とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

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戦「天才物理学者であり、正義のヒーロー仮面ライダービルドである桐生戦兎は、万丈龍我と共に学園都市での生活を送っていた」

佐「戦兎さんは学校で先生に、万丈さんは警備員で新米警備員になり、あくせく働いて
いました」

戦「なんか昔話みたいな導入だな」

黒「あらすじ紹介の導入がマンネリ化してきたとおっしゃっていたじゃありませんか。
新しい風ですの」

戦「いやこの導入だと、俺と万丈がただ働いていることしか伝わってこないんだけど」

初「いや、割と的を得ていると思いますけど」

戦「何を言ってるんだか、俺がどういう存在か忘れたのか?愛と平和のための戦士、仮面ライダー!!」

佐「えっ、でもここ二話くらいまともに変身してませんよね?」

戦「それは・・・」

黒「その間やっていたことと言えば、用途不明のおもちゃ作って、女子中学生とおしゃべり・・・」

戦「いやそれは語弊がある!!」

初「挙句の果てには女子中学生と一緒に高校生を追い詰めるし」

戦「シリアスパートだったじゃん!!台無しにするようなこと言わないで!?あと枕に『女子中学生』ってつけないで!なんかはんっざいチックになるから!!」

美「そんな女子中学生と戯れる大人たちの話は、第13話を見なさいよ」

戦「俺はロリコンじゃなーい!!!」

佐黒初「(そこまでは言ってない(ませんの))」



第十三話 グラビトン事件 (後編)

「(新しい世界が来る。)」

 

少年は大通りを歩いていく。耳元には愛用のヘッドホンをつけ、黙々と。

 

「(僕が、僕を救う)」

 

学校でも、街に出ても目をつけられ、傷つけられる。能力がないから、それに、助けてくれるはずの存在が、助けに来ないから。

 

「いやー久しぶりですねセブンスミスト!新しい服ほしいと思ってたんですよね!」

 

「そうねー、パジャマなんか一着欲しいかな」

 

「白井さん来れないんですねー、残念です」

 

道路を挟んだ歩道で三人の少女が会話している。内一人の腕には、この街特有のシンボルが付いた腕章が取り付けられていた。

 

「・・・僕を救わなかった風紀委員(ジャッジメント)は、いらない・・・」

 

風に乗って消え入るような呟きを残した少年の手には、どこかで見たようなカエルの人形が握られていた。

 

「こっちこっちー」

 

楽し気な涙子の声が店内に響く。木山との一件以来となるセブンスミストは、放課後ということもあり大勢の学生で賑わっていた。

 

「初春さんは見たいとこある?」

 

「いえ、特に決まっていないんですけど・・・」

 

久しぶりの非番である初春と、最近悩んでいる様子の涙子に気分転換を、ということで集まったのだが、どうやら功を奏したらしく、2人とも表情は楽しげだ。

 

「うーいーはーるー!」

 

先行していた涙子が初春を呼ぶ。どうやら下着店でかなり派手な下着を勧めているのか、初春は顔を真っ赤にして首を横に振っている。

来てよかったなあ、なんて美琴が思っていると、不意に涙子が声をかけてきた。

 

「御坂さんは、何か探してるものありますか?」

 

「んー、さっきも言ったけど、パジャマかな」

 

本格的に暑くなる前に夏用のものを買いそろえておこうと前々から考えていたのだ。

 

「だったらこっちですよ!!」

 

下着店から一刻も早くはなれたいのか、初春が率先して店まで案内する。その様子を見ながら美琴と涙子は後をついていった。

 

「初春、楽しそうですね。ここのところ根つめすぎって思ってたから、いい息抜きになるといいな」

 

「そうね、それに、佐天さんもね」

 

「へ?」

 

自分の名前が出てくると思っていなかったのか、涙子は驚いた様子で美琴を見た。

 

「ここ最近、ちょっと悩んでるのかなーって。私の気のせいだったらあれだけど」

 

「わかっちゃってましたか・・・ありがとうございます。気遣ってくれて」

 

苦笑しつつ、美琴にお礼を言う涙子。いーのいーのと言いつつ美琴は店内を見回した。

 

「それに、色々お店観てるんだけど、あんまりいいの置いてないのよねー。みんなで回ればいいのみつかるかなって・・・」

 

とそこまで言ったところで美琴はとある店の前で立ち止まる。

そこは、パステルカラーかつカラフルな色合いの服を専門にした店で、所謂かわいい系の服を取り扱っているところだ。美琴の視線はその店頭に展示してある、ピンク地カラフルな色合いの花柄がプリントされたパジャマだった。

 

「(わー・・・可愛い・・・)」

 

見とれて思わず顔がほころんだ状態の美琴は、先を行く涙子と初春に声をかける。

 

「ねえねえ、これすっごくかわ」

 

「うわあー見てよ初春このパジャマ。こんな子供っぽいの、今時着る人いないよね?」

 

「小学生の時まではこういうの着てましたけど、流石に今は」

 

いい、まで言いかけた美琴の耳に二人のコメントが届く。認めれば楽なものを、変なプライドが邪魔して素直になれないお嬢様は慌てるように言い直した。

 

「そ、そうよねー!!中学生にもなってこれはないわよねー!!うん!ないない!!」

 

ごまかすために深く頷きながら言う美琴に涙子と初春は疑問符を浮かべる。

 

「あ、私ちょっと水着見てきますね」

 

「水着ならあっちにありましたよ。私も見てきます」

 

涙子の言葉に初春も反応し、2人して別の店へと向かう。ちらりと二人がいないことを確かめ、美琴は素早くパジャマを手に取る。

 

「(いーんだもん。別にパジャマなんだから人に見せるわけじゃないし・・・今の内に一瞬合わせるだけ!!)」

 

勢いよく試着室の隣にある姿見の前に躍り出た。

 

「何やってんだ?ビリビリ」

 

と、自分の身体の前にファンシーなパジャマを合わせた美琴の背後に、上条が立っていた。

 

「な、な、なんでアンタがここにいるのよ!?」

 

「いちゃダメなのかよ・・・」

 

一瞬でパジャマを後ろ手に隠した美琴に対し、上条は答える。と同時に二人ではない第三者がこちらに駆け寄ってきた。

 

「おにいちゃーん!!」

 

駆け寄ってきながら上条を呼んだのは、小学校低学年くらいの少女だった。ピンクの髪留めで二つに分けた髪を揺らしながら、美琴の方を見ると笑顔になる。

 

「あー、常盤台のお姉ちゃんだ!事故の時に助けてくれた!」

 

「事故・・・?ああ」

 

と思い出すのは、一か月くらい前になる例の銀行強盗事件。どうやらあの時の子供たちの一人らしい。

思い出したところで上条をみて美琴が言った。

 

「お兄ちゃんって、あんた妹がいたの!?」

 

驚くように聞く美琴に上条は否定する。

 

「違う違う。俺はこの子が洋服店探してるっていうから、ここまで案内してきただけだ」

 

「あのね!お兄ちゃんに連れてきてもらったんだ!わたしも、テレビのひとみたいにお洋服でおしゃれするんだもん!」

 

そう言われた少女は嬉しそうにはねながら美琴に話す。美琴は彼女の頭をなでながら言った。

 

「そうなんだ。今でも十分おしゃれで可愛いと思うわよ」

 

「・・・短パンの誰かさんとは違ってな」

 

「なによ!!やる気!?なんならいつぞやの決着をここでつけてもいいわよ!」

 

上条の呟きに反応する美琴。その様子を見た上条は溜息を吐きつつ美琴に言う。

 

「お前の頭ん中はそれしかないのかよ・・・大体」

 

辺りを見回して。

 

「こんな人が多いところで始めるつもりですかー?」

 

ぐっ、と黙る美琴をよそに、少女は上条のシャツの裾を引っ張った。

 

「ねえねえお兄ちゃん、あっち見たい」

 

「ん?おお、わかった」

 

と言って引っ張る手を取る上条は、そのまま連れられるように歩いて行った。

 

「お姉ちゃんばいばーい!」

 

と手を振る少女に笑顔で振り返す美琴だったが、反対につかんだままのパジャマを見て溜息を吐く。

 

あの子がこれに反応していなかったということは、あの子より子供っぽいのか、と。

 

 

「あれ、どうしたんですか?」

 

水着店から戻ってきた涙子と初春は、先ほどのお店の前で項垂れていた美琴を発見していた。

 

「・・・なんでもない」

 

と、なんでもありそうな顔で言われ、顔を見合わせる二人に、お手洗いに行くと言って美琴は離れていった。

 

「ひょっとして御坂さん、こういうの好きだったり」

 

「ま、まさかー」

 

などと話している間に見知った顔が二人に声をかけてきた。

 

「おー何してんだお前ら」

 

「あ、万丈さん」

 

声をかけてきた万丈に対し、涙子が言う。万丈は今日はオフなのか白色に派手な柄の入ったTシャツに、赤と黒の上着を腰に巻くというスタイルで二人に向けて手を挙げていた。

 

「私たちは買い物ですよ。万丈さんこそ、何やってるんですか?」

 

「お前らと同じだよ。この間服焦がしちまったから代わりのを買おうかと思ってなー」

 

その言葉に涙子は溜息を吐く。

 

「万丈さん。ここ女性の服しか売ってませんよ?」

 

「マジか!?無駄足じゃねえかよ・・・」

 

「普通、事前に調べたりでわかるはずなんですけどね・・・」

 

万丈の言葉に初春も困ったように言う。

 

「はあ、じゃあ男もんが売ってる服屋ってどこにあるんだ?」

 

「えー?それくらい自分で調べてくださいよー、あのバイクに変形する携帯で」

 

「そうしたいのは川々なんだけどよ、戦兎に朝取られちまって持ってねえんだよ」

 

山々って言いたいんだろうな、と思いながら涙子はそっと携帯を取り出した。

 

「はあ・・・」

 

手を洗い、ハンカチで濡れた手を拭きながら美琴は嘆息した。鏡を一瞥してからトイレを出る。

 

「アイツ相手だとどうも調子が狂うというか、ペースが乱されるというか・・・」

 

ぶつぶつと呟く美琴だったが、視界の端で緑色を捉えた途端、ハッとなって振り向いた。

 

「(ゲコ太!?)」

 

見ると、階段の昇る男子学生の手に、緑色のカエルを模した人形が抱かれていた。美琴お気に入りのキャラクター、ゲコ太かと思って振り向いたが、

 

「(じゃないか・・・)」

 

がっくり、と肩を落とす。色こそ緑だが、ゲコ太に似ても似つかぬ、どちらかと言うとリアル志向の人形だった。

 

「(よく見たら全然違うじゃない・・・戻ろ)」

 

そう思い美琴は踵を返した。カエルに夢中過ぎて、女物専門のセブンスミストに男子学生が、しかも人形を持っていることへの違和感は感じていなかった。

 

 

「なんで馬鹿がここにいるのよ」

 

「筋肉つけろコラ」

 

お手洗いから帰ってきた美琴は万丈を見るやいなやそう言った。中学生にため口を使われるのはもういいのか・・・と初春が思っていると涙子が声をかけてきた。

 

「初春、携帯鳴ってない?」

 

「えっ?あ、ほんとだ・・・・、はいもしもし・・・」

 

「初春!?グラビトン事件の続報ですの!!」

 

かけてきたのは、風紀委員(ジャッジメント)の詰所にいる黒子だった。すさまじい音量で話したためか、美琴達も話をやめて電話の声を聴く。

 

「学園都市の衛星と桐生さんのペットロボが、重力子の爆発的加速を観測しましたの!!」

 

「!!」

 

黒子の言葉に初春だけでなく、美琴や涙子の顔にも緊張が走る。

 

「か、観測地点は!?」

 

「今近くの警備員(アンチスキル)を急行させるよう手配してますの!!あなたは速やかにこちらに戻りなさい!」

 

矢継ぎ早に言葉を紡ぐ黒子に初春は尋ねるが、黒子は答えず、後輩の退避を命じた。電話の向こうに負けないくらいの大声で初春は怒鳴る。

 

「ですから!!観測地点を!!」

 

「第七学区の洋服店!!」

 

その怒鳴り声に張り合うかのように続けられた言葉を聞き、初春の表情が凍る。

 

「セブンスミストですの!!!」

 

「セ、セブンスミスト・・・」

 

今まさにいる地点を言われ、一瞬不安がよぎる。が、すぐに己の責務―風紀委員(ジャッジメント)としての自分がこぶしを握り、言葉を放った。

 

「ちょうどいいです。私、今そこにいます!すぐ避難誘導を開始します!!」

 

そう言うが早いが、初春は二つ折りの携帯の通話ボタンを押し、美琴、涙子、万丈を見る。

 

「みなさん、聞いてのとおりです。犯人の次の標的は―この店です!」

 

 

「初春!?初春!!」

 

切れた電話に呼びかけている黒子をよそに、戦兎はパソコンのGPSアプリを立ち上げる。先ほど黒子が言っていたとおり近くの警備員(アンチスキル)を急行させているが、それに万丈が該当しているかもしれないと考えていた。

 

「でも、万丈さんが向かっても馬鹿だからダメなんじゃ」

 

「確かにな。万丈には爆発物を処理するような知恵はないが、変身すれば爆発から周囲を守るくらいの芸当は訳ないんだよ」

 

固法の言葉に戦兎はキーボードを叩きつつ返す。グレートクローズドラゴンの素体であるクローズドラゴンにはGPS電波の送信機構が備わっている。傍にいるドラゴンが使っている衛星回線を利用し、万丈の位置を特定しているのだ。

 

「ってあいつまさにその現場にいるじゃねえか!!」

 

これだから馬鹿は怖い、と万丈の破天荒っぷりに今は感謝しつつ、ビルドフォンで万丈にかける。

 

「――♪」

 

持ってきた鞄からお馴染みの着信音が鳴った。戦兎の物は戦兎自身が持っている。つまり、

 

「ってあいつの俺が持ってるんだったーーーー!!!!」

 

「何ふざけてるんですか!!」

 

くそーーー!と言いながらビルドフォンを手に走り出す戦兎。彼よりも早く瞬間移動で飛び出した黒子は、短距離のテレポートを連続で発動しながら現場に向かっていた。

 

「(今回のターゲットは・・・まさか・・・)」

 

嫌な予感を振り払うかのように、黒子は数十メートル先に消えた。

 

「なんだか凄いことになってる・・・」

 

人ごみの中、涙子は見上げる。眼前には先ほどまでいたセブンスミストがあり、今も続々と学生客や店員が避難している。

 

「初春・・・大丈夫かな・・・」

 

そう呟いた涙子は、先ほどの会話を思い出していた。

 

『犯人の次の標的はこの店です』

 

先ほどの電話と、初春の言葉の重みからそれがグラビトン事件のことであることは、あの万丈ですら理解していた。

 

『爆弾が爆発するってのかよ!?今すぐ全員外に出さねえとやべえ!』

 

『馬鹿!声が大きいわよ!!パニックになったらどうするの!?』

 

美琴が万丈に注意する。さすがにこんな状況ではいつものようなやりとりもせず『わ、わりい・・』と謝罪しているだけ成長がみられるが。

 

『とにかく、騒ぎにならないように避難誘導をしましょう。御坂さん、協力してもらえますか?』

 

『わかったわ』

 

初春の言葉に即答する美琴。次いで初春は涙子の方を向き

 

『佐天さんは避難してください』

 

『えっ・・・、うん、わかった。気を付けてね』

 

一瞬言葉が詰まったが、涙子はそう答えた。そんな涙子に気付かず初春は万丈に指示していた。

 

「・・・私だけ避難、か」

 

頭では理解できる。美琴はレベル5で年上。普通の中学生よりも多くの場数を踏んでいる彼女に協力を仰ぐのは当然だし、万丈は警備員(アンチスキル)だ。そう、一般人である自分が避難するのは当たり前だ。

でも、

 

「私に能力があったら頼ってもらえたのかな」

 

その呟きは、誰にも届かなかった。

 

『――申し訳ございません。店内で、電気系統のトラブルが発生したため、本日の営業は終了させていただきます。店内のお客様は落ち着いて正面入口より退店をお願いいたします』

 

「出口はこちらでーす。落ち着いて出てくださーい。外に出たら、十分に離れてくださいねー」

 

入り口付近で最後の一人の誘導を終えた美琴は、人ごみに倣って店から離れる。店内には今、最後の確認をしている初春と、爆発物を探している万丈だけが残っているはずだ。

 

「そろそろ出てこないとやばいんじゃ・・・」

 

そう呟く美琴を目指し、とある少年が向かっていた。

 

「ビリビリ!」

 

そう声をかけた来た上条は、美琴の返答を待たず尋ねる。

 

「あの子みなかったか!?」

 

「あの子って、一緒じゃなかったの!?」

 

「外にいないんだ、ひょっとして、まだ中に・・・」

 

上条の言葉を聞いた美琴は、文句の一つでも言ってやろうかと一瞬口を開きかけたが、すぐに引き返すように走り出す。

 

「何やってんのよもう!!」

 

「ちょ、まってって!!」

 

慌てた上条も店内へと走る美琴を追いかけていった。

 

「駄目だ!見つかんねえ!」

 

爆発物を探していた万丈の言葉を初春は聞いた。一緒に探していたのか、グレートクローズドラゴンが傍で浮遊している。

 

「そうですか・・・とりあえず白井さんに避難完了を知らせましょう。そしたら私たちも避難を」

 

そう言って携帯を取り出し、登録してある黒子の番号に発信する。1コールを待たずに相手は出た。

 

『初春!?』

 

「はい、避難は完了しました。店内は大丈夫です」

 

『今すぐそこを離れなさい!!』

 

「えっ?」

 

予想に反した指示に初春は戸惑う。そんなことはお構いなく黒子はまくし立てた。

 

「過去の事件の人的被害は風紀委員(ジャッジメント)だけですの!!犯人の真の狙いは、観測地点周辺の風紀委員(ジャッジメント)!!今回のターゲットはあなたですのよ!初春!!」

 

「そんな・・・」

 

表情を凍らせた初春を見て万丈が声をかけるが、その視線はすぐ初春の背後に向けられた。

 

「なあ、あれってお前らと話してたガキじゃねえの?」

 

「え?」

 

振り返ると、銀行強盗の時の女の子が「おねぇちゃーん」と言いながらこちらに駆け寄ってきていた。

疑問よりも、逃げ遅れていた子供が見つかったことへの安堵が大きかったからか、その手に抱かれたカエルのぬいぐるみに違和感を持てなかった。

 

「これ、眼鏡をかけたお兄ちゃんが、お姉ちゃんに渡してって!」

 

はい!と差し出されたぬいぐるみに反射的に手を伸ばした初春は見た。

 

ぬいぐるみの顔が不自然に内側へめり込んでいくのを。

まるで、重力によっ無理やり収縮してるかのように。

 

「ッ!!」

 

咄嗟にぬいぐるみを後方へと投げ捨て女の子を守るように抱き、すぐ近くの万丈と、腕の中の子を探しに来たと思われる美琴と上条に向けて警告した。

 

「離れてください!!あのぬいぐるみが爆弾です!!」

 

「くそッ!!」

 

万丈は言いながらビルドドライバーを取り出しつつ、初春の前に立ちふさがる。変身して爆発から二人を守ろうとしているようだ、が。

 

「間に合わねえ・・!!!!」

 

ドラゴンにボトルを差し込んだ時点でぬいぐるみ、正確には中に仕込まれた金属片が膨張する寸前だった。万丈はドラゴンをつかんだまま二人に覆いかぶさるように背を向ける。

一方、美琴もただこちらに向かって走り出したわけではなかった。

 

「(超電磁砲(レールガン)で爆弾ごと!!)」

 

そう思考しながらポケットのコインを取り出す、が

 

「しまっ!!」

 

焦りからか、コインは指の間を滑り落ちてしまう。慌ててもう一枚取り出そうと思うも今のが最後の一枚だと気づき、血の気が引いた。

 

「(やばい!!)」

 

コインの落ちる音が鳴り、冷や汗を浮かべる美琴の視界が白く染まりー

 

ドゴン!!

 

という爆発音と共に、セブンスミスト上階の壁が吹き飛んだ。

 

「危険です!!下がって!!」

 

「離れてください!!二次災害の可能性があります!!」

 

急行した警備員(アンチスキル)が声を張り上げる。事前に避難していた客や店員は、一瞬にして野次馬へと変貌した。

 

「爆発したぞ」

 

「まだ中に人がいるんじゃない?風紀員の・・・」

 

「これってやっぱり、例の連続爆破事件の」

 

そんな喧騒から離れた一人の少年がいた。近くの路地に入り抑えられない感情を口元に表しつつ、歩く。

 

「(いいぞ・・!すごい、素晴らしい!徐々に強い能力を使いこなせるようになってきた)」

 

思わず笑みを漏らしながら、空を見上げ言う。

 

「もうすぐだ・・・!もう少し数をこなせば、無能な風紀委員(ジャッジメント)も、あの不良どもも、みんなまとめて吹き飛ば!??」

 

後方からの衝撃と共に、少年は思わず転倒する。

 

「いったい、なにが・・・」

 

何事かと振り向くと、そこには三人の人間が立っていた。

 

「はあーい?何の用かは」

 

「言わなくてもわかるよな?」

 

「爆弾魔くん?」

 

現場から店内に引き返した、常盤台の超電磁砲(レールガン)に見知らぬ二人の大人。一人は警備員(アンチスキル)の制服を着込み、もう一人は肩に謎の機械を乗せていた。

 

「・・・何のことだか、僕にはさっぱり・・・」

 

「まあ?威力だけは大したもんよね。でも残念。死傷者どころかかすり傷一つ誰も負ってないわよ」

 

白を切ろうとする少年に向かって、美琴は腕を組みつつ言う。想定外の言葉に思わず少年は食って掛かった

 

「そ、そんな馬鹿な!!僕の最大出力だぞ!!?」

 

「へえ?あっさり自白してくれるのね?」

 

思わず出た言葉に美琴はにやりと笑う。

 

「いやあ・・・外から見てもすごい爆発だったんで・・・」

 

「自白なんかなくても、お前が犯人だってのは分かってんだよ!なあ戦兎!」

 

「ちょっと、俺が説明しようと思ってたのに出鼻くじくんじゃないよ。まったく・・・」

 

少年の言い訳を遮った万丈を戦兎がはたく。

 

「君の能力は金属の粒子の内、重力子を爆発的に加速させることによってそれを収縮させ、一気に膨張させることによって爆発させることだ。重力子の操作は遠隔で出来るみたいだけど、その際に微弱な重力波の乱れ、電磁波の揺らぎが生じるんだ。そして、その乱れは爆発の規模が大きければ大きいほど強くなる。」

 

言いながら戦兎はクローズドラゴンを手に乗せ、続ける。

 

「あとは、衛星回線を通してその乱れの道をコイツにたどらせれば、爆弾魔につながるってこと。くう―!すごいでしょ!最高でしょ?天っ才でしょ!!」

 

一人でテンションを上げる戦兎を睨みつつ、少年は落とした鞄に手をかけた。

 

「い、いやだなあ・・・ぼくはただ、あんな爆発じゃ・・・」

 

正しくは中に入っていた金属製のスプーンに手をかけ、

 

「中の人は無事じゃすまないんじゃないかって!!」

 

三人の眼前へと投げた。と同時に能力を使って重力子を操作させようとして

 

ズドン!!

 

「うわあああーーー!!!!???」

 

美琴の放った超電磁砲(レールガン)によって、スプーンは融解した。

 

「・・・・・・」

 

つまらなそうに電流を迸らせる美琴。二人の大人がぱねえわー、と若干ビビっている。

 

「・・・超電磁砲(レールガン)・・・、今度は常盤台のエース様か・・・」

 

勿論直撃はしていないが、余波で数メートル転がった少年が膝をつき呟いた。

 

「・・・いつもこうだ、何かをやっても、力で地面に・・・ねじ伏せられる・・・」

 

震えながらも、その眼に憎悪を宿し、美琴をにらみつける。

 

「殺してやる・・・!お前みたいのが悪いんだよ!!風紀員も同じだ!!力のあるやつはみんなそうだろうがーー!!」

 

少年の呪詛のような言葉を受けつつ、美琴は進む。少年の眼前まで来たところで、前髪付近に紫電が走った。

 

「おい、電撃はやべえんじゃ」

 

「万丈」

 

止めに入ろうとする万丈を戦兎が制する。

 

「大丈夫だ。あいつは、『力の意味』をちゃんと分かってる」

 

「戦兎・・・」

 

「ちから、ちからって・・・」

 

「っく!!」

 

美琴は少年の襟をつかみ、強引に立たせる。能力が飛んでくると予想した少年の顔から血の気が引いた。

 

「・・・歯を食いしばれッ!!!」

 

ばちん、という人を殴った鈍い音と、少年の付けていたヘッドホンが転がる乾いた音が、路地裏に反響した。

 

「・・・ったく」

 

「・・・・・・・」

 

踵を返す美琴に対し、何も言えずただ震える少年。頬を抑える彼に、いつの間にか瞬間移動してきた黒子が言う。

 

「殴られて当然ですわ。あなたみたいな能力を言い訳にするのは、一番嫌いなタイプでしょうから。」

 

腰に手を当て、戦兎と万丈に合流する美琴を見やり、続ける。

 

「ご存じかしら?常盤台の超電磁砲(レールガン)は、もともとはただのレベル1でした。」

 

その一言に少年は黒子を見上げる。自分よりも小さい少女の言葉を、ただただ聞く。

 

「並々ならぬ努力の末に、レベル5と呼ばれる力を手に入れたんですの。でも―」

 

そう言って初めて黒子は少年を見下ろす。その口元に笑みを浮かべ

 

「たとえレベル1だったとしても―お姉様はあなたの前に立ちふさがったでしょう。」

 

少年は黒子の言葉に歯噛みする。悔しさ、憎悪、そして、嫉妬。

自分よりも年下の少女の強さの前に、ただただ歯を食いしばり、呻く声だけが聞こえた。

 

「白井さーん!」

 

爆発現場に戻った黒子を初春が呼ぶ。

 

「初春!まったく、心配しましたのよ?」

 

「ごめんなさい・・・でも、御坂さんが助けてくれたんですよ!かっこよかったよね?」

 

「うん!」

 

と傍らの少女と笑う後輩に苦笑する。これだけの爆発を目の前にしたというのに、さすが風紀委員(ジャッジメント)ともなれば、メンタルも強くなくてはいけません、と。

 

「それにしても・・・」

 

と改めて爆発現場を見渡す。爆発から初春たちをかばったのは美琴だと、彼女たちは証言した。万丈に関しては後ろを向いていたためわからないと言っていたが、あの場でこんなことができるのは確かに美琴くらいだろう。

しかし

 

初春たちが立っていた場所以外、煤と焦げで変色しているのに対し、初春たちの周りだけ何ともない

 

「いったい、どんな風に能力を使えばこうなりますの?」

 

その疑問に、しかし答える者はいなかった。

 

「はあー、疲れた・・・」

 

「ったくひどい目に遭った・・・戦兎―カップ麺食う?」

 

マンションに帰宅した戦兎と万丈。とりあえずの現場検分と事情聴取を終え帰宅したらもう深夜と呼ばれる時間帯だ。

 

「いやいい・・・あ、そういえばこれ」

 

と思い出したかのように戦兎はポケットからビルドフォンを取り出し、万丈に向けて放る。

 

「あー!やっと帰ってきた!これなくて今日大変だったんだからな!」

 

「うるさいよまったく。ちゃんとパワーアップしといたから文句言うんじゃないよ。」

 

それよりも、と戦兎は傍らに置いておいたアイテムを―スリープモードにしたクローズドラゴンを手に取り、万丈に言う。

 

「そろそろ真剣に元の世界に帰る方法を探すぞ。」

 

「・・・おお、やっとか」

 

真剣な面持ちの戦兎に万丈もいつになく真剣に応える。

 

「で?どうするんだ?」

 

「まずはスマッシュが発生している原因を突き止める」

 

それは、かつて涙子が指摘したアプローチだ。二人の世界にしかいないはずの異形、スマッシュ発生の原因、もっと言うと

 

「ネビュラガスがなぜ存在しているのか、をな」

 

「簡単そうに言うけどよ、わかんねえんだろ?」

 

「まあなー」

 

戦兎もただただ女子中学生相手に教鞭をとっていたわけではなかった。スマッシュに変身した被害者への調査や、血液など各種身体検査、現場検証など主に黄泉川と小萌の協力を仰いで地道に行っていた。しかし、

 

「確かに現場にはネビュラガスが残っているわけでもなかったし、変身した学生たちも、ハザードレベルはスマッシュ変身の為の基準値に達してるものの、特別な反応などは特に出てこなかった」

 

「ガン詰まりじゃねえか」

 

「どん詰まりな。語感はあっているように聞こえっけど」

 

そう言って手元のクローズドラゴンのスリープを解除する。ドラゴンは音楽のような鳴き声と共に早速室内を飛び回る。

 

「それ、俺のドラゴンとおんなじやつじゃねえか。お前もそれ使うのか?」

 

「いんや、これは変身の為に使ってるわけじゃないんだよ。」

 

疑問符を浮かべる万丈を放置しつつ、戦兎は飛び回る龍を見て思う。

 

必ず帰る、と。

 




めっちゃ期間空きました。もし楽しみにしていてくれた方々がいたらごめんなさい。年度末忙しくて。
グラビトン事件、これにて終幕です。裏話をしますと本当は犯人の眼鏡君にスマッシュ化してもらうパターンも考えていたのですが、このシーンは美琴の「能力への感情」が如実に表れる原作でもなかなか好きなシーンなので改変せずに書きました。変身シーンがなくてごめんね。

さて次回からいよいよ第3章後半戦、レベルアッパー事件に突入します!!ここからビルド色も濃くなってきますよ!年度内にはある程度書ききりたいな、なんて。

ここからは謝辞を。

いつも応援してくださっている方々のおかげで、50,000UA突破しました。ありがとうございます。これからもマイペースに書いていくのでよかったらおつきあいください。


p.s
Vシネ第二弾、やっぱりカシラでしたね。
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