――『夢』を見た。
誰かの、何かの夢。
それを俺は――変えたいと思ったんだ。

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メ リ ク リ

昨日投稿するつもりが忘れてたよ。




夢にまで見た光景

「――! ――!」

 

『夢』を見ている。見たことの無い怪物に少女たち(だれか)が蹂躙される夢。次々と人が殺され、悲鳴と怨嗟の声が辺りに充満している。終わらない殺戮。絵の具をぶちまけたように、赤の色が世界を支配している。

 しかし、そんな中でも、心を折らず前を向いた者がいた。

 

「お前は、生きるんだぞー」

 

 そう笑って言って、仲間の為に立ち上がった少女がいた。

 

「どうか強く在らんことを」

 

 そう言って好敵手(とも)の為に戦った少女がいた。

 

「じゃあね」

 

 そう言って親友を生かす為に命をかけた少女がいた。

 

 だけど、力及ばず、散っていった少女たちがいた。

 

 そして、全てが終わった後、仲間を失い、地に倒れ伏している少女がいた。

 

 なんていうことの無いただの悲劇(ゆめ)。強大な敵に出会ってしまった冒険者の末路。

 だけど、俺は――この夢を見る度に何故だか泣きたくなった。

 

 

 ◆❖

 

 目を覚ます。辺りを見回しても、怪物も少女も居ない。俺の本拠地(ホーム)だった。

 

「またあの夢か……」

 

 この夢を見るのは何度目だろうか。10や20ではきかない数だろう。

 時期で言うのならば、Lv2になってから今までおよそ5年間。Lv4となった今でもこの悪夢に魘されている。きっと今の俺の顔は酷いことになっているはずだ。

 まだ顔などは判然としないものの、月日を重ねるごとに夢の精度が高まっている。

 

「おっ、どうしたカルカス。また例の『夢』か?」

 

「あぁ、……というか、勝手に俺の部屋に入ってくんなよオネイロス()

 

 それは悪かった、と 悪びれもせずに我が主神様は椅子に腰掛けた。

 やはり神と言うだけあって、目にややかかっている青い髪を手で払い、同じく青い瞳でこちらを見てくるその姿は、俺たち下界の住民とは違う、男神としての貫禄があった。

 

「まったく、よくもそこまで同じ夢を見れるものだ。そんなに苦しいなら、他の神に相談でもしてみるか?」

 

「別にいらねぇよ。大体、どうやって説明するんだっつーの」

 

 この夢のことを知っているのは、俺を除けば目の前にいるオネイロスだけだ。夢を見ないようにと対策を講じても、今のところ効果は無い。

 そもそも、「何か分からない怪物と誰か分からない人が戦う夢を見ます」などと説明したところで相手に何が伝わるというのか。

 一応、ギルドに保管してあるリストも確認したが、それらしいモンスターは見つからなかった。

 あの正体はまだ見ぬ新種か、はたまた俺の妄想の中の産物のどちらかだ。

 

「ああ、そうだ。アストレアの奴がお前に頼みたい事があると言っていたぞ」

 

「アストレア様が? また面倒事か……」

 

 オネイロスの口から告げられた言葉に思わずゲンナリしてしまう。

【アストレア・ファミリア】はダンジョン攻略の他にも、街の治安維持を行っている。アストレア様が司る『正義』に則って、日々闇派閥(イヴィルス)と争いを繰り広げているのだ。

 おおよそ今回の頼み事と言うのも、逮捕に協力して欲しいといった要請だろう。

 

 アストレア様のファミリアとは長い付き合いだ。本拠地としている場所が近いから、神どうしでも仲は良く、俺たち眷属も友人と呼べる程度には良好な関係を築けている。

 

「いいじゃないか、悪者退治。正義の味方だぜ?」

 

「そんな事よりも俺はダンジョンに行きたいんだよ。もっと強くならないと……」

 

「――その化物と戦って誰かを救う為に? ハッ、馬鹿も休み休み言え。まぁ、強くなりたい理由はお前の好きにしたらいいさ。――だがな、命を懸ける理由を間違えるんじゃねぇぞ」

 

「……分かってるよ。でも、『その時』に後悔しない為に強くなるんだろうが」

 

 そうだ。俺だって赤の他人を、自分の命を懸けてまで助けようとは思わない。

 だけど、もし俺がもっと強くなって、あの悪夢を回避できるのなら――あの怪物を倒せるのなら。誰とも知らぬ『彼女たち』は救えるのかもしれない。

 だから俺は()()()()()()()()()()()()。――いや、もし夢が本当ならば、結末を知るものとして俺は『彼女たち』を()()()()()()()()

 

 赤の他人の為に命をかける、そんな事は馬鹿げていると頭では理解している。だが、俺は夢で見た状況になったら、自分を犠牲にしてでも、その『誰か』を助けようとするのかもしれない。

 身を焦がすような強い強迫観念。まるで呪いのようだと他人事のように思った。

 

 

 ▷▷

 

 

「――というわけで、カルカス。アリーゼたちと一緒に行ってくれない?」

 

「嫌です」

 

 場所は【アストレア・ファミリア】の本拠地、『星屑の庭』。俺の本拠地から歩いてすぐの所にある広大なホームの一室。そこに座っている女神に向かって、すぐさま俺は頼み事を断った。

 

「まあ、私に向かってそんな事言うの? あなたが小さな頃はあんなに可愛らしかったのに」

 

「ほっとけ」

 

 昔の話を持ち出してくるアストレア様にぶっきらぼうに答える。

 俺にはアストレア様が言っているような、可愛らしい頃というものがあった覚えがない。むしろ彼女に会った頃など一番『可愛さ』からは遠かっただろう。生きる為に、強くなる為に必死だったあの時は。

 

「じゃあ決まりね! カルカスも参加するし、明日の夜カジノに攻め込むわよ!」

 

「アリーゼ、お前は何を聞いてたんだ!? 行かないって言ってんだろうが! ……おい、リオン。お前からも何か言ってやってくれよ」

 

「カルカス、こうなってしまったアリーゼを止めるのは困難です。大人しく参加しましょう」

 

「お前まで……って、何笑ってんだよリオン!」

 

 赤い髪を後ろで束ねた少女が俺の話を全く聞かずに宣言し、金の髪を持ったエルフは顔を横に向けて笑っている始末だ。

 

(わたくし)が思うに、カルカス様は闇派閥(イヴィルス)との戦闘を恐れているのではないでしょうか? あぁ、では仕方ありませんね。私たちだけで向かうとしましょう」

 

「輝夜、俺そんな事言ってないよな? 別に怖くないから! 後、その話し方やめろ」

 

(わたくし)はこれが地です」

 

「嘘つけ!」

 

 輝夜たちと俺がギャーギャー言いあっていると、周りにいた他の眷属も「いいぞー!」「やっちゃえー!」と無責任に言葉を投げかけてくる。

 

「ああー! もう分かったよ、行けばいいんだろ!」

 

「はい、今度こそ決まりね!」

 

 半ばヤケになって了承すると、アリーゼが笑みを浮かべる。こんなので団長が務まっているのかと思わず疑問を抱いてしまう。

 ……いや、俺も一応団長だけど眷属が俺だけだから特に何もしてないし、俺よりはしっかりしてるのだろう。

 底知れぬ敗北感に落ち込んでいると、リオンがこちらを見てまた笑った。お前いい加減にしとけよ。

 

 

 

 

 こんないつもと変わらない日常。何も持っていなかった俺に温もりを与えてくれたかけがえのない日々。

 こうした日常の尊さを再確認した、そんな時に必ず『夢』はやってくるのだ。逃がさない、そう嗤うように。

 

 

 ◆❖

 

 

「――! 逃げろ!」

 

 またあの『夢』だ。いつもと変わらぬ殺戮の光景。――いや、前回とは違う。前よりもはっきりと見えている。

 逃走を呼びかけているのは――深い青の髪を持つ()だ。男なんてあの場には居なかったはずだ。俺が覚えているのは11人の少女。そこに男の存在はなかった。

 男が怪物と向き合っている。その横にいるのは誰だ? 極東風の格好をした少女がいる。軽装で耳が尖っている――エルフの少女がいる。赤い髪で炎を纏った少女がいる。

 この既視感はなんだ? 俺は『彼女たち』を知っている?

 

「――!」

 

 少女の紅炎が世界を覆った、その後には無傷の怪物と焼け死んだ人だけが残っていた。

 

 

 

 

 飛び起きる。時刻はまだ夜中、心臓が激しく波打っている。

 

「なんだ今の……」

 

 ()()()()()()()()()()()()()。俺が今まで見てきた夢では、始まりの時点で数人は死んでいた。それに、敵の攻撃は物理攻撃のみだった筈だ。だが、さっきの夢では焼死体が存在していた。

 どういうことだ? 相手が魔法を使ったとでも?

 ――違う。あれは少女の炎だった。では、魔法を反射したのか。

『夢』の内容が変化した理由はなんだ? 男の登場が原因なのだろうか。

 

「……馬鹿らしい。たかが夢にどうしてこんなに本気になってるんだ」

 

 自分に悪態を吐くも、胸に残った違和感は消えない。

 いつもより鮮明になった『夢』。そこに登場した少女たち。

 

 ――もう気づいているんだろ?

 

 (だれか)が俺に問いかけてくる。

 そんな訳が無い、そうであって欲しくない。そう否定しようとしても、出来ない。一度抱いてしまった疑念は一笑に付す事を許さなかった。

 

「オネイロスに相談するか……」

 

 

 ▷▷

 

 

「で? こんな真夜中に俺を叩き起したのか?」

 

「悪かったよ。それより、どう思う?」

 

 部屋から出て下に向かうと、オネイロスがソファーの上で寝ていたから、少し揺さぶると睡眠を邪魔されたのが気に食わないのか、不機嫌そうに答える。

 

「どう思うって言われてもなぁ、何が気になってるんだお前は」

 

「『夢』に出てきた人の事だよ。あれは――」

 

「――本当の『夢』なのか、それともお前の記憶と混ざった物なのか、っていった所か?」

 

 オネイロスの言葉に頷く。最近になってどんどん鮮やかになってきた『夢』の光景。それが俺の記憶と混ざってきているのか、もしくは()()()()()()()()()()()()()()。その判断が俺には出来ない。

 俺がしばらく沈潜していると、何か良い物を見たかのようにオネイロスが目を細め、ニヤニヤとしだした。その態度が今は癪に障る。

 

「なんだよ、何か言いたいことでもあんのか?」

 

「いやまぁ、お前も随分丸くなったなと思うとな……覚えてるよな? 初めて会った時のこと」

 

「もちろん覚えてるよ。8、いや、9年前か?」

 

「そんなもんか。あん時は驚いたなぁ。急に声掛けてきたと思ったら『ファミリアに入れろ』って言ってきてな」

 

「仕方ないだろ……あの時は必死だったんだ。身寄りがなかったからな」

 

 あの頃の俺はちょうど親を亡くしたばかりだった。事故で死んだのか、誰かに殺されたのか。それすらも知らされず、親が死んだことだけを伝えられた俺は子供ながらに、これからどうやって生きればいいのかと思っていた。

 

「お陰様で作るつもりもなかったファミリアを作る羽目になったし……ま、思ったよりも悪くはなかったがな」

 

「それは良かった。……それで、それがどうしたんだよ」

 

「あの頃のお前が今の自分を見たら驚くと思うぜ? 自分の事ばっか考えてた時と比べたら、だいぶらしくなったじゃねぇか」

 

「らしくなった……ね」

 

「なんにせよ、事件が起こってないならどうしようもねぇだろ。アイツらに『二度とダンジョンに行くな』とでも言ってみるか?」

 

「……それは無理だろうな」

 

 俺が『夢』を見るのは決まって惨劇が起こってからだった。事件の場所、日付け、原因などは何も分からない。

 実際に発生するかも分からない事件に怯える彼女たちではない。

 

「――あんまり『夢』に囚われるなよ。何かに囚われてもいい事なんて1つも無いって教えたよな? ――あぁ、最後に1つ言っておこう。(おれ)の勘だ、お前は運命を変えることが出来るかもしれない」

 

 ――どうしたいのかはお前が決めろ。

 その言葉を残してオネイロスは部屋へと入っていった。

 運命を変える? どうやって?

 それに、『夢』に囚われるとはどういうことだ?

 朝が来るまで考えたが、結論が出ることはなかった。

 

 

 ▷▷

 

 最後にあの『夢』を見てから数ヶ月が経過した。

『夢』を見てから、しばらくはアリーゼ達と共にダンジョンに潜ったり、闇派閥を取り締まったりはしたが、ついぞあの怪物と出会うことはなかった。

【アストレア・ファミリア】を壊滅させ得るモンスター、恐らくは『深層』のモンスターだろう。だから、遠征に行く時には一緒に行くことを約束させた。

 

 オネイロスから聞いたところによると、今は【アストレア・ファミリア】は闇派閥との繋がりを疑われている【ルドラ・ファミリア】の捕縛を実行しようとしているらしい。

 Lv4が多数いる彼女たちに【ルドラ・ファミリア】は敵わないだろうから特に心配はしていない。

 

 今回は俺も呼ばれなかったし、こちらとしてもある用事があるので、ありがたい。というか、俺の用事を知っているから呼ばなかったのだろう。

 

 本拠地の飾り付けをテキパキとやっていく。オネイロスは出かけていて、帰ってくるのは夕方だろう。

 今日という日は俺にとって特別な日だ。記念すべき【オネイロス・ファミリア】結成の日。

 一応、あれでも神なのだから、たまには敬ってパーティーを開くのもいい。

 

「……これで、とりあえず準備は終わりだな」

 

 思えばずいぶん長い間働きっぱなしだったから、どっと睡魔が押し寄せてきた。まだオネイロスが帰るまでには時間があるはずだから、少し睡眠をとるとしよう。

 

 

 

 ◆❖

 

 

 まただ。また『夢』を見ている。いつもと変わらない殺戮の光景。血にまみれ、肉が飛ぶ地獄。男の存在などはなく、何十、何百と見てきたいつもの悲劇。

 

 既に殆どの少女が命を失い、残りの者も満身創痍だった。

 

「お前は、生きるんだぞー」 ――その台詞は知っている。

 

「どうか強く在らんことを」 ――この台詞も知っている。

 

「じゃあね――」 ――これも知っている。

 

 

「――リオン」 ――――待て。それは知らない。

 

 

『夢』が現実のように色を取り戻していく。靄がかかっていた世界に旋風が起こる。みるみる拡大していく世界。明らかになるその全貌。

 少女たちの前で、あの時の男とも異なる人間が叫んでいる。男たちも怪物の餌食となっている。

 

 桃色の髪をした小人族(パルゥム)が立ち上がる。

 黒髪の大和撫子が剣をとり、前を向く。

 赤髪の人間(ヒューマン)がその緑の瞳で倒れたエルフに「生きろ」と伝える。

 地に伏した妖精の瞳が絶望に染まる。

 

 ――やめろ、待ってくれ。いかないで。

 

 そこからは知っている光景だった。最後に残っていたのは泣き叫ぶ妖精。他の少女は息絶えていた。

 

「ああああああああぁぁぁッッ!!」

 

 ――リオンの悲痛な叫びが聞こえた気がした。

 

 

 ◆❖

 

 

 意識が一瞬で覚醒する。ソファーから飛び起きると、オネイロスは既に帰ってきていた。ずいぶんと長い間寝ていたらしい。

 

「起きたか、カルカス。じゃあ飲み始めるとするか」

 

 オネイロスが話しかけてくるが、今の俺に取り合う余裕はない。直ぐに装備を整えて、出発の準備をする。

 もう時間が無い。アリーゼたちはもうダンジョンに入っている。場所は『下層』、全力で飛ばしてもかなり時間がかかる。しかし、今ならまだ間に合うはずだ。

 

「オネイロス、悪いが今から出かけてくる。埋め合わせは今度必ずするから」

 

「――何処に行くつもりだ?」

 

「分かってんだろ、ダンジョンだよ」

 

「また悲劇(ゆめ)を見たのか。……なあ、今から行くのは止めないか? 嫌な予感がする」

 

 珍しくオネイロスが俺の顔をじっと見て、真面目そうに話してくる。だけど俺は――。

 

「無理だ。それなら、尚更行かなきゃいけない」

 

 差し伸べられた手を振り払った。

 

「オネイロス、前に俺に言ったよな。『運命を変えることが出来るかもしれない』って。――それは今だ。今、行かないと、もう変わらない」

 

「……そうだったな。くそったれ、言うんじゃなかったぜ」

 

 オネイロスが目を伏せる。まるで、俺がもう止まらないと理解したようだった。

 

「安心しろよ、俺には『魔法』(とっておき)がある。それに、今まで無茶を積み上げてここにいるんだぜ? そう簡単に死なねぇ」

 

「……どうして行くんだ? 赤の他人じゃないからか?」

 

 力なくオネイロスが問いかけてくる。

 確かにそれもあるのだろう。いや、寧ろ――。

 

「なあ、オネイロス。俺はやっぱり『英雄』にはなれないようだ」

 

 そうだ。物語の英雄のように、『誰か』の為に命をかけることは出来ない。そんな当たり前の事が、今わかった。

 

「俺は――アイツらを助けたい。それが命をかける理由になる」

 

 他の誰でもない、俺の大切な人達を救う為ならば戦える。

 

「そうか……ならもう何も言わねぇよ。――いってこい」

 

「……いってきます。じゃあなお父さん(クソ親父)

 

「飯食うのは待っててやるよ。皆で帰って来い、バカ息子」

 

 

 ◇◇

 

 

 その言葉を最後にカルカスが駆けていく。その背中をオネイロスは見続けていた。

 

『おい、あんたのファミリアに俺を入れてくれ』

 

 ふと、過去の情景が男神の心に浮かんだ。

 

『何だこのガキは? 早く親のとこに帰んな』

 

『もう居ない。このまえ、親は死んだ』

 

 少年はぶっきらぼうに、何かを恐れているようだった。それが始まり。

 

『オネイロスー! いるかー! 10歳になったら武器買ってやるって言ってただろー!』

 

『聞こえねぇーなぁー。お願いしますお父さん、って言ったら聞こえるかもしれん』

 

『買いに行くぞ、クソ親父!』

 

 女神(アストレア)と出会ったのもこの頃だっただろう。

 

『あら、可愛い子。髪の毛の色も二人とも青だし、親子みたいね。……私のことはお母さんと呼んでもいいのよ』

 

『あんた誰だよ』

 

『!?』

 

 そして、アストレアもファミリアを作り、カルカスに友ができ、どんどん周りが賑やかになっていった。

 思い出を挙げればキリがない。家出も喧嘩もくだらないことも多くやった。それでも、オネイロスは全部覚えている。

 

『なぁ、カルカスよ。お前の親はどんなやつだったんだ?』

 

『急にどうしたんだよ……そうだな、よく覚えてないんだよな。いつも家じゃ一人だったから』

 

『なんだ、寂しくなかったのか?』

 

『あの時は寂しかったさ。でも今はそんなことない』

 

『俺のおかげだな』

 

『……そうだな、あんたがいたからな』

 

『……! ふ、ははははは! 可愛い奴め、このこの〜!』

 

『な、何すんだよ! ……離せクソ親父ー!』

 

 いつも自分の後ろを歩いていた子供はもう居なくなった。少年は強くなった。一人でやっていけるほどに。

 

「子供の旅立ちか……親不孝な奴だ」

 

 地面にポツポツとしずくが落ちる。上を向けば空は真っ黒だ。どうやら雨でも降っているらしい。オネイロスはそのままその場に立ちすくんでいた。

 

 

 ▷▷

 

 

『下層』。モンスターを産み続ける体内に侵入した【アストレア・ファミリア】の面々は、【ルドラ・ファミリア】の罠によって生き埋めの危機に瀕していた。ダンジョンの壁が崩落し、使用された火炎石の煙が立ち込めている。

 しかし、彼女たちは全員が第2級冒険者。これしきの事で命を落とす者は居なかった。

 

「いってー、みんな無事かよー!」

 

 小人族(パルゥム)の少女の叫びを皮切りに、他の者も声を上げ、無事を知らせる。

 

「クソが! なんで生きてやがんだよテメェら!!」

 

 他方、必殺の意志を持ち、行動に移した闇派閥(イヴィルス)の男は怒声をとばす。

 

「ここまでよ、ジュラ! 大人しく捕まりなさい!」

 

 アリーゼが勝利を確信して叫ぶ。

 事実、大勢は決していた。このまま少女たちが闇派閥を捕えるのは時間の問題だった。

 ――そこにあの怪物さえ姿を現さなければ。

 

『――――――ッッ!!』

 

「今のは……なんだ……?」

 

 ダンジョンが哭いた。

 輝夜が言葉を漏らし、周囲に異様な雰囲気が伝播する。

 

「な、なんだよ、おい!」

 

 闇派閥の男(ジュラ)も状況を理解できないのか、たじろぐ。

 その時だった。崩落していない壁に()()がいるのに気付いたのは。

 

「なんだこのモンス――」

 

 男の声はそこで途切れた。話すことが不可能な身体になっていたからだ。男の上半身が一瞬にして消え去っていた。

 

『――――ッ!』

 

「な――――」

 

 アリーゼの、リューの、輝夜の、ライラの、そこにいた全ての人物の口から驚愕の声が漏れた。

 怪物は止まらない。そのまま数がより多い闇派閥(イヴィルス)の元へ疾駆したかと思えば、化石のような爪を薙いで、瞬く間に二人の命を刈り取った。

 

「なんなんだよ、あの怪物(モンスター)は!?」

 

 たまらずライラが叫ぶ。それは皆の心を代弁したかのような悲鳴だった。

 骨だけで構成されたような不気味な身体。信じられないような速度。そして、上級冒険者を一撃で絶命させる攻撃力。

 紛れもなくそれは誰も知らない新種であり、この場全ての者に『死』を与える『死神』だった。

 

『――――』

 

「ひっ……」

 

 誰からともなく、小さな悲鳴を上げた。

 闇派閥を殺戮した怪物が【アストレア・ファミリア】に目を向ける。

 

「みんな、逃げなさい!」

 

 敵が接近してくると予想し、アリーゼが最前列にいたノインたちに叫ぶ。

 遠く離れていたはずの怪物が瞬時に詰め寄ってくる。避けられない死を予感し、ノインが目を瞑った。

 これが少女たちの『運命』。彼女たちだけでは悪夢を無事に越えることは出来ない。

 だから――。

 

「はぁッッ!!」

 

「カ、ルカス……?」

 

 もし『運命』が変わるとしたら、それは他の誰でもない、ある少年の介入があるのだろう。

 

 

 ▷▷

 

 

「カルカス、どうしてここに!?」

 

 アリーゼが驚愕の声を上げる。本来いるはずのない少年が此処にいた。

 

「いいから逃げろ! はやく!」

 

 対するカルカスにも余裕は微塵もなかった。最強の矛といっても過言ではない武器を持つ怪物は、カルカスによって防がれた破爪を再び振り下ろし、殺しにかかった。

 

「――ぐ、っ」

 

 振り下ろされた必至の爪を剣を交差させることによって止める。だが、怪物はそこで終わらない。もう片方の、二本目の破爪を横薙ぎに振るう。

 

(まずい、止められねぇ――)

 

 風を切り、迫ってくる死神の鎌。それを防ぐ手は少年にはなかった。

 だから――。

 

「はあっ!」

 

 それを少女が防ぐ。疾風の如く敵に接近した少女が爪を弾き返した。

 

「リオン!」

 

「私たちで時間を稼ぎます。……助けに来てくれて、ありがとう」

 

 カルカスが後ろを向けば、魔法の詠唱を行っている少女がいた。

 純粋な戦闘員である輝夜とアリーゼも武器を手に横に並び立つ。

 

『――――ッ!』

 

「――ッ、来るぞ!」

 

 激高した怪物が凄まじい速度で距離を詰め、一直線に迫ってくる。

 それを迎え撃とうと、各々が武器を構えた、その瞬間。

 

「な――飛んだ!?」

 

 怪物の跳躍。立体的な行動。正面からではなく、上からの攻撃に反応が一瞬遅れる。狙われたのは輝夜。大振りに振られた腕、目の前にある死。

 

「輝夜!」

 

 それを少年が庇う。輝夜を押しのけ、不完全な体勢ながらも剣を構えることで爪を受け流す。

 

「――ぐぁ、っ」

 

 しかし、再三自らの必殺を防がれた怪物は学習していた。もう一つの武器である長い尾をカルカスと輝夜に叩きつけ、壁まで吹き飛ばした。

 

「魔法の準備出来たよ! みんな離れて!」

 

 余裕のない声で魔導師のイスカとマリューが叫ぶ。

 魔法とは起死回生の一撃。強大な敵を打ち破る矛となる。

 しかし、この敵に対してはその常識が通用しない。

 

「イスカ、マリュー! 魔法をアレに撃つな!」

 

「じゃあどうするのよ!」

 

「壁だ! ダンジョンの壁を破壊しろ!」

 

「ああ、もう分かったわよ、合わせて!」

 

 二人の魔法が満を持して放たれる。爆炎を上げながら次々と壁を破壊していき、崩壊から免れていた壁も、遂に音を立てて崩落していき、怪物と人の間にいくつもの瓦礫が積み重なった。

 

「助かった……のか?」

 

 ライラが呆然として呟く。

 

「ひとまず、な……痛っ……」

 

「すまない、助かった。……っく」

 

 怪物の尾の攻撃を受けたカルカスと輝夜がそれぞれ負傷した部位を抑える。カルカスは左腕と肋骨、輝夜は右肩が折れていた。

 

「大丈夫!? カルカス、輝夜!」

 

 バラバラになっていた仲間たちがカルカスの周りに集まっていく。カルカスはポーチからエリクサーを取り出すと、輝夜へと渡し、もう一つを自分に使用した。

 

「ひとまず、どこか落ち着ける場所を探しましょう。此処にいては危険だ」

 

 リューの言葉に頷き、素早く広間へと移動していく。怪物が接近している様子はない。辺りを十分警戒しつつも、ようやく一難去ったことを理解し、大きく息を吐いた。

 

「はぁ……。ありがとうね、カルカス。おかげでみんな生きてる」

 

 ファミリアを代表してアリーゼが礼を言う。それをカルカスは心底安心したように受け取った。

 カルカスとしても、死ぬ可能性が高かった彼女たちを無事に救えたのだ。悪夢を回避し、この時ばかりは『夢』に感謝した。

 

「カルカス、貴方はアレが何か知っているのですか?」

 

 リューが疑問に思っていた事を尋ねる。カルカスはリューたちが混乱している最中も、的確な対応を行っていた。まるでアレが何か理解しているように。

 カルカスはリューから少し目を逸らしたあと、言った。

 

「あぁ、知っている……と思う」

 

「思う? どういう事ですか?」

 

「説明が難しいんだが……昔から『夢』を見るんだ。あの怪物はその夢の中に出てくる。その『夢』で殺戮を行う存在だったんだ。まぁ、帰ったあとにオネイロスにでも聞くといい」

 

「夢? じゃあ魔法を撃っちゃ駄目って言ったのは?」

 

 続け様にマリューが質問する。

 

「アレには魔法が効かないんだ。多分……魔法を反射していた」

 

「反射!? そんなの反則じゃない……!」

 

 魔法を使える者が一斉に目を見開く。魔法が効かないとなると、純粋な剣などの戦闘技術のみで相手を打倒する必要がある。

 冒険者としての『技』と『駆け引き』。あの怪物に相対しうる能力を持ち合わせていたのは、ここではアリーゼ、リュー、輝夜、そして、カルカスだった。

 

「では、どうする。恐らくアレは崩落した通路の代わりとなる道を探している頃だろう。ここで待つのは愚策だぞ」

 

「そうね、私たちが有利に立ち回れる場所を探さないと……」

 

 輝夜の問いにアリーゼが答える。【アストレア・ファミリア】の中で行われる作戦会議。それを外から眺めていたカルカスは主神(オネイロス)の言葉を思い出していた。

 

(『夢』に囚われるな。……どういう事だ? 今でも俺は囚われているのか?)

 

 繰り返される自問自答。しかし答えは一向に出ない。不安と焦りがどんどん募っていく。

 

(ここからアレと会わずにこの階層を抜け出せるか? ……いや、無理だ。必ずまた戦闘になる。じゃあリオンたちを見捨てることが『夢』に囚われずにいるということなのか?)

 

 否、断じて否である。それが解決法なら――たとえそれが正解でも、カルカスはその手段を認める事は出来ない。今、カルカス(じぶん)と同じ立場にいて、その手段をとる者が居るとすれば、その者は相当恥知らずで恩知らずだろう。

 

 かといって、全員で脱出する術があるかと言われれば、無いと答えるだろう。

 全員でなくても良いのならば、手段はある。単純に広間で相手を向かい撃てば、恐らく撃退は可能だろう。しかし、それは間違いなく犠牲を伴う。特に戦闘向きではない後衛などの被害は甚大のはずだ。

 

(違う――)

 

 そう、違う。本当はカルカスとて気づいている。カルカスは持っているのだ。彼女たち()()()()()()()()()()()

 だが、その決断がカルカスには出来ないでいた。その決断が自らの死を意味することを知っていたから。

 

「――カルカス聞いてるの!」

 

「――あ、……悪い。何だって?」

 

 アリーゼの呼びかけにハッとして顔を上げる。アリーゼの顔を見れば、いつになく真剣な顔をした彼女は何かを覚悟したようだった。

 

「――私が囮になる」

 

「――――」

 

 時が止まった。体の震えが止まる。先程よりも強く体が震え出す。

 どこまでも仲間思いで優しい少女は、友を救おうと立ち上がった。

 

「待て、団長。貴方は生きるべきだ。囮は私が引き受ける」

 

「駄目よ、輝夜。リオンもみんなで生きて地上に戻りなさい。これは団長命令よ」

 

 必死になってアリーゼに仲間が呼びかけるも、アリーゼの意志は固かった。彼女は本気で、自らの命を対価にここにいる全ての人を助けるつもりだった。

 どこまでも崇高で、尊い命の輝き。そうだ。カルカスはこんな彼女たちに救われたのだ。

 ならば――。

 

「――俺に考えがある」

 

 ――今度は俺が皆を守る番だ。

 

 

 ▷▷

 

 

「なんだよ、考えって」

 

 ライラがカルカスに目を向ける。みんなの視線を一身に集めたカルカスは、大きく息を吐き、言った。

 

「俺の魔法を使う。それでかなり逃げやすくなるはずだ」

 

「どういう事だ? 支援魔法を持っているのか?」

 

「ああ、似たようなものだな。けど、俺は高速詠唱なんて出来ないし、そこそこ時間がかかるから、お前らには周りの警戒をしていて欲しい」

 

 輝夜の問いにカルカスが目を伏せながら答える。それを聞いたアリーゼが手を胸の前でパン、と叩いた。

 

「じゃあお願いね、カルカス。その魔法が終わったらみんなで逃げること!」

 

 アリーゼに対して最後まで抵抗していたリューもやりきれない様子で周囲の警戒に向かった。それに続いて輝夜たちもそれぞれ周囲に散らばっていく。

 それを確認したカルカスは詠唱を始めた。

 

「【我が見しは破滅の悪夢(ゆめ)、我が望むは救済の空想(ゆめ)】」

 

 それは、ひたすら同じ悲劇を見てきた男が救いを求めた歌。

 

「【尊き命に導きを、救済(ひかり)を示せ、破滅(やみ)を祓え】」

 

 何回でも災厄の象徴に立ち向かった少女(だれか)に向けた歌。

 

「【厄災(てき)を退け、我が手に勝利を】」

 

 体内で荒れ狂う魔力の奔流。

 口元に描かかれる笑み。この状況を打破する為だけに発現した魔法。

 

「【(かせ)は己を縛るもの、(つばさ)は他者を救うもの】」

 

「アリーゼ! 何かこっちに向かってきてる!」

 

 斥候の役割も兼任しているライラが不気味な物音を感じ取り、あらん限りに叫ぶ。ライラの声を聞き届けた全ての者に刺すような緊張が走り、カルカスに目を向ける。

 

「カルカス、まだ!?」

 

「――あぁ、これで終わりだ。【我が身を呪い(ゆめ)から解き放て】」

 

「【ミラグロ】」

 

 魔法の詠唱が終わる。広間にいた11人の少女が光に包まれる。

 温かくて、冷たくて、壮大で、それでいて、ちっぽけな光だった。

 

「終わったのね、じゃあ後は私が―― 」

 

「――カルカス、お前……」

 

 アリーゼが言葉を続けようとして、不意に切った。近くにいた輝夜も目を見開く。魔法の奇跡が包み込んだのは11人。1()()()()()()

 

「……アリーゼ、お前達とは長い付き合いだ。なんの取り柄もなかった俺だけど、今この瞬間、此処にいることを心底誇りに思う」

 

「待って、カルカス。あなたは―― 」

 

 近寄ってきたリューも何かを察したように口を手で覆う。

 そんな彼女を見てカルカスは強がるように笑った。

 

「そういえば、地上に戻ったら俺たちの本拠地(ホーム)で宴の準備と一緒にオネイロスが待ってるはずだから、あいつの所に行ってやって欲しい」

 

 少女たちを覆う光がどんどんと強くなっていく。それは正真正銘、救いの光であり、カルカスにとっては死の宣告でもあった。

 

「みんな、来るぞ!!」

 

 瞬く間に強くなる死の音。カルカス以外の全員が接敵に備えて武器を構える。3秒前。

 

 アリーゼが前に出る。2秒前。

 

 怪物が広間に侵入してくる。1秒前。

 

「じゃあな――――ありがとう」

 

 カルカスが満面の笑みを浮かべる。リューが手を伸ばしてくる。輝夜が目に涙を溜める。ノインが、ネーゼが、リャーナが、セルティ、アスタ、イスカ、マリュー、ライラが、叫ぶ。

 

 零。広間にいた11人の姿が消える。怪物の息を呑んだ声が聞こえた。

 カルカスの魔法【ミラグロ】。効果は――対象の瞬間移動(ワープ)。今頃は地上で混乱している少女がいるだろう。

 対象人数は11人まで。当然だ。あの悲劇の救済のために発現した能力。一度きりの奇跡。

 彼女たち以外に救うべき者はあの悪夢(ゆめ)の中にはいなかった。

 だとすれば、当然、己が入る余地はない。

『夢』で見た光景とは最早別物だ。完全にかけ離れてしまった。

 でも、これは――夢にまで見た光景だ。

 

『――――』

 

 怪物が親の仇のように少年を見る。排除すべき敵を失った怪物は、残った少年を抹殺せんと欲した。

 

「あー、くそ。やっぱりこうなったか」

 

 少年がなんてことは無いように頭を搔く。

 後悔はある。やり残した事など幾つあるか分からない。

 今でも他の選択肢は無かったのかと心が悲鳴をあげている。

 確かに、最良の選択は他にあったのだろう。ともすれば、自分も、彼女たちも全員で帰還する方法が。

 

「いや、まあいいか……」

 

 それをカルカスは考えることをやめた。

『過去を振り返ることはしても、囚われるな』。オネイロスが教えてくれたことだ。過去に囚われてしまうと、前に進めなくなるから。

 

 少年は『夢』に囚われた。その代償として、ここにいる。

 だが、それでも少年は前に進んだ。そして、その報酬として彼女たちの生存を勝ち取ったのだ。

 この結果さえあれば、そう少年は思った。

 

「さて、じゃあ始めるとしますか、怪物! お前を倒して、帰るんだ」

 

 怪物と視線を交わす。体が震える。これは恐怖か武者震いか。

 そこまで考えて少年は怪物に向かって走り出した。

 

 

 そこから先は語るまでもない。怪物は殺意を持って、少年は勇気を持って立ち向かった、ただそれだけの事。

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

 オネイロスの元にやってきた【アストレア・ファミリア】の少女たちの話を聞き、オネイロスは少年の真意を全て理解した。

 頭を下げ、涙を流す少女たちを許した。

 ダンジョンに向かおうとする少女を引き止め、だいぶ遅めの夕食を振る舞った。

 すっかり冷めてしまったパーティー用のご飯は、少年が作った最後の料理だった。

 

 己と眷属を繋いでいた糸が切れる感覚を、オネイロスは初めて知った。

 あの日ほど泣いた日はない。あの日ほど息子(しょうねん)を恨んだ事は無い。あの日ほど全知零能の我が身を憎んだことは無い。

 

 

 あの日から、5年が経過した。

 

 少年は未来を示した。少女は前を向いて、また走り出した。

 過去に囚われているのはオネイロスだけだった。

 いつかの自分が放った言葉が今の自分に返ってきていることに、男神は苦笑した。

 

(あぁ、そうだな……)

 

 少年は前を向いたのだ。少年が救った少女は世に平和をもたらし、知らぬ人は居ないほどに成長した。

 だから、そろそろ自分も前を向かなければいけない。

 

 オラリオの人混みをかき分けて歩いていく。多種多様な人々が笑って暮らしている。

 そんな中、一人の少年とすれ違った。オラリオに来たばかりなのか目を輝かせて周りを見渡している。

 

「――――」

 

 白髪の髪を持った純真そうな少年。そして、誰かを想起させる深紅の瞳。

 オネイロスは思わず声をかけていた。

 

「おーい、そこの白髪の人間(ヒューマン)!」

 

「は、はいぃ! ……な、なんでしょうか?」

 

 神に呼び止められた少年は、余程驚いたのか、飛び上がりそうになりながら、声を上ずらせて答えた。

 

「ファミリアを探してねぇか?構成員はお前だけ、それでいいなら歓迎するぜ?」




この話のコンセプトは『夢』、『救済』です。
14巻を読んでからちょっとやりたくなって衝動的に書いたから、疑問点&矛盾点が多いかもしれないけど暖かい目で見守っといて。

本来はオリ主が【アストレア・ファミリア】のピンチを救って、何の憂いもなくベル君とリューさんの恋愛を楽しませる為だったんだけど、話が重くなりましたね……。

なのでオリ主と原作キャラとの間に恋だの愛だのは一切ありません。
仲のいい男友達的な感じ。

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