とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

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戦「…あちい…」
万「フー、フー、ハフハフハフ、ズルズルズル」
美「…なんでこのくそ暑いのにラーメン食べてるのコイツ…」
黒「というか、なんでこんなに暑いんですの?この部屋」
戦「この馬鹿が訓練だー、とか言って部屋の中でビートクローザー振り回したらクーラーに当てやがったんだよ」
万「誰が馬鹿だ!っつうかお前だって四コマ忍法刀振り回してたじゃねえか!」
戦「ちょっと、まだ本編に出てない武器をばらすんじゃないよ!!」
黒「どっちもどっちですの・・・だとしてもラーメンはさすがに自殺行為ではありませんの?」
万「ラーメンは中年不朽だ」
美「年中無休でしょ。いや確かに年中無休かもしれないけどTPOてのがあるでしょうが」
万「TOKIO?」
黒「一文字増えてますし余り実名は出さないほうが・・・」
戦「てかあらすじ紹介じゃんこれ・・・ま、暑いからいいか。第18話いってみよー」



第十八話 レベルアッパー

「その話、本当なの?」

 

「ええ、今朝警備員から連絡がありましたの。あのグラビトン事件の犯人、介旅が…昏睡状態だと」

 

走りながら美琴と黒子は言葉を交わす。向かう先は第七学区のとある病院だ。

 

「御坂―、白井―」

 

と、後ろからいい加減聞きなれた声が聞こえた。

 

「アンタたちも介旅の話を聞いたってこと?」

 

マシンビルダ―に乗った戦兎とその後ろに乗る万丈に尋ねる。

 

「ああ、今朝黄泉川先生から連絡がきてな」

 

路肩にマシンビルダ―を停め、「ビルドチェンジ」の音声と共にバイクモードからスマホモードに変形させる。

 

「昏睡って聞いたけど、具体的な容体はどうなんだ?」

 

「介旅は事件後、精神面を鑑みて医療施設に収容されましたの。経過は順調。カウンセリングも受けて、一週間後には観察付きで学校に復帰させる予定でしたわ」

 

しかし、

 

「昨日、収容先の病院で突然気を失いましたの…以降、心拍、身体面に異常はないのに意識がない状態らしいですわ」

 

「それは…」

 

「わかった!そいつ寝てるんだろ!!」

 

「違うよ馬鹿」

 

「いえ、あながち外れでもないんですの」

 

「うそーん」

 

まさかの返答に思わず口が塞がらない戦兎を置いて美琴達は病院へと入る。先行する黒子について介旅が運ばれたという病棟に向かった。

 

「ここですの…、あの、介旅という方がここに運ばれたと聞いたのですが」

 

「ご友人ですか?」

 

「いえ、風紀委員ですの。事件の調査で」

 

「今外部専門家が診てますので、お待ちください」

 

そう言って4人は待合室に通される。学園都市は最先端技術の集まる街だが、こういった施設の待合室は外とそこまで変わらないようで、よくある自動販売機にソファといったシンプルな場所だった。

 

「とりあえず座るか。万丈、騒ぐなよ」

 

「騒がねえよ。あ、黄泉川に遅れるって連絡しねえと」

 

「すでに大分遅刻だと思うけど」

 

言って万丈は通話可能なエリアに走る。病院内を走るのもあまりよくないのだが、病棟内での通話がNGというモラルはあるらしかった。

 

「まだ時間がかかりそうですし、ゆっくり待ちましょ」

 

美琴がソファに座ったので戦兎、黒子もそれに倣う。美琴は腕を組んで目を閉じ、黒子と戦兎は端末をマナーモードにするために取り出して操作する。

 

―数十分後―

 

「すー…すー…」

 

「zzzzzzzzz……」

 

「zzzって音出す奴初めて見た」

 

「ああ!お姉様!!そんな!無防備な姿を公共の場で晒すなんて・・!!」

 

「…隣で寝てる先輩に興奮する中学生も初めて見たな」

 

一人呟いて戦兎は壁にかけてある時計を見る。すでに結構な時間が経っているが、いっこうに介旅の状況を教えてもらえる気配はない。

しかし、

 

「暑いな…」

 

「そうですわねえ」

 

7月中旬、まだうだるような暑さと言うわけではないが、冷房の効いていない室内は少し汗ばむくらいには暑い。

 

「病院なら普通空調が効いているはずなのですが」

 

「修理中なんじゃね?」

 

「それにしては、修理業者とか見えないけどな」

 

「確かに…あ、お姉様、お姉様」

 

「来たか、オイ万丈。起きろ」

 

「んー…」

 

「フガッ」

あのか

寝坊助二人を起こし、先ほど問い合わせをした窓口の奥から、初老の白衣姿が歩いてきた。

 

「あの、介旅の容体は…」

 

「介旅君かい?未だに目を覚まさないよ。身体は健康体なのに目覚めないなんて…、医者として何もできないのが歯がゆい限りだ」

 

「そう、ですか」

 

「ところで君たちは?」

 

「あ、私たち―」

 

「風紀委員ですの。以前の事件の関係者である介旅が意識不明ということで様子を見に来たのですが…」

 

「そうか、なら彼女に聞いてみるといい。彼を診たのはほぼ彼女だからね」

 

「彼女、といいますと…」

 

「先生」

 

医師の背後から女性の声、奥を見やるとそこには同じく白衣に夏用のスーツを着込んだ女性が立っていた。

 

「ああ、木山先生。この子たちが介旅君の詳しい容体を聞きたいそうなんですよ」

 

「「木山先生?」」

 

医師の口から発された名前に四人の内2人―美琴と戦兎が疑問符を浮かべた。

 

「ん?君たちは先日の…」

 

「ぬ、脱ぎ女…」

 

「おい御坂!失礼だろうが!」

 

四人の前に現れたのは、美琴と戦兎が世話をした女性、木山春生だった。

 

「なんだ、君たちまだいたのか」

 

それからさらに一時間後。

 

「ええ、ちょっと伺いたいことがございまして」

 

詳しい診察をしていたのか、木山が出てきたところを黒子が口を開く。

木山は黒子、美琴、戦兎、万丈と順に目線を移し、

 

「しかし…暑いな。ここは夏でも冷房を入れない方針なのか…」

 

「確かに…」

 

「申し訳ございません、昨晩停電があって、まだ復旧してないんですよ」

 

通りすがりの看護師の言葉になるほど、と呟き

 

「常用電源は重篤患者や手術室に使われるからな…」

 

「そうですわね…って、え?」

 

黒子が返し、木山の方を向くと目の前の女性はおもむろに首元の黒いネクタイの結び目に手を当て、

 

「ふう、我慢ならない・・・暑さ、だ」

 

言って木山は瞬く間に来ていた白衣とシャツを脱ぎ―

 

「ま、また始まった…」

 

「な、なにを唐突にストリップしてますの!!??」

 

「戦兎!やべえこいつ変態だ!!」

 

「見るな馬鹿!!」

 

と戦兎は万丈の首を180度回し、自身も顔を背ける

 

「下着を着ているのに…駄目なのか?」

 

「殿方の目がありますのよ!!!」

 

そう言ってブラウスのボタンをとめる黒子。されるがままになっている木山に向けて、既に経験のある美琴がぎこちない笑みで聞く。

 

「木山先生!専門家としてぜひお話を伺いたいのですが…」

 

「それは構わないが…場所を変えようか。ここは暑い」

 

「そうですわね…って、自己紹介がまだでしたの。わたくし、風紀委員第177支部所属の白井黒子と申しますの」

 

「ああ、研究員の木山だ、専門は大脳生理学。そっちの彼も初めての顔だが」

 

「あ?俺か、万丈龍我だ。」

 

「万丈さんは警備員に所属してますの。普段からその、捜査協力をしてる関係ですわ」

 

「は?なんだ捜査協力って、俺そんなこと―ゲフッ」

 

そこまで言ったところで戦兎に首根っこを掴まれる万丈。片方の手でゴリラボトルを握っているのですさまじい圧力が首にかかっている。

 

「(余計なこと言うんじゃないよ!ただの警備員と教師が風紀委員とはいえ女子中学生と何の理由もなく一緒にいたら変でしょうが)」

 

「馬鹿ってなんだよせめて筋肉つけろ!つか痛えよ!」

 

「小声で返しなさいよ馬鹿!」

 

「アンタらうるさい!!」

 

見知らぬ看護師に怒られる大人二人を尻目に、木山、黒子、美琴の三人は病院を出た。

 

「それで、何故下着を付けているのに脱いではいけないという話だったか…」

 

「「いえ、違います」」

 

10分後、美琴達行きつけのファミレスに入った5人ちなみに席順は、窓際から黒子、美琴、戦兎で反対側に万丈と木山である。

 

「それで、レベルアッパーだったか。それはどういう機能なんだ。形状は?どう使う?」

 

「まだわかりませんの…」

 

「とにかく君たちは、それが昏睡した学生達に関係あるのではないかと、そう考えているわけだ」

 

「はい。って、え?」

 

「どーしたの?黒子?」

 

急な疑問符を浮かべた黒子に尋ねる美琴。代わりに戦兎が応える。

 

「学生達、ってことは介旅のほかに昏睡状態の学生がいるってことだ。それも複数」

 

戦兎の言葉に木山は頷き、

 

「ああ、彼の他にも5人ほど、同じ症状の子がいたよ。…これがリストだ」

 

そう言って鞄から取り出した携帯端末を示す。画面には言葉のとおり5人の顔写真があり、

 

「(こいつ…)」

 

「(ねえちょっと、これって…)」

 

小声で話す美琴も同じことを考えていた。それは。

 

「(全員スマッシュにされた奴らだ)」

 

「(どういうことですの?)」

 

黒子の問いに答えようとしたが、戦兎は口をつぐむ。

 

「どうした?知り合いでも?」

 

「いえ、何でもありません」

 

そう答えて端末を木山に返す。疑問は尽きないが仮面ライダーやネビュラガス、スマッシュのことは他の人には知られてはいけない。その意図を組んだのか黒子が話を変えた。

 

「木山先生にお話をしたのは、能力のレベルを上げるというレベルアッパーの特性を思い出したからですの」

 

「というと?」

 

アイスコーヒーを一口飲み、木山が先を促す。

 

「はい。能力のレベルを上げるということは、脳に何らかの作用をもたらすことだと思っておりますの。ですから、もしレベルアッパーが見つかったら」

 

「それを先生にみてもらいたい、ということなんです」

 

黒子と美琴に言われ、思案するように中空を見つめる。

 

「いや、むしろこちらから協力をお願いしたいね。大脳生理学者として、興味がある」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

戦兎、美琴、黒子が頭を下げる。

 

「礼はいい。それより…」

 

と木山は戦兎に向けて言う。

 

「仮面ライダー、というのを知っているかね?」

 

戦兎は内心の動揺を隠すのに必死だった。

このタイミングで聞かれるとは思っていなかった、というのもそうだがそれよりも悩みの種は

 

「(何も言うなよ筋肉馬鹿!!!!!)」

 

やっぱり万丈だ。

 

「最近巷を騒がせている怪物騒ぎは君たちも知っているだろう。その怪物と戦う者たちを『仮面ライダー』と呼んでいるらしい」

 

「も、もちろん知ってますよ?天っ才ですから?」

 

「(何故に疑問符を付けますの!)」

 

「(こいつら本当にアドリブに弱いわね…)」

 

隣で色々ひそひそ話している中学生を黙殺し、戦兎はひたすら万丈に向けて念を送っていた。

 

そんな万丈と目が合う。

 

「(万丈!下手なことは何も言うな!適当に頷いとけ!!)」

 

「お、アンタもビルドとクローズ知ってんのか!有名人だな!」

 

(((こんの馬鹿!!!!!)))

 

「ビルド?クローズ・・・?」

 

聞き慣れない単語に疑問符を浮かべる木山。

 

「ええっと、都市伝説!そう都市伝説なんです!」

 

「というと?」

 

慌てて言う美琴に木山は問う。うっ、と考えなしに言ったのか美琴は言葉に詰まる。

 

「都市伝説で、その仮面ライダーをビルド、クローズと呼んでいるそうなんですの。語源は分かりませんが・・・」

 

「ふむ・・・ビルドとは『創る・形成する』、クローズは・・・『閉じる』という意味だが・・・」

 

「意味までは分かりませんが・・・」

 

(すっげーーーー説明したい!!!)

 

(我慢しなさい馬鹿)

 

わなわなと震える戦兎を抑える美琴、そんな様子をよそに黒子と木山は話を続ける。

 

「その仮面ライダーに関することと言えば、都市伝説以上のことは存じ上げませんわ。木山先生は科学者ですのにこんな都市伝説に興味がありますの?」

 

「そうだな・・・どうもあれは怪奇現象の類とは違うと思うのだよ。なにか科学的な理論の元に動いているような」

 

「そう、ですか・・・」

 

戦兎は先ほどとは違う種類の焦りを覚えた。それは、

 

(都市伝説のビルドを科学的に見ている・・・)

 

さすがは科学の街の研究者か、とこの時は焦りだけしか感じていなかった。

 

戦兎達がファミレスに入って少し経ったのと同じ時刻。

 

「佐天さーん、遅いですよもう!」

 

「ごめんごめん。もう風邪はいいの?」

 

「はい、おかげさまですっかり。で、なんなんですか?直接会ってしたい話って」

 

「んー?ふふふ、じ・つ・は!ついに手に入れちゃったのよ、話題のアイテムを!」

 

そう言って初春の眼前に突き出されたのは、

 

「アイテムって、音楽プレーヤー?」

 

学園都市でも一般流通している音楽プレーヤー。パソコンから音楽のデータをダウンロードすることができるもので、初春も型落ちした古いタイプを持っている。

 

「ちっちっち、中身が重要なんだなあ。詳しくはどこか入って話さない?って、あれ?」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、あれって戦兎さん達じゃないですか?ほら、あのファミレス」

 

初春が指さす方向には、窓越しに何やら話している見知った顔がそろっていた。

 

 

ファミレスの外から見かけたという涙子、初春が合流し、木山にそれぞれ自己紹介、という流れになった

 

「へえー、脳学者さんなんですかー・・・、ハッ、まさか白井さんの脳に異常でも!?」

 

「・・・レベルアッパーの件で相談していましたの・・・」

 

黒子の言葉にそれまでパフェを食べていた涙子が反応する。

 

「あ、それなら―」

 

「黒子が言うには、レベルアッパーの所有者を保護するんだって」

 

ここにありますよ、実は手に入れちゃったんです。と言おうとした涙子に美琴がかぶせる。思わず動きを止める涙子には誰も気づかなかった。

 

「どうしてですか?」

 

「まだ調査中で断言はできないが、使用者に副作用が出る可能性が高いんだ」

 

戦兎の答えに黒子が補足する。

 

「それに、容易に犯罪に走る傾向が見受けられますの。まずは保護して、必要があればカウンセリング、といった感じですわね」

 

「なるほど・・・、って、どうかしたんですか?佐天さん」

 

固まっている涙子に初春が言う。

 

「え!?いやあ、何でもない何でもない!」

 

と慌てて引いた腕が飲み物の入ったグラスに当たり、

 

バシャっ

 

と、隣に座っていた木山の足元にかかってしまった。

 

「ああ、すいません!!」

 

「・・・いいさ、かかったのはストッキングだけだから―」

 

と言って席を立ち、腰のスカートのホックを外し―

 

「ストッキングさえ脱げば問題ない」

 

「だ・か・ら!!!人前!!何より殿方の前で脱ぐなと言っていますの!!」

 

絶叫する黒子。ちなみに戦兎と万丈は即座に顔を伏せていた。

 

「・・・とはいっても、起伏の乏しい私の身体に欲情する者なんていないだろう。」

 

「趣味嗜好は人それぞれですの!!それに、よからぬ感情を抱く同性もいますのよ」

 

「いやそれお前が言う?」

 

顔を伏せたまま、珍しく万丈が突っ込んだ。

 

 

「お忙しい中、色々教えていただきありがとうございました」

 

「いや、私も教鞭を振るっていた時を思い出して楽しかったよ」

 

その言葉に初春、黒子は一礼する。ちなみに万丈と戦兎は用事があるとかで抜けていった。後でメールが来て、スマッシュが現れたということだった。

 

「教師をなさっていたのですか?」

 

「むかーし、な」

 

それだけ言って踵を返す木山を見送る。姿が見えなくなったところで黒子が口を開いた。

 

「なんというか・・・ちょっと変わった感じですの」

 

「白井さんよりもですか?」

 

人睨みして初春を黙らせる黒子。木山から聞いた話をまとめた髪をポケットに入れ、言う。

 

「一度支部に帰らないといけませんはね」

 

「はい。乏しいですけど、木山先生に渡すデータもそろえておかないと」

 

初春の言葉に頷き、振り返る。

 

「そういうわけで、わたくしたちは支部に戻りますの―って、あれ?お姉様?」

 

そこには涙子も、そして美琴の姿もなかった。

 

(やっぱり手放したくない)

 

逃げるように三人の前から姿を消した涙子は、心の中で弁解する。

 

(まだ使ったわけじゃないし、黙っていれば、いいよね・・・)

 

普段は近づかない裏通り。その壁を背に乱れた息を整える。

 

「せっかく見つけたんだもん・・・」

 

手の中にあるプレーヤーを握りしめる。折角手に入れたそれ、自分を変えてくれるかもしれないものを

 

「どうしたのー?」

 

不意に横からの声。見れば、見知った顔がこちらに近づいてくる。

 

「み、御坂さん、どうして?」

 

「だって、急にいなくなるんだもん。心配するでしょ」

 

「な、なんでもありませんよ」

 

「でも・・・」

 

「だって、」

 

必死に笑顔を作る。悟られないように。いつもの自分のように

 

「ほら、私だけ事件とか、そういうの関係ないじゃないですか。風紀委員じゃないし」

 

ポケットに手を入れ、中身を固く握る。守るように。

 

ポト

 

「あっ・・・」

 

手を入れた拍子に入れてあったもう一つの物が落ちてしまう。

美琴はそれを拾い上げ、涙子に手渡した。

 

「それ、いつも鞄から下げてるやつだよね?」

 

「ええ、そうなんです。・・・母からもらったんです」

 

赤い布地で出来たお守り。どこにでもあるようなそれを涙子は見る。

 

「御守りなんて科学的根拠なんかないのに」

 

―『姉ちゃん超能力者になるの?かっけえー!!』―

 

『お母さんは、やっぱりまだ不安なの』

 

『大丈夫だよ』

 

『はいこれ』

 

『えー、非科学的』

 

『何かあったらいつでも帰って来てね。あなたの身が、なにより一番大事なんだから』

 

「ほんと迷信深いんです。私のお母さん」

 

かつて、学園都市の外でこれを貰った時のことを思い出す。

 

「こんなもので身を守れるわけないですよね。バリアじゃないんだから」

 

「優しいお母さんじゃない。佐天さんを気遣って、その御守りをくれたんでしょ?」

 

苦笑しながら言う涙子に、美琴は首を振って優しい笑顔を向ける。

 

「わかっています、でも・・・その期待が、重いときもあるんですよ。いつまでたってもレベル0のままだし」

 

諦めたように語る涙子に、美琴はなんてことのないように言う。

 

「レベルなんて、どうでもいいことじゃない」

 

あなたがそれを言うんですか。御坂さん。

 

そう言いたい気持ちを、涙子はそっと、心にしまった。

 

「レベルアッパーの取引場所、ですの?」

 

「はい!戦兎さんと二人でこの間の掲示板を含め、怪しいサイトを片っ端から調べたんですよ」

 

翌日。戦兎と万丈は風紀委員の支部に来ていた。

 

「学生がすることだからな。SNSを中心に調べたらかなりの数で出てきた。まあ大半は嘘情報っぽいけど、信頼度がそれなり高いのをリストアップしておいた。それと」

 

もう一枚、学生の写真が載った紙を手渡す。

 

「これは?」

 

「昨日スマッシュになった生徒だ。この子の端末を調べたんだが、高確率でレベルアッパーを使用しているような痕跡が見つかった」

 

「つまり、スマッシュの件とレベルアッパーはつながっている、ということですの?」

 

「断言はできないが、可能性は高い。そこで・・・」

 

と戦兎は万丈と黒子に向き直り言う。

 

「これから万丈と白井でそのリストをつぶしてほしい。スマッシュが現れる以上ライダーシステムを持つ万丈が付いていれば安心だ。コイツは馬鹿だけど実力は信頼していいからな」

 

「それは・・・合理的ではありますけど」

 

「どうして戦兎さんではなく万丈さんなんですか?」

 

「なんだよ、俺じゃダメなのか?」

 

万丈の突っ込みはともかく、事情をより深く把握している戦兎の方がいいのではないか、というのはもっともな意見だ。しかし、

 

「いや、俺はここで待つ。もし仮にレベルアッパーが見つかったら木山先生に送る前に自分で調べてみたいし、お前らが戦っている間に別のところで何かあったら対応できる奴が必要だろ?」

 

「そうですわね。では早速行動開始ですの。まずは廃墟ビルですの」

 

「おう!!行ってくるぜ!!」

 

そう言って二人は出かけて行った。

 

「はあ・・・」

 

同時刻。涙子は図書館近くの広場に来ていた。

 

「これ、結局どうしようかな…」

 

持っているのは音楽プレーヤー。正確にはその中に入っているレベルアッパーのデータ。ダウンロードして以来、再生していないそれはタイトルとミュージシャン名のUNKNOWNの文字だけが繰り返し表示されている。

 

(持ってるだけでこんなにしんどいなんておもってなかったな)

 

あるいは、隠していることへの罪悪感の重さか。

また一つ溜息を吐く涙子に声がかけられた。

 

「涙子じゃん、何やってるの?」

 

「アケミ…」

 

クラスメイトであるアケミは、他の友人二人と共に声をかけてきた。

 

「ちょっと散歩だよ。ついでに図書館で課題用の本借りようかなって」

 

「そうなんだー、てか課題か!忘れてたー」

 

言いながら合流して歩く。先行する少女、むーちゃんは手を後ろに組みながら言った。

 

「うげー、課題なんてやる気起きないよ……、涙子のせいで嫌なこと思い出した。アイス奢れー!」

 

「こらこら、課題は平等に与えられるものでしょ。それに、桐生先生の出した課題なんだもん、張り切らなきゃ!」

 

「マコは本当桐生先生推しだよねー。まあ格好いいけどさ」

 

笑いながら繰り広げられる当たり前の会話。何故かそれに安堵する自分が少しおかしくなり、苦笑する涙子だったが。

 

「ああー、噂のレベルアッパーでもあれば、サクッとレベル上がるのになー」

 

「レベルアッパーって、あんなの都市伝説でしょ?」

 

「えー?でも掲示板とか見てるとマジもんっぽいじゃん、って涙子?」

 

急に立ち止まる涙子に友人たちは不思議がる。無理もない、当の涙子は右手にオーディオプレーヤーを握りしめて立ち止まっているのだから。

 

「そっか…」

 

私だけじゃないんだ。

レベル0ってことは、レベルアッパーを使うのに十分な理由なんだ。

みんなも、コレを使いたいって言ってる。

 

「涙子―?」

 

「レベルアッパー、持ってたり、して」

 

つい、そう言ってしまった。

 

 

 

「これでもくらえ!!」

 

【ready go! Great doragonic finish!!】

 

その少し前。

 

万丈と黒子はスマッシュと交戦していた。

 

GCZドラゴライブレイザーによってボトル成分を猛炎のエネルギー、グレートクローズドラゴン・ブレイズに変換し、竜の吐く炎と共に繰り出したキックがスマッシュ―ロックスマッシュに迫る、が、

 

ジャラララ

 

ロックスマッシュは自身の腕から生成したらしい鎖によって傍に停めてあったバイク―変身者であるスキルアウトのものだろう―を捕獲し、グレートクローズこと万丈との間の障害物にする。勿論無傷ではすまないがいくらかダメージを軽減できるという目算。だが、

 

「させませんわ!」

 

どこからか瞬間移動してきた黒子が万丈の頭上に現れ、その肩に触れる。

 

ヒュン!

 

という独特の音と共に二人の姿はバイクを構えたスマッシュの背後に回っていた。

 

「おオオオオラァアアアア!!!」

 

障害物のなくなった空間を引き裂くように万丈のライダーキックが炸裂、5メートルほどスマッシュの巨体が吹っ飛び、爆発する。

 

「っと、危ないところでしたの。あんな蹴りをバイクに当てていたら大爆発必至ですの」

 

「ありがとな白子!助かったぜ!」

 

「し・ら・いですの!!さっさとあのスマッシュを元に戻してきてください!」

 

あいよー、と言ってグレートクローズドラゴンを引き抜いて変身解除しつつ、スマッシュの方へと走る万丈を見送り、

 

「さて、そこの殿方」

 

とビルの陰にへたり込んでいた少年に向けて言った。

 

「逃げ遅れたわけではありませんわよね?腰を抜かした、という表現の方が適当ですの?」

 

言いつつ少年の退路を塞ぐように近づく。少年は先ほどから本当に腰が抜けているのか、それともただの恐怖による硬直か、すっかりへたり込んでいる。

 

「面倒なので単刀直入に聞きますが、あなたはレベルアッパーを買いに来た人ですの?それとも…」

 

鉄製ピックを少年の足元に瞬間移動させ、詰め寄る。務めて普通の声色で

 

「売る方、ですの?正直に言ってくださいまし」

 

「う、売る方だよ!!ほら!!」

 

あまりの恐怖からか声まで震わせながら少年は手に持っていたものを見せる。

 

「なんですのこれ、音楽プレーヤー?」

 

少年の手にはよくある携帯端末型の音楽プレーヤーが握られていた。黒子はあまりこういうものは使用しないが、常盤台のクラスメートや涙子が似たようなものを持っているのは知っている。

 

「おーい桃井―、こっちは片付いたぜ。黄泉川と戦兎にも連絡しておいた。」

 

「白井ですの。ではなくて…、あなた、これは何ですの?」

 

万丈に突っ込みつつ、黒子はピックを構えて少年に聞く。

 

「だからっ!これがレベルアッパーなんだよ!!」

 

そう言って手元の端末についているボタンを押す。スリープモードだった端末の画面に光が戻り、「NO IMAGE」と書かれた画面と共に流れる文字がある言葉を表示していた。

 

「これって……」

 

「ビビるアッパー!!」

 

シリアスに向きませんのこの人?と場違いな感想を黒子は抱いたのだった。

 




ご無沙汰しております。

仕事だったんです。あと、プライベートも大変だったんです。

新作も進んでますが、亀更新になりそうです。

ゼロワンドライバー、外れちゃった。一般販売待ちます。

そろそろ万丈のいい間違いネタ切れそうだな・・・
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