戦「なになに・・・?『戦兎さんへ、今回のあらすじ紹介ですけど、日ごろから俺がやる俺がやるって言っていたので一人でやってもらうことにしました。私たちは大人しく黄泉川先生にもらった第六学区の温泉施設のクーポンで、平成お疲れ様会をやってきます。あ、万丈さんもこっちに来るそうです。では!佐天より』」
戦「・・・・・・・・・・・・・・・・」
戦「いや別に?泣いてないよ?あらすじ紹介は主人公の義務だし?邪魔さしれないからのびのびとできるし・・・・」
戦「・・・っちきしょー!!なんで俺も呼んでくれないんだよ!!温泉!!もちろん夜は焼肉っしょー!!だろお!!」
「ビルドチェンジ」
戦「あん?カンペ?『締めて』?うるせえええ!俺は温泉に行くんだああああ!!」
・・・・・・
当「あのー、なんか呼ばれてきたんすけど・・・」
当「あ、これ読むんですね、えっと・・・、果たしてレベルアッパーとは何なのか、どうなる第15話!!」
当「俺、ひょっとして扱い雑なんじゃ・・・」
「レベルアッパー?」
「はい、なんでも、使うと能力レベルが上がるって噂の物らしいのですよ」
戦兎に対してそう説明するのは、椅子に乗って黒板を消す月詠小萌だった。
「ま、都市伝説レベルの話なんですけどねー」
「さすがに実在はしないですよね」
そんなものがあったら美琴のようなレベル5が容易に量産できてしまう。下手したら軍事兵器にもなる能力者がそんなにいたら戦争につながりかねない。
「桐生先生の学校でも流れてるんじゃないですか?そういう噂」
「佐天がそんな感じの噂を言ってましたけど、まあ都市伝説みたいなもんじゃないすか?」
「街を守る仮面ライダー、みたいにじゃん?」
と、戦兎の言葉に隣に座っていた黄泉川が茶化すように言った。涙子、万丈達と別れた後、スマッシュ退治の報告にとある高校に来たというわけだ。
「前の世界でもそんな感じに都市伝説化してましたからね・・・、まあそのレベルアッパーと違ってスマッシュは実際に街を壊したりして被害が出てますから、野次馬とか心配ですけど」
「その辺はコッチで何とかしてるじゃん。この間の時みたいに包囲したり、援護したりな」
「それは感謝してますよ。おかげで戦うことに専念できる」
なにせ変身しているのはほぼ全員善良な学生だ。ネビュラガスによる体内汚染が進行すれば最悪消滅する恐れもある。素早く倒して成分を吸収するのは絶対条件なのだ。
「それで、手がかりはあったのですか?」
「そうじゃん。結構な数のスマッシュが現れてるし、なにかしらヒントみたいのはなかったのか?
「それがですね・・・」
と言って戦兎は机に置いていたバックからノートPC(ジャンク品から自力で組み立てた天っ才モデル)を出し、ディスプレイにマップを表示させて二人に向けた。
「今まで現れたスマッシュの位置情報をまとめたんですが、完全にランダムに発生しています。強いて言うならこの第七学区が一番多く、そこから同心円状に発生していると言えなくもないですが」
「んー、発生の順番はランダムですし、そもそも発生してから発見するまでに多少のタイムラグはありますからねえー、位置情報にはあまり期待できないと思うのです」
「被害者、変身していた学生に何か共通点はないのか?」
黄泉川の質問にも戦兎は首を振る。
「あるとしたら学生ってことだけですね。学校はバラバラ、学年、性別も・・・」
そこまでいいかけて戦兎は顎に手を当てる。
「どうしたんですか?桐生先生?」
「・・・学園都市は学生の街だけど、学生だけが住んでいるわけじゃない」
「そりゃそうじゃん。生徒だけじゃ授業はできない。教員や労働者は必要じゃんよ」
「……いままで13体のスマッシュが出現して、そのすべての変身者が学生だけ・・・八割が学生だとしても一人くらい大人がいてもおかしくない。何者かが意図的にネビュラガスをばら撒いているのなら、むしろ夜間の見回りをしている
「あ、あのー?桐生先生?」
一人で思考にどっぷりつかり始めた戦兎に小萌が声をかけるが、彼は意にも介さず呟き続ける。
「大人にネビュラガスは効かない?いや、成分の組成に変化はないからそれはありえない。だとすれば…学生を故意に狙っている?なんのために?」
「……それが本当なら、一層警備を強化する必要があるじゃん」
黙って聞いていた黄泉川が言うと小萌も口を開く。
「そもそもネビュラガスへの耐性値、ハザードレベルでしたっけ?ある程度のレベルがないと死んじゃうはずなのに、全員が全員スマッシュになるというのも不自然な話ではないですか?」
「…あまり考えたくない可能性ですが、俺たちの知らないところで誰かが消滅している、とか」
「いや、それは考えにくいじゃん」
考えうる中でも最低な可能性に、黄泉川は首を横に振った。
「学園都市の全学生は、それがスキルアウトだろうとお嬢様であろうとどこかの学校や研究機関に所属しているじゃん。仮にネビュラガスによって消滅していたとしたら、そこから
そこまで言って机の上に置いてあったペットボトルをあおる。
「…ここ数週間で生徒の失踪の通報は来ていないじゃん。13体もスマッシュが現れているんだ、仮に消滅しているならそれ以上の人数が消えているはずだしー」
「噂になっているでしょうね」
つないで言った小萌も言葉に三人は沈黙。
「ま、地道にスマッシュを追うのが一番確実じゃん。桐生、お前たちが言っているフルボトルってのも集まっているじゃん、戦いは楽になるんじゃないのか?」
「そうですね…」
そう言って戦兎はビルドフォンを取り出し、格納していたボトルを全て実体化させた。
「13本に、元々お前と万丈が持っていたボトルを合わせた17本か…、並べると壮観じゃん」
「元々は60本あるって考えると、これでもまだ2割くらいってことですね」
2人は机に並ぶボトルたちをしげしげと眺める。今あるボトルは、元々持っていたラビット、タンク、万丈のドラゴンとグレートドラゴンエボルボトルに、ゴリラ、ダイヤモンド、タカ、ガトリング、ハリネズミ、消防車、ライオン、掃除機、オクトパス、忍者、フェニックス、ロケット、パンダ、計17本。
「あとはこの間復元したアイテムもありますし、着々と装備は整いつつありますね」
「一般市民に頼りっぱなしってのはアレだが、頼もしい限りじゃん」
「そうですねえ、生徒たちの安全が第一です」
笑顔で話す二人を見ながら、しかし戦兎の心は複雑だった。
ボトルが集まり、装備が整う。この状況はまるでかつての戦兎達と同じなんじゃないか?
そう、エボルトによってライダーシステムを強化するように仕向けられていた、あの頃と。
「…手放しには喜べねえな」
黄泉川に聞こえないくらいの声で戦兎はつぶやいた。
※
「それはそうと、レベルアッパーでしたっけ?結局どういう噂なのですか?」
教室での報告会も終わり、戦兎は小萌と共に帰路についていた。彼女の住んでいるアパートの方に初春の住む寮があるため、顔でも出していくか、という運びになったのだ。
「いや俺もそんなに詳しく聞いたわけじゃないんですよね。」
歩きながら戦兎は言う。夏休み前だからかいつもより学生の姿が多い。まだ完全下校時刻まで大分あるとはいえ、この時期は
「レベルアッパーっていうものがあれば、能力のレベルが上がるとかなんとか・・・、実際使ったみたいな書き込みもありますけど、あやふやすぎて信ぴょう性はかなり低そうですね」
「むー、先生としてはあまりよろしくない噂ですねえ」
「楽な方法にすがる生徒が増えるからですか?」
「それもそうなんですけどー」
んー、小萌は口を尖らせ唸る。
「桐生先生は能力開発についてどのあたりまで理解していますか?」
「薬物投与や催眠術なんかで脳の構造を変化させ、『
「その通りです。『
と小萌は持っているバックを戦兎の方へ向ける。
「このバックの中身を透視できますか?」
「俺には無理ですね。」
「そうです。でも、『物体を透視する』という、普通の世界とはズレた世界を観測できる生徒さんは、その
「ズレた、世界」
故に『
「能力開発においては、この『自分だけの現実』をいかに強く観測できるか、自分自身の主義、自分だけの世界をどれだけ強く持てるかが重要なのです。」
「でもそれって、高位の能力者ほど普通とはかけ離れているってことなんじゃ」
「そうとも言えます。でも、大事なのは自分の、自分だけの世界を持ち続けること、限界を定めず、自分を信じることなのです」
「信じる、ですか」
「そう、自分の現実を信じること、それが能力の強さにつながるのです」
その言葉を聞いて戦兎は思う。ライダーシステムに似ている、と。
ライダーシステムは変身者の感情の強さによって上下する。戦兎自身、ラブアンドピースをかかげ、その精神によって限界までハザードレベルを上げたこともあり、また最終決戦における氷室幻徳や猿渡一海のように、誰かの為を思う気持ちによって限界を超えた力を出した例もある。
「たしかに、それならレベルアッパーなんていうインチキはよくないですね」
「そうなのです!!それに―」
小萌はこぶしを握って力強く言った。
「生徒さんは皆原石!!磨いて輝かない宝石はないのに勝手に人口研磨なんてさせませんよー!!」
「じ、人口研磨っすか…」
悪魔の科学者、なんて呼ばれてた戦兎でも、この人やばいんじゃないかと素直に感じたのだった。
※
「能力のレベルを上げるレベルアッパ―?」
涙子の言葉を反復した美琴は、信じがたいというような顔をした。
「ですから、本当にただの噂ですよ?実態のつかめない、言っちゃえば都市伝説みたいな話なんですから」
手を横に振りながら涙子は言う。黒子、涙子、美琴に加え万丈まで座ると、1Kの学生寮室は満員だ。病人である初春は二段ベッドの上で横になっている。
「実態のつかめない、っていうのは?」
「えっと、噂によって話が全く違うんですよ。レベルアッパーがどんなものかっていうのも、載っているサイトによって全然違うし」
「確かに都市伝説みたいな話ねー、ガセっぽいわ」
「…そうとも言えませんの」
美琴の呟きに黒子は言う。
「どういうこと?」
「実は、例のグラビトン事件以外にも数件、実際の事件の規模と能力レベルに差がある事件がありましたの。覚えてませんか?戦兎さんと最初にお会いした時のパイロキネシスとや、常盤台狩りの眉毛女など、お姉様がご存じのものだけでも二件御座いますの」
「それって、え?レベルアッパーってマジモンなんですか?」
涙子が驚いたように言う。と、それまで黙っていた万丈が美琴の開いていた端末の文字を見て口を開いた。
「それなら見たことあるぞ」
「「はあ?」」
黒子と美琴が同時に万丈へ振り向いた。
「いつ、どこでですの!?」
「あの爆弾野郎がスキルマイト「スキルアウトよ」そうそう、そのスキルアウトの連中に絡まれてた時、拾ったモンに書いてあったんだよ『れべるうぷぷあ』って。そっか、それレベルアッパーって読むのか」
「(れべるうぷぷあって・・・そのまま読んだんですね・・・)」
「(類まれなる馬鹿ですわね…)」
中学生レベルの英単語も満足に読めない万丈はともかく、これでグラビトン事件とレベルアッパーがつながったということになる。
「佐天さん、他に何か情報ない!?」
「えぇ~?えっと、本当かどうかわかりませんけど、自分はレベルアッパーを使ったっていう人がネットの掲示板に書き込んでいるとか・・・」
「それ、どこのサイトですの!?」
「えぇ?えっとー…」
「これじゃないですか?」
美琴と黒子に詰め寄られたじろぐ涙子の頭上から初春がPCの画面を示す。
「お手柄ですの初春!!」
「そうね、あとはそいつらの素性やたまり場さえ突き止められれば!」
「一毛達人ってわけか!」
「「一網打尽!!」」
「素性まではわかりませんが、たまり場ならほら」
と万丈へ突っ込んでいる三人に向けて、ある書き込みを示す。
「このファミレスによくいるらしいですよ?」
「よし!!じゃあ早速そこに「ちょっとお姉様!ここは
と、すぐさま三人は外へと駆け出した。後に残った涙子と初春はお互いに顔を見合わせ、
「…お腹すきましたね」
「なんか作ろっか」
苦笑しつつ言った。
平成最後ってあまり実感ないですが流行りなので平成最後の投稿って言っておきます。
内容は短めですが、ここから物語は進展していきます。多分。きっと。
ところで平成が終わるわけですが、平成ライダーの雄姿は自分をはじめ、皆様の心に残ることと思います。
物語が終わってしまっても、覚えている限りその人の心に存在し続ける。
それはなにも仮面ライダーだけではなく、すべてのことに当てはまることだと思います。
桐生戦兎はかつて言いました「たった一人、誰かの心に残っていればそれでいい」と。
この作品がもし、誰かの心に残ってくれたのなら、それだけで書いた意味があったと思います。
まだまだ終わらないとある科学のベストマッチ、令和元年からもぜひ応援のほどよろしくお願い致します。
あ、普通に続きますからね?終わりませんので。では。