とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

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戦「天才物理学者の桐生戦兎は、レベルアッパー事件の黒幕である木山春生と対峙する」

佐「えらくシンプルなあらすじ紹介ですね」

戦「ちょっお前今本編では昏睡状態なんだから出てくるんじゃないよ」

黒「いいじゃありませんの、後撮りなんですから」

美「あ、それ言っちゃうんだ。茶番とは言え割とその辺は明言してなかったのに」

初「まあ見ればわかることだと思いますけど・・・」

戦「ちょっと、初春もまだ誘拐中なんだからあんま喋るなって・・・」

黒「何をそんなにこだわってますの・・・」

万「戦兎ぉー!!そこのスーパーでカップラーメン半額だってよ!!買いに行こうぜ!!」

戦「あらすじ紹介の途中でしょうが!!!(ホークガトリンガー!!」

美佐黒初「「「「キレた・・・」」」」

木山「さて、私の動機なんかも明らかになる第22話、始めるとしようか」

美佐黒初「「「「黒幕が締めた!?」」」」


――――――――――――—――

上「え?俺が読むの?」

上「えっと『なんか知らず知らずのうちフルボトルが増えてたから、使えるボトルをまとめておきます。備忘録的な?ま、参考までにBy天っ才物理学者・・・」

上「・・・いや俺の意味ある!?」


使えるボトル
有機物 
ラビット ゴリラ、タカ、ハリネズミ、ライオン、オクトパス、忍者、フェニックス、パンダ、海賊、ドラゴン
無機物
タンク、ダイヤモンド、ガトリング、消防車、掃除機、ロケット、コミック、電車







第二十二話 木山せんせい

「オラァ!!」

 

先に開戦したのは万丈と黒子対二体のスマッシュ―アイススマッシュとスパイダースマッシュだ。

 

ガキン、とクローズの拳がアイススマッシュの外殻に阻まれる。が、衝撃までは防げないようで数歩のげぞった隙をさらに畳みかけよぅとするが。

 

「―!!」

 

無音のままスパイダースマッシュがその手から蜘蛛糸を射出。持ち前の反射神経からなんとかのけ反ってそれを避け、距離を空ける。

 

「わたくしもいますのよ!!」

 

クローズの背後から黒子が飛び出す。指の間に挟んだ鉄製ピックを瞬間移動―対象は糸を射出したスパーイダースマッシュの顔面。

しかし、

 

「(やはり座標が定まりませんの……!!)」

 

何度かの戦闘でわかってはいたが、スマッシュに対してテレポートを使用すると演算結果と実際の移動先に若干の齟齬が生まれる。それはスマッシュがこの世界とは異なる物理法則を元に動いているからか。今は分からない。しかし、

 

「そう何度も同じことで立ち止まったりしませんのよ!!」

 

そう言ってスカートのポケットからホルスターにあるのとは別のピックを取り出し、テレポートする。狙いはスパイダースマッシュの足元にある地面。

 

「万丈さん!!離れてください!!」

 

「おう!!」

 

黒子の言葉にスパイダースマッシュと交戦していた万丈がバックステップでその場から離れた瞬間、

 

「ッ!!!!!!」

 

スパイダースマッシュの足元が突然爆発した。

 

「万丈さん!」

 

「任しとけ!!」

 

その一瞬の隙を見逃さず、クローズはビートクローザーにフェニックスボトルを装填し、グリップエンドを三回引っ張る。

 

【ヒッパレ―!ヒッパレ―!ヒッパレ―!】

 

【メガスラッシュ!】

 

炎を纏った斬撃がスパイダースマッシュを捉え、その身を焼き尽くした。

 

アイススマッシュは仕留めきれなかったものの、これで二対一。明らかにクローズ・黒子の側が有利となった。

 

「おい風呂子、なんださっきの?」

 

「く・ろ・こ!!ですの!!…あれは桐生さんが開発してくださったピックですの。先端に爆薬が仕込んであって、設定した秒数で起爆する仕組みになっていますの。起爆計算はややこしいですが、これならスマッシュとも戦えますのよ」

 

「いつも部屋にこもってんなと思ってたが、そんなもん創ってやがったのか」

 

俺のナックルも直してくんねえかな、と場違いなことを考えていると万丈の足元に違和感が。

 

「万丈さん!?」

 

「ん?」

 

黒子の言葉で足元を見ると徐々に体を覆っていく氷が目に入った。氷。目の前のアイススマッシュが発生させている冷気によって凍らされているのだ。

 

「おわー!!??」

 

慌てて氷を割ろうとする万丈と襲い掛かるアイススマッシュに頭を抱えつつ、黒子は新しいピックを手元に呼び出した。

 

※

【忍のエンターテイナー!ニンニンコミック!】

【分身の術!】

 

ビルドニンニンコミックフォームに変身した戦兎は、すかさず四コマ忍法刀のボルテックトリガーを押し、自身の分身を二体呼び出す。

相手はクマ、ウルフ、タートルの三体。いずれも旧世界では戦ったことのない北都由来スマッシュだが、ジーニアスフルボトルを作成した過程ですべてのボトル成分を解析した経験から、特性は分かっていた。

 

『一気に決めるぞ!』

 

三人のビルドは同時にそれぞれの目標に切りかかる。それに対しスマッシュ達は各々の特性を活かした動きで交戦する。

タートルスマッシュは甲羅状のエネルギーを腕に出現させ、防御し

クマスマッシュはその腕力で近くの瓦礫を投げ、

ウルフスマッシュは―

 

「ガルル!」

 

(はやっ!!)

 

先に切りかかったビルドの眼前に爪を立てこちらに応戦するウルフスマッシュの姿があった。こちらの攻撃が間に合わないと悟った戦兎は咄嗟に四コマ忍法刀のボルテックトリガーを四回引き、

 

【隠れ身の術!ドロン!】

 

煙幕を発生させつつその場から離脱しようとした。しかし、

 

「ぐあ!!!?」

 

着地したと思った矢先、ウルフスマッシュの腕がビルドを捉え、弾き飛ばした。高速道路の壁に激突した衝撃は直に背中に伝わり、容赦なく体内の酸素を吐き出させる。

 

「っく…そっか、オオカミだもんな。鼻が利くわけだ!!」

 

追撃してくる敵に対し、刀を構えて相対する戦兎。鋭利な爪で斬撃を繰り出してくる相手に忍法刀を振るって対抗する。

 

「ちょっと!!なに苦戦してんのよ!?」

 

声の方を見ると木山の攻撃をかいくぐっている美琴がこちらの状況に対し檄を飛ばしている。

 

「苦戦してないわ!!これも勝利の法則だっつーの!!みんな!そろそろ決めるぞ!」

 

怒鳴りつつ戦兎はスマッシュの攻撃をいなしつつ、分身体ビルドに指示を送る。クマスマッシュ、タートルスマッシュと相対していたビルドたちは、それぞれが勝利の法則に向かって動き出した。

 

「そらこっちだ!!」

 

「ついてこい!」

 

「鬼さんこちら!」

 

三者三様の方法でスマッシュ達を誘導し、一か所に集め始める。スマッシュ達が近づき、ビルド達が囲い込む。気が付けばそのような図式が出来上がっていた。

それだけではない。

 

「誘い込みお疲れー。ではではっと!!」

 

『『『!!!!?』』』

 

いつの間にかビルドがもう一人増えていた。四人目のビルドはその手に持っていたものを―実体化した鎖を―勢いよくスマッシュ達に投げつける。

 

「驚いてるな?この四コマ忍法刀の剣先についてるリア

ライズペンエッジは描いたものが実体化できるんだ。せっせとお前たちを拘束するための鎖を四人目に描かせてたんだよ。ま、クオリティはアレだけど」

 

そう言いつつ四人のビルド達は四コマ忍法刀を構える。二人のビルドが二回、もう二人が三回ボルテックトリガー引き、忍術を発動させる。

 

【風遁の術!竜巻斬り!】

 

【火遁の術!火炎斬り!】

 

竜巻によって何倍にも威力を増した炎がスマッシュ達を襲う。その隙に四人のビルドはボルテックレバーを回す。

 

「「「「勝利の法則は決まった!!」」」」

 

三人の分身体が脚部のペンユニットで手裏剣を描いてスマッシュ達に突き刺し、本体のビルドが飛び上がる。

 

【Ready Go】

 

【ボルテックフィニッシュ!!】

 

ライダーキックが炸裂し、スマッシュ達は爆発した。

 

※

「…驚いたな。もうスマッシュがやられたか。残りの二体もじきに君たちのお仲間…風紀委員の彼女ともう一人の仮面ライダーが倒してしまうだろう」

 

「驚いたって言ってるわりには、えらく落ち着いてるじゃない」

 

「慌てる必要はないからな。そもそもスマッシュには期待していなかった…私自身の力でどうにかなるからな」

 

そう言って木山は美琴に向けて斬撃状のエネルギーを放つ。寸でのところでかまいたち攻撃をかわしつつ、美琴は電撃で応戦した。しかし

 

「…どうした?複数の能力を同時に使えないと踏んでいたのか?」

 

球状に貼られたバリアによって美琴の電撃は阻まれた。図星をつかれた美琴に笑みを浮かべ、木山はさらに能力を使用する。

 

「うわっ!!」

 

瞬間、衝撃波と共に足元の道路が崩れる。恐らく念動力の応用なのだろう、なんなく着地した木山に対し、美琴も近くの柱、その中の鉄に磁力を発生させて落下を防ぐ。

 

(なんて奴…自分を巻き込むのお構いなしに能力を振るうなんて…)

 

「…拍子抜けだな」

 

「何よ」

 

「レベル5とはこの程度のものなのか?」

 

「くっ!」

 

挑発とわかっているものの、それに乗るような形で美琴は柱から磁力で破片を浮かせる。

 

「電撃を攻略したくらいで勝ったと思うな!!」

 

それを磁力で思い切り木山に向けて放つ。が、木山は手元に出した光の剣で破片を切った。

 

「はい?」

 

思わず間抜けな声を発した美琴に対し、木山はさらに能力を使った。対象は美琴が張り付いている柱。円状に切り込みが入ったと思ったら。

 

「うわっ!!」

 

せり上がり円柱状になって美琴諸共落下する。

 

「げほっげほっ…」

 

「…もうやめにしないか」

 

粉塵が舞う中せき込みつつ木山を睨む。白衣のポケットに手を突っ込むという余裕な姿を見せ、木山は静かに言う。

 

「私はある事を調べたいだけなんだ。それが終われば全員解放する。」

 

目を閉じ、

 

「誰も犠牲にはしない」

 

「「ふざけんじゃないわよ(んな)!!」」

 

【鋼のムーンサルト ラビットタンク】

 

戦闘を終え、ラビットタンクフォームに変身した戦兎と美琴が同時に言う。

 

「ん?」

 

「誰も犠牲にしない…?あれだけの人間を巻き込んでおいてっ」

 

美琴は立ち上がり、眼光を光らせる。

 

「人の心を弄んでおいて!!そんなの、見過ごせるはずないでしょうか!!」

 

「…やれやれ、レベル5と言っても所詮は世間知らずのお嬢様か…」

 

「いや、天っ才物理学者も同意見だ。」

 

頭を抱えた木山は美琴の後方に降り立ったビルドを見やる。

 

「アンタは科学者でありながら、科学を使って守るべき子どもたちを利用した。科学技術は誰かの笑顔のために、愛と平和のために使うべきものだ。その矜持を失った時点でアンタに科学者を名乗る資格はない!」

 

「青いな…この街では、そのようなものは文字通り幻想だよ…」

 

髪を掻き上げた木山は二人に向けて静かに告げる。

 

「君たちが普段から受けている能力開発、あれが人道的で安全なものだと思っているのか?」

 

「どういう意味だ?」

 

戦兎の問いに木山は口元をゆがめて答える。

 

「学園都市上層部は能力に関する重大な何かを隠している。それを知らずにこの街の教師たちは、学生たちの脳を日々『開発』しているんだ。…それがどんなに危険なことかわかるだろう」

 

「…中々面白そうな話じゃない。アンタを捕まえた後でゆっくりと…」

 

言いつつ右手から電力を地面に向けて流し、砂鉄を巻き上げる。

 

「聞かせてもらうことにするわ!!」

 

言葉と同時に数十本に及ぶ帯状の砂鉄流が木山に襲い掛かる。それは常時警戒している戦兎の目にも止まらぬ速さで、

 

「残念だが、」

 

ガギン!!

しかし足元の瓦礫でガードされ、木山本人には一つも届かない。

 

「まだ捕まるわけにはいかないっ」

 

念動力で周囲に散らばっていたものを浮遊させ、その中身をぶちまけた。

 

「これは…空き缶!?」

 

「グラビトンか!?」

 

一瞬早く気が付いた戦兎はドリルクラッシャーをガンモードへ変形させ、撃ち落とそうとする、が

 

「さあ、どうする?」

 

「全部…撃ち落とす!!」

 

その前に美琴が雷撃の槍によって宙を舞う空き缶を根こそぎ薙ぎ払った。

 

「すごいな…しかし」

 

その声に反応し、戦兎は木山を見る。噴煙に紛れ木山は周囲の空き缶をあてがうとともに、その一つを手に取り、

 

「ざっとこんなもんよ!!もう終わり?」

 

美琴の背後へとテレポートさせた。

 

「御坂!!」

 

咄嗟に美琴の盾になろうとする戦兎だが、介旅が使用していたグラビトンと同等以上の威力を持った爆発が起こり。

 

「ドカン、だ」

 

2人を襲った。

 

 

※

 

「…もっとてこずると思ったが」

 

土煙が晴れる。木山が見つめる先には先ほどまで自分と戦っていた二人が横たわっていた。ビルドは咄嗟に美琴を庇おうとした結果、まともに爆発の衝撃を受けたはずだが、微動だにしない美琴に比べ、変身解除されてるとはいえ、うめき声が聞こえる。意識があるのだろう。

 

「こんなものか、レベル5」

 

「ぐっ…」

 

「すごいな、仮面ライダーというのは。あの衝撃にも耐えられるものなのか。機会があったら調べてみたいものだ。まあ、そんな機会はこないだろうが」

 

「まてっ…!!」

 

「恨んでもらって構わんよ。」

 

そう言って木山は踵を返し、車に戻ろうとする。が

 

「…つっかまーえた…」

 

背後から腰のあたりを抱かれる感触。そして、先ほどまで微動だにしなかった少女の声が、さらに、

 

「馬鹿なっ!!?」

 

目の前には生身ではあるもののドリルクラッシャーガンモードを突き付ける戦兎の姿が、。

 

「こっちこそ、随分てこずらされたよ」

 

ドロン!という音声と共に背後にいた戦兎の姿が消える。あの一瞬でニンニンコミックにビルドアップし、分身を作っていたのだ。

 

さらには、

 

(即席の磁力の壁!?)

 

美琴が倒れていた場所、不自然に盛り上がった地面がまるで美琴を守るかのように爆発地点と美琴の間に立ちふさがっていた。

 

「ゼロ距離からの電撃…あのバカやそこの変人には効かなかったけど、いくら何でもあんなトンデモ能力までは持ってないわよね!!」

 

「くっ!!」

 

瞬間的に地面を隆起させ美琴に差し向ける、が、

 

「遅い!!!!」

 

電流の速度には及ばず、美琴の身体から紫電が走る。

 

「ぐあああああああああ!!!!」

 

「…いや、やり過ぎじゃね?」

 

戦兎が心配するレベルの絶叫が響いたが、それもつかの間、電流を止めると木山は気を失ったのか、ぐったりと前にめりになった。

 

 

「おっと」

 

抱き着いた美琴が支えられない上半身を支え、木山の様子を見る。どうやら完全に気絶しているようだ。

 

「一応手加減はしてるから死んではない、と思う…」

 

「どうした?」

 

急に黙った美琴を訝しんだ戦兎が問うが、美琴はどこか中空を見ている。それはまるで、誰かの声を聴いているかのように。

と、その瞬間戦兎にもそのわけがわかった。それは

 

(…せん…い)

(…せんせ…い)

(…せんせい…)

 

「なにこれ、まるで頭の中に直接…」

 

「それだけじゃない…これはイメージ…?見たことのない子どもの顔が頭の中に…」

 

はっとなり二人は自分たちの間にいる木山を見る。

 

「これって、木山春生の記憶…?」

 

「…おそらく御坂の電気によって触れている俺と木山と御坂の間でネットワークが構築されてるんだ」

 

その証拠に、とでもいうように頭の中に次々と映像がフラッシュバックしてくる。

 

(木山せんせいっ)

 

 

※

はじめは、研究の一環だった。

上司から統括理事会肝いりの実験と聞かされ、たまたま大学時代に取得した教員免許から、教師になれと言われた。

チャイルドエラー。

様々な事情で学園都市に捨てられた子供たち。被験者である彼らの成長データや調整をするために「教師」という役割を負うことになった。

 

(厄介なことになった)

 

はじめて彼ら彼女らの前に教師として立ち、自己紹介をした直後の感想だ。屈託のない笑顔をこちらに向けてくる、数十人の子供たち。

 

(子供は嫌いだ)

 

悪戯によって水を被り、いつものように服を脱いで乾かそうとしたら女生徒からは怒られ、男子生徒からはペチャパイと言われた。

 

(デリカシーがない)

 

廊下で彼氏の有無を聞かれ、あまつさえ付き合ってやるなどと言われた。

 

(失礼だし)

 

教科書にムカデのおもちゃを仕込まれ、柄にもなく叫んでしまった。

 

(悪戯するし)

 

泣いている子供に理由を聞いたらさらに泣かれたこともあった。

 

(論理的じゃないし)

 

好き嫌いしちゃダメなんだよ、とニンジンを避けていた姿を注意されたりもした。

 

(馴れ馴れしいし、すぐに懐いてくる)

 

子供は、嫌いだ。

 

ある雨の日だった。帰宅しようとしたら校門前で女子生徒が倒れていた。滑って転んだ、と言って笑っていた。

 

―入っていいの?―

 

―ああ―

 

放置するわけにもいかず、成り行きで自宅に通し、風呂に入れた。汚れてしまった服を洗濯機にかけ、壁にもたれかかっていると声が聞こえた。

 

―せんせい?-

 

―ん?―

 

―がんばったら私でもレベル4とか5になれるかなー

 

―今の段階では何とも言えないな。…高レベルの能力者に憧れがあるのか?―

 

―んー、勿論それもあるけど―

 

はにかむような声で彼女は言った。

 

―私たちは、学園都市に育てられているから、この街の役に立てるようになりたいなーって

―

 

その言葉に、何も返せなかった。

 

風呂にから上がるとその少女は眠ってしまった。今日やろうとしていた研究の時間が無くなった。いい迷惑だ。

 

少女は安心しきった寝顔で横たわっていた。

何故か、口元が少しほころんだ。

 

―やっぱり、子どもは嫌い、だ―

 

騒がしいし、デリカシーがない。

―凝りもせず悪戯する生徒たちとそれを諫める生徒たち―

 

失礼だし、悪戯するし、

―白衣を持ち出して逃げ回る生徒―

 

論理的じゃないし、

―ぐちゃぐちゃな自画像を渡してくれた生徒―

 

―自分の誕生日に花束を贈ってくれた―

 

―好き嫌いは駄目、と言ってはしゃいだ―

 

子どもは―――

 

その日はいつものように晴れていた。

 

冷たい金属性の機械が並び、実験着を着た生徒たちが投薬され、実験用の機器を取り付けられている。

 

―怖くないか?―

 

いつかの少女に問う。

 

―ぜんぜん!だって木山せんせいの実験なんでしょ?―

 

いつかと同じような笑顔で、少女は言う。

 

―木山せんせいのこと、信じてるもん!―

 

その言葉に苦笑する。実験が成功すれば、もうこの子たちと関わることもない。

 

これで、先生ごっこもおしまいか。

 

そう思っていた。

 

結果は。

 

鳴り響く赤い警報、子どもたちの意識が奪われ、昏睡状態に。周りのスタッフが対応しようと走り回る中、最初に実験を命じた上司は興味深そうにモニタを見、いつもと同じ穏やかな声色で指示を飛ばす。

 

―浮足立っていないでデータを取りなさい―

 

―今回の実験に関しては緘口令が敷かれる―

 

―実験はつつがなく行われ、君たちは何も見なかった―

 

―いいね?―

 

怯えるように震える私の肩をつかみ、その男は言った。

 

「木山君。よくやってくれた。彼らには気の毒だが―」

 

「科学の発展には付き物だよ」

 

「今回の事故は気にしなくていい。君には今後も期待しているからね」

 

その表情は、科学者にも、悪魔にも似た酷薄な笑みだった。

 

教え子たちの意識が途絶えた。それを知らせる無機質な電子音が、響いていた。

 

 

※

「…今の…」

 

ドサッ。

思わず腕の力を抜いてしまった美琴の腕に支えられていた木山の体重が戦兎にのしかかる。咄嗟に支えようとするが戦兎もまた、今しがた自分が見た映像のショックから抜けだせず、木山の身体は地面に倒れた。

 

「…見られた、のか?くそッ…」

 

衝撃で目覚めたのか、木山はふらつきながらも立ち上がる。頭を押さえつつ、自分に起こったことを思考していた。

 

「ぐっ…!!」

 

「…なんで、なんであんなことを…」

 

「…あれは表向きは、AIM拡散力場を制御するための実験だった…」

 

美琴の問いに背を向けながらも木山は答える。

 

「が、実際は…暴走能力の解析用誘爆実験だ…!」

 

「なっ…」

 

「暴走能力…?」

 

「ああ…AIM拡散力場を刺激し、能力の暴走に必要な条件を観測するのが目的だったというわけさ」

 

その言葉に美琴は反応する。

 

「待ってよ!じゃあ…!!」

 

「…最初から暴走するように仕組まれていた、ってことか」

 

戦兎の言葉に木山は頷く。

 

「ああ…もっとも気付いたのは後になってからだがね」

 

「それって…」

 

美琴の言葉に戦兎は頷く。

 

「ああ、人体実験だ。それも被験者の生死なんて考えちゃいない。…犠牲ありきのマッドサイエンスだ」

 

「…あの子たちは一度も目覚めることもなく、今もなお眠り続けている。・・・・私たちはあの子たちを使い捨てのモルモットにしたんだ!!!」

 

木山は目に涙を浮かべ、激しく言葉を放つ。

 

「でも…そんなことがあったなら警備員に通報すれば!!」

 

「23回」

 

「えっ?」

 

「23回…あの子たちの回復の方法と事故原因の究明に関するシミュレーションのためにツリーダイアグラムの使用申請をした数だ。あれの演算能力があればあの子たちを目覚めさせることが、…もう一度太陽の下で走らせてあげることができる。そう思った。」

 

その言葉に戦兎は反応した。

 

「まさか、全部却下されたのか!?」

 

「そうだ!!それでわかったんだ、統括理事会がグルになった実験だったと!!そんな案件に警備員が動くわけがない!!」

 

木山の叫びに美琴はたじろぐが、それでも反論した。

 

「でも…だからって、こんなやり方!!」

 

「君に何がわかる!!?」

 

「っ…!」

 

容赦のない叫びに美琴が、戦兎までもが黙る。

 

「あの子たちを救うためなら私はなんだってする…!!この街のすべてを敵に回してもやめるわけにはいかないんだ!!!」

 

感情のままに叫ぶ木山、しかし、次の瞬間、

 

「ぐっ!!ああっー!」

 

突如頭を押さえて木山が苦しみだした。

 

「ちょっと!?」

 

「様子が変だ!!すぐに病院へ…」

 

戦兎が駆け寄ろうとするも木山はうめき声をあげ、頭と片目を押さえて呟く。

 

「…ネットワーク、の、…暴走…!!これ、は…」

 

そこで唐突に倒れる木山。しかし、そこから異変は続いた。

 

ぐちゅり

 

倒れた木山の背中から半透明の何かが漏れ出した。それらはやがて青とも緑ともつかない色の塊となり、やがて形を成していく。

 

「な…なにこれ…」

 

戦兎も自分の理解が追い付かない中、かろうじて言葉を絞り出す。

 

「胎児…?」

 

胎児、としか表現しようのないそれは、天使のような輪を頭上に浮かべ、目を見開く。

それは先ほどまでの木山と同じ、充血したような眼だった。

 

「――――――――!!!!!」

 

瞬間、形容しがたい叫びが轟いた。

 




コロナ大変ですね。

まあ仕事はあるので全然かけてなかったんですけど、なぜか筆が乗って書けたので投稿しました。亀更新過ぎ。

前回の投稿でスラッシュライザーどうこうとか言っていたら次回では雷復活?ていうかゼロワンも残すところ20話もない感じですかね。月日が経つのは早い。

このまま滞りなく、キャストさんもスタッフさんも健康で走り抜けてほしいものです。

辞表パンチしてやろうかや。

次回もお楽しみに。
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