の弾丸が持つエネルギーが一気に放出され、巨大なタカを模した光弾がスマッシュを襲い。

 

「ギギギガガガァァ!!」

 

スマッシュの硬いボディを爆砕した。

 

 

「あっぶねー、落とすところだった」

 

とぐったりとしたスマッシュの身体を空中でキャッチし、近くの物陰に着陸した戦兎は、エンプティボトルのキャップを開き、成分を採取する。

 

「・・・っと、やっぱりダイヤモンドか」

 

先ほどの攻撃から予測してはいたが、水色の成分が入ったボトルはやはり戦兎が知っている通りの形に浄化されている。

不思議だ・・・と思いつつ成分を抜いた女性の方を向く。幸い呼吸はしており、目立った外傷も見当たらなかった。

 

「さてと・・・」

 

と言いつつドライバーからボトルを抜き、変身を解いた。先ほど採取したボトル諸共格納アプリにしまうと、戦兎は黄泉川に電話をかける。

 

「あ、どうも桐生です。第七学区のセブンスミスト前でスマッシュと交戦、撃破しました。変身者に外傷はありませんが、念のため医者に見せた方がいいかと」

 

『了解じゃん。すぐに向かう。着いたら詳しく話を聞くじゃん』

 

「わかりました」

 

『あ、桐生。変身するところ誰かに見られてないじゃん?』

 

「勿論、万丈じゃあるまいし、そんなヘマしませんよ」

 

「あっそ、じゃあ万丈以下ってことねアンタ」

 

あはは、と笑う戦兎の背後で、美琴は腕を組みつつ言った。

 

「み、御坂!?」

 

「店を出たら辺りは荒れてるし、人はいないし、かと思えば空からアンタ(ビルド)が降りてくるし・・・」

 

「いやあ、さすが常盤台のお嬢様・・・抜群の観察眼で」

 

「お嬢様は関係ないっつの。まったく、私だからいいけど他の人に見られたら、アンタまた路頭に迷うことになるわよ?」

 

「はい・・・以後気を付けます・・・」

 

女子中学生に頭を下げ、全力で反省している26歳がそこにいた。

 

「君たち、なにかあったのかね・・・何やらあちこち壊されてるみたいだが・・・」

 

と、美琴と共にセブンスミストの中にいた女性が、こちらを見て言った。

 

「いやー、なんでしょうねー、見当もつかないわー、ねえ?」

 

「ん?お、おう。ナンモ、ナカッタ」

 

見られた!?いや、多分大丈夫。というアイコンタクトを取りつつ、戦兎たちは答える。

 

「ふむ・・・てっきり最近話題の未確認生物かと思ったが・・・、ん?そこで倒れてるのは・・・」

 

と戦兎の背後で倒れている女性に目を向ける。

 

「や、これは、えーっと」

 

「人体実験がしたいのなら止めないが、足が付くと面倒だぞ?」

 

「ちゃうわー!!」

 

戦兎の叫びが学園都市にこだました。

 

「いやあ、助かった。」

 

夕暮れが迫る空模様。戦兎たちは女性の所有しているという青いスポーツ車の前でそんな言葉を聞いた。

 

「いろいろ世話になった。礼を言うよ」

 

「いえ、それほどでも」

 

苦笑しつつ美琴は言う。この車、一番始めに女性と出会った場所から徒歩5分くらいの場所にあったのだ。

なんでこんなに疲れなくちゃいけないのよ・・・なんて思っていると、ドア越しに紙が差し出される。

 

「名刺?」

 

『大脳生理学専攻 木山 春生教授』

そう書かれた紙片を見つつ戦兎が言う。

 

「ああ、ここで会ったのも何かの縁だろう。また会う時が来たら、の話だが」

 

そう言って女性―木山は窓を閉め、車を発進させた。

 

「お気をつけて~」

 

と手を振る戦兎をよそに、美琴はぐったりしながら歩き出した。

 

「疲れた・・・」

 

「俺もだ。まさかスマッシュに出くわすなんてな・・・、しかーし!!」

 

とポケットから先の戦闘で採取したダイヤモンドボトルを取り出し、瞳を輝かせる。

 

「これでベストマッチがまた増えた!!ごめんなゴリラ、ダイヤモンド。本編でも何かと不遇な扱い受けてたけど、今度こそ日の目を見ような!!こうなったら専用武装作っちゃう?作っちゃう!!?夜は開発っしょーー!!」

 

とひとり奇声を上げステップする戦兎に突っ込む気力もないのか、美琴はだるそうに言う。

 

「なんで私がこんなに苦労しなくちゃいけないのよ・・・これも全部あのバカのせいだ。今度会ったらぼっこぼこの黒焦げにしてやる・・・」

 

「あああー!!」

 

と公儀の犯行予告をした美琴の耳に突然、戦兎の声とは別の絶叫が届いた。

 

「・・・全滅だ・・・、重要なタンパク源が・・・。せっかく、せっかく2時間も並んだのに・・・」

 

悲壮な背中を見せ、落としてしまったのか割れた中身の入った卵のパックを悔しそうに見る少年が、そこにいた。

 

「「「ん?」」」

 

3人同時に顔を見合わせる。瞬間。

 

「さっきはよくも私を置いて逃げたわね!?人に厄介ごと押し付けておいて、自分はお買い物か!!」

 

指を突き付けて怒鳴る美琴に少年も反論する。

 

「貧乏学生にとって、特売品を手に入れられるかどうかは死活問題なんだ!!常盤台のお嬢様にはわかるまい!!」

 

そう言って手に持っていた卵のパックを突き付ける。割れた卵から白身が出てきており、調理に使うのは絶望的な有様だった。

 

「あっ、それお一人様1パック限定の120円の卵?もう終わっちゃったの!?」

 

戦兎はといえば、自身も狙っていた特売が終わっていることに頭を抱えている。この駄目大人、と思いながら美琴は言った。

 

「こっちだって大変だったんだから!!汚れたスカート脱ぎだすわ、しょうがないから洗ってあげるわ!!挙句の果てにはツンデ・・・!!」

 

 

その単語を想起した瞬間、木山とのやり取りを思い出し言葉を詰まらせる。少年と戦兎はそんな美琴を見ながら。

 

「ツン?」

 

「ツンドラ?凍原?」

 

「・・・っと、とにかく勝負しなさい勝負!!!」

 

顔を真っ赤にしながら少年に言う美琴。少年はあからさまにいやそうな顔をして応える

 

「勝負って、今までお前の全戦全敗じゃんか。」

 

その言葉に戦兎が驚く。

 

「マジか?てか普段から勝負してんの?めっちゃ仲良しじゃん」

 

「黙れ駄目大人!!仲良くなんかない!」

 

腕を組みながら美琴は戦兎に言った。

 

「大体、私だって一発も食らってないんだから、負けてないわよ!!」

 

「・・・じゃあ、どうしたら終わるんだよ・・・」

 

「君が電撃食らうまでじゃないか?そりゃ」

 

少年の呟きに戦兎が応えた。

 

「それってつまり勝つまでやるってことじゃん。つか、アンタは、えーっと」

 

「ああ、俺は桐生戦兎。今は中学校の教師をしているんだ」

 

「中学というと、常盤台っすか?」

 

敬語使えるなんて、どこぞの電撃お嬢様とは大違いだ。なんて思いながら戦兎は言う。

 

「いや、御坂とはちょっとした知り合いなんだよ。それより、君の名前は—」

 

「ああ俺はかみ—」

 

「ちょっとちょっと、何勝手に親睦深めてんのよ!!いいから勝負しなさい勝負!!」

 

「・・・はあー」

 

「そこっ!!ため息つかない!!」

 

自分抜きで話されていたのがそんなに気に障ったのか、食って掛かる美琴に溜息を吐く少年だったが。

 

「ったく、わかったよ」

 

立ち上がった少年は美琴を見据えて、

 

「それで気が済むっていうなら、相手になってやる」

 

そういう姿には妙な迫力があった。

それに気づいたのか、美琴も息をのむが、さすがレベル5というべきか、不敵な笑みを浮かべて、

 

「やっと、その気になったようね!!」

 

と言った。

 

「・・・これ、教師的には止めるべきなのか?」

 

戦兎だけが、このシリアスな空気になじめていなかった。

 

 

月が出てきた。

夏とは言ってもこの時間帯になれば気温も下がり、いくらか心地よい風も吹いている。

第七学区と第八学区の学区境にあたる鉄橋の下、伸び放題となった雑草に覆われた河原に、三人は移動してきた。

 

「あのー」

 

「なによ」

 

河原で腕を組み、仁王立ちする美琴に戦兎は聞いた。

 

「そろそろ万丈も帰ってくるし、帰りたいんですけど・・・」

 

「さっきも言ったでしょ。どっちが勝ったか、判定してもらわないといけないのよ」

 

美琴の言葉に肩を落とす戦兎。

 

「いや・・・俺関係ないし・・・」

 

「あんた正義のヒーローなんでしょ、だったらいたいけな中学生の頼みくらい聞きなさいよ」

 

「いたいけな少女はやたらめったに勝負吹っ掛けねえよ」

 

くどくど言う戦兎を美琴は睨む。

 

「今ここでアンタが帰ったら、明日職場に『桐生先生が完全下校時刻間近なのに学区境に連れてきて、置き去りにしました』って言うわよ」

 

「・・・ますますいたいけにほど遠いじゃねえか・・・」

 

戦兎は降参の意を込めて両手を挙げた。

 

「ここならだれにも迷惑かかんねえだろ。いつでもいいぜ。かかってきな!」

 

と、やり取りがひと段落するのを待っていた少年が言った。

 

「・・・言われなくても、こっちはずっとこの時を」

 

バチバチ、と周囲に電流を放出させながら美琴は言う。

 

「―待ってたんだからッ!!」

 

言うと同時に雷撃の槍を少年に向けて放つ。威力が抑えられているとはいえ、常人が食らえばひとたまりもない。

パリィン!

しかし、その一撃は少年が突き出した右手に当たった瞬間、ガラスの割れるような音と共に消失した。

 

「・・・本当に消えた」

 

戦兎が思わず呟いたが、美琴は想定済みだったのか、驚いた様子はない。

 

「やっぱ電撃は効かないか・・・なら!」

 

そう呟いて右手で何かを掴むように電力を生み出す。すると、地中から黒い砂のようなものが美琴の手に集まった。

 

「なるほど、磁力によって砂鉄を集めてるのか」

 

戦兎の推測のとおり、集まった砂鉄は美琴の右手に集合し、長細く変形した。さしずめ、刀のように。

 

「ちょっお前、獲物使うのはよくないんじゃないの!?」

 

「能力で作ったものだもん」

 

少年の抗議にあっけらかんと答え、砂鉄の剣を構える美琴。砂鉄の剣に宙に舞った葉が当たるとずたずたに切り刻まれる。

 

「いっ!!?」

 

「砂鉄が振動してチェーンソ―みたいになってるから、触れるとちょっと血が出たりするかもね!!」

 

言いながら少年との距離を走って詰める美琴。対し少年はでたらめな構えを取りつつ、

 

「どう考えてもそれじゃすまないと思うんですけどっ!?」

 

美琴の振るう剣を紙一重で躱していく。

二度、三度と剣を振るう美琴だが、剣の達人というわけでもないのでどうしても攻撃が単調になっている。そのせいか少年も何とかではあるが対処できている様子だった。

 

「やばいと思ったら止めに入ろうと思ったけど、やるなアイツ」

 

感心している戦兎だったが、当の本人は割といっぱいいっぱいらしく、呼吸を乱していた。

 

「ちょこまか逃げ回ったって—」

 

距離を取ろうと大きく転がった結果、背中を見せた少年を見て、美琴は言い放つ。

 

「コイツにはこんなこともできるんだから!!」

 

瞬間、電流による磁力の操作で変形させたのだろう、剣が巨大な鞭となって少年の背後に迫る。

 

「!!剣が伸びっ!!」

 

「(入った!!躱せるタイミングじゃない!!)」

 

美琴の思ったとおり、こちらを見ようとしたのか少年の身体は中途半端に後ろを向いている。あれでは逃げようにも足を大きく踏み出すことはできず、直撃してしまう。

 

流石にやばい、と戦兎はラビットとゴリラのボトルを振りつつ助けに入ろうとしたが、

 

「っく!!」

 

シュバアン。

と少年が無理やり右手を砂鉄の鞭に当てる。すると鞭として形成されていた砂鉄が宙に舞っていた。

 

「強制的に砂鉄に戻された・・・?」

 

両手にボトルを持ったまま戦兎がつぶやく。美琴も驚いているのか、宙に舞った砂鉄を見て呆然としている。

 

「あっぶねー、よかった・・・」

 

と自身の右手を見ながら安堵している少年を、舞う砂鉄越しに見る美琴は、しかし思考を巡らせていた。

 

「(ここまでは予想通り。)」

 

っと、少年はそれを見て諦めたと思ったのか、うっすら笑って美琴に言う。

 

「勝負あったみたいだな!」

 

それに対し美琴は不敵な笑みを浮かべ、答えた。

 

「それはどうかしら、ねっ!!」

 

右手を突き出し、再び電流を流す美琴。その対象は少年ではなく。

 

「お前、風に乗った砂鉄まで!!」

 

少年の言葉のとおり、空中の砂鉄が少年の上空に、渦を巻くように集まっていく。

それらは槍のように変形して少年を襲う。

 

「こんなの、何度やっても同じ結果じゃねえか!!」

 

そう言って向かってくる砂鉄の槍に腕を振るう。

 

「違う、攻撃が狙いじゃない」

 

それを見て、状況を見ていた戦兎はそう呟いた。砂鉄の槍が分解されていくと共に少年も違和感を覚える。それは

 

「(こんなにたくさんの砂鉄が必要だったのか?)」

 

分解された砂鉄が落下する。黒く風に乗って舞うそれはまるで、

 

「煙幕。目くらましか」

 

「とった!!」

 

戦兎がつぶやいた瞬間、回り込んでいた美琴が少年が今まさに振るった右手を取った。

 

「飛んでくる電撃は打ち消せても!!」

 

直接流れる電流なら問題ない、そう思っての戦略。しかし。

 

「(電流が・・・流れない!?なんなのよこいつ!?)」

 

いくら能力を発動して電流を流そうとしても、電流が流れていかない。困惑する美琴は、はっとなって目の前の少年を見た。

 

「んー・・・」

 

少年は少し考えると、握られているのとは逆の左手を振りかぶり。

 

「ひっ」

 

そのモーションに美琴は思わず自由な方の手をかざして目をつむった。

 

「・・・ええっと・・・」

 

半笑いを浮かべどうするか考える少年だったが、突然、右手を離し、後ろに倒れこんだ。

 

「ぐわーっ、ヤ、ラ、レ、ター」

 

とぐったり横たわり目を閉じる少年。

 

「(穏便に済ますために、花を持たせる。いい考えだ。でもな)」

それをする相手は誰だと思う?

御坂美琴だ。

 

「ふ」

 

「あ、やべっ!!」

 

「ふざけんなあああああ!!」

 

美琴の怒りと羞恥に震える顔を見た少年はとっさに逃げ出す。その後ろでバチバチ!と紫電を放出した美琴が叫んだ。

 

「まじめにやんなさいよ!!」

 

「だってお前!ビビってんじゃん!!」

 

「ビビってなんかないわよ!!」

 

「嘘つけ!!こーんな風に涙目になって、びくっってしながら、ってうわっ!!」

 

「死ねぇ!!」

 

最後まで聞かず、電撃を放つ美琴だったが、少年は避け、あるいはすべて打ち消していった。

 

「おい!今の直撃したら死ぬぞ!!」

 

「どうせ効かないんでしょうが!!」

 

バチイと電撃と怒声を放ち続ける美琴を見て、戦兎は溜息を吐く。これ以上は無駄だろうと判断した戦兎は美琴に言う。

 

「やめとけって御坂。もう決着ついたろ?早く帰んないと寮監がやばいとか言ってなかった?」

 

「うっさい!!邪魔しないで!!」

 

と辺りが見えてないのか少年にむけて電撃を放ち続ける。

 

「ったく、しょうがないな」

 

そう言って少年の前、つまりは美琴の前に立ちふさがる戦兎。

 

「なによ、邪魔すんなって言ってるでしょ!」

 

「やかましい。いい加減やめないと警備員(アンチスキル)が飛んでくるわ。明らかに負けたんだから負けを認めなさいって」

 

「・・・アンタに関係ないって言ってるでしょうが!!」

 

そう言って戦兎に向けて電撃を放つ。

 

「っ!あぶねえ!」

 

少年が戦兎の身を案じたのか駆け寄るが、電撃の方が早い。

 

「よっと」

 

しかし、戦兎は電撃を左手でなんでもないようにいなした。

 

「んな!?」

 

驚く少年をよそに、戦兎は美琴に近づき、手刀で美琴の頭を小突く。

 

「痛っ」

 

「落ち着きなさいって。あんな攻撃ばっかしてたら周りの電気系統に影響与えちゃうでしょうが。少しは考えろよ」

 

「・・・わかってるわよ、そんなの」

 

ほんとかよ、と戦兎は思ったがとりあえず冷静になったのを見て警戒を解いた。

 

「あのー、大丈夫っすか?」

 

「ん?」

 

後ろからの声に振り返ると、逃げ回っていた少年がこちらに近づいてきた。

 

「大丈夫大丈夫、そっちこそ平気か?」

 

「ああ、俺は大丈夫なんだけど・・・」

 

と少年は戦兎の左手をしきりに見ている。

 

「どうかしたか?」

 

「いや、あんな電撃をいなすなんてどんな能力なのかなーって」

 

「いやそれは君もだろ・・・そうだな、強いて言えば」

 

と戦兎は手に持っていたダイヤモンドボトルを振り、

 

「ダイヤモンドは電気を通さないんだよ」

 

「・・・は、はあ」

 

「ま、とりあえず今日はここまで。続きはまた今度、命にかかわらない範囲で俺のいないところで人様の迷惑にならないところでやってくれ」

 

「条件多過ぎよ」

 

「あははは・・・と、とりあえず、なんか助けられたみたいで、ありがとうございました、ええっと」

 

「桐生戦兎。戦兎でいいぞ」

 

「戦兎・・・、変わった名前っすね・・・」

 

そう言って少年は向き直り、名乗った。

 

「俺は上条。上条当麻です。」

 

桐生戦兎と上条当麻。

本来出会うはずのない二人の主人公が知り合った瞬間だった。

 

 

「ふむ・・・なかなか興味深い・・・」

 

とある一室。一台のPCの前で女性—木山春生はつぶやく。白衣を纏った姿は研究者然としており、とてもエキセントリックな言動をしていたようには見えない。

画面には、書庫(バンク)にアップされている御坂美琴のデータと写真が表示されていた。

 

「あれが常盤台の超電磁砲(レールガン)・・・そして」

 

PCには美琴の画像と共にもう一枚、監視カメラの映像なのか、若干ピンボケした写真が表示されていた。

 

「仮面ライダー。実に興味深い存在だ」

 

スマッシュと戦うビルドの姿が、表示されていた。

 




木山先生&上条さん登場。
これからどう話に絡んでくるか、楽しみですね。


クローズ見てきました。
キルバスいいわあ・・・
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