とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

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「天っ才物理学者の桐生戦兎は、突然、超能力者を開発する街、学園都市で目覚めたのだった。葛城巧(精神)との感動的な別れを済ませ、新たなる一歩を踏み出したのだが!」
「なんで葛城が出て俺が出ないんだよ!!相棒ポジションは俺のはずだろ!?」
「恥ずかしいこと大声で叫ぶなよ・・・物事には順序があるんだよ。おとなしく待ってなさいよ」
「それはそうと、お前職質されてんじゃねーか。ヒーローが職質なんてされていいのかよ」
「学生の街で服ボロボロ、あちこち傷だらけの男がいたら誰だって職質されるでしょ」
「自覚はあったのかよ」
「天才をなめるんじゃないよ。それにちゃんと切り抜けたから問題なし」
「ボトル落としてるくせによく言うぜ」
「うるさいよ。ちゃんと第二話で回収するから、ちゃんと見てろよ」


第二話 探し物と合流と

「最っ悪だ…」

マシンビルダーを降りた戦兎は盛大な溜息を吐いた。

変な中学生くらいの女子―風紀委員(ジャッジメント)がもめてる内に公園から抜け出し、バイクでここまで来たが

(よく考えたら俺めちゃくちゃ不審者だし、風紀委員(ジャッジメント)って言うなれば警察の下部組織みたいなもんだよな…)

先ほど指摘されたので声には出さず、あくまで思考の中で一人ごちる。といつまでもバイクを出しっぱなしにするのも邪魔なことに気付いた。

【ビルドチェンジ!!】

タッチパネルを操作すると音声と共にバイク―ビルド専用の変形マシン『マシンビルダー』から携帯へとモードチェンジした。

「さて、っと」

戦兎がいるのは元いた公園から数キロ離れた繁華街にある噴水広場だ。30度に届く気温のせいか、あるいはそういう時間帯なのか、辺りに学生の姿はまばらだ。

「これからどうするにしても、現状の装備くらいは見直した方がいいな」

そう言ってビルドフォンの『格納アプリ』を展開する。ちなみに格納アプリはビルドドライバーから各種武器を召喚する機構を利用して持ち物を粒子化し、ビルドフォン内に保存する機能である。

「とりあえずこんなところか」

ちょうどいい木陰を見つけ、腰を下ろして自分の装備を眺める。目が覚めた時に持っていたものは、装着していたビルドドライバー、ポケットに入っていたラビット、タンクボトル、格納されていたラビットタンクスパークリングボトル、ハザードトリガー、フルフルラビットタンクボトル、ドラゴンフルボトルそして

「なんでこれが…」

そう呟いて手元のガジェット―ジーニアスフルボトルを見る。

「成分は…やっぱり抜けてるな。反応もなし、か」

ジーニアスはエボルトとの戦いで新世界を創る際、その成分をパンドラボックスに移し替えたのだ。ゆえに戦兎、あの時は葛城巧の精神だが、ともかく開発したボディだけが何故か残っていた、ということになる。

「使えそうなのは…ドライバーは無事、スパークリング、ハザードトリガー、フルフルラビットタンクは、だめだ、修理しないと使えそうにないな…流石にラビットボトルは大丈夫そうだし、ドラゴンも大丈夫…まあ俺は使わないけど。…ん?」

と、そこであることに気付く。

「タンクボトルが…ない?」

 

 

「なんですかねえ、これ」

街を歩きながら初春は手の中の物体―タンクフルボトルを眺める。

「おもちゃじゃないのー?よくあるじゃん、男の子向けのやつ」

隣を歩く涙子は興味なさげに返す。

「それよりさ、やっぱり私はいいよ。常盤台のお嬢様なんて多分気が合わないし」

「そんなことないですよ。白井さん、いい人ですし、御坂さんだって」

「でもさー、あーいうレベルの高い人たちって、それを鼻にかけてるというか、偉そうというか」

「少なくとも白井さんはそんな感じじゃないですよ。私とも仲良くしてくれてるし」

うーんと唸りながらも待ち合わせ場所には確実に近づいている。今向かっているのは第七学区にあるとあるファミレス。そこである人物と合流する予定なのだ。

白井黒子。風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部のメンバーであり、初春とペアを組んでいる女子生徒。中学1年生ながら名門、常盤台中学校に所属する強能力者(レベル4)

そして…

「あ、ここですよここ…って、あれ?」

約束のファミレス。その中で見知った女子生徒と見知らぬ女子生徒が絡んでいた…

 

「というわけで、とりあえずご紹介しますわ…」

と白井黒子は痛む後頭部をさすりつつ、自身の右手側を示す。

「こちら、柵川中学一年、初春飾利さんですの」

紹介された初春は顔を赤らめつつ

「は、初めましてっ。初春飾利、です」

と答える。

「それから―」

と自分も初めて見る女生徒の方を窺うと

「どうもー、初春のクラスメートの佐天涙子でーす。なんだか知らないけど付いてきちゃいましたー。ちなみに能力値は『レベル0』でーす」

「さ、佐天さん。何を・・」

とやや嫌味っぽい自己紹介だが、2人の目の前の少女はなんら気にした様子はなく

「…初春さんと、佐天さん。私は御坂美琴。よろしく」

といつも通りの笑顔で応えた。これには先ほどまでレベルがどうこう言っていた涙子、緊張していた初春も虚を突かれたように

「よろしく」「お願いします」

と答える以外なかった。

「では、つつがなく紹介も済んだところで、多少予定は狂ってしまいましたが、今日の予定はこの黒子がバッチグッ!!!」

ゴン!と鈍い音と共に美琴の鉄拳が黒子の後頭部を襲った。その黒子が持っていた手帳落ちてスケジュールのページ―ランジェリーショップ、勝負下着、アロマ、媚薬など不穏な文字列が見て取れ、涙子と初春は何となく黒子が殴られた理由を察する。

「ったく…まっ、こんなところにいても仕方ないし、とりあえず」

美琴は先ほどと同様の涼しい笑顔で言う

「ゲーセン行こっか」

 

「もうお姉さまったら、ゲームとか立ち読みではなく、もっとこうお花とかお琴とか、ご自身に相応しいご趣味をお持ちになりませんの?」

「うっさいわね。大体お茶やお琴のどこが私らしいっていうのよ」

先を歩く美琴と黒子、その後ろからついていく形の涙子と初春はひそひそと言葉を交わす。

「なんかさあ、全然お嬢様じゃなくない…?

「上から目線でもないですねえ…」

背丈自分と同じくらいか。明るい茶髪のショートカットに装飾の類は前髪を分けるヘアピンのみ。常盤台中学の制服であるベージュのサマーベストとグレーのスカート、革靴は高級感に溢れているものの、遠慮しない感じの態度や、どこか悪ガキのような笑顔が「常盤台のお嬢様」というイメージを壊している。横の黒子も、ややピンクのかかった髪を赤いリボンでサイドでまとめ、独特のイントネーションで話す姿はお嬢様然としてなくもないが、やはり世間一般のイメージから外れているように見える。

「(レベル5か…)」

超能力者(レベル5)。学園都市にいるすべての能力者の頂点に立つ存在。数百万人いる学生の内たった7人しかいないと言われているエリート中のエリート。

レベル0の涙子にとっては正に正反対の存在。この街では能力の優劣=評価なので文字通り真逆なのだ。だが

「親しみやすそうないい人じゃないですか」

「そうかなあ…」

この街では能力によって評価される。

いい意味でも、悪い意味でもだ。

 

「ありがとおおおおお!!!」

「い、いえ…」

そのエリートがなぜ無能力者(レベル0)である自分の手を握って感謝の涙を流しているのか。

(カエルのストラップで…)

ことの発端は、初春が持っていたチラシだった。第七学区ふれあい広場、先ほどまで涙子たちがいた公園横の広場に新しいクレープ屋ができた、というものだ。

クレープ屋ができることは別に真新しいことではない。学生の街である学園都市では、そういった「学生の嗜好品」は常に入れ替わっているのだから。

「このゲコ太ストラップ初めて見るわ!!ケータイにつけちゃおー!」

と涙子が先ほどまで持っていた緑色の物体…大分小さな子供向けのカエルマスコット「ゲコ太」のストラップは、しかし今は美琴の手の内に収まっていた。限定品が美琴の前の客、つまり涙子の番で終わりと知った美琴がこの世の終わりかのように項垂れているのを見て、思わず譲ったのだ。

スキップしながらクレープ片手に先に席を取っていた初春と黒子の元に向かう美琴の背中を見ながら、普通の女の子みたいだなあ、とか、どんだけ好きなんだよ、なんて考えていると。

「よかったですね。」

隣から初春が声をかけてきた。涙子の手から「ありがとうございます」と言ってクレープを受け取りながら

「御坂さん。お嬢様って印象とは違うけど、いい人そうじゃないですか」

「…そうなのかなあ」

先ほどと同じような返しをしつつ、じゃれあうお嬢様二人の様子を見ていると

「はい!」

「はい?」

何かに気付いたかのように美琴が自分のクレープを差し出してきた

「味見でしょ?さっきのお礼。一口どうぞ」

「えっ」

随分フランクだ、と感じながらも戸惑っていると後ろから黒子が、間接キスがどうだとか言いながらまた美琴に絡む。

その様子を見ながら、まあ、悪い人ではないかもね、なんて考えていると。

「あ、そういえば白井さん。さっきこの近くの公園で変な人に会ったんですけど」

と初春が美琴に顔を押さえつけられながらもクレープを奪おうとしている黒子に向かって言った。

「変な人?どのように変な人なんですの?

「えっと、大人の男性なんですけど、なんかずっと一人でぶつぶつ話したり、聞いたこともない研究所のスタッフカードを出して来たり、あ、そうだ」

と言ってスカートのポケットから例のボトルを出す。

「変なもの置いていくし・・・しかも話の途中で逃げちゃうし」

「何それ、まんま不審者ね」

例の男が提示したネームカードに貼ってある写真を見ていた美琴が言う。彼女たちも件の男が所属していたという研究所に心当たりがない様だ。

「顔はいかにもなイケメンっぽくないですか?さわやかー、って感じの」

「そう?こういう何考えてるかわかんないやつってどうも気に食わないのよねー」

「見たところ学生ではありませんわよね…書庫(バンク)のデータは確認しましたの?初春」

書庫(バンク)とは、学園都市に関する情報のデータバンクのことで、風紀委員(ジャッジメント)である黒子や初春の閲覧権限であれば、個人情報まではいかなくても研究所の有無や所属名簿程度の情報は検索可能なのだ

「勿論、お二人に会う前に調べました…でも、今現在学園都市には東都先端物質学研究所、なんてものは存在しないんです。」

「じゃあ、嘘の身分証ってこと?でも学園都市で身元不明の大人なんてあり得るんですか?」

学園都市は、その科学技術の高さから「外」からの出入りには過剰なほどに敏感だ。学園都市の中から学生が外に行くにも、煩雑な手続きと監視GPSのナノマシンを体内に埋め込まないといけない。

「外から学園都市に入るには当然身分証が必要になりますし…客員研究者や教員なら登録があるはずですわ」

「なにより、正規のルートを通らないと外周部の壁は超えられないでしょ。」

学園都市はその外周を高さ5メートル、厚さ3メートルの壁で囲われている。貿易拠点として第11学区があるが、むしろそこは不法侵入防止のため警備員(アンチスキル)が常時待機している。

「ま、そんな不審者ならそのうち警備員(アンチスキル)の取り締まりに引っかかるでしょう。この街はそう甘いところではありませんから」

「それもそうね。それにしても…」

と、食べ終えたクレープのごみを捨てつつ美琴が辺りを見回す。

「子供が多いわね」

「ああ、幼稚園の遠足のようですわ」

「だからこんなに…可愛いですねぇ」

と初春が子供を見ながら笑みを向ける。と、初春が持っていたボトルに美琴が手を伸ばした。

「これ、なんだろうね。何かの保存容器かな」

「見たところ、何かの成分が入っているのはわかりますが…妙に凝ってるデザインですわね。戦車?でしょうか」

「言われてみれば、確かにそう見えなくもないけど…」

「危険な薬品、だったりしてー」」

「まさかー、あははは、はは…」

涙子の言葉で一同はボトルに視線を向ける。

「えーっと、冗談ですよ?」

「で、でも、不審者が持っていたものですし…、もしあの人がテロリストだったら…」

「まさか…それにテロリストならこんなすぐバレる偽身分証を馬鹿正直に出すようなことはしないでしょうし」

初春の言葉に黒子が異を唱え、美琴の手からボトルを受け取り、初春へ手渡す。

「ま、なんにしてもこれは風紀委員(ジャッジメント)でいったん保管しましょう。初春、帰りがけに一七七支部に寄ってきますわよ」

「あ、はい。」

スカートのポケットにボトルを入れようとした、その時だった。

「あったー!!!!!」

件の不審者がこちらを指さしていた。

 

 

 




オリジナルの要素として、ビルドフォンに格納アプリというのを追加しました。平成仮面ライダーたちがうまいことやってるであろう武器などの取り出しにこじつけをしてみました。今後にも活かせたらと思います。
あとジーニアスの抜け殻ボトルも追加しました。今後絡んでくる、かな?

ちなみに、ルビが何故か機能していないので下記に書いておきます。
風紀委員・・・ジャッジメント
警備員・・・アンチスキル
強能力者・・・レベル4
超能力者・・・レベル5
書庫・・・バンク

とあるシリーズの用語については原作準拠(のはず)です。
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