美琴「思いのほか2人ともまじめに仕事してるのね、意外だわ」
戦兎「意外とは心外だな。万丈はともかく天っ才の俺のならどんな職業もお手の物さ」
美琴「・・・なにこれ、佐天さんの台本にト書きが書いてあるわよ」
佐天「なになに・・・?桐生戦兎、職業(自称)天才物理学者、居候していたカフェの家賃を払えず、仕方なく東都先端物質研究所へ・・・」
戦兎「ちょっと!?なにそれ!?ってこれ美空が勝手に書き直したあらすじ紹介の台本じゃん!!」
美・佐「美空?」
戦兎「美空っていうのは・・・ていうか、無職じゃないニートじゃない!!ちゃんと働いてたし、研究もしてました!!」
美琴「いや別に誰もニートとまでは言ってないんだけど・・・」
佐天「あははは・・・さあ、私情緒不安定過ぎない?と思うけど第九話、よろしくお願いします!!」
戦兎「ちがうからー!!これ書いたの美空だからー!!」
美琴「だから美空って誰よ」
美空やかずみん達の話もいつか書きたいですね。
「これは、先輩の友達の彼氏が実際に遭遇したっていう話です」
「ある蒸し暑い夏の夜、その彼氏さんが人気のない公園を通りかかると、一人たたずんでいた女の人に、駅までの道のりを聞かれたんです。」
「・・・その彼氏さんが快く道順を説明していると、どこか虚ろなその女の人が、ふわっと手を挙げて・・・・突然ガバーッと!!」
「・・・ブラウスを脱いだんです」
「ただの露出狂の話じゃねえか」
放課後の科学実験室。暗室のようにカーテンを閉め切った部屋内で、涙子の話を聞いていた戦兎が言った。
「えー?、実際遭遇したらって思うと怖くないですか?いきなり脱ぎ始める都市伝説脱ぎ女!!」
「そりゃあ、実際に会ったら怖いかもしれませんけど・・・」
「いや怖くないでしょ。どう考えてもそれただの変質者だし」
「じゃあじゃあ、こんな話はどうですか?」
と戦兎の言葉にかばんからPCを取り出した初春が画面を示す。
「風力発電のプロペラが逆回転するとき、街に異変が起きる!!」
「夕方4時44分に学区をまたいではいけない!幻の虚数学区に迷い込む!」
画面をのぞき込んだ涙子も一緒になって読み上げる。やれやれといった面持ちで戦兎も画面上の文字を読んだ。
「使うだけで能力レベルが上がる道具、レベルアッパー・・・・、内容が環境によって変化しているのは面白いと思うけど 都市伝説なんていかにも非科学的な話、学園都市にもあるんだな」
「桐生先生の世界にもあったんですか?都市伝説」
「あったあった。ていうか俺自身が都市伝説だったよ」
「どういうことですか?」
涙子の言葉に配線をはんだで繋げながら、かつての仲間の一人が書いた記事を思い出しつつ戦兎は答える。
「『東都に出現する怪物から市民を守る正義のヒーロー仮面ライダー』っていう見出しだったかな、たしか」
「あーなるほど」
得心したように涙子が頷く。それを見た初春が苦笑しながら。
「それなら、先生はこの世界でも都市伝説になっていますよ。ほら」
そう言って別のページを見せる。そこにはおどろおどろしい文字で
「『学園都市の秘密実験によって生まれた怪物、それと戦う謎の仮面戦士』」
「あらー・・・」
「写真も結構あるねー。どれもピンボケしてるけど」
添付してある画像ファイルを流し見しながら涙子が言う。どこから撮影したのかわからないが、走りながら撮ったのかビルド やクローズの姿はボケてはっきり見えない。
「まあこれくらいなら問題ない。俺や万丈の正体がバレると色々面倒くさいけど、噂レベルならむしろ注意喚起に繋がるかもしれないしな」
「逆に興味を煽って現場にうろつかれても困りますけどねぇ・・・ところで先生、何作ってるんですか?」
「よっくぞ聞いてくれましたっ!!!」
それまでの冷静さが嘘かのように、先程組み上げたガジェットを二人に示す。
「前の戦いでビルドのパワーアップアイテムは破損してしまい、修復が必要だったんだが、ついに最初の一つが修理完了したんだ!!」
そう言って手に握った銀色のガジェットに頬ずりする。
「修復って、そんな簡単にできるものなんですか?」
「その辺は、念のためビルドフォンに保存していた設計データと、この学園都市の技術で何とかなった。やっぱり半端ないなこの街は」
工具やパソコンなどをしまいながらしみじみと戦兎は言う。
「先生のいた世界の技術って、仮面ライダーとかスマッシュとか、学園都市の技術でも現状再現が難しいものだと思うんですけど・・・」
「いや、この学園都市でも一からベルトを作るくらいの技術レベルはあると思うよ。」
「そうなんですか?」
初春の言葉に戦兎が答える。
「
「能力・・・」
「佐天さん?」
呟く涙子に初春が聞く。
「・・・いやー、私ってレベル0でしょ?スマッシュのこととか、それ以外にも、こう、色々な事件が起こっているのに何もできないのが、なんというか・・・」
どこか苦い笑顔で言う涙子に、戦兎は何ともなしに言う。
「能力の優劣が、イコール人間の優劣に繋がるわけじゃないと思うよ?もっと大事なものを佐天は持ってるじゃないか」
それを聞いた初春も同様に応える。
「そうですよ。私だってレベル1ですし、これからレベルが上がる可能性だってなくはないんですから」
「・・・戦兎さんには、わからないですよ」
二人の言葉に普段とは違い俯きながら涙子は言う。
「ん?」
「仮面ライダーなんていう力を持ってる戦兎さんには、何もできない無力さなんてわからないです!」
叫ぶように言って涙子はそのまま教室を出て行ってしまった。
「ちょっ、佐天さん!?待ってください!」
初春が慌てた様子で後を追いかける。実験室には戦兎一人が取り残されていた。
「・・・えーっと、何かまずいこと言っちゃったかな」
呟きつつフリーズしていてもしょうがないし、この後の予定もある。机の上の工具類を片付けていると、荷物を取りに来たのか初春が戻ってきた。
「佐天さん、鞄も持たずにどっか行っちゃいました」
肩を落とした初春に対し、悪びれるように戦兎は言う。
「ごめんな、なんかまずいこと言っちゃったかな、俺。」
「いえ、・・・、でも、佐天さんに限らずこの街のレベル0は皆、何かしら負い目や引け目を感じてるのは事実です。」
「負い目?」
自分の鞄を持った初春に戦兎が尋ねた。
「親の、私たちを学園都市に送り出してくれた人の期待に応えられなかったっていう負い目だったり、全てが能力によって評価されることだったり」
「・・・それなのに『能力以外にいいとこあるよ』って言われれば、ま、怒るな普通」
苦笑する戦兎に初春は慌てたように手を振る。
「そんなことないです!私もレベル1で、能力も大したことないですけど、努力して、憧れていた
目を輝かせて言う初春を見て、しかし戦兎は自分の荷物を見つつ言った。
「でも、みんながみんなそう思えるわけじゃないんだよな。佐天みたいに、何もできない自分を呪う奴もいる。」
どこかで聞いた話だ、と戦兎は嘯く。
かつての戦兎も、自分が―葛城巧としての自分が創ったライダーシステムが、結果的に戦争の引き金を引いたこと、その元凶が自分であると言われたとき、おのれの無力さを実感した。
「・・・先生は、この街の在り方が嫌いですか?」
初春の突然の問いかけに、戦兎は少し考えて答える。
「正直、まだこの街に来たばかりで何とも言えない、っていうのが本音かな」
けど
「この街が本当に『能力だけが全て』の街だったら、これだけの人が平和に暮らせないと思う。何より」
いつも通りの笑顔のまま戦兎は言う。
「初めて出会ったときの初春や佐天の、誰かを助けたいという気持ちは能力とは関係ない、お前たち自身のものだった。だから俺はお前たちを信用したんだ。」
「・・・そうですねっ!」
曇っていた初春の笑顔が晴れる。その顔を見て戦兎もくしゃっと笑った。
心地よい雰囲気が辺りを包む。その空気に当てられた穏やかな笑顔の初春が、思い出したかのように戦兎に言う。
「ところで、月詠先生とお会いするんじゃなかったんでしたっけ?」
「・・・あ、やっべ」
※
涙子は繁華街を歩いていた。
「(どうしよう・・・変なこと言っちゃった・・・)」
俯きながらトボトボといった感じで歩く。特に行くあてはない。最終下校時刻まではまだ時間があるものの、あまり寮から離れると
しかし、そんなことを気にする余裕は涙子にはなかった。
「(何で私、あんなこと言っちゃったのかなー・・・。レベルのことなんて、気にしてないはずなのに)」
「ーーーい、佐ーーー」
「(何もできない無力さなんて、私はただの一般生徒なのに・・・。そりゃ、御坂さんや白井さんみたいに力があれば、できることも多いんだろうけど・・・)」
「ちょーーー聞いーーーか?、佐ーーー?」
「(というか、御坂さんや白井さんにも負い目を感じてるのかな・・・やだなぁ、そういうの・・・」
「無視すんなよ!」
「ひゃっ!?」
思考に没頭していたのか、肩をいきなり掴まれた涙子は思わず小さい叫び声を上げた。
「何回も呼んでるのに無視するなって。つーか、信号変わってるし危ねえぞ」
「万丈さん・・・」
「・・・ぷはー!学園都市限定だけあって美味えな!ご馳走さん。」
「あ、歩きながらカップラーメン食べてたんですか?」
器用な、などと思っていると目の前の青年は首を振った。
「ちげえよ、そこのベンチで食べてたらお前を見かけて、声かけたのに全然振り向かねえからここまで来たんだよ」
と言って示す先には同じデザインの空容器が積まれたベンチがあった。
「いや食べ過ぎじゃないですか!?」
「あとで筋トレするから大丈夫大丈夫」
そう言ってベンチへと駆けて行き、空容器を持ってきた万丈は、ポケットからビルドフォンを取り出し
「確かこの辺に・・・あった」
と言って格納アプリ-ビルドドライバーやボトルなどを収納しているビルドフォンの機能の一つ-を立ち上げて中にラーメンのゴミを放っていく。
「いいんですか?そんなことして」
「戦兎にバレる前にコンビニか詰所で捨てるから大丈夫だって」
戦兎、という人名に少し忘れかけていた感情が思い出される。
改めて酷いことを言ってしまった、と思っていると。
「で?何してんだこんなところで。ういろうはどうした?」
「・・・初春なら戦兎さん、桐生先生と話ししてました」
言い間違いに突っ込む気にもなれず、暗い声で答える涙子に、バカの万丈も何かに気づく。
「なんかあったか?」
「万丈さんでもわかりますか?」
「バカにされている気がする・・・」
万丈のバカさ加減は四人の共通認識らしい。もっとも美琴ほどストレートではないため万丈本人にもバカにされている気がしない。
「万丈さんは、戦兎さんのお友達なんですよね」
「友達?そんなんじゃねえよ、俺とあいつはー」
いいかけて、口をつぐむ。珍しく考えるそぶりをしたと思ったら涙子に向かい
「なんつーか、そういう言葉じゃ言えない感じだな」
と言った、
「なんですかそれ」
「わかんねえよ、あいつとは色々あったからな、少なくともただのダチってわけじゃねえし、仲間ではあるんだろうけど・・・あー、わかんねえ」
ガシガシと髪をかきながら悩む万丈を見て、涙子は笑みをこぼした。
「万丈さんって、本当にバカですね」
「馬鹿って言うなよ!せめて筋肉つけろ」
「あはははっ」
「・・・ったく」
怒っていた万丈だったが、涙子の笑顔を見て苦笑し、言った。
「で?なんかあったのか?それともあいつに何かされたのか?」
「えっ?あ、違うんです。戦兎さんは何もしてません。むしろ私がー」
そう言って涙子は先ほどの実験室でのことを話した。
「ーそれで、怒鳴って出て行っちゃって・・・よくないですよね、やっぱ」
「んー、よくわかんねえ」
「私が言うのもあれですけど、話聞いてました?」
道の真ん中で話すのもなんなので、近くのベンチに二人で腰掛けている。近くのコンビニで買った飲み物(涙子は普通の炭酸飲料、万丈はパック入りのプロテイン飲料だった)を手に持っている。
「要はテストの点が悪いみたいな話だろ?ま、戦兎の奴が頭いいのを自慢してるってなら一発ぶん殴ってやるよ」
「いやまあ、例えはそんな感じですけど戦兎さんはそんなことしてませんよ。・・・むしろ、わたしを励ましてくれてたんだと思います。」
ただ、
「・・・万丈さんや、御坂さん達と出会って、スマッシュの事件に巻き込まれたりして、不謹慎かもしれませんけどちょっとワクワクしたんです、私。」
「なんでだよ、スマッシュと出くわしたら危ねえし、あのビリビリだってすぐ怒ってこえーし」
「それは万丈さんが怒らせるからですよ・・・、じゃなくて」
缶の縁を指でなぞりながら言葉を続ける。
「いつもと違う、非日常というか、自分が特別なことに関わってるっていうか、そんな感じがしたんです」
本当、不謹慎ですよね、と苦笑し、
「でもレベル0の私じゃ、その場所にいられても、何もできない。初春みたいに
ペコッ、と缶が少し凹む。その程度の力しかないと言うように。
「あいつな」
そんな涙子を見て、万丈は前を向きながら言った。
「前いた世界じゃ『悪魔の科学者』とか言われてたんだ」
「えっ?」
突然の言葉になんのことか分からず聞き返す涙子。
「戦兎さんのことですか?」
「おう。あいつはネビュラガスの研究をして、ライダーシステムを作った。それをエボルト・・・悪い奴に利用されて、結果的に俺たちの世界では戦争が起こっちまったんだ」
「戦、争・・・」
日常生活では使わないその言葉を、しかし万丈はいつもと変わらない口調で口にした。
それが、彼がその戦いに少なからず関わっていることを物語っているかのように。
「でもな、あいつには自分が悪魔の科学者だっていう記憶がなかった。記憶喪失ってやつだな」
「記憶喪失って、でも」
「そ、今のあいつは自分がライダーシステムを発明したこともちゃんと覚えてる。・・・ある時に教えられたんだ。自分のせいで戦争が起きたって」
「自分のせいで・・・」
涙子は万丈の顔を見る。目の前の青年はただ前を見てかつての出来事を語っている。
「目の前で街が壊されて、人が悲しんで、それが全部自分のせいって言われて、想像できねえけどすげえ辛いよな」
でもな、
「それでもあいつは言ったんだ。『ライダーシステムは戦争の道具じゃない、愛と平和のために使うんだ』ってな」
「愛と平和・・・」
「笑っちゃうだろ、そんなこと大真面目に言うんだぜ、あいつ」
笑いながらようやく涙子の方を見る万丈は、しかしその言葉を心底信じているかのように言った。
「ラブ&ピースなんて脆いものかもしれねえ。けど、みんながそれを胸に生きていける世界を作る。そのために力を使う。」
ポケットにしまってあるドラゴンフルボトル。愛する人の形見でもあるそれを取り出し、硬く握る。
「でもあいつは、たとえ力がなくても、仮面ライダーじゃなくてもその理想のために立ち上がるんだ。変身できるとか、できねえとか、そんなのは関係ねえ」
なぜなら
「愛と平和のために立ち上がる限り、あいつは正義のヒーローなんだよ」
「ヒーロー・・・」
「おう、だから、・・・ん?」
と笑顔だった万丈の顔が曇る。
「どっ、どうしたんですか?」
「いや、あれー?結局何が言いてえんだっけ?」
ズコッ、と。
昔のギャグ漫画よろしくずっこけそうになった涙子に構わず、あれー?と考え込む万丈。
「・・・感動を返してください・・・」
「ま、とりあえずできることからやりゃいいんじゃねえの?そしたら何か見えるかもしれねえし」
「・・・そう、ですかね・・・」
「俺みたいな奴でも誰かのために戦えるんだし、お前ならできるって」
そう言って万丈はパックを空にし、立ち上がる。
「さっ、そろそろ戻らねえと黄泉川にどやされるし、帰るとするか」
「サボってたんですか?仕事」
「いやーあちこちお椀回しされたから飯食ってなくてな」
「たらい回しですよ・・・」
んー、と体を伸ばしながら言う万丈に涙子は突っ込むが、当の万丈は意に介さずポケットのビルドフォンを取り出し、持っていたボトルをスロットに差し込んだ。
【ビルドチェンジ】
変形バイクマシンビルダーに跨り、シートからヘルメットを取り出すとそれを涙子に向かって投げた。
「わわっ、なんですか急に」
「そろそろ完全下校なんとかだろ?フラフラしてっと危ねえし、送ってやるよ。乗れ」
「あ、ありがとうございます」
礼を言いつつヘルメットを被る。大人用なのか完全にフィットせず余裕があり、少し重い。
バイクの後部、ボトルを模した部分に苦労しながら跨ると、行くぞー、という万丈の声と共に、いきなりバイクが加速した。
「!!!速すぎますよー!」
「大丈夫大丈夫、任せとけって!・・・あ」
キキーッと勢いよくブレーキがかけられる。街の治安を守る
「お前ん家どこ?」
「先に聞いてくださいよ!!」
やはり馬鹿だ、と涙子の中での万丈の評価が盤石のものとなったのであった。
佐天さん情緒不安定過ぎですかね。本編では徐々に能力へのあこがれや嫉妬、疎外感が見えてきましたけど少し出し過ぎた感があります。
あとバトル展開があまりありませんね。もう少し待ってください。グラビトン編とレベルアッパー編ではたくさん戦います(多分)
いつもコメントありがとうございます。なるべく返すようにしてます。
また、ここの読者さんかわかりませんが、ツイッターもフォローしていただいて、まことにありがたい話です。
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平成ジェネレーションズ観ました。かつて少年、少女としてヒーローに憧れた、すべての人に見てほしい。
そして触発されてベルトを買ってほしい(ジクウドライバー楽しい)
予告
次回、彼が登場する、かも。