とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

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万「銀河最強の筋肉野郎、万丈龍我とサブキャラの物理学者は、学園都市で日夜悪と戦っていた!!学園都市をきょ、きょ、おい戦兎これなんて読むんだよ」

戦「自分で台本変えといて読めないとか何なの?馬鹿なの?」

黄「学園都市を恐怖に陥れたグラビトン事件。その犯人をついに突き止め、必殺のライダーキックで―っておいコラ万丈、お前子どもに手をあげたじゃん?」

万「ちげーよこれはあくまであらすじ紹介なんだよ!!本当はビリビリが一発殴っただけだって」

戦「いやそれもよくないけどね?」

黄「ていうかいくら能力者とはいえ、レベル5と仮面ライダー二人に追い詰められるとか控えめに言って絶体絶命じゃん」

戦「さすがに子ども相手にやたらと変身なんかしませんよ」ていうか何でここに?」

黄「最近私出番なかったじゃんか?こういうところで出とかないといつか忘れられかねんからな」

戦「意外に狡猾な思考!!」

万「ついに二人が元の世界に帰るために動き出す!どう動くかは第十四話で!!今ならプロテインプレゼントするぜ!」

戦「あるわけねえだろ」


第十四話 噂とうわさ 1

【ready go!ボルテックフィニッシュ!!】

 

深夜の学園都市、第17学区の工業地帯にテンションの高い音声と共に爆発音が響き渡る。

音の主―ビルドドライバーを腰に巻いた仮面ライダービルド/桐生戦兎は召喚したエンプティボトルを爆発したほうへ向け、シールディングキャップを開く。見慣れた成分吸収の発光を見届け、マスク内のマイクへと指示を飛ばす。

 

「17学区のほうは片付けました!被害者の搬送をお願いします!!」

 

「了解じゃん!!」

 

通信相手の黄泉川が言うやいなや、警備員(アンチスキル)用の特殊車両のサイレンが遠くから聞こえてきた。スマッシュ化していた学生を見つけやすい通りまで運んだところでベルトからボトルを抜き、変身を解く。

 

「万丈、そっちはどうだ?こっちははずれみたいだ」

 

万丈のクローズドラゴンに搭載された無線にビルドフォンでかけ、呼びかける。

 

「いま!!それどころじゃ!!ねえ!!」

 

珍しく息を荒くしている万丈に戦兎は言う。

 

「ちなみに俺が倒したのは電車のスマッシュだった。お前のが海賊だと嬉しいなあー」

 

「だからっ!!!そんなこと言ってる場合じゃねえんだよ・・・!って気持わりっ!!こっちくんな!!」

 

その一言を最後に通信が切れた。どうやら気が散るため強引にきったらしい。

 

「お-い?筋肉馬鹿?、ったく、何のスマッシュと戦ってんだか」

 

助けにいってやるか、と思いビルドフォンをバイクへと変形させ、跨る。マシンビルダーに取り付けられている画面には、学園都市全域のマップと、スマッシュの位置を示すマーカーが表示されていた。

 

「さて、今日こそ原因究明といこうか!」

 

と意気込みつつ、戦兎は相棒の救出へと向かうのであった。

 

 

『これにはネビュラガスの発生、急激な上昇を感知するセンサーを組み込んでいる』

 

遡ること1週間前。グラビトン事件解決後の自室で戦兎は言った。

 

『マジか、そういや前ん時は美空にスマッシュ情報とか言って教えてもらってたけど、今はそんなことできねえもんな』

 

『ああ、美空のネットアイドルとしての情報収集力でスマッシュの目撃情報を集めてもらってたんだが、今の俺達にはそんなことできない。どうしても風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)の情報網を頼らざるを得ない』

 

しかし、

 

『スマッシュが現れるのはほぼ俺たちがこの世界に来たことが原因だろう。この街の人達にはなんの関係もない。被害の出ないようスマッシュを倒し、原因を突き止めるのは俺たちの役目だ』

 

戦兎の言葉に万丈は頷く。

 

『もちろんだ。誰だか知らねえが黒幕がいたら必ずぶっ飛ばしてやる!』

 

『ああ、そこでこいつだ』

 

そう言ってPCを立ち上げ、画面を向ける。ディスプレイには学園都市全域の地図と人口衛星らしき写真、何らかの数値を現したグラフが表示されていた。

 

『なんだこれ?あれか、GNPか!!』

 

『なんでこのタイミングで国民総生産だよ。じゃなくて』

 

と戦兎は説明を続ける。

 

『これは学園都市内でのネビュラガス探知機だ。監視衛星と、各地に設置したセンサー、それと、どういうわけか街中に漂ってるシリコンを利用してネビュラガスの濃度を感知している。ネビュラガスが少しでも発生したらセンサーからコイツに信号が送られる仕組みだ』

 

戦兎は知る由もなかったが、街中に漂うシリコンは滞空回線(アンダーライン)と呼ばれるもので、学園都市統括理事長の目となっているものだ。戦兎は空中に漂うそれらが量子信号を出していることに注目し、異常事態が起きた際の信号パターンをクローズドラゴンに記憶させ、有事の際にそのポイントを割り出せるように設計し直した。

当の本人は学園都市すげえな、としか思わなかったようだが

 

『これでスマッシュが現れたらすぐに現場に向かえて被害を減らせるし、上手くいけばスマッシュになる前に助けられるかもしれない』

 

『なるほどなー。・・・でもそれと元の世界に戻ることと何の関係があるんだ?』

 

万丈の言葉に戦兎は答える。

 

『スマッシュになるにはネビュラガスが必要だ。つまり変身者は直前その身をネビュラガスに晒されるはずだ。それが自然発生しているのか、あるいは―』

 

『!!そうか!』

 

万丈の反応に戦兎は頷く。

 

そう

 

『人為的なものなら、そいつは俺たちの世界に大きくかかわりがあるはずだ。そいつを捕まえて原因を突き止めるんだ!』

 

「キモイキモイキモイ!!!!!」

 

万丈は、仮面ライダーになってから最も苦戦していた。

生身でスマッシュと戦った時、ナイトローグ、ブラッドスタークとの死闘、かつて敵対していたグリスや鷲尾兄弟が変身するヘルブロス、最凶の敵エボルト。

今までの戦いも生半可なものではなかったが、今目の前にいる敵は別格だった。

何故なら、

 

「無理無理無理無理!!!タコキモイィィィ!!」

 

その悲鳴に反応するかのように敵―オクトパススマッシュは腕から伸ばしたたこ足状の触手を万丈に振るった。

 

「ウオォォ!!?」

 

変身する余裕もないのか、ドライバーをつけたまま逃げ惑う。持ち前の運動神経でアクロバットに避けていく万丈。触手はかなりの速さで襲い掛かってくるが、普段の万丈からしたら避けることなど朝飯前のはずだ、が、

 

「なんでだ!?俺こんなにタコ嫌いだったか!?」

 

「何してんだよそこの馬鹿」

 

普段の燃えるような闘志はどこへやら。ギャーギャー叫びながら逃げ惑っている万丈。そこにマシンビルダ―で駆けつけた戦兎がドライバーを取り出しつつ言った。

 

「戦兎お!!なんかわかんねえけど俺コイツ駄目だ!!さっきから鳥肌が止まらねえ・・・」

 

「はあ?何言ってんだお前・・・あ」

 

そこまで言いかけ、とあることに気付く戦兎。

 

「そういえば、スタークだった時のエボルトもオクトパスライトの攻撃は避けられなかったし、マスターもたこ足苦手とか言ってたな」

 

おそらく万丈の中のエボルトの遺伝子が作用しているのだろうが、ここまで怖がるのは異常だ。恐らくは遺伝子情報の内タコに関する部分が顕著に表れているのだろう。

もしかしてこれならエボルトもっと楽に攻略できたんじゃ・・・と考えていると、

 

「ッ!!あぶねえ!!」

 

言葉と共に万丈が戦兎を突き飛ばした。一瞬遅れて高速で振るわれた触手が戦兎のいた地面に叩きつけられる。

 

「あっぶねえー・・・、サンキュー万丈」

 

言って、手に持っていたビルドドライバーを腰に装着する。

 

「さっ、とっとと倒しちまうぞ」

 

「いやいや!俺は無理だ!今回はお前に任せる!!」

 

「ふざけんな!近づけないなら遠距離でサポートしなさいよ!なんのためにツインブレイカー渡したと思ってんだよ!」

 

「そ、そっか!よし!!」

 

ようやく決心が固まったのか、ポケットに入れていたらしいグレートクローズドラゴンを取り出し、同じく取り出したボトルを取り出す。

 

【ゴリラ】【ダイヤモンド】

 

【ベストマッチ!】

 

【覚醒】

 

【グレートクローズドラゴン】

 

装填と共にボルテックレバーを回し、スナップライドビルダーを展開、それぞれのアーマーが形成されていく。

 

「「変身!!」」

 

【輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド】

 

【Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeah!】

 

ビルドゴリラモンドフォームに変身した戦兎はダイヤモンド側のハーフボディの肩部分―BLDプリズムショルダーからシールドを展開し、襲い掛かる触手から身を護る。

 

「攻撃は俺が防ぐ!お前は援護射撃しつつ隙ができたら突っ込め!」

 

「突っ込むのは無理だー!!」

 

返しつつ万丈はスナップライドビルダーを展開。右腕に武装を召喚する。

 

『ツインブレイカ―』

 

青と白の銃機構を兼ね備えたパイルバンカー、ツインブレイカ―の砲身、レイジングビーマーを正面に向け、。

 

『ビームモード』

 

音声と共に万丈はトリガーを引き、レイジングビーマーからエネルギー弾を連続で放つ。

 

「オラオラオラオラぁ!!!」

 

威勢のいい声と共にオクトパススマッシュにヒットしていく光弾だったが、

 

「ちょっ、おまっ、あぶねえよ!!」

 

「しょうがねえだろ!間にいるお前が悪い!」

 

「攻撃を防いでるからだろうが!!しっかり狙えノーコンバカ!」

 

「誰がバカだ!!」

 

「シャー!!!」

 

言い合っている二人の隙をついて、オクトパススマッシュは触手で戦兎の脚を掴んだ。

 

「しまった!」

 

「戦兎ぉ!?」

 

バンジージャンプのように片足をつるされた状態の戦兎が宙を舞う。さすがに喧嘩は一時中断したのか、戦兎を助けるため光弾で触手を狙う万丈だったが

 

「このっ!くそっ!!オイちょこまか動くなよ!」

 

「コイツに言えぇぇぇ!!!」

 

大雑把な性格のゆえんか、ビームはあらぬ方向に飛んでいく。

 

「!いや万丈!そのまま打ち続けろ!!」

 

「はあ!?そんなことしたら当たっちまうぞ!?いいのかよ!!?」

 

「いいからやれ!!」

 

上に下にはねる戦兎の言葉に従い、万丈は戦兎の脚を離さない触手を狙い、連続してビームを放った。

と同時に戦兎は先ほどと同じようにダイヤモンドのシールドを展開し、無数に飛来してくる光弾の一つに向ける。

 

「反射は物理学の基礎なんだよっ!!」

 

着弾の寸前に戦兎はシールドの角度を変えた。正確には反射面を下方、オクトパススマッシュに向けてずらしたのだ。ツインブレイカーから放たれた光弾がそれに当たり、

 

「グギャア!!」

 

結果としてオクトパススマッシュの腕、触手を伸ばしているたこ足にヒットし、触手が引きちぎられた。

 

「よっと!」

 

空中で体制を直して着地した戦兎に万丈が駆け寄る。

 

「どーよ!!俺の?大・乱・射!!イテッ」

 

「乱射の時点でまったく自慢できないでしょうが。さっさと決めるぞ」

 

「おう!」

 

戦兎はゴリラハーフボディの腕でボルテックレバーを回し、

 

【ツイン!!】

 

万丈はドラゴンフルボトルと、先日戦兎が復元したドラゴンスクラッシュゼリーをツインブレイカーのボトルスロットに装填する。

 

【ready go!ボルテックフィニッシュ!!】

 

【ツインブレイク!】

 

先ほどまで戦兎の脚に絡みついていた触手をダイヤモンドに変換し、右腕であるサドンデストロイヤーを叩きつけて発射。万丈もツインブレイカーからドラゴンを模したエネルギー弾を放つ。

オクトパススマッシュは二大必殺技の衝撃に耐えきれず、爆発。フルボトルの元となる成分の粒子が砂埃に交じって二人の方へ向かう。後に残っていたのは、

 

「・・・またハズレか」

 

戦兎は呟きと共に向けていたエンプティボトルを降ろす。

そこには見知らぬ男子生徒が倒れていた。

 

「んーっ」

 

「ふわぁ・・・」

 

「はあ・・・」

 

「・・・随分と疲れてるわね、アンタたち」

 

伸びをする黒子、あくびを漏らす万丈、肩を落とし溜息を吐く戦兎を見て美琴が言う。

 

「・・・白井はあれか、例の爆弾魔くんの取り調べが上手くいってないのか」

 

「ええ・・・、どうしても信じられませんの。介旅初矢がレベル2ということが」

 

「「レベル2?」」

 

黒子の言葉に戦兎と美琴は同時に反応した。

 

「そんな・・・、あの破壊力、少なくともレベル4はあったはずよ?」

 

「ああ。とてもレベル2の所業とは思えないな」

 

「ええ、つまりこれはー、これはー・・・、どういうことなんでしょう?」

 

「いやそれを聞いたんだけど」

 

うーんと唸り続ける三人を見て、万丈は思わず質問した。

 

「なあ、レベル2ってそんなに弱いのか?」

 

「わたくしが言うのもどうかと思いますが、決して強いとは言えませんわ・・・レベル1の念動力でスプーンが曲がるとすれば、レベル2ではせいぜいボールや筆箱なんかを数10センチ浮かせることができる、といった感じですわね」

 

「ふーん。レベル2ってもっと強いと思ってたぜ」

 

「なんでだよ?」

 

戦兎の問いに万丈は答える。

 

「いつだったか、スカイウォールのない世界の仮面ライダーたちがそんな感じだったろ?エグゼイドだっけか?」

 

「万丈・・・お前・・・!」

 

がしっと両腕で万丈の肩をつかむ戦兎

 

「ちゃんとエグゼイドのこと覚えてて、ちゃんと言えたんだな!えらいぞ!!」

 

「馬鹿にすんな!!」

 

ギャーギャー言い合う大人二人。何やってんだかこの社会人はと思いつつ美琴は先ほど万丈が言った言葉について聞く。

 

「エグゼイドってなによ?」

 

「ん?ああ、前に違う世界のライダーたちと共闘したことがあってな。エグゼイドはその時に知り合った仮面ライダーのこと」

 

まあそのあとちゃんと会ってはないんだけどなーと懐かしそうにつぶやく。

 

「ふーん。ってちょっと待った。アンタたち前にも違う世界に行ったことがあるの?」

 

「おおあるぜ!スカイウォールがなくて、火野さんとか、あとは馬鹿な神のいる世界な!!」

 

「俺はあの辺のライダーとは絡みなかったからなー、ベルトの仕組みとかその辺、聞けばよかった・・・・」

 

「いや思い出話じゃなくて、その時の方法で帰れないの?」

 

美琴の言葉に大人二人が固まる。

 

「「その手があったか」」」

 

「今の今まで気付かないなんて・・・天才が聞いて呆れますわね」

 

「べっべっべっ別にぃ?気付いてないわけじゃなかったよぉ?だって俺天っ才物理学者桐生戦兎だしぃ?たたたたたただ?他のことでちょーっとだけ?ちょーっとだけその可能性を考えるのを後回しにしてたと言いますか、そう、これから考えようと思っていたんだよ!!」

 

いち早く黒子の言葉に反応した戦兎はそうまくしたてた。

 

「戦兎!あのエビグマだったら元の世界に帰れるんじゃねえか?」

 

「「エビグマ?」」

 

今度は美琴と黒子が声をそろえる。

 

「エニグマだよ馬鹿。エ・ニ・グ・マ。新しい中華料理か」

 

「エニグマと言いますと、あれですの?ナチス軍が大戦中に使用したという暗号機の」

 

「いや、名前は同じだけど別物だ」

 

落ち着きを取り戻した戦兎が言う。

 

「エニグマ。別名並行世界合体装置。最上魁星っていう科学者が作った装置だ。最上はそれを使って俺たちの世界とエグゼイドの世界を融合し、もう一つの世界の自分自身とも一つになって不老不死になろうとしたんだよ。まっ、最終的にはその計画は失敗して二つの世界の繋がりもなくなっちゃったんだけどな」

 

「ふーん。じゃあそのエニグマはもうないわけ?」

 

「おお、戦兎とそのエグゼイドってやつがぶっ壊した」

 

「でも、それこそ桐生さんなら作れるんじゃありませんの?聞いたところあなた方の世界の技術が使われているようですし」

 

「いや、実を言うとエニグマを作るのは不可能なんだ」

 

「なんで?」

 

美琴の疑問はもっともだ。事実戦兎達自身が異世界移動をしているのだ。困難ではあっても不可能ではないはず。

しかし戦兎は首を横に振って続ける。

 

「エニグマの原動力には、スカイウォールから出るネビュラガスと、エグゼイドの世界に存在するバグスターウィルスを掛け合わせた、ネビュラバグスターっていうのが必要になる。ネビュラガスは出没しているスマッシュの原因を辿れば手に入るかもしれないが、バグスターウィルスはどうやっても手に入らない」

 

「そうなんですの・・・光明が見えたと思いましたのに」

 

「ああ。まあ?この天っ才にかかれば異世界移動装置の一つや二つ、そのうち作って見せるさ」

 

「で?そのスマッシュの原因は見つかったの?」

 

「「……」」

 

「空振りですのね・・・」

 

「いい考えだと思ったんだけどな、いかんせんスマッシュ発生の場所も時間もばらばらで法則性がさっぱり見当たらないんだよ」

 

これまで学園都市に出現したスマッシュは既に16体。ボトルも同様の数入手しているが、今のところどのボトルも以前戦兎達が使用していたものと変わらないものだった。

 

「でもまあ、今のところスマッシュになった学生に怪我はないし、もしアンタたちの世界の関係者がネビュラガスを使って悪だくみしていたとしても、とりあえず邪魔はできてるんじゃない?」

 

「・・・まあ、それはそうだけど・・・」

 

とんとん、となおも溜息を吐く戦兎の肩を万丈が叩く

 

「とりあえずよ、あちいから気分転換しようぜ」

 

そう言って前方を示す。

 

「馬鹿にしては気が利くわね」

 

「せめて筋肉つけろ!」

 

万丈が示した先、この時期にはうれしい、こちらの世界でも変わらない夏の風物詩、

 

「冷たいものでリフレッシュ、ですの」

 

かき氷の屋台だった。

 

 

「黒子は?」

 

「お姉様と同じものを。お二人はどうなさいますの?」

 

「宇治抹茶で」

 

「プロテイン味」

 

「んなもんねえよ」

 

じゃあブルーハワイだと万丈が言って全員分のオーダーを受けた店員さんが奥に引っ込み、氷の削れるシャリシャリという音と、これまた夏の風物詩である風鈴の音が聞こえてくる。この音だけでも涼むなあ、と戦兎が思っていると、

 

「それにしても不思議ですわねえ、風鈴の音を聞いてると少し涼しく感じますの」

 

「そうかあ?ちりんちりん鳴ってるだけだろ」

 

「違うわよ、それは共感覚性ってやつね」

 

「「共感覚?」」

 

2人の疑問に戦兎が応える。

 

「ある一つの刺激で、複数の感覚を受けることだよ」

 

そこまで言ったところで店員のお姉さんがかき氷を四つ手渡してきた。ちなみにここの支払いは戦兎と万丈の奢りである。「中学生に支払わせるんだ、ふーん」という美琴の一言によって有無を言わさず財布を出すことになった。寝床であるマンションの家賃が破格の安さとは言え、ライダーシステムの復旧にかかる諸々の機材費など、家計は乏しい。おまけに一人で3人分くらい食べる筋肉馬鹿のせいで赤字寸前だ。

今日も素麺かなあ…と献立を考えつつ先ほどの続きを説明する。

 

「つまり、赤色を見ると暖かい、青色を見ると冷たい、みたいなイメージが湧くだろ?」

 

「暖色、寒色といいますものね」

 

黒子の言葉に美琴は頷く。

 

「そういう、一つのもので色んなイメージが湧いたり、感覚が生じるのを共感覚っていうのよ。このかき氷だって―」

 

と手に持っていたかき氷の中身を見せる。イチゴ味のもので実際にイチゴの果肉が入っているタイプのものだ。

 

「赤いシロップにフルーツのイチゴの赤、ってわけよ」

 

「なるほど・・・ってお姉様、一度にほおばり過ぎすのよ」

 

かき氷特有の頭痛に目をつむる美琴に黒子が言う。

 

「さっぱりわかんねえ。なんだよ男爵って」

 

「それは芋な。じゃなくて」

 

宇治抹茶のシロップを氷になじませながら戦兎は言う。

 

「クローズマグマのボディは赤だろ?赤色は炎のイメージを湧き立てるだろ?そーゆーことだ」

 

「なるほどな!!確かに魂燃えるもんな!!」

 

「何よその納得・・・」

 

スプーン片手に呆れる美琴はさらに一口、二口と氷を口に運ぶ。やっぱ夏はこれよねこれなんて思っていると

 

「御坂さーん!みなさーん!」

 

屋台のある広場の入り口からこちらを呼ぶ声。

 

「佐天さん」

 

制服姿の涙子がこっちに駆け寄ってきた。

 

「んーーー!頭痛い!」

 

「もはや夏の風物詩ねー」

 

レモン味のかき氷片手にめを細める涙子に美琴が言った。

 

「確かに、わかっててもついつい食べ過ぎちゃうんですよねー」

 

「ちなみにそれはアイスクリーム頭痛っていうらしいぞ。」

 

「らしいですね。あ、戦兎さん、ごちそうさまです!」

 

「おう!残さず食えよ!」

 

「お前一円も出してないだろ」

 

いつものような会話が繰り広げられる。昼下がりの広場で女子中学生と大人二人が会話しているのは奇妙な光景ではあるが、今更それを気にするものはいなかった。

 

「そういえば、初春さんは?」

 

「あー、初春は今風邪でダウンしてます。夏風邪らしいんですけど寝込んじゃってるみたいで」

 

「そうなんだ・・・これからお見舞いに?」

 

涙子の持つ少し大きめの手提げ袋を見て美琴が言う。

 

「はい、初春は『心配しないでください』とか言ってましたけど、放っておけませんし」

 

「・・・そうだね。きっと心細いもんね」

 

「じゃあこれからみんなで見舞いに行こうぜ。プロテインお土産に」

 

「いやいや、さすがにお邪魔過ぎるだろう」

 

単純な万丈の言葉に戦兎が突っ込む。しかし言われた側の涙子は

 

「いえ!みんなが来てくれた方が初春も喜びますよ!!ぜひお願いします!」

 

「ですわね。どちらにしても風紀委員(ジャッジメント)本部からの伝達事項を伝えなくてはいけませんし、甘いものでも持って見舞いましょう」

 

「…よし!じゃあこの天っ才が調合した栄養ドリンクを―」

 

「「「それはだめ」」」

 

「うそーん?」

 

かくして、初春宅へのお見舞いが決定した。

 

「ってことで、お見舞いにきましたー!」

 

「「「「お邪魔しまーす」」」」

 

10分後。

お見舞いに近くの洋菓子店で買ったゼリー(プロテインを入れようとする万丈を美琴と黒子で全力で止めた)を持参して、初春が住む学生寮にきた美琴達。ちなみに戦兎は先約があるとのことで謎の栄養ドリンク(という名のケミ○ルX)を残して去っていった。

 

「すいませんわざわざ・・・」

 

1Kの小さな部屋には女子中学生らしいパステルカラーの家具が取り揃えられており、いかにも女の子の部屋、といった様相だった。

 

「いいのいいの。ちょっと動かないでねー」

 

ピピっと耳に当てるタイプの体温計のアラームが鳴る。数値を見ると37,5。微熱と言えば微熱、だが。

 

「あんまり熱はないけど、今日一日は大人しく寝てなきゃだめだよ?」

 

「うー、すいません、迷惑かけて」

 

その言葉に涙子は笑う。

 

「何言ってんの、大事な親友が風邪ひいてるのに放っておくわけないでしょ」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「ま、これに懲りたらもうお腹出して寝ちゃだめだぞー?」

 

「・・・佐天さんがいつもいつもスカートをめくってくるからですよ」

 

と冷たいタオル持ってくる、と言った涙子に向けて初春が照れ隠しに言う。

 

「大事な親友が毎日ちゃんとパンツ履いてるかどうか確認するのは、友達として大事な責務だよ!!」

 

「ちゃんと毎日履いてますよ!!」

 

「はいはい、病人は大人しくねー」

 

美琴が初春を宥める。と、この場に一人の男性である万丈が口を開いた。

 

「邦春―、冷蔵庫にゼリー入ってるからあとで食えよー」

 

「万丈さん・・・ありがたいですけど初春です・・・」

 

誰だよ邦春、と思わず呟く美琴だったが、万丈は気にせず美琴達と同じように床に座る。

 

「・・・いやに慣れてるわね。普通女子の部屋に入ったらもっとキョどるものじゃないの?」

 

「いやまあ、前に住んでたところにも女いたし、それに」

 

香澄の部屋にだって何度か行ってるし、お見舞いだってよくしてた、とは言わない。香澄のことも美空や砂羽さんのことも、こいつらには関係のない話だ。下手に話して心配させるのはよくない。

いや、なんでもねえよ、と万丈の中にあるなけなしの「大人らしさ」によってそれ以上は語られず、美琴もそれ以上詮索してこなかった。

 

「そういえば白井さん、グラビトン事件について進展はありましたか?」

 

涙子が台所でタオルを冷やす間、初春が黒子に聞く。

 

「ある、といえばありますし、ない、と言えばない、と言った感じです」

 

「どういうことですか?」

 

「わかったのは書庫(バンク)の情報から、犯人の能力はレベル2だった、と言うことだけですの。でも」

 

「ええ、あれは間違いなくレベル4はあった」

 

黒子の目配せに美琴が応える。うーんとみんなで唸っていると、万丈が口を開いた。

 

「そんなの、そいつのレベルが上がったんじゃねえの?レベルっていうからには上がるモンなんだろ?」

 

「それはー、そうなんですけど・・・」

 

「ゲームと違って、能力のレベルは一朝一夕で上がるもんじゃないのよ。仮にものすごい努力をしたとしても、あの事件の期間でレベルが二段階上がるなんてことはあり得ないの」

 

「じゃあお手上げじゃんか」

 

万丈の言葉に再び唸る一同。

と、レベルを上げるというワードで美琴はあることを思い出す。

 

「そういえば佐天さん、前にレベルアッパーとかなんとか、レベルを上げる道具の話、してなかったっけ?」

 




はい。三月にある程度書くとか無理でした。
最近マジで忙しすぎ、新人さん入り過ぎ。あと仮面ライダーおもしろすぎね。
現代版龍騎やらジオウやら、もう面白すぎよ。睡眠削って見ちゃう。

次回こそ、四月中に出してやる。

ここからは謝辞

閲覧60000UA突破しました。いつも応援ありがとうございます。
私の文章を待ってくれている方々にいいものが届けられるよう頑張りますのでよろしく

トリニティは予想斜め上だった
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