とある科学のベストマッチ    作:茶の出がらし

3 / 25
「天才物理学者の桐生戦兎は、地球外生命体エボルトとの死闘を経て、新世界を創造した。しかし。戦兎が目覚めたのは超能力開発の総本山、学園都市だった」
「なんだ、学園都市って山だったのか?都市なのに山ってなぞなぞみたいだな!」
「山はお前の故郷だろ?ほら、バナナやるからお土産に持ってけ」
「ウッキー!!!って、お前がなんとか山って言ったんだろうが!あと俺の出身は横浜だ!!」
「総 本 山 な。組織とか分野の中心地って意味だよ。」
「語呂的に大 胸 筋!!みたいだな!」
「さて、落としたタンクボトルを見つけた戦兎は、学園都市に7人しかいないレベル5に出会うのでした」
「ただでさえ出番ないのに無視すんなよ!しまいにゃへこむぞ!」
「へこんでて構わないけど、お前この章マジで出番ないからな」
「うそーん!!」
「さあ、万丈がいない代わりに100%桐生戦兎が主人公な第3話、いってみようか」


第三話 超電磁砲

桐生戦兎は、正義のヒーローだ。

くわえて、自称とはいえ天っ才物理学者。当然、並大抵のことでは動じないし数々の修羅場もくぐってきた。

 

スマッシュの魔の手から人々を守った。

東都、北都、西都の三国間の戦争、その代表戦で勝利した。

地球外生命体との死闘を潜り抜けた。

 

 

生半可なことでは、天っ才物理学者である桐生戦兎は狼狽えない。

 

 

「いや、だからですね?そのボトルがないと困るっていうか…商売道具と言いますか、ええっと、とにかく困っちゃうんです」

「存在しない研究所の存在しない研究の、ですの?」

26歳のいい大人が女子中学生相手に滅茶苦茶狼狽えていた。

あの後、タンクフルボトルがないことに気付いた戦兎は来た道を探しながら戻ってきていた。それはもう、冗談抜きで四つん這いになりながら探偵よろしく探し回っていた。

で、公園近くの広場でたむろっていた女子中学生の一団の内、サイドテールの少女が先刻話しかけてきた頭が花の少女に青い物体を手渡すのが見えたのだ。

何度も振ってきた、タンクフルボトルを。

「存在しないって…確かにあるんだよ、東都に」

「東都?ここは東京都、学園都市なんですのよ?どこか別の場所と勘違いしてませんこと?」

「いや違う場所というか、違う世界というか…」

「なんですの?」

「何でもないです…」

かつての悪魔の科学者、東都を守る仮面ライダーが弱冠14歳の女子中学生に負けている。

砂羽さんが知ったら笑顔で記事にされるなーと思っていると

「ねえ、アンタ、学園都市にはどうやって来たの?」

目の前の少女―初春と呼ばれていた子と同じ風紀員らしい少女と同じ制服に身を包んだ短髪の少女が言った。

「どうやってって、そりゃ気づいたらここにいたというか」

「気付いたら?じゃあその前はどこにいたのよ」

「それは、その…」

実は並行世界の狭間にいました、とは言えない。

「えっと、言えない事情でもあるんじゃないですか?御坂さん、白井さん」

初春と同じ制服を着たロングヘア―の女子がそう言うが、目の前の風紀員、白井と呼ばれる少女は首を振った。

「家出少女じゃあるまいし、いい大人が自らの素性を証明できない事情なんて、後ろめたいこと以外ないと思いますの」

「まあ、そう言われちゃうとその通りなんですけど…」

いや頑張ってくれ黒髪ロング!と心の中で戦兎が叫ぶが、もちろん聞こえない。

「とりあえず、風紀委員(ジャッジメント)の事務所までご同行お願いできますか?詳しい話はそこで聞きますので」

「うそーん…」

主人公、いきなり任意同行だってよ。

「初春、固法先輩に連絡を、って、初春?」

見ると、初春は戦兎たちとは逆方向―ビル群に視線を向けていた

「初春、どうかした?」

「いえ、あそこの銀行なんですけど、なんで昼間っから防犯シャッターを降ろしているんでしょうか…」

「え?」

その場の全員が疑問符を浮かべた、その瞬間。

ドゴォン!!!!という轟音と共に閉じられていたシャッターが内側から爆散した。

 

「な、なんなの!?」

日常生活ではまず聞くことのない爆発音に思わず耳をふさぐ涙子。いち早く動いたのはその涙子の座っていたベンチを飛び越え、ポケットから緑色の腕章を取りだした黒子だった。

「初春!!警備員(アンチスキル)に連絡と怪我人の有無の確認!!急いでくださいな!!」

「は、はい!!」

そう言って初春もまた、風紀委員(ジャッジメント)の証である腕章をもたつきながらも装着する。

「黒子!!」

美琴が白井を呼ぶ。美琴は学園都市に7人しかいないレベル5。もし事件なら協力する、そういう意味での声掛けだったが

「いけませんわお姉さま」

微笑みを浮かべながら続く言葉を制す黒子。右腕に腕章を取り付けながら

「学園都市の治安維持は、わたくし達風紀委員(ジャッジメント)のお仕事。今度こそ、お行儀よくしていてくださいな」

その言葉に一瞬反発しそうになるが、後輩の自信に満ちた表情を見て諦めたのか、美琴は何も言わず肩をすくめた。

「―そうです。第七学区ふれあい広場で事件発生。警備員(アンチスキル)の出動を要請します。」

その様子を見ていた涙子の隣で初春が警備員(アンチスキル)に連絡した瞬間、黒煙と共にまた爆発が起きた。

「…あっちは黒子に任せて、私たちは周りの避難誘導をしましょう。…あ、アンタ、大人なんだし協力しなさ…」

い、と戦兎の方を振り向いたら当の本人はいなかった。

「まさか、逃げられた!?」

「違います、御坂さん、あれ」

と初春が指さす方では、既に戦兎が避難誘導を始めていた。周囲にいた幼稚園の子供たちを的確に安全な場所まで連れて行っている。

「事情はどうあれ、悪い人ではなさそうですね」

涙子の言葉に再度、美琴は肩をすくめ、「さ、私たちも!」と周りでパニックになっている子供や学生の元に走り出した

 

「ほら!!ぐずぐずすんな!!さっさとしねえと…」

黒煙を散らしながら三人の男が銀行から転がり出てきた。全員が黒いライダースジャケットなどを着込み、口元をマスクやスカーフで覆っている。

「お待ちなさい!」

男たちの進行方向、その5メートルほど先から女子生徒の鋭い声が静止を促す。黒子は右椀部の腕章を示し

風紀委員(ジャッジメント)ですの!!器物破損、及び強盗の現行犯で拘束します!!」

「・・・っく、ハハハハハハハ!」

男たちは一瞬たじろぐが、相手がまだ年端もいかぬ女子学生とわかると、顔を見合わせ笑い声をあげた。

「はっはっは、なんだよこのガキ」

風紀委員(ジャッジメント)も人手不足か?ハハハ」

「……」

男たちの笑いに眉をひそめながらも歩を進める黒子。

「おいお嬢ちゃん、とっとどっか行かねえと…怪我しちゃうぜぇ!!!」

最も体格のいいドレッドヘアの男が、向かってくる黒子に対して殴りかかる。

「そういう三下のセリフは―」

黒子はこともなげにその拳を避け、男の右側面に時計回りで回転しながら移動。言葉と共に大ぶりのモーションで伸びきっていた男の左足を蹴り、自分を狙った右腕の袖を引っ張る。

「―死亡フラグですわよ?」

勢い余った男の身体は大きく一回転して背中から地面に落ちる。よほど強く打ち付けたのか、呻くだけで動けそうもない。

「てめえ…」

先ほどまでの笑みを引っ込め、男たちは呻く。

「すごい…」

避難誘導をしながらも、黒子の立ち回りを見ていた涙子が声を漏らす。が、公園の入り口で初春が女性と口論をしていることに気付き、そちらへ向かう。

「駄目ですってば!今広場にから出たら危険です!!」

「でも!!!」

「どうしたの?」

美琴も合流し、遠足のバスガイドらしき女性に尋ねる。

「御坂さん、佐天さん、それが…」

「男の子と女の子が足りないんです!!少し前にバスに忘れ物したって言って…!!」

今にも泣きそうな顔で悲痛に叫ぶ女性に美琴は言う。

「じゃあ、私と初春さんで」「私も行きます!」

風紀委員(ジャッジメント)である初春を指名したところで、後ろの涙子が名乗りを上げる。美琴は危険なことだと一瞬諭そうとするが、その顔が本気であるとみると。

「…わかった。手分けして探しましょう!!」

「はい!!あ、そうだ」

そう言って涙子は避難誘導を終えたところの戦兎まで向き直り

「えっと、桐生さん!」

「?なんだ?」

何事かと駆けつけた戦兎にむけて、涙子は口を開く。

「女の子と男の子が一人ずついないんです。探してもらえますか?」

「わかった」

即答だった。迷う間もなく戦兎はバスの方へ走り出す。あまりの行動の速さに後れを取った三人は慌てて追いかけた

「今更後悔しても遅せえぞ!!俺たちの顔を見られたからには―」

男たちの一人が掌から炎の塊を放出した。普通の人間にはありえない異能の力、超能力である。

(パイロキネシスト…まったく)

空気摩擦などを利用して人口の炎を放出する能力だ。掌の炎から察するにせいぜいレベル2。黒子にとっては何ら脅威ではない。

「お前には消し炭になって―って、なに!?」

男の言葉が中断された。黒子が左手の道路へ思い切り走り出したからだ。

「おい!ちょっと!」

さすがに能力をあてるのはまずいのでは、ともう一人が止めようとするが、もう遅い。

「逃がすかよォ!!!」

という声と共に炎の塊が放たれる。が。

「消えた!?」

炎が当たる寸前、黒子の姿が消えたのだ。

「誰が」

とパイロキネシストの男の眼前に現れた黒子。だが次の瞬間には男の背後、上空からドロップキックをかましていた。

「逃げますの?」

蹴りを食らった男が倒れた先に再度姿を現した黒子を見て、男が呻く。

「瞬間移動…テレポートか…」

黒子はスカートの下、腿に装着したお手製のホルダーをなぞる。するとそこに収まっていた数本の鉄製ピックが消失し

ヒュン!!

という風切り音と共に倒れた男の手足、正確には衣服を地面に縫い付けた。

「これ以上抵抗するなら、次はこれを、体内に直接テレポートさせますわよ?」

「くっ…」

その言葉と共に男は抵抗をやめた。

一方、バスの周りを探していた美琴、初春、涙子、そして戦兎だったが

「そっちは?」

「駄目ですー!」

バスの中にいた美琴が初春に声をかけるが、子供は見つからない。

「どこに行ったのよ。もう!」

舌打ちする美琴の背後、涙子も見つからない子供を懸命に探していた。

「あ、なんだおまえ!?」

背後から聞こえる声。見ると探し回っていた男の子の目前に、犯人グループの一人が気付いていた。

「ちょうどいい!!一緒に来い!!」

「なにお兄ちゃん、だれぇ?」

「いいから来いって!!早く!!」

そう言って男は子供の手を強引に引く。今にも連れ去られそうな子供に、しかし気付いているのは涙子だけだった。

(あたしだって・・・!!)

覚悟を決め、勢いよく走りだし子どもをつかむ。

「あ?なんだてめえ!!離せよ!!」

「だめぇーーーー!!!」

と広場の方を探そうとしていた美琴と初春、男の確保を終えた黒子もその様子に気付く。

「くそがっ!!」

痺れを切らした男が蹴りを放ち、その衝撃で涙子は子供諸共投げ出される。後方にはガードレール、このままでは激突は必然。

「!」

「佐天さん!!」

美琴が息をのみ、初春が叫ぶ。二人がガードレールに激突する瞬間。

「よっと」

どこからか駆けつけた戦兎が二人をキャッチする。寸でのところで激突を免れた涙子は、背後の戦兎に気付き

「あ、ありがとうございます。」

「いや、よく守ったなその子。かっこよかったぜ」

場違いなほど軽い声色で涙子を称賛し、逃げていった男の方を向く。男は停めていた白い乗用車に乗り込むところだった。

「逃がしませんわ―」

「黒子ッ!!!」

とピックを構えながらテレポートしようとした黒子を、しかし鋭い声が制する。

「えっ?」

思わず声の主を見ると予想通り激高した様子の美琴が、今まさに動こうとしている車を睨んでいた。

「ここからは私の個人的な喧嘩だから―」

車の進行方向に立ちふさがるように進み、宣言する。

「手、出させてもらうわよ」

瞬間、バチイ!!という音と共に美琴の周りを電流が走る。

「あー…」

と冷や汗を浮かべながらピックを降ろす黒子。その足元で美琴の姿を見た男が顔色を変えた。

「思い出した…風紀委員(ジャッジメント)には確か、捕まったら最後、身も心も踏みにじって再起不能にする最悪の転移能力者(テレポーター)がいて―」

「誰のことですの?それ」

白い車はアスファルトを焦がす勢いでアクセルを踏まれ、発進する。

「畜生…!!このまま引き下がれっかよ!!」

車は猛烈なスピードのまま、黒子と美琴めがけ迫ってくる。

「さらにはその転移能力者の、身も心も虜にする最強の電撃使いが…!!」

「―そう。あの方こそが」

車はなおもスピードを下げず向かってくる。どうやら仲間もろとも御琴を轢くつもりらしい。が、そんなことは気にも留めず黒子は言う。

「学園都市230万人の頂点」

美琴はポケットから取り出した、どこにでもあるようなコインを取り出し、指で宙に弾いた。

「七人のレベル5の第三位―」

向かってくる車にまっすぐ照準を合わせ、青白い電流を迸らせる。重力に従って落ちてきたコインを見据え、正面に向けて再度弾く。

ズドン!!!

瞬間、コインは音速の速さで進み、その摩擦熱でオレンジ色の光を放ちながら車に激突。

前方からの衝撃に慣性が働き、車は宙返りするかの如く空を舞った。

超電磁砲(レールガン)。御坂美琴お姉さま。常盤台中学が誇る、最強無敵の電撃姫ですの!!」

同時刻。

涙子は美琴の手から放たれた超電磁砲(レールガン)。それに撃ち抜かれ宙を舞う車を呆然と見ていた。

「すごい…」

と感嘆の言葉をつぶやくが、次の瞬間全身に緊張が走った。

(あの子!!)

車が舞う先、道路付近に探していたもう一人の女子のがいるのだ。

美琴たちからは見えない角度らしく、気付いた様子はない。

(助けなきゃ、でも…)

彼我の距離は20メートル以上ある。どう考えても間に合わない。

駄目!!と目をつむった時だった

「まったく、ヒーローならちゃんと後先考えなさいよ」

と後ろの戦兎が言った。青年は涙子の身体を離すと、ポケットから赤い何かを取り出した。

カチャカチャカチャカチャ

戦兎はそれを振り、駆け出す。そこまで来てようやく涙子は戦兎が女の子を助けようとしているのだと悟った。

「だめ!!間に合わない!」

その声に黒子や美琴、初春も事態に気付くが、もう黒子のテレポートでも間に合わない、

ぶつかる!!と誰しもが思った。

「よっと」

しかし、瞬き一回分の間に戦兎は女の子を抱きかかえ、車の落下地点から5メートルは離れた場所に立っていた。

「嘘…」

思わず涙子がつぶやく。周りを見ると初春はもちろん、黒子や美琴も驚愕の表情を浮かべていた。

(瞬間移動…?でもあの人学園都市の人じゃないんじゃ…)

思考する初春をよそに、戦兎は女の子を抱きかかえながらこちらに向かってくる。

「もう大丈夫だ。怪我はないかな?」

「うん!!ありがとう、おじさん!!」

「おじさん…おじさん、か…」

若干項垂れた戦兎の方へ先ほどのバスガイドと保育士なのか、若い女性が駆け寄ってくる。

「無事でよかった…!」

「せんせー!」

女の子を保育士の女性が抱きしめる。ほほえましいその様子を見ていた涙子は、同じくその様子を笑顔で見ていた戦兎に向かう。

「あの、さっきは」

ありがとうございました。と続けようとしたその時だった。

「ぐあああああああああぁ!!」

叫び声の主は、先ほど車で逃亡しようとした男だった。だが、その体には黄色のガスのようなものに覆われつつあった。

「な、なんだよこれぇ!!身体が…!!!意識、ガ…」

「ネビュラガス!?離れろ!!」

男の身体がガスに覆われる寸前、戦兎が叫んだ。その声の真剣さに本能的に走り出す。

瞬間的な閃光が周りを照らした。

「グウゥウウウウウぅ…」

男だったものは、異形の造形をした怪物になり果てていた。

 




コメントしてくれた方々、初めての投稿で不慣れだったので助かりました。ありがとうございます。
スマッシュになるにはネビュラガスを注入する、という表現をよく見るのですが、ビルド本編ではケースの中に充満させたガスが一定量を超えるとスマッシュになっていたので、そんな感じの描写を採用しました。
ツナ義ーズのタツヤも、万丈がスマッシュボトルの成分を振りかけたらスマッシュに戻ってたので、そのへんを想像して貰えばと思います。

クローズビルド缶届きました。セリフ収録がすごい。おすすめです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。