とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

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戦「ついについにスパークリングの登場だ!!本編では不遇だったなスパークリング!!今度こそは活躍して!!もう十二分活躍しまくって・・・」
美「の割には私のおまけくらいにしか役に立ってなかった気がするんだけど」
戦「馬鹿言うんじゃないよ!!俺のサポートで決められたこと自覚しなさいよ。まあお前くらいの年頃は背伸びしたがるからな」
美「は?(バチバチ)」
戦「ちょっ、いくらなんでも短期過ぎない?」
美「それはそうと、この間全裸のあんたと全裸のお友達が出没したって聞いたんだけど?」
戦「それは誤解だ!!俺はオタクでもないし引火する水も飲んでいない!!」
美「具体的に言い過ぎだっつーの!!」
戦「ぎゃー!!」

佐「さあ、長きにわたってお送りしてきたレベルアッパー編もラストスパート!!どうなる第25話!!」


第二十五話 「おかえり」

常盤台の超電磁砲。

ビルドラビットタンクスパークリングフォーム。

学園都市に7人しかいないレベル5の第三位と、ラブアンドピースを胸に戦う仮面ライダーは、巨大な怪物―AIMバーストを見上げる。

 

「いくわよ」

 

言って美琴は電撃をAIMバーストに放つ、が。

 

「あれは私が使った誘電力場・・・先ほどの戦闘から学んだのか!?」

 

少し離れた場所で戦いを見守っていた木山の言葉通り、美琴の電撃は空中で見えない壁に阻まれているかのように散らされていた。

 

「―ッ!!」

 

しかし

 

「電撃が直撃していないのにダメージを負っている・・・?」

 

「電気抵抗による熱だな」

 

「なっ!?」

 

いつの間に近づいていた戦兎が言う。

 

「もうちょい離れてないと巻き込まれるぞ。あいつ、強引に電撃の出力を上げて抵抗熱で体の表面を焼きに行ってる」

 

木山を抱え上げ、先ほどAIMバーストが破壊した壁面の陰に運びつつ戦兎が言う。

 

「私との戦いのときのあれは、全力ではなかった?」

 

「そうらしいな。っと、」

 

言って戦兎は軽くジャンプ―したと思ったらもう泣き叫ぶAIMバーストの懐に潜りこんでいた。

 

「速い!?」

 

スパークリングのアーマーにはラピットバルブという小粒の泡を発生させ、それを弾けさせた衝撃によってラビットタンクを超える超高速移動が可能になる。

 

「ハッ!!」

 

残像すら発生させる超スピードでAIMバーストが放とうとする氷塊、衝撃波を発生させている触手ごと破壊していく。

 

美琴の電撃、そして戦兎の超スピード攻撃に呼応するかのようにAIMバーストもまた、触手同士をまとめ上げて二人に打撃を振るおうとする。が、

 

「ごめんね」

 

斬、と。

美琴の一言と共に砂鉄の剣が襲い掛かる触手を切り裂く。

 

《誰だって》《能力者に》《なりたかった》

 

「・・・」

戦兎はただ黙って右椀部のRスパークリングブレードを振るい同じように触手を切断する。

誰のものともわからない声が聞こえてくる。戦兎の、美琴の攻撃が当たる度、傷つけられていく度に。

 

「気付いてあげられなくて」

 

《しょうがないよね》《私にはなにも》《ぶっ壊して》

先ほどよりもはるかに多い数の氷塊が、光弾が二人を襲うが、砂鉄の剣が、強化された蹴りや拳が、それらを薙ぎ払う。

 

「頑張りたかったんだよね」

 

美琴はやはり静かに呟く。

いまやAIMバーストは何倍にも巨大になり、ひたすら叫び続け、しきりに戦兎と美琴に力を使い続けている。

 

《なんの力もない自分がいやで》

《でも・・・どうしても憧れは捨てられなくて》

ふり絞るような声。二人の知っている少女の声。

 

それと同時にAIMバーストは美琴に突撃をかける。が、

 

「諦めないことを知っているなら、勝利の法則はもう決まってんだろ」

 

残像を残す超高速移動で突撃を仕掛けるAIMバーストの動きを止める。

 

そう。

「だったら、もう一度頑張ってみよ」

 

ポケットからコインを取り出し、まっすぐ向き合う。

 

「こんなところでくよくよしないで」

 

「自分で自分に嘘つかないで・・・もう一度!!」

 

【Ready Go!】

 

美琴の声と共に戦兎はボルテックレバーを回し、胸部カルボニックチェストアーマーから【ディメンションバルブ】を発生させて歪ませた空間にAIMバーストを閉じ込め、必殺技を放つ。狙いは。

 

「明らかに不自然な頭のわっか!!どうみてもそこが核だろ!」

 

【スパークリングフィニッシュ!!】

 

果たして戦兎の読みは正しく、渾身のライダーキックによって四散したAIMバーストの頭部に、鈍く輝く六角柱が存在していた。

 

「御坂!!」

 

反動を利用して離れる戦兎の呼びかけに、美琴はコインをはじく音で応え、

 

轟!!

 

次の瞬間、オレンジ色の破壊の光がAIMバーストを、そしてその核を貫いた。

 

「―――――――――――!!!」

 

「・・・これが」

 

断末魔のような声と共に消滅していくAIMバーストの残骸と、14歳の少女の背中を見ながら木山はつぶやいた。

 

「これが・・・レベル5」

 

「なんとかなったな」

 

「これで昏睡してた人達も元に戻るのよね」

 

変身を解除した戦兎が土煙を払いながら言う。美琴は木山が逃げないよう、彼女の背後についているが。

 

「ああ、おそらくは今頃病院で覚醒が始まっているだろう。・・・安心しなくても逃げないさ。おとなしく警備員に投降する」

 

「その前に、だ」

 

少し安心した美琴に代わり戦兎は木山に聞く。

 

「アンタの車に空のフルボトルがあった。あれをどこで手に入れた?」

 

「・・・その質問ではっきりしたよ。やはりあれは君のテクノロジーということか」

 

「俺が作ったものだ。だが、この街にあるわけのない技術でもある。誰からもらったんだ」

 

「・・・3日前くらいのことだ。私のラボに頼んだ覚えのない包みが届いた。中には5つの容器とメモリーカードが入っていた」

 

「メモリーカード?」

 

美琴の問いに木山は頷く。

 

「ああ。中には同封されていた容器―フルボトルと呼ばれるものの詳細と、スマッシュに関する記述があった。」

 

「スマッシュに関する記述だと!?」

 

戦兎は驚愕する。なにせそれは、今は失われたはずの旧世界にしかないもののはずで、しかもスマッシュの研究を行っていたのは、

 

「なんでファウストの研究データがこの街にあるんだ・・・?」

 

「ファウスト、というのかね。あれを作ったのは」

 

「・・・そうだ。だがそんなことはあり得ない。だってもう」

 

世界は創りかえられているから、とは言えなかった。

 

「・・・そう言えば、その資料の最後に署名があったな」

 

「!!?それは誰だ!?」

 

「たしか―」

 

木山が口を開いた、その時だった。

 

「戦兎!!」

 

名前を呼ばれた、と思ったら赤い装甲のグレートクローズが戦兎達を押し倒した。

 

「万丈!?どうした!?」

 

「なんかへんなもんがお前らを狙って―って、おい、あれ・・・」

 

言われて背後を見ると、かすかに青白い何かが襲い掛かって来ているのが見えた。それは蛇のように地を這い、こちらを狙っている。

 

「がっ!?」

 

「万丈!?」

 

一瞬の隙を吐いたそいつは万丈の装甲に突き刺した。

 

「な、なんなのよこれっ!!」

 

咄嗟に美琴が電撃で応戦するも、それは瞬時に万丈から離れ見えなくなった。

 

否。

 

本体に戻っていった。

 

「そんな・・・お前は・・・!!」

戦兎はかつて、これと同じような攻撃を受けたことがある。

地球外の毒を注入され、死の淵まで追い詰められた。

緑色のバイザー。

赤いボディ。

武器であり変身に必要な銃。

かつて戦兎を利用し、戦兎達の世界を滅ぼしかけた張本人。

 

「ブラッドスターク!!!!」

 

気付いたときには戦兎は走り出していた。

 

【鋼のムーンサルト!ラビットタンク!】

目にも止まらぬ速さで変身し、その拳を振るう。

 

「・・・・」

 

対し赤い影―スタークはその拳を避け、立ち去ろうとするが。

 

「逃がすか!!」

 

召喚したドリルクラッシャーガンモードで退路を塞ぎ、攻撃を仕掛ける。

 

「・・・」

 

逃げることをあきらめたのか、スチームブレードで応戦するスタークに対し戦兎も四コマ忍法刀を使ってつばぜり合いに持ち込み、

 

「お前・・・エボルトなのか!!?」

 

「・・・」

 

戦兎の問いに応えず、スタークはスチームブレードを押し返し離れ、

 

「待て!!」

 

戦兎の制止も叶わず全身から煙を出して姿を消したのだった。

 

「・・・なんなんだよ、あれ・・・」

 

呟く戦兎だったが不意に万丈のことを思い出し、振り返る。

 

「ちょっと万丈!!大丈夫!?」

 

「どこか痛むんですの!?」

 

「・・・っ痛ぇ」

 

変身解除された万丈は呻きつつもゆっくり体を起こす。

 

「なんだったの、あれ・・・」

 

「あれは・・・」

 

万丈が口を開きかけるが戦兎がかぶせて言う。

 

「ブラッドスターク。かつて俺たちと戦った敵で、多分、木山にフルボトルを渡した奴だ。」

 

「・・・ああ、さっき言いかけた名前はそれで間違いない。」

 

2人の言葉に美琴が反応する。

 

「待ってよ。アンタたちの敵ってことは並行せ―」

 

「お姉様!!」

 

言いかけて口をつぐむ。戦兎と万丈の出自は明かせないのだ。

 

「・・・ひとまず木山を警備員に引き渡そう。白井、テレポートで呼んできてもらえるか?あと万丈も一応医者に診てもらった方がいい。」

 

「わかりましたわ」

 

「・・・おう」

 

先ほどとは打って変わって静かな戦兎の言葉に、万丈でさえ素直にうなずいた。

その表情は、美琴からは見ることができなかった。

 

夕焼けが、街を染め上げている。

 

「・・・」

 

とある病院の屋上で、病院着を着た佐天涙子は静かに街を眺めていた。ゆっくりと自分の手を見て、小さく息を吐く。

「佐天さん!!」

 

と、先ほど自分が閉めた扉を開け、親友である初春飾利が転がる勢いで入ってきた。

 

「はあ、はあ、はあ」

 

「・・・よっ、初春」

 

「よ、よっ、じゃないですよ!病室にいないから捜したじゃないですか!!起き上がって大丈夫なんですか!?まだどっか具合悪いんじゃ・・・」

 

肩で息をしながら矢継ぎ早にまくし立てる初春に思わず笑みがこぼれる。

 

「ちょっと眠ってただけだもん。すっかり元どおり!・・・能力が使えないところまでもね」

 

少し間を空けて、言わないでおこうとしたことも言った。

 

「あっ・・・」

 

その一言に初春は目をそらす。もとはと言えば親友の苦悩を、もっと早く初春が気付いていれば結果は違っていたかもしれない。そんな思いがどうしても脳裏をよぎる。

そんな初春の様子を見て、涙子は気付く。足や腕に巻かれた包帯。ボロボロの制服。

 

「っ!」

 

思わず初春に抱き着いた。

 

「・・・佐天さん?」

 

「ごめん。つまんないことにこだわって、内緒でズルして」

 

声は微かに震えていて。

 

「初春を、こんな目に遭わせて」

 

「・・・そんなこと」

 

「わたし、もう少しで能力なんかよりずっと大切なものをなくすところだった」

 

「・・・」

 

ああ、よかった。と初春は思う。

親友が元に戻ってくれて、なにより、自分をこんなにも大切に思ってくれて。

 

「・・・あ、そうだ。忘れてた」

 

「?佐天さん?」

 

抱き着いていた涙子の重さが少し消え、頭が下の方に下がり―

 

「たっだいま―――!!」

 

勢いよくスカートをめくられた。

 

「ひゃー!!?」

 

それは涙子のあいさつ代わりであり、帰ってきた証でもあった。

 

「何するんですか病み上がりの癖に!!」

 

「ハハハ!!快気祝い快気祝い!!」

 

いつものように騒ぐ二人。その二人を美琴と黒子は静かに見ていた。

 

「これで一見落着、ですわね」

 

「・・・うん」

 

問題は解決した。レベルアッパーによって昏睡状態になった学生たちは皆、意識を取り戻し、主犯である木山は警備員に引き渡された。

 

『あのっ』

 

『うん?』

 

手錠に繋がれる木山が振り向いた。

 

『その・・・どうするの?子どもたちのこと』

 

『・・・勿論、諦めるつもりはない。もう一度やり直すさ』

 

目を伏せていた美琴はその言葉にハッとなる。

そうだ。自分が言ったのだ。もう一度頑張れ、諦めるな、と。

 

『刑務所だろうと世界の果てだろうと』

 

『―私の頭脳はここにあるのだから』

 

その言葉に、初春ともども苦笑する。

 

『ただし―』

 

前を向きながら木山は続ける。

 

『今後も手段を選ぶつもりはない。―気に入らなければ、そのときはまた邪魔しに来たまえ。彼らと共に』

 

そう言い残し、ただの先生に戻った木山春生は警備員に連れられて行った。

 

『・・・やれやれ、懲りない先生だわ』

 

その後、木山が確保していた子供たちは警備員で保護、また、負傷した万丈は黄泉川に引っ張られつつ現在治療中だ。

全てが終息したにもかかわらず、美琴の表情はすぐれない。

 

「どうかなさいまして?」

 

「え?・・・ううん、なんでも」

 

なんでもなくはない表情をした美琴を見て、黒子はすべて察したように苦笑して言う。

 

「『レベルアッパーを使った人たちって、本当に間違っていたのかな?結局、あの人たちの気持ちに気付いてあげられなかった私たち能力者が今回の事件を招いた張本人なんじゃないかな?』・・・おおかた、そんなことをお考えではありませんの?」

 

「マ・・・真似しないでよ、気持ち悪い・・・」

 

「・・・お姉様らしい優しさですわ」

 

レベル5という絶対的な力を持ちながら、その力に溺れない強さを持つ少女。それ故に自分がもっとなにかできたのでは、と思ってしまう。

あまりに優しい、憧れのお姉様。

 

「やさしさついでに、もう一つ気付いてほしいことがありますの・・・」

 

「ん?なによ」

 

「そ・れ・は、黒子の愛ですの・・・」

 

言いつつ唇を奪いに来る黒子。

パシっ、と。

その口をふさぐ手はどこかビリビリしていて。

 

「・・・ありがとう黒子。アンタの相変わらずの変態っぷりを見て私もようやく調子が戻ったわ!!」

 

ビリビリ、といつものように黒子に電流を流す美琴。

 

「御坂さーん!相変わらずですね!!」

 

「白井さん、大丈夫ですかー?」

 

そのやり取りに気付き、駆け寄っていく涙子と初春。

 

ようやく日常がかえってきた。こう思い出させてくれるかのように、いつもと変わらない夕陽が四人の姿を染めて

 




と、いうわけで。
やっとこさレベルアッパー編おしまいです!!長かったね。ごめんなさい。

次回以降はビルドテイストをより含んだ新章に突入しますので、まだまだお付き合いのほどよろしくお願いします。

熱中症にはおきをつけて。

ではまた!

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