愛する旋律   作:プロッター

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聴いたことがない

 ジリリリリ、というベルの音がスピーカーから鳴り響き、サンダース大学付属高校の昼休みが始まる。

 『デストロイヤー』棟のとある3年生の教室で、数学の授業を乗り越えた英影輔(はなぶさえいすけ)が背伸びをして、授業の疲れを解す。

 そんな英の下へ、ひょこひょこと人影が近づいてきた。入学してからの付き合いがある友達の、山河博之(さんがひろゆき)だ。

 

「英~、ご飯食べに行こう」

「おお、そうだな」

 

 山河に言われ、英は立ち上がり2人で食堂へと向かう。

 

「昼ごはんどうする?」

「あー・・・最近バーガー系が続いたし和食にしようかな」

「そっか。僕はステーキにするよ」

「・・・いつも思うけど、昼からステーキって重くないか」

「ここじゃ普通だと思うけど?」

 

 食堂に行くまでの間に、2人はそんなとりとめのない話を交わす。彼らの周りには、彼らと同じく白いシャツに薄いグレーのブレザーと青のスラックスを履く男子、スラックスではなく赤いプリーツスカートを履く女子が大勢歩いている。そしてそのほぼ全員が、食堂のある方向へと向かっていた。

 ここがサンダースではなく普通の規模の学校であれば、食堂の席数が限られている故に、昼休みの時間になるや否や教室を飛び出して食堂の席を確保しようとするだろう。

 だが、サンダースではその心配はいらない。サンダースはとにかくやたらと規模がデカいのが売りであり、それは食堂も例外ではない。まず食堂は全部で3つ、『メルキオール』『バルタザール』『カスパール』が存在する。そしてその3つの食堂は、どれも全校生徒のおよそ半数が座れるほどの席がある。そんなに席があっても意味無いだろうと思うだろうが、トイレまでもが全校生徒が一度に入れるぐらい数があるので今更と言った感じだ。

 その3つの食堂には、それぞれ2~3の校舎棟の生徒が集まるような流れが形成されている。英と山河が向かう『バルタザール』食堂には、2人が普段授業を受ける『デストロイヤー』棟の他にも『アイアンブリッジ』棟と『コマンドス』棟の生徒も来ているようだ。

 そして食堂に到着すると、案の定多くの生徒たちが訪れていた。

 

「結構いるねぇ」

「いつものことだ。それに、席も空いてるだろ」

 

 券売機に並びながら食堂の中の方を見る。流石に料理を渡すカウンターの近くの席は全滅しているだろうが、贅沢を言わなければ席はまだ十分空いている。

 少しして順番が回ってきた英は、紙幣を挿入してメニューを選ぶ。英の食べたい和食系のメニューは券売機の下の方にあり、上半分以上を占めているのはファストフードとボリューミーな肉料理だ。本場アメリカの学食がどんなものなのかは知らないが、この手の食事を好むアメリカらしいと言えばらしい。

 

(ここまで徹底しなくてもいいものを・・・)

 

 何度目かも分からないことを感じながら英は下の方の焼鮭定食のボタンを押し、半券とお釣りを回収する。この学校がアメリカ風の気質なのは今に始まった事ではないし、数回ほど売り切れになっているのを見た事があるので一定の需要はあるのだろう。ただ、流石に一品4ケタのメニューはどうなんだと思う。しかしこれも売れたのを見たことが何度かあるので、これもまた人気があるのかもしれない。

 別の券売機で券を購入した山河と合流し、料理を受け取る列に並ぶ。そしてそれぞれが料理を受け取ると、窓際の空いている2人掛けの席に座る。英が焼鮭定食を載せたトレーを『コトッ』と机に置き、山河が厚切りステーキが目を引く鉄板プレートの載ったトレーを『ゴトッ』と机に置く。トレーをテーブルに置く音が全然違った。

 

「・・・・・・値段4ケタなだけの価値はあるんだろうな、それ」

「そうだねぇ。これ美味しいもん」

 

 ナイフとフォークを使って肉を切り、そして咀嚼する山河。実に美味しそうに食べている。

 その山河の食べているステーキ定食、1000円札1枚では買えない値段ではある。1000円札2枚以上の値段じゃないだけまだ安い方なのだが、それでも十分高いと英は思う。

 ただ山河も、毎日このような定食を食べていると言うわけではなく、週に1~2回ぐらいしか食べない。こんな食事ばかりだと早死にするだろうし、高校生の懐的にも優しくはないからだ。なので山河も普段は今英の食べているような和食の定食や蕎麦などを食べるのだ。

 そしてお互い雑談を交わしながら食事を進めて少しすると、入口の方から黄色い歓声が聞こえてきた。だが、その歓声が何によるものかというのは英も山河も知っているので、取り立てて騒いだりはしない。

 この歓声は、恐らくサンダースを代表する戦車隊の隊長・ケイが来たからだろう。サンダースで流布している情報によれば、ケイが普段いる校舎は『アイアンブリッジ』棟らしい。なので、そこから一番近いこの『バルタザール』食堂に彼女が来るのも何もおかしくはない。

 そして、彼女は大体決まって、同じく戦車隊に属する2人の副隊長のナオミ、アリサという女子を連れている。特にナオミは、全国屈指の腕を誇る砲手という肩書と、嫌みったらしくはない気障でクールな性格から女子からの人気が非常に高い。もう1人の副隊長であるアリサも、次代のサンダース戦車隊隊長として期待が高まっている、こちらも注目されている存在だ。

 あの黄色い歓声は、そんな人気者たちが来たからだろう。それを知っているから英と山河も特に何も気にせず食事を続けることにした。2人とも、食事は静かに摂りたい派なのだ。

 と、そこで英は思い出す。

 

「ああ、そう言えばさ」

「?」

 

 山河がステーキの一切れを食べ終えたところを見計らって、おもむろに話し出す英。山河も英の方に注目する。

 

「昨日の放課後、いつもの場所でピアノ弾いてたんだけどさ」

「うん」

「あのケイさんと目が合った」

 

 そこで山河も『んん?』と怪訝な表情になる。それは決して、『お前みたいなのが?』という意味ではなくて。

 

「『ハイランダー』棟で?」

「ああ」

「あんなところまでケイさんが?どうして」

「それは分からん」

 

 『ハイランダー』棟は、英たちの普段いる『デストロイヤー』棟からも、ケイのいる『アイアンブリッジ』棟からも少し離れた場所にある。わざわざそん場所まで行ってピアノを弾く英にも理由があるのだが、そこまで行ったケイの意図までは読めない。

 ただ、別に考えたところで答えが分かるわけでもないし、状況が変わるわけでもないので、2人とも『そんなこともあるよな』という結論に落ち着く。そして再び食事を再開した。

 それからまた少しして、2人のテーブルに近づく女子が1人。

 

「英~」

「「?」」

 

 2人にも聞き覚えのある声の聞こえた方向へと振り返ると、長い茶髪の少女が手を振りながらやってきた。

 

「クリスか」

「やあ、どーも」

 

 彼女はクリス。1年生の間だけ英、山河と同じクラスで、今では別のクラスになってしまったがそれでも仲は良い。高彼女はれっきとした日本人であり、『クリス』と言うのも彼女の苗字である栗橋からもじったもので、誰かがそう呼び始めたのがきっかけだ。彼女自身は別に嫌がってはいないので問題ないのだろう。

 

「どうかしたか?」

「いやー、また1曲頼みたいなぁと思ってね」

 

 そう言いながら、クリスは楽譜を差し出す。英はそれを受け取ると、中を流し読み程度で確認する。

 

「今度ランチを奢るからさ」

「乗った」

 

 クリスが提示した交換条件に英が頷くと、『じゃあよろしくね~』と言って手を振りながら自分のテーブルへと戻っていった。

 英は別に、ランチを奢ってくれるから弾くわけではない。特に見返りがなくても英は構わないのだが、押しが強いサンダースではその手の抵抗など意味をなさないことは既に分かっている。それと、食事代が1回分浮くのも悪くはない。

 

「弾けそう?」

 

 ステーキをまた一切れ食べて、山河が楽譜を読む英に問いかける。英は楽譜から目を離さずに、短く答える。

 

「・・・多分いける」

 

 そして楽譜を閉じ、椅子のそばに置いて食事を再開する。

 英は鮭の骨を箸で器用に取り除きながら、今日の放課後の予定を考える。まずはこのクリスから依頼を受けた曲を何度か練習し、自分の好きな曲も数曲ほど弾く。家に帰ったらイメージトレーニングだ。

 大体この曲が完成するのは早くても3日後ぐらいだろう、とおおよその推測をして鮭の身を口に放り込む。美味い。

 

 

 今日は私の好きな体育の授業が無かったので、全体的に授業が気だるく感じてしまった。

 けれども、戦車道の授業については真剣に取り組んでいる。それは私が戦車隊の隊長を務めているからであるし、何よりも私が戦車道を愛しているからこそ、その戦車道では手を抜かないと決めているからだ。手を抜くなどこれ以上ないぐらいの非礼に当たる。

 それはそれとして、私はホームルームが終わるとクラスメイトとの挨拶もほどほどにして、とある場所へと向かっていた。

 それは、昨日気まぐれで私が訪れた『ハイランダー』棟の第5音楽室だ。あの時聞こえた滑らかで、心地よくなるピアノの旋律が気になってまた足を運んでしまっていた。

 ただ、昨日見た彼が今日もまたピアノを弾いているという保証はないし、どうしてたった1人でピアノを弾いていたのかという理由もまた分からない。

 けどそれでも、またあの楽しそうなピアノの曲が聴きたくて、あそこへ行かずにはいられなかった。

 いくつかの角を曲がり、階段を降りて『ハイランダー』棟に続く連絡橋を渡り、何度か知り合いとすれ違って挨拶をしながら『ハイランダー』棟の第5音楽室へと向かう。

 そして、昨日ピアノの音色に気付いた場所と同じところで、またピアノの音が聞こえてきた。

 

(・・・・・・弾いてる、わね)

 

 確証の無かったことが的中していると、なぜか無性に嬉しくて小さく拳を握る。

 そして私は、さらに音楽室へと歩を進めていくが、そこで違和感を抱いた。

 

(・・・・・・あれ?)

 

 今聞こえているピアノの曲が、何度か音がズレたり戻ったりしている。素人の私にも分かるぐらい、あからさまだった。

 昨日と同じく、今聞こえてくるこの曲も私が知らない曲だけど、今日の曲はムラッ気がある。昨日はそんなことはなくスムーズに弾いていたというのに、どうしたのだろう?

 

(もしかして・・・・・・他の誰かが弾いている?)

 

 そんな疑問を抱きながらも、とにかく音楽室へやってきた。ただ、昨日のように小窓からジッと見ていてはあちらの集中力を削いでしまうかもしれないので、小窓からはチラッと見るだけで、後はドアの前で聴くことにしよう。

 中の様子をチラッと見てみると。

 

(・・・・・・やっぱり、彼だ)

 

 ピアノを弾いているのは、昨日と同じ赤みがかった黒髪の男子。顔も同じで他人の空似と言う可能性は限りなく低い、昨日の同一人物だ。

 ではなぜ、昨日とは違って音にムラがあるのだろう。もしかしたら、今日の曲は初めて弾いているのかもしれない。

 

(・・・・・・でも、上手いのよね・・・)

 

 でもそのムラさえも上書きするかのように、彼のピアノは上手だと素人の私には思える。音を外してもすぐにリカバーして、滑らかな旋律を奏でている。少しすればそのミスも気にならなくなるぐらい綺麗なピアノの音色だ。

 聴いていて、まったく苦痛とも、退屈とも思えない。

 正直言って、こんなに聴いていて心地良い、聴くだけで癒されるようなピアノの音色は聴いた事がなかった。

 

 

 その旋律は、ずっと聴いていられるぐらい、美しかった。

 

 

 ドアに背を預けて、そのピアノの音色に意識を委ねること数分。今聴いていた曲が終わりを迎えた。聴いた事がない曲でも、『ああ、ここで終わるのかな』ということは何となくだが分かる。

 さて、今聴いていた曲が終わったので、また別の曲を弾くのかな?

 私は今日この後は特に予定が無いので、中にいる彼がまだ弾くのであればそれを静かに楽しませてもらうことにしよう。

 そんなことを悠長に考えていた矢先。

 すぐそばの音楽室のドアが音を立てて開き、ついさっきまでピアノを弾いていた男子が私の前に姿を現したのだ。

 それがあまりにも不意打ち過ぎて。

 

「えっ・・・!?」

 

 

 

 やはり昨日弾いたような何度も弾いたことがある曲とは違い、1度も弾いた事がない曲だと初めてでミスなく弾き終えることは難しかった。集中していても何度も間違えているのが分かるし、つい音が前後してしまうこともある。

 そしてミスを犯してしまうと、その事実が頭に引っ掛かってしまい集中がどうしても乱れてしまう。それでまた別の所を間違えるという負の連鎖が始まってしまいかねない。

 とにかく、まずは最後まで弾き終えることを第一に考えて、弾いた後でどのあたりを間違えてしまうのかをピックアップしていこう。

 そんなことを絶えず指を動かし鍵盤をたたきながら考えて、改めて楽譜に意識を向けようとしたところで、俺は視界の端で“その人”を捉えた。

 

(また・・・・・・?)

 

 だが、“その人”に意識を取られてしまっては余計にミスが重なってしまう。今は“その人”のことについては置いておき、指を動かしてピアノを弾く事に集中する。

 後半辺りは1番とほぼ同じだったので、なんとなくではあるが感覚がつかめてきた。そして集中した甲斐あってか、その後はミスなく弾くことができ、最後まで間違えることはなく曲を弾き終えることができた。

 しかし改善点は多くあり、これでは今日中に完成することは不可能に近い。ちゃんと録音してクリスに渡すのはまだ先になってしまいそうだ。明日にでもクリスには謝っておくことにしよう。

 

(さて・・・・・・)

 

 俺は一度ピアノから意識を外し、音楽室のドアの方を見る。小窓から、“その人”のウェーブがかった金髪が見えている。どうやら、ドアに寄り掛かっているようだ。

 先ほどピアノを弾いていた時目が合ったあの人は、やはり昨日と同じケイさんだった。そして今ドアに寄り掛かっているのも同じだろう。

 昨日見かけた時も、今日の昼に『バルタザール』食堂でも思ったが、『アイアンブリッジ』棟にいるケイさんがここにいるのが不可解に思えてならない。

 この近くの教室、あるいはこの『ハイランダー』棟のどこかで戦車隊の会合でも行われていたのか、あるいはこの棟にあるどこかのクラスの誰かに用があるのか。

 だが、そのどちらも考えにくかった。戦車隊で会合をするのなら、専用の会議室やホールが設けてあるのだからそこを使えばいいし、『ハイランダー』棟の誰かに用があったとしてもこの階には普通の授業を行う教室はないからここに来る意味はない。他の棟に繋がる連絡橋もこの階にしかないと言うわけではないから、この階を通る理由にもならない。

 これが昨日だけのことなら、単なる偶然と思うことはできた。だが、2日続けてこの事態は起きているし、しかも今なおケイさんはドアの前に立っている。別に俺は自惚れているつもりも、自意識過剰なつもりもないが、相手が相手なだけに気になった。

 そこで、ドアの前で立っているのを見て、もしかしたら彼女も今日はここに何か用があるのではないか、という考えが頭に浮かぶ。

 もしそうだとすれば、長時間待たせるわけにもいかないので、早めに用事を済まさせてあげるべきだ。

 そう思い俺は椅子から立ち上がり、ケイさんが背中を預けているドアとは反対のドアを開き、廊下へと歩み出る。

 そのよりかかっていた人を見れば、やはりそこにいたのはケイさんだった。そして、どうやら俺が出てきたことが予想外だったらしく、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。

 

「えっ・・・!?」

 

 

 

 英とケイの視線が、ぶつかった。

その2人の表情は似て非なるものであり、英は怪訝な表情を、ケイは驚嘆の表情を浮かべている。

 しかし英は疑わしげな表情をしていながらも、今目の前にいる人物が間違いなく“あの”ケイであると確かめて、『まさかこんな機会があるなんて』と頭でチラッと考える。

 だが英はケイの表情を見て、驚かせてしまったということに気付いて謝ることにする。

 

「あ・・・・・・すみません、驚かせてしまいまして」

「あー、ううん、大丈夫。ノープロブレムよ」

 

 確かにケイは驚きはしたが、それで不快な気持ちを抱いてはいない。元々ケイが1人でしていたことなのだから誰も責めることはできない。

 そんなケイと話す英は、無意識に敬語を使っていた。今接しているケイは自分と同じ3年生であるということは知っていたが、相手は雲の上の手の届かないような存在の人だと思っていたせいで、気安い口調で話すのも失礼になるんじゃないかと思ったからだ。

 

「もしかして、この部屋使いますか?」

「え?」

 

 ケイがドアの前に立っていたので、この音楽室で何か約束事でもあるのではないかと思ってそう聞いたのだが、ケイは逆に首をかしげる。

 

「いえ、ドアの前に立っているのが見えたから、この部屋を使うのかなと思ったんです、けど・・・」

「あー、違うわ違う。特に約束とかはしてないわよ」

「はぁ・・・・・・」

 

 ますますもって、なぜケイがここにいるのか分からなくなる英。

 

「ただ、すっごくきれいなピアノの音が聞こえてね。それで誰が弾いてるんだろうって、気になってたの」

「・・・・・・そう言うことですか」

 

 口では何でもないような感じだが、英は内心ではちょっとばかり嬉しかった。

これまでも英のピアノを聴いて『いい曲だった』とか『上手かった』とか言ってくれる人は多くいた。

 だが、サンダースを代表するようなケイから褒められたことはこれまで無かった。だから、屈託のない笑みを浮かべるケイからそう言われたことで、恥ずかしくもあるが少し嬉しくなる。

 

「あ、自己紹介がまだでした。英影輔、3年生です」

「あら、3年生なの?じゃあ私も3年生だし、堅苦しい話し方はナシね」

 

 つまりはタメ口でいいということか。住む世界の違う、手の届かないような人だと思っていたが、フレンドリーな性格だということは聞いていた。気張っていた自分に対して今更笑いが込み上げてくる。

 

「・・・じゃあ、改めてよろしく。ケイ」

「OK!よろしくね、影輔」

 

 さらっと英のことを名前で呼ぶケイ。こうして異性から名前で呼ばれたことなどほとんどなかったから、免疫のない出来事に英も少しドキッとする。

 

「って、あれ?私の名前・・・・・・」

 

 そこでケイは、自分が名乗ってもいないのに、これまで話したことも無いはずの英がケイのことを知っていて名前で呼んだことに引っ掛かりを覚えた。

 だが英は、それはケイが自分がサンダースでどんな存在であるのかを理解していなさすぎじゃないかと逆に思う。

 

「ケイはサンダースじゃいい意味で結構有名だから」

「そうなの?そう言うのはあまり気にしないからねぇ」

 

 確かに、ケイは地位や名声を鼻にかけて偉そうにしている印象はない。食堂で歓声を受けてもアピールをしたりはしていなかったから、本当に彼女は名声や立場などを重要視していないのだろう。それもまた、彼女の魅力なのかもしれない。

 

「それにしても」

 

 ケイが身体を傾けて、音楽室の中の先ほどまで英の弾いていたグランドピアノを見る。

 

「本当に上手だったわよ、あなたのピアノ」

「ああ、ありがとう。趣味で弾いてるだけなんだけどな」

「え、趣味?」

 

 隠すことではないので英が素直に告げるが、それは逆にケイに驚愕と疑問を植え付けることになった。

 

「合唱部とか声楽部とか・・・そう言うのに入ってるんじゃないの?」

「いや?」

 

 サンダース大学付属高校は規模が大きい故、部活動の種類も他の学校と比べると全然違う。その中には楽器を扱う部活だってもちろん存在するが、そのどれにも英は所属してはいない。

 

「ここは・・・まあ先生の厚意で貸してもらってる感じ。それで俺が弾きたいように弾いてるだけ」

「そうなんだ・・・」

 

 あまり深入りはしてこないケイ。それは初対面だからだろうが、それはそれで英にとってもありがたいことだった。

 そしてケイは、少しの間、誰もいない音楽室の中を眺めて、ポツリと呟いた。

 

「・・・今日はもう終わりなの?」

「?いや、5時まで使っていい約束だし、まだ弾くつもりだ」

 

 今の時刻は4時前、まだ約束の時間まで1時間以上もある。時間一杯弾く予定なので、もう終えるつもりはさらさらない。

 その英の答えを聞くと、ケイは『ふーん・・・』と言いながら、また音楽室の中のピアノを見る。そのケイの態度で、英もケイがどうしたいのかがなんとなくだが分かった。

 

「あー・・・・・・あの、ケイ?」

「?」

「もしよかったら・・・中で聴いてく?」

 

 そう誘った英の真意は、ケイがピアノを興味ありげに見ていたので、もしかしたらピアノを弾いてみたいのか、それともピアノを聴きたいのかと思ってのことだった。

 少し図々しい申し出だったかなと英は思わなくも無かったが、それも無駄な心配で済んだ。

 

「いいの?」

「ああ、別に俺は構わないけど」

「じゃあ聴いてく!」

 

 嬉しそうに告げるケイ。それだけピアノに興味があったのかどうかは分からないが、あまり深読みはしないでおいた。

 英は音楽室に戻りケイを招き入れる。そして英はピアノ椅子に、ケイはピアノに一番近い、授業で使う最前列の席に座る。招き入れた身なのでとやかくは言えないが、最前列の一番近い席で聴かれるのは少し緊張する。

 

「ああ、そう言えば」

「ん?」

 

 席に着いたところでケイが訊ねてきた。

 

「さっき弾いてた曲、結構ミスしてなかった?」

「ああ、聞かれてたか・・・・・・」

 

 先ほどの個人的な評価では落第点の曲を聞かれたことを、英は恥ずかしく思う。だが、ミスをしたことは事実なので言い訳もできない。

 

「あれは今日初めて弾く曲だった。だから、流石にノーミスで弾くのは無理だったよ」

「初めて?」

「ああ、友達から弾いてほしいって今日渡された曲」

 

 スタンドに開いたままだった楽譜をケイに見せる。それは、今日の昼休みにクリスから渡された楽譜だ。この曲は英も聴いたことがない、本当に初めて触れる曲だったのでミスなく弾き終えるのは無理だった。

 

「頼まれることもあるんだ?」

「そう。それで完成したら、録音して渡す」

「へぇ~」

 

 サンダースはやはり資金が潤沢なだけあって、音楽の録音設備などは充実している。その録音設備は一般の生徒も使うことが可能だが、基本的には音楽系の部活動の使用が優先される。そして使用するには先生に申請を出す必要があるので、1人で勝手に使えると言うわけでもない。ただその申請も緩いのでとくに仔細ないため、英も何度も使わせてもらっていた。

 そしてピアノの演奏の依頼は、今日頼んできたクリスに限らず同じクラスや他のクラスの友人からも頼まれることがある。それで交友関係が築けたケースもあった。

 

「昨日は綺麗な感じでミスも無かったから、今日はどうしたのかなぁってちょっと不思議に思ってたの」

「昨日の曲は、お気に入りで何度も弾いた曲だったし」

「なるほどねぇ」

 

 ケイを招き入れた以上、ただ雑談で時間を過ごすわけにもいかないし、何か弾くべきだろう。それと、たださっきまで弾いていた曲の練習を聴かせるのも何だか申し訳ないので、別の曲を弾こうと思った。

 そのクリスから渡された楽譜を、持って来ていた楽譜が入っているトートバッグに入れて、別の曲を探す。幸いにも、昨日弾いていた曲が入っていた。その曲をケイが聴いたかどうかは分からないが、とりあえずこれを弾くことにする。

 

「おっ、始めるのかしら?」

「あまり身構えないで、弾きづらいから」

 

 身を乗り出し、ニコニコ笑って英とピアノを見るケイ。そうやって期待の眼差しを向けられると英としては調子が狂うし、緊張感が増す。ただここにケイを誘ったのは英である手前強くは言えない。苦笑しながら英は楽譜を開いてスタンドに置き、鍵盤に指を置く。

 そして一度小さく息を吐く。

 今回は、1人で弾く普段とは違い、ケイと言う、1人だけではあるが自分の演奏をその場で聴く人がいる。だからこそ、普段は抱かない緊張感が英の中に芽生えていた。

 そこで、ちらっとケイの様子を窺う。

 ケイは、これから始まる演奏に対する期待が高まっているようで、先ほどと変わらず笑っている。

 その顔を見ると、失敗することはできないなと英は静かに思う。

 そして同時に、その期待に応えられるように弾きたいとも思う。

 一度目を閉じて、もう一度息を吸って、吐いて、最初の音を鳴らす。

 序盤は低めの音が続き暗い感じがするが、曲が進むにつれて曲調はどんどん明るくなっていく。

 この曲は、海外の有名なジャズバンドの曲だ。調べたところによると、この曲は粛々とした作物の収穫と、その収穫の後に開かれる楽しい収穫祭をイメージして作曲されたものだという。実家は農家でもなく、農業科でもない英は収穫などとは無縁なのだが、それでもこの曲の明るいイメージは好きだった。だからこうして、ピアノの楽譜を取り寄せて弾いているのだ。

 そのピアノを弾いている途中で、暗譜でも弾けるところにやってきた。そこで、少しだけ視線を聴いているであろうケイの方に向ける。ケイは頬杖をついて目を閉じながらも、静かに笑ってリズムに乗って首を左右に小さく動かしている。退屈そうにしているのではなく、ケイもまたこの曲を楽しんでいるのがその動作だけで分かった。

 楽しんでいるのであればそれで十分だ、と英は考えながら再び楽譜に目を向ける。そして鍵盤を叩き音色を奏で続ける。

 やがてもうすぐ曲は終わりへと近づいてきて、最後に盛り上がりを見せる。楽譜に従ってピアノを弾いていて、英も自然と楽しくなってくる。

 そしてその盛り上がりを過ぎれば、クールダウンのように落ち着いた曲調になり、テンポもまたゆっくりになってくる。

 そして、音を外すことなく、曲は終わりを迎えた。

 曲を弾き終えてから少しの間、楽しい曲の余韻に浸るように鍵盤に手を置いたままにする英。

 そして、鍵盤から手を離したところで。

 

「エクセレント!!」

 

 スタンディングオベーションとばかりにケイが立ち上がり、拍手を英に送ってくれる。

 こうして誰かが自分のピアノの演奏を聴いて、どんな感想を抱いたのかを隠すことなく拍手を交えてまで表現してくれたのは初めてだった。そして初めてのことだから、英も少し恥ずかしくなって曖昧に笑う。

 

「最高にクールね!気に入ったわ!」

「・・・それは、どうも」

 

 ケイの褒め言葉を受けて、英も悪い気はしない。褒められるのは嬉しいことだし、容姿・人柄含めてケイの様な人物から褒められることも男としては嬉しかった。

 少しの間拍手を続けたケイは、拍手を終えるとうんうんと頷く。

 

「いいわねぇ、うん。ピアノってこんなに聴いてて楽しいものだったのね」

「あー・・・それは多分曲が明るい感じの曲だったからだな」

 

 当たり前だが、ピアノの曲は全てが先ほど弾いていたような楽しい曲だと言うわけではない。もの悲しげな曲や怒り狂うような荒々しい曲だってあるし、むしろ本来のピアノの曲はそんな感じの曲が多い。

 だから英はそう告げるのだが、ケイは首を横に振った。

 

「それはきっと、あなたが楽しそうに弾いていたからだと思う」

「え・・・・・・」

 

 予想だにしていないケイの言葉に、英も言葉を失う。

 

「だって、ただ傍で聴いていた私にも影輔が楽しそうに弾いてるのが分かったから。だから私も、そんなあなたを見て楽しい気持ちになれたんだと思う」

 

 真っ直ぐな瞳でそう告げられて、英も何も言えなくなるし、反論するという意志がなくなる。

 確かにピアノを弾いている間、英自身でも楽しい気持ちになれたという記憶はある。だが、それが今日初めて出会ったケイにも分かるぐらい表に出ているとは思わなかった。

 そして、決して責められているわけではなく、自分の曲を聴いて楽しかったと言われたこと自体は嬉しかったので正直照れくさい。

 

「・・・ありがとう」

 

 だから、そんな一言を告げるので精いっぱいだった。だが、それだけでもケイは十分だったようで、椅子に座りなおす。

 

「ね、他に何か曲あったりする?」

「え?あー・・・そうだな・・・」

 

 どうやら、先ほどの曲を聴いてよりピアノに興味を持ってくれたらしい。先ほどの『英が楽しそうだったから私も楽しかった』という言葉はともかくとして、ピアノに興味を持ってくれたことに関しては嬉しかったので、リクエストに応じることにした。

 スタンドに開いていた楽譜を閉じて別の楽譜をトートバッグから取り出そうとするが、せっかく『聴いていて楽しい』と言ってくれたので、今度は『楽しい』というよりも『面白い』と思うであろう曲を弾くことにした。

 

「じゃあ、ゲームのBGMを1曲。多分、ケイも知ってる曲だ」

「へぇ~・・・BGMも弾けるんだ。って、楽譜は?」

 

 英が楽譜を広げようともしないで鍵盤に指を置いたのを見て、ケイが問いかける。

 

「ああ、この曲は楽譜無しでも弾ける」

「本当にすごいわね・・・影輔って」

「いやいや、暗譜自体は別に特別なことじゃないし」

 

 謙遜しているわけではなく、本当に暗譜できる人は結構いるのだ。このサンダースでだって、英は暗譜ができる知り合いを何人も知っている。同じピアノを弾く人はその中でも少ないが。

 

「じゃ、始めるぞ」

「YEAH!」

 

 ケイが威勢のいい返事を返し、英も演奏を開始する。

 そのBGMの流れるゲームは何なのか、それは最初のワンフレーズでケイも気づいたらしい。ちらっと様子を窺うと『おおっ』という表情を浮かべている。目が輝いているようにも見えた。

 気付いたということは、このBGMを知っているということだろう。なので英も『知らなかったらどうしよう』という不安を抱くことなく曲に集中することができる。

 軽快なリズムを奏でている最中、視界の端でケイが笑いをこらえているのを捉える。そのケイの気持ちは分からなくもない。

 さて、このBGMには終わり方が2通り存在する。ステージを無事にクリアできたパターンか、途中でミスしてしまうパターンのどちらかだ。どちらの終わり方にしようかは弾く直前までは悩んでいたが、ケイの反応を見て一択に絞られた。

 実際のゲームではBGMは1~2巡程するので、英も同じように少しの間弾き続ける。その間、ケイは笑いを必死でこらえているようにプルプルと震えていた。

 だが、英が途中でそのBGMをぶった切るような低音の和音を鳴らし、そして実際のゲームでも流れるミスした時のBGMを滑らかに奏でたところで、ケイも我慢の限界が来たらしく。

 

「あっはははははははははっ!!」

 

 声を上げて笑い出した。そのケイの様子を見て、英も自然と笑ってしまう。

 だが、こうしたケイの反応は既視感を覚える。というのも、このピアノアレンジを英が初めて聞いた時、英を含めて聞いていた人のほとんどが笑っていたからだ。それこそ、今のケイのように腹がよじれるぐらいに笑ったものだ。

 

「あはははっ・・・そんな音まで、再現できるんだ・・・・・・はははっ」

 

 少し笑いが収まったところで、感心したようにケイがコメントする。ただ、そう言ったところでまた先ほどの音を思い出してしまったようで、再び笑いだすケイ。涙がにじむぐらい面白かったのか。

 とはいえ、これだけ笑って楽しんでくれたのなら弾いた価値は十二分にあったと言える。

 

「まあ、これは最初別の人が弾いてて、それを真似たんだけどな」

「そうだったんだ?」

「ああ。最初にこれ聞いたらすごい笑って、それから教えてもらって」

「すごいわねぇ・・・!」

 

 この曲のピアノアレンジを最初に聴いたのは中学生の時、音楽の授業で先生がデモンストレーションで弾いたものだ。その後英が頼み込んで教えてもらった。

 それから英は、他にもいくつかの曲を披露した。クラシカルな雰囲気の曲やジャズ、有名なアニソンなど手持ちの楽譜で弾ける限りの曲を弾いた。

 そしてケイは、その1曲1曲が終わるたびに、英に拍手を送ってくれた。一般的に見ればそれは普通の反応なのかもしれないが、なまじ相手がこれまで接することがなかった有名な人なだけあって、英は心が躍り出しそうになるぐらい嬉しかった。

 そして、何曲か引き終えたところで、音楽室のスピーカーからベルが鳴り響く。そこで英とケイが時計を見上げると、5時を指していた。

 

「ああ、もうこんな時間か」

「Oh・・・あんまりにも楽しくって、時間を忘れちゃってたわね」

 

 英はピアノの鍵盤にシートを被せて蓋を閉じ、最初の状態に戻し、諸々の後片付けをする。

 ケイは、自分の鞄を肩に提げながら、ピアノを少し寂しそうに見つめていた。どうやら今日のピアノを交えたひと時を楽しんでいたらしい。

 この後英のすることと言えば、音楽室の鍵を閉めて、『ハイランダー』棟の職員室に鍵を返せば帰路に就くだけである。

 だがケイは、英に『途中まで一緒に帰ろう』と提案してきた。てっきり、別々に帰るであろうと思っていた英は少し驚いたが、素直にそれには頷く。

 

「今日はありがとうね。色々楽しい曲を聞かせてくれて」

「いや、お礼を言われることなんて俺は・・・」

 

 まだ完全に日没には至っておらず、紺色と朱色の混じるような空の下で英とケイは並んで道路を歩く。その中でケイが先の言葉をお礼の言葉を告げたのだが、英としては本当にお礼を言われるようなことをしたつもりはなかった。ただ自分が弾きたかった曲を弾いて、そしてケイも楽しめそうだなと思った曲を弾いただけなのだから。

 

「だって、あんな楽しい曲聞いたことがなかったもの。それに、ピアノが楽しいって思えたし」

「あのBGMも?」

「あれは楽しいって言うか面白くって・・・あはははっ」

 

 英の何気ない一言で、ケイはどうやら抱腹絶倒したあの曲を思い出したらしく、また笑ってくれた。どうやら彼女は笑い上戸の気があるらしい。

 ここまで楽しそうに笑ってくれるのを見ると、あの曲を覚えていて本当によかったと思うし、弾いた甲斐もあったと思える。

 

「とにかく、今日あなたの曲が聴けたのはホントによかったと思うわ。ありがとうね」

「・・・どういたしまして」

 

 正面からお礼を告げられるとどうしてもこそばゆく感じる。相手がケイの様な人物で、太陽の様な笑みを浮かべているからなおさらだ。自分が変な顔をしていないかが少し気になる。

 

「ね、影輔」

「何?」

「明日もまた、弾く予定だったりする?」

 

 その問いかけに、英は『まさか』と心の中で推測を立てる。そしてその上で、嘘偽りなく明日の予定を英は明かす。

 

「・・・そうだな、あの音楽室が空いているなら、明日も弾く予定だ」

「じゃあさ、また明日も聴きに行っていい?」

 

 やはりそうか、と英は思う。このケイの『聴きに行く』というのは今日の最初のように教室の外で聴くのではなく、ピアノの傍で聴くという意味だろう。

 だが、英としては特に困るようなことも無いので断る理由がない。

 

「ああ、いいよ」

「やった!」

 

 英が承諾すると、ケイがガッツポーズを取り嬉しいという気持ちをアピールする。

 

「そんなに嬉しいのか?」

「もっちろん。だってあなたのピアノの曲、気に入っちゃったんだから」

 

 二ッと笑いながら嬉しいことを言ってくれる。そう言われると、英も明日またいい曲を弾いてケイを楽しませたいと思うようになれる。

 

「・・・じゃあ、俺も何かいい曲見繕っておくよ」

「OK!期待してるわ!」

 

 そう言って英の肩をポンポン叩くケイ。

 だが、そう言われたからといってハードルが上がったとかプレッシャーをかけられたとは思わない。むしろその期待に応えようという気持ちだけが強くなってくる。不思議とケイの言葉にはそう感じさせるような力があるという風に思うのは、英の気のせいだろうか。

 そんな英の疑問をよそに、ケイが『アドレス交換しましょ!』と言ってスマートフォンを差し出してきた。英も、抵抗せずにスマートフォンを取り出しアドレスを交換する。まさか、出会ったその日にここまで親しくなれるとは思ってもいなかった。いや、それ以前にこのサンダースと言うマンモス校でケイと親しくなれるということ自体が予想だにしていなかったから、現実味が無いように思えてしまう。

 こうして親しくなれたのも、ケイがフレンドリーな性格をしているからだと英自身は思っている。ケイは自分のピアノを気に入ったと言ったが、それも要因の一つなのでは、とはまだ思えなかった。

 

「じゃあまた明日ね。グッナイ!」

「ああ、またな」

 

 一つの十字路にやってきて、ここでお別れとなる。ケイは片手を挙げて英に別れを告げて、英もまた片手を挙げてそれに応える。

 英はケイと背中合わせになるように自分の寮へと向かいながら、明日のことを考える。

 明日もまたケイが聴きに来てくれるのであれば、それなりにいい曲を、そしてケイが楽しめそうな曲を探しておこう。部屋にはまだ楽譜が結構あるし、ネタ切れという事態にはならないはずだ。

 そんなことを考えつつ、英は寮へと戻っていった。




作中に出てきた『ゲームのBGM』は、
キノコで変身する赤と緑の配管工兄弟のゲームのBGMをイメージしていただければと思います。

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