美「まって、なにそのあらすじ、絶対違うでしょ?」
戦「いや俺もそう思うけど、台本担当がこれ持ってきたから」
黒「誰ですの台本担当・・・、というか、このやりとりもすごい久しぶりに感じますの」
戦・美「「確かに」」
黒「ということで、ちゃんとあらすじ紹介しておきましょう」
戦「そうだな。えーっと、白井と万丈がチンピラぶっ飛ばして」
美「レベルアッパー見つけたのよね」
黒「いやまあ、そうなんですけども・・・さっぱりしすぎじゃありませんの?」
戦「なんか四か月くらい間が空いた気分なんだよなあ。なんか気乗りしないというか」
万「それあれだろ?七月病!!」
戦・美・黒「「「五月病!!!」」」
涙「とりあえず私の闇落ちフラグがひしひしと伝わる第十九話、どうぞ~」
「むー…ふっ!!」
気合の入った声と共に涙子の友人であるアケミの前方にいた友人の足が地から離れる。
「うわぁぁ!」
友人は地上から3メートルほどの距離まで浮くとそこで静止した。念動。学園都市の中でもポピュラーな部類の能力だ。
「すごいよ涙子!!私今まで紙コップしか浮かせられなかったのに…って、涙子―?」
能力を上げてくれた張本人である涙子を見ると、本人はベンチの横で一人呆然としていた。
「(能力だ…)」
掌の上を青々した葉が風に乗ったように回転している。名前も付いてない、レベル1にも満たない能力。でも、
「(他人から見たら大したことないものかもしれないけど・・・御坂さんや白井さんと同じ、能力者になったんだ!!)」
そのことがただ嬉しく、思わず笑みがこぼれる。
その様子にアケミ自身も微笑みを見せる。口には出さないが、同じレベル0、その苦悩は理解できるのだ。
「アーケーミー!!」
と、先ほどまで自分の能力で浮かばせていた友人が後ろから抱き着く。じゃれあいながら涙子を見ると、その表情はやはり笑顔だった。
この時までは。
※
「うーん…これがレベルアッパーですか…」
「こんな音楽データで、能力のレベルが上がる、と」
万丈と黒子が持って帰ってきたデータと、暴れていた学生から入手したURLから元のデータをダウンロードしたものを初春と戦兎はそれぞれの端末に表示する。
「眉唾ですねえ、こんなもので本当に能力が上がるっていうんですか?」
「少なくとも善意の協力者はそう言ってましたわよ」
「言ってたな、アイツ腰抜かしてたし嘘は言ってねえだろ」
何したんだあいつら…、と半目になりながら戦兎は音声解析ソフトにレベルアッパーのデータをアップロードする。すでに木山にも同じデータを初春から送ってもらい解析を進めているが、まあ知恵は多い方がいいだろう。
とはいえ、戦兎の専門は物理学。医学分野に関しては完全に素人だ。物理学的な見地でどこまで解析が進むのかは疑問ではあるが、
「ま、何もしないよりはマシだろ」
言いつつキーボードを叩く。と、なにやら初春とじゃれあっている黒子の携帯端末に着信が入る。
2.3話して黒子が告げる。
「レベルアッパーに関連しているであろう学生が暴動を起こしているそうですわ、出動します」
「なら俺も行くぜ!もしかしたらスマッシュ出るかもしれないしな!」
「わかりましたわ、掴まってください」
そう言って万丈が黒子の手をつかみ、2人は消えていった。
「あ、木山先生からですね」
「ほんとか?早いな」
まだデータを送ってから1時間も経ってない。もう経過報告だとすれば相当早い。
「木山先生、風紀委員177支部の初春です」
「桐生です。同席しています。」
『ああ君たちか。先ほど現物が届いたよ。今解析しているところだが…』
「そのことなんですけど、音楽ソフトなんかで能力が上がる、なんてことあるんでしょうか」
『んー難しいねえ、テスタメントならいざ知らず、ただの音楽ソフトでは…』
「てすためんと?そういう装置があるんですか?」
『ああ、あとでそれに関してのデータも送ろう。まあこちらでも解析は進めるが、あまり期待しないでくれ』
「はい、わかりました」
そう言って通話を切る。
「やっぱり音楽ソフトなんて見当違いなんでしょうか」
「さあな、とにかく今やるべきなのはコイツをこれ以上拡散させずに、作ったやつを検挙することだろ。俺も万丈達を手伝ってくるから、なんかあったらドラゴンに言ってくれ」
そう言って戦兎は机の上に会ったビルドフォンを掴み、代わりにクローズドラゴンを起動しておく。
「わかりました。」
初春は一人、残された音楽プレーヤー―レベルアッパーが入ったそれを見つめる。
「(佐天さん…)」
涙子はレベル0だ。本人はそのことを気にしないようふるまっているが、本心ではコンプレックスに思っているはず。
音楽ソフトなら手に入れられるルートはいくらでも考えられる。インターネット上、友人からなど、日常的に手に入る可能性は十二分にある。
「(一応、一応です…)」
自分の端末から涙子へ連絡する。が、コール音が鳴り響くだけで繋がることはなかった。
※
「俺様の能力を見るがいい!!!」
「見ませんのよ!」
ある公園では黒子が男子学生の浮かせた砂利を避けつつ、頭上に瞬間移動して拘束する。
「ぐがががあが!」
「おりゃあ!!」
ある路地裏ではスマッシュとグレートクローズが拳を交えていた。
そして、
「まったく、こんな真昼間から現れるなんてな」
戦兎は第七学区の外れにある寂れた工場でスマッシュと対峙していた。
「ぐるるる」
相対するスマッシュは体のいたるところに南京錠やら鎖やらを巻き付けている。
「見た感じロックボトルのスマッシュか・・・、どうやって倒したっけな」
言いながらビルドドライバーを装着し、ボトルを取り出す。手元にあるボトルはいつものラビットタンクではなく、
「さあ、実験を始めようか」
ボトルを振ってシールディングキャップを開き、ドライバーに装填された色は紫と黄色。
【忍者】【コミック】
【ベストマッチ!】
「変身!」
ボルテックレバーを回してスナップライドビルダーを展開。形成されるのは紫と黄色のボディ。その二つに戦兎が挟まれる。
【忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!】
仮面ライダービルド、ニンニンコミックフォーム。変幻自在の忍術を使うトッリキーなフォーム。
【四コマ忍法刀】
ライドビルダーを展開して専用武器である四コマ忍法刀を召喚し、ロックスマッシュに切りかかる。しかしその一閃は鎖によって防がれた。
「そりゃ防ぐよな!」
言いながら二撃、三撃と攻撃を繰り返すが、すべて鎖で防がれてしまう。しかも、
「あっぶね!!」
ロックスマッシュの背後から細長い鎖が何本も飛び出し、ビルドの四肢を拘束しようと襲い掛かる。それらを続けざまに弾く間にじりじりと下がってしまう。そして、
「しまっ!!」
死角からの鎖が足に絡まり、一瞬で宙づりにされる。奇しくも先日のオクトパススマッシュとの戦闘と同じ状況に陥ってしまった。
ように見えた。
『隠れ身の術!ドロン』
その音声と共に四コマ忍法刀から白い煙が噴出し、次の瞬間にはスマッシュの背後にビルドの姿が現れた。四コマ忍法刀に搭載されている四つの忍術の内の一つ、刀身から目くらまし用の濃煙を発生させた隙に鎖を断ち切り、煙に紛れて移動したのだ。
「お返しだ!」
そう言って忍法刀のボルテックトリガーを二回引く。刀身の下から二つ目のコマ「二のコマ、火遁」が光る。その状態のまま再度トリガーを引きスマッシュに切りかかった。
『火遁の術!火炎斬り!』
刀身に炎を灯した斬撃によって鎖ごとロックスマッシュの身体を切り裂く。苦痛のうめき声を上げながら倒れるスマッシュを尻目にボルテックトリガーを一回引き、「一のコマ、分身」を選択してトリガーを引く。
『分身の術!』
その音声と共にビルドの姿が3人に増えた。
「「「勝利の法則は決まった!!」」」
3人のビルドが一斉にボルテックトリガーを引き、剣を振るう。
『『『風遁の術!竜巻斬り!』』』
刀身から発生した激しい竜巻がロックスマッシュの身体の自由を奪い、空中へと吹き飛ばす。間髪入れずに分身を解いた本物のビルドがボルテックレバーを回す。
『Ready GO!ボルテックフィニッシュ!』
「はぁぁぁぁ!!」
風に乗ってスピードと威力が増したライダーキックを受け、スマッシュは爆散したのであった。
※
「いたたた…」
「無理しすぎですよ、白井さん」
レベルアッパーの実物が見つかってから3日。学生による能力使用事件は平常時の倍近く発生していた。また、スマッシュの発生件数も比例するように増加している。
「スマッシュの数が増えているってことは、いよいよレベルアッパーとの関係性は確実なものになってきたな」
ここ数日で増えたボトルを並べながら戦兎は言う。所持していたものを含めるとボトルの数はかなりのものになり、旧世界の東都、北都のボトルはほぼコンプリートしている。
「それだけじゃねえ。なんか最近のスマッシュやたら強くねえか?」
「…それは何となく感じていた。いくら俺たちのハザードレベルが最後の戦いから下がっているとはいえ、ただのスマッシュにあれだけ苦戦するのは違和感がある。それこそ三羽カラスの時みたいな感じだ。まあベストマッチが増えているから俺はまだ対応できるが…」
そう言って戦兎はクローズの戦闘データを見る。万丈の戦い方はいたってシンプルだ。殴って蹴ってたまに斬る。ツインブレーカーのビームモードなんてほとんど使用履歴がない。
一応ツインブレーカーにボトルをセットすれば、そのボトルの特性を生かした攻撃は可能なのだが。
「万丈にそんな戦況に対応して戦い方を変えるなんていう知能指数の高い真似ができるわけないか」
「馬鹿って意味か?」
「馬鹿って意味だ」
筋肉つけろこの野郎、と食って掛かるのを無視して画面に違うデータを表示させる。それは旧世界のライダーシステム、プロジェクトビルドの設計データであり、悪魔の科学者、葛城巧であった時の自分の発明品、
「スクラッシュドライバー…」
スクラッシュドライバー。特定のボトルから抽出したスクラッシュゼリーを用いて、ビルドドライバーのシステムよりもはるかに強力な力を引き出すベルト。かつて万丈や仲間の一海、幻徳が使用していたものだ。
「また作ってくれんのか!?」
「…正直迷ってる。勿論、お前が暴走しないってことはわかっているが、今回の件に限らず、この街には明らかにネビュラガスが関わっている。つまり—」
タン、とスクラッシュドライバーのデータから学園都市全域の地図へとキーを押して切り替える。
「ハザードレベル3,5以上の人間が生まれる可能性があるんだよ」
ハザードレベル3,5。それはプロジェクトビルドのライダーシステムを使用するのに必要な数値。戦兎も万丈もかつて東都で暗躍していた秘密組織、ファウストの人体実験によって体内にネビュラガスを注入されて至った状態。
「もし前の時みたいにスクラッシュドライバーのデータが奪われて、暴走する人間が生まれたらと思うと、どうしてもためらっちまう」
「…難しいことは、よくわかんねえけどよ」
と、戦兎の呟きに万丈が返す。
「ライダーシステムにとって必要なのは技術とかじゃなくて、ラブアンドピースの気持ちだろ?根っこのところ忘れなきゃいいんじゃねーの?お前にとってそれ以外は全部ついでだろ」
一瞬言葉が出なかった。
「…筋肉馬鹿が、知ったこと言いやがって……」
戦兎の口元は、その悪態とは裏腹に微かにほころんでいた。
「まっ、とりあえずこの騒ぎを収拾しないことには開発も何もできないんだけどな。」
「いや先に言えよそれ」
いつも通りぎゃーぎゃーとわめきあう二人なのであった。
お久しぶりでございます。
結論を言いますと、入院と海外出張で時間がなかったんですね。
マーじーで、すいませんでした。
気づいたら八キロ太って痩せました。±はゼロ。
ゼロワンの状況もわからない。映画見れてない。小説も書けてない。
ないないづくしです。
とりあえず仕事しつつ更新していきますので、まだ見てくれている方がいたら応援していただければと思います。
来年こそ、簡潔させる。
皆様よいお年を。