大変申し訳ありません!
その日の夜、暖かい色合いの照明に照らされた寮の自室で、ケイはノートパソコンで調べ物をしていた。
普段ケイがこのパソコンで調べることと言ったら、まず第一に戦車道に関する情報で、友人知人に勧められた映画、その他もろもろ。
しかし最近になり、音楽に関することも調べる頻度が増えてきた。
その理由はもちろん、自分が好きになった異性である英の影響だ。英の弾くピアノは本当に聴いていて楽しくなるし、ケイ自身もまだ知らない音楽の世界へと導いてくれるような気がしてならなかった。英と出会って以来、ケイはピアノに限らず音楽の世界に引き込まれつつあるのだ。だからケイも自然と音楽について調べることが増えてきていてた。
そして今ケイが調べているのは、とあるアーティストの曲である。今日英が見せてくれた、難しいのが一目で分かる、英がお気に入りだと言っていた曲だ。
(・・・・・・いい曲ね)
ケイが今閲覧しているサイトには、その曲の歌詞に加えて曲自体のデータが添付されていた。その曲をイヤホンで聞きながら、そんな感想をケイは抱いていた。
歌詞自体にはそれほど激しさは感じられないが、この曲は比較的明るめな雰囲気がするので悲しさは感じられないし、退屈とも思わない。
どうしてこの曲を調べるに至ったのかというと、それはこの曲を英が『気に入っている』と言ったからだ。ケイ自身が音楽に興味を持ち始めたというのもあるが、それ以上の理由として、ケイが好きでいる英が気に入った曲だから気になってしまった。好きな人が気に入っている曲、というだけで理由は十分だった。
(・・・・・・・・・・・・・・・)
やがて曲は終わり、耳に入れたイヤホンからは何も聞こえなくなって、ケイは小さく静かに息を吐いた。
実に面白い曲だった。と言っても、腹を抱えて笑うほど可笑しいという意味ではない。この曲は、楽し気な雰囲気も、もの悲し気な雰囲気も、落ち着いた場面も、明るく盛り上がる場面も、全てを兼ね添えている曲だったのだ。英が気に入るのも分かる気がする。
英のことは抜きにしても、ケイはこの曲を1度聞いただけで好きになった。対極的な雰囲気と場面をそれぞれ兼ね揃えている構成が面白いし、歌詞も中々に味わいがあって好みだ。
そんな歌詞の中で、ケイが気になるフレーズがあった。
「『自分の気持ちは言葉にしなくちゃ、それを感じる意味はない』『自分の気持ちに背を向けるな。後悔したくないのなら』・・・・・・ね」
至極尤もなフレーズだとケイは思う。自分自身に何らかの気持ちが芽生えたのなら、それをきちんと言わないと気持ちは伝わるはずも無いし、その気持ちを抱いた意味も無くなる。そして、自分の気持ちを誤魔化して見えないフリをしても、待っているのは後悔だけだろう。
英に対する恋心に気付き、恋をしているタイミングでこの曲を聴いてしまうとは、何とも皮肉な感じがした。
ケイは、その気持ち―――恋心を知ってから、いつかこの想いを告げるということはとうに決めている。この気持ちを告げられないまま英と別れてしまうことなど考えたくもなかった。それに、嬉しかったり楽しかったりというプラスの感情は口にする自分らしくもないと思っていたからだ。
そんな折にこの曲のこのフレーズを聞いて、なぜか追い風が吹いたような、背中を押されたような感じがした。
けれど、すぐに告白するのも憚られる。それは、もしも自分がフラれてしまったらと考えるだけで怖気が走るし、それが原因で今の英との関係さえも無くなってしまうのを恐れているからだ。
ケイは既に、英のことが好きだった。英のピアノも好きだった。好きでいるからこそ、今の関係から前に進めなくて、それどころか無くなってしまうことさえも怖かった。
故にこの自分の中の想いを告げるのはもう少し待ってからにしようと思っていたのに、このタイミングでこの曲を聴いてしまった。それで『告白をもう少し待とう』と言う気持ちも揺らぎつつある。
(・・・・・・どうしたらいいんだろう、ホントに・・・)
こんな気持ちを抱くのは自分らしくも無いと思っているのだが、それでもそう思わざるを得ない。
パソコンの前で、自分の額を押さえるケイの心の中の問いに答えるものは、今この場には何もない。
翌日の朝、ルームメイトたちと校門をくぐったナオミは、昇降口で靴を履き替えるとケイと共に『アイアンブリッジ』棟へと向かう。後2人のルームメイトは別の棟に所属しているのでここでお別れだ。そしてナオミのクラスの前に来るとケイとも一度離れることになる。
「じゃあ、また戦車道の時間にね」
「ああ」
お互いに挨拶をして別れ、ナオミはクラスのドアを開く。既に登校していたクラスメイト達と軽く挨拶を交わしながら、窓際の自分の席に行くと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
隣の席の男子、アーサーが机に突っ伏して死んでいた。本当に死んでいるわけではなくて、死んでいるように動かないのだ。寝ているわけではないのは分かる。
このアーサーこと
そのアーサーがここまで凹んでいるのを、ナオミはまだ見たことがなかった。一体何があったのだろう、部活動で戦力外通知でも受けたのか。
何があったのかは分からないが、今のアーサーに話しかけても状況は好転すると思えなかったので、放置しておくことにする。鞄から筆記用具や教科書を取り出して、机の収納スペースにそれらを収めてから、ナオミは鞄からSF小説を取り出して目を通す。
その数分後に同じクラスの男子グループ数名がやってきて、クラスメイトと挨拶を交わし、机に伏せているアーサーを見て全てを察した空気になった。
「よっす、アーサー」
「その様子じゃ、玉砕だったっぽいね・・・」
それぞれ自分の机に荷物を置いた友人たちがアーサーの机を囲む。それでもアーサーは顔を上げようとはしないで『ああ・・・・・・』と呻くような返事をする。
ナオミは変わらず小説に目を通していたのだが、『玉砕』と言うワードとアーサーの態度で何が起きたのかはすぐに読めた。
「・・・・・・・・・・・・フラれた」
『ドンマイ』
悲しい現実をアーサーが告げて、取り囲んでいた友人たちは神妙な面持ちで両手を合わせて合掌のポーズをとる。中には優しく肩をポンポンと叩く奴もいた。
ナオミの予想通り、アーサーはどこかの誰かに告白して、ものの見事に散ってしまったようだ。しかしながら、割と眉目秀麗で性格も悪くない、成績と運動神経も割と良い方と言う優良物件の告白を蹴るのがどんな人か、ナオミも少しだけ気になった。
「ま、相手が相手だしね。しょーがない」
「その通りだ。告る前から分かってたんだろ?」
友人たちの言葉を聞いて、ナオミも視線だけを本から隣のアーサーたちに向ける。その仕草も他の人には気づかれないほどのもので、傍から見れば黙々と小説を読んでいるようにしか見えない。
ナオミが意識を向ける中で、アーサーの友人の1人が告げる。
「だって相手はあのケイさんだろ?そんな簡単に付き合えたら誰も損しないって」
その告白した相手の名前が告げられた。だがそれを聞いたところでナオミは狼狽えたりもせず、『やっぱりか』と思うだけだった。
ケイが告白されることは、それほど珍しいことでもない。サンダースの顔とも言える大規模な戦車隊を率いている隊長であり、全校に存在が知れているほどの有名人。おまけに容姿端麗で性格はフレンドリーで一張一弛。これで人気が出ないはずはない。
故に後輩、下級生、同級生から告白されることも多くあるが、ケイは一度もその告白に首を縦に振って答えたことはない。その告白の場面にナオミはいたことがないので、『今は誰とも付き合う気がない』と言う理由で断っていると噂でだけ聞いていた。
ナオミはその真意を未だケイの口から聞いたことはないが、誰と付き合うのかはケイの自由であって、例え親友であろうともそれについて口出しすることはできない。
それに、ケイが戦車隊の隊長として心にそれ程余裕がない身であるのは、戦車隊のナンバー2であるナオミが分かっている。それがあって、ケイもああいう断り方をしているのだろうと思っていた。
アーサーも恐らくは、同じ断り文句を告げられてフラれたのだろう。
「いやぁ、でもアーサー結構いい線行ってると思ってたんだけどなぁ」
「こんな優良物件を蹴るなんて、ケイさんもすごいね」
フラれたアーサーのことを慰める友人グループの言葉を、ナオミは右から左に受け流す。アーサーの告白を断ったのがケイと分かったことで、ナオミも興味は無くなり小説に意識を戻す。
「けどさぁ・・・・・・」
「何?」
まだ何かを言おうとするアーサーの言葉を聞き流して、ナオミは小説の次のページをめくろうとする。
「・・・・・・まさか、ケイさんにも好きな人がいるとは思わなかった」
ページをめくろうとしたナオミの手が止まる。その言葉は、流石にすんなり聞き流すことはできなかった。
「え、マジで?いるって言ってたの?」
「ああ・・・言ってた。だから付き合えないって・・・・・・」
「うっそだろ・・・もうそいつの一人勝ちじゃん・・・」
「そっかぁ・・・それじゃ勝ち目無いね・・・」
「ああ・・・・・・ああああ・・・・・・・・・・・・」
友人が明かした残酷な事実を耳にして、友人グループは全員が頭を抱える。アーサーに至ってはその時受けたショックを思い出したのか、またも机に突っ伏してうめき声をあげた。
一方でナオミは、開いていた小説を閉じ、窓の外を見る。晴れ渡る空の下でサンダースの生徒たちが次々に校門をくぐり校舎へと向かっているのが見えた。
アーサーの告げた、ケイの『好きな人がいる』という言葉は、少なからずナオミは衝撃を受けている。サンダースに入学して以来の親友で、寮生活も共にしてきたケイに好きな人ができているのが驚きだったのだ。自分のあずかり知らぬところでそんなことになっていたとは。
だが思い起こしてみれば、そのケイに好きな人がいるという片鱗はどこかしらにあったものだ。
そしてその相手が誰なのか、ナオミは自然と相手であろう1人の姿が目に浮かぶ。
その直後、クラスメイトの赤髪ポニーテールの女子がナオミに話しかけてきた。
「ハロー、ナオミ」
「Hi,エミー」
エミー(名前の
「これ、ナオミが探してたやつでしょ?昨日たまたま見かけたから、買っといたわ」
差し出された紙袋の中身を見て、ナオミは小さく笑う。確かにこの中身は、ナオミが探し求めていた『モノ』だった。
「ああ、ありがとう。今度必ず、埋め合わせをするよ」
「OK,分かったわ」
ナオミがその紙袋を椅子の脇に置いたのを見ると、エミーは自分の席へと戻って行った。そのエミーの後姿を見届けながら、ナオミは考え事をするかのようにあごに指をやる。
(・・・・・・少し、用事ができたな)
そう考えた直後、ナオミは懐からメモ帳を取り出し、ペンケースからボールペンを取り出して何かを書き込んでいく。
昼休みになり、英は山河と共に食堂へと向かった。昨日に引き続き、クイズ研究部は会合が無いようだ。なんでも、クイズ研の部長は山河をはじめ各部員に『リフレッシュしてアイデアを考えてきてほしい』と言ったらしい。故に、山河だけではなくクイズ研の部員全員が今日の昼休みは自由時間らしい。
「英~、山河~」
そんなわけで2人が『バルタザール』食堂へ向かっていると、その途中で背後から声をかけられた。
2人にとっても聞き覚えのあるその声に振り返ってみると、そこにいたのはクリスだった。
「なんだ、クリスか」
「やあ、クリス」
「何だとは随分なご挨拶だね、英」
軽い挨拶を交わして、クリスも『バルタザール』食堂で昼食の予定だと聞くと、3人で一緒に昼食ということになった。
食堂に着くと各々券売機で料理を注文し、それをカウンターで受け取ると入口よりも少し離れた場所にある4人掛けのテーブル席に着く。英はカレーライス、山河はラーメン、クリスは前と同じステーキ定食だった。こうも高い頻度でステーキ定食を食すクリスを見ていると、健康面の意味で将来が不安になってくる。
それはともかく、食事を始めてから雑談を交わし、話題は迫るサンダースフェスタのことになった。
「クリスたちのクラスは、何か出し物でもするの?」
「ウチのクラスはね、ゴーストハウスをやるよ」
「ゴーストハウスか・・・ベタだけど人気があるな」
「あっ、でも私はチアリーディング部の演目があるから参加はしないよ。ちなみにウチのクラスは西洋風ね」
ゴーストハウス、つまりお化け屋敷は一定数の人気があり、文化祭では定番とも言える出し物の一つだ。
そしてそう言った定番、鉄板の出し物は被ることが多い。それはサンダースも例外ではなく、サンダースの規模が大きい故に必ず演目が被ることがあるのだ。
そういう時は、枠組みが同じであってもその中身を変えるようにしている。お化け屋敷を例にするのなら、舞台や登場するお化けを西洋風にするか、和風にするか、あるいは両方を合わせるか。こうすれば、それぞれ違った面白みを出すことができる。
このように出し物の中身をそれぞれのクラスで変えるのは、サンダースフェスタの運営規則にも記されている。もし内容が被った際は、運営委員会が仲を取り持ちどうするのかを話し合いで決める。
「2人のクラスは何にするの?」
「俺たちは軽食喫茶。フレンチフライとか、ホットドッグとか」
「僕はクイズ研だから免除」
山河は自分で言ったように、クイズ研の出し物(クイズ大会)があるため、クラスの出し物には協力しなくて大丈夫ということになっていた。一方で特に部活動に所属せず、どこかの手伝いをする予定も無い英は、その軽食喫茶のホールスタッフとして参加することになっている。
「あっ、そう言えば」
そう言ってクリスは少しだけ向かい合って座る山河の方へと身を乗り出す。その動作だけで、山河も英も周りに聞かれてはマズいようなことを話すのだということが分かった。だから2人も同じように、身を乗り出す。
「今年のクイズ大会、特別な出し物とか考えてるの?」
何かと思えば、昨日も英と山河が話をした、クイズ大会の特別なコーナーの話だった。
だが、クリスの切り出した話題を聞いて山河は『よくぞ聞いてくれました』とばかりに笑い、英は『面倒なことになった』と言う気持ちが表情に出る。
「いやぁ、それがさぁ?まだ何も決まっていないんだよねぇ。場所はもう取ってあるんだけど」
「え、何それ?」
「だってさぁ、英がさぁ、ぜーんぜんやる気になってくれなくってねぇ?」
それ見たことか。いっそ忌々しさすら感じる笑みで山河が英の方を見てそんなことを言ってくる。
クリスとは1年生の間だけ同じクラスだったが、今でも仲は良い。だから山河がクイズ研究部に所属していることは知っていたし、毎年のサンダースフェスタでそれぞれ違った特別コーナーを設けているから、その存在も知っている。山河も、クリスが親しい人間だから吹聴することも無いだろうと思って、隠さずに話したのだ。
それよりも、山河の言葉を聞いて、英の横に座るクリスがジト目でこちらを見ているのが面倒なことの前兆にしか見えない。
さらにもう一押しと言わんばかりに、山河が自分の企画したクイズの内容をクリスに教えると、案の定クリスは『やれよ』とばかりに肘をグリグリと英の肩に押し付けてくる。
「いいじゃない、やりなさいよ英」
「悪いができないな」
「英のピアノの腕を皆に知らしめるいいチャンスよ?上手く行ったらあっという間にみんなの人気者よ?」
「別に知らしめたくはないし、目立ちたくも無い。おれはひっそりピアノを弾いていたいんだよ」
「でもこのままじゃ、クイズ大会で特別コーナーがおじゃんになるんでしょ?山河を助けると思って引き受けたら?」
「そうだよ英。僕を助けると思って頼むよ」
クリスの言葉を聞き、山河が上手い頼み方を教わったとばかりに畳みかけてくる。それに対して英の答えは。
「悪いが、見捨てさせてもらう」
「・・・オーマイガッ」
わざとらしく頭を抱える山河だが、そんな三文芝居に惑わされる英ではない。隣に座るクリスも『冷血漢』と言ってくるが、意にも介さず英はカレーライスを一口食べる。ピリッとした辛さがアクセントになっていて、実に美味だ。
「Hi!影輔、ヒロ!」
英がカレーの味を堪能し、山河が頭を抱えて悩んでいると、ケイが声をかけてきた。後ろにはいつものようにナオミとアリサも控えている。
昨日も思ったことだが、ケイのことを好きと意識してからというもの、姿を見ただけでも、何気ない挨拶でも英の心はドキッとしてしまう。それが嫌と言うわけではないので、嬉しい悩みとでもいうべきか。
「・・・おう」
「やあ、ケイ・・・皆も・・・・・・」
英は動揺を隠しながらも片手を挙げて挨拶をし、山河は覇気のない笑みをケイたちに向ける。
そして、英の隣に座っているクリスは、英と山河があのケイと面識があることが驚きだったようで、『え?え?』と明らかに困惑している。そのクリスに気付いて、ケイは問いかけた。
「影輔、彼女は?」
「え?ああ、友達のクリス。前に曲を頼んできた奴だよ」
「あら、あなたが?よろしくね、クリス!」
ケイが気さくに挨拶をして右手を差し出す。クリスはしどろもどろに『よろしく、お願いします』と返す。普段のクリスはもう少し明るいはずなのだが、さしものクリスもケイを前にするとたじたじのようだ。
「そんなに堅苦しくならないでいいのよ?」
「それは無理な話ですよ、ケイ隊長・・・・・・」
「なんでー?」
萎縮してしまっているクリスになお言葉をかけるが、アリサがその後ろからやんわりと呆れたような言い方で補足する。英と山河も、最初にケイと話をした時はクリスのように緊張しきっていたので、2人はクリスに同情した。
「ところで何の話してたの?サンダースフェスタの話?」
「ああ、まあな」
山河の覇気がないので、英が代わりに答える。ケイは昨日、山河からサンダースフェスタの出し物について英と相談していたことを聞いた。それがクイズ大会の特別コーナーの話なのは知らないが、その『出し物』で山河が英のピアノの腕を利用しようとしているのは知っている。
「まぁ、影輔は人前でピアノを弾くのとか緊張するって前に言ってたものね」
「ああ。だから俺としては、御免被りたい」
「・・・ねえ、ヒロ。私は、無理にやらせても成功するとはあまり考えられないし、確実性のある他のアイデアを練った方が良いかもしれないと思う」
「・・・・・・やっぱり?」
ケイの言葉を聞いて、山河も少し気持ちが上向きになってきたのか、顔を上げてケイの方を向く。
一方ナオミとアリサは、ケイに『先に行く』と小さく伝えて英たちの座るテーブルの横を通り過ぎて、自分たちのテーブルを探しに行こうとする。いくら3人がサンダースで有名だとしても、長い時間通路で立ち話をしていると通行の妨げにしかならないからだ。
だがその直後に、ナオミが英の方を見もせずに、英の手元に折りたたまれた小さな紙を置いて行った。その所作があまりにも速すぎたせいで、それに気づいたのは目の前にいた英だけ。ケイの方を向いている山河とクリスはもちろん気付いておらず、山河と話すケイも、ナオミの横を行くアリサも気付いていないようだった。
そのナオミの行動に驚く英には気づかずに、ケイは山河と話を続ける。ケイは、彼女の性格を象徴するとも言える、悩みを吹き飛ばすかのような溌剌とした笑顔を浮かべた。
「ヒロが本当に成功させたいのなら、そんな無理強いするんじゃなくて、もっと別の道を探った方が良いと思う」
「・・・・・・・・・・・・」
「それでももしアイデアが浮かばなかったら、私を頼って。力になってあげるわ!」
「・・・ありがとう、ケイ」
「OK!」
最後にケイは山河の肩をポンポン叩いて、手を振りながらナオミたちの後を追って行った。
「じゃあ、影輔。後でね」
去り際に、ケイがウィンクをしながら英にそう告げる。英はそれに少しだけ笑って頷き返すと、後すぐにクリスが『ヘイヘイヘイ』と英と山河に話しかける。
「あなた達って、あのケイさんと知り合いだったの!?」
「いや、僕は昨日知り合ったばかり。英はそれよりも前から知り合ってたみたいだけど」
「うっそ・・・・・・どうやって知り合ったのさ?」
クリスが英に問うが、その英はナオミが置いて行った小さな紙を開いてその中身を読み、反応がわずかに遅れてしまった。だがすぐに気付いた英はその紙をポケットにしまい、クリスの質問に答える。
「え?あ、ああ・・・・・・俺がピアノを弾いてて、それを偶然ケイが聴いて、それから成り行きでな」
「Jesus・・・何て偶然なの」
心底感心したようにクリスがそう言う。その一方で山河がラーメンを食べ終えて、レンゲでスープを掬って一杯飲む。そして先ほどのクリスのように身を乗り出して、英に話しかけてきた。
「・・・ねぇ、英」
「なんだよ。クイズ研の話はもういいだろ」
「いや、それじゃなくて。1つ気になったんだけどさ・・・・・・」
こうして話しかけてきたということは周りに聞かれたくはない類の話なのだろうが、今度は何だろうか。英はカレーを一口食べながら何を聞いてくるのかを考えていると、予想だにしない一言を山河はぶつけてきた。
「英ってさ・・・・・・ケイさんのこと好きなの?」
瞬間、カレーが気管に入って『ゲホッ、ゴホォ!?』と、周りに座る生徒たちもびっくりして視線を向けるほど盛大に咽る。自分のコップの水を飲み切り、さらにクリスからも水を貰って喉を冷やし、ようやく呼吸が落ち着いた。
「お前・・・なんつー冗談を・・・」
「いやいや、からかってはいないよ。真剣にそうなんじゃないかって聞いてる」
山河の目が本気になる。どんな嘘でも見逃すまいと鋭くなる。
だが英は、絶対にケイへの好意など知られたくはなかったので、白を切ることにした。
「いや、それはない」
「ふーん・・・・・・」
一層山河の目が細くなる。絶対に信じていない顔だ。
「あ、英。口もとにカレーついてる」
山河に突然指摘されて、英は嘆息する。昨日も同じようなことを言われて、もしかしたら自分の食事のマナーは意外と悪い方なのかと心配になってくる。自分では気をつけているつもりだったのだが。
いやだいやだと思いながらもその口元に付いているらしいカレーを指で拭おうとしたら。
「ていっ」
隣に座るクリスが先んじてその汚れを指で拭い、さらに昨日のケイと同じようにそれを舐め取った。
「ご馳走様♪」
「良い顔で笑うな、アホ」
ニマニマと笑うクリスの額を拳で小突く英。クリスは『痛いなぁ』と大して痛くもなさそうに額を押さえる。その様子を見ながら、山河が話しかけてきた。
「ほらな、それがいつもの英だ」
「え?」
「普段から英って、そういうことされるの嫌いだったでしょ?だから、クリスにやったようなリアクションをするのが、いつもの英だ。ちなみに、カレーなんてついてなかったよ」
最後に付け足した山河の言葉に、英も小さく舌打ちをする。どうやらクリスは山河のついた嘘に乗っかって英をからかおうとしたらしい。そしてクリスがそうするだろうと知っていて、英の反応を確かめるために、山河もそんな嘘をついたのだ。
だが、英は山河にそう指摘されて『そうかもしれないな』と思っていた。家族でも恋人でもないけれど親しい者―――クリスは英にとっての友達である―――に先ほどのようなことをされて、しかもそいつがしてやったりな笑みを浮かべていたらイラっとくる。
しかし、昨日ケイに同じことをされた時、英はただケイに軽めのチョップをして、『なんとなく』としか言っていない。それが普通とは違う気がしたのは英自身も思っていたが、このわずかな反応の差で、山河は気付いたということか。
「後はそうだなぁ・・・。ケイさんの話題を出したり、ケイさんがここに来ると英ってなんかソワソワしていたような感じがするし、ナオミやアリサとか他の子と接する時よりもなんか丸い気がするし・・・。これはひょっとすると、って思ってね」
「・・・・・・そんなに違うか?」
「気のせいかもしれないけどね」
おどけて見せる山河だが、その顔は『そうでしょ?』と確認しようとしているのが分かる。
ここまで来ると、英がこれ以上誤魔化したりお茶を濁しても疑念は晴れはしないだろう。むしろ否定することで余計に怪しまれるかもしれなかった。
「・・・・・・まあ、好き、なんだろうな」
ただ素直に好意を認めるのも恥ずかしいので、まだ自分の感情が『恋』だと気付いていないフリをした。本当はもちろん、恋心だと気付いているのだが。
それを聞いて山河は『やっぱりねぇ』と吐き出すように告げながら椅子に深く座り直して頷き、クリスは『わ~』と口元を手で押さえてにやにやと笑う。知られたくはない人物に知られてしまい、ものすごく恥ずかしい。
「・・・・・・堅実なタイプだと思っていた英の恋のお相手が、まさかねぇ」
再び身を乗り出して内緒話モードに入った山河が感慨深そうに呟く。クリスも腕を組んで実にその通りだと頷く。
英の過去を話だけではあるが聞いて、今を友達として接してきたから、英の人となりを山河とクリスは知っている。だから、その英が好きになった相手が、自分たちには手の届かないような遥か高みにいる星のような存在のケイだというのが、驚きで仕方がないのだろう。
英はもう、本気で穴があったら入りたい気分だった。英だってサンダースにいる最中にケイと親しくなって、おまけに恋心まで抱くようになるとは思ってもいなかったのだから。あまつさえその気持ちは誰にも知られたくはなかったというのに、この2人に聞かれたことも失策に他ならない。
「ま、頑張れ。当たって砕けろだよ」
「骨は拾っとくよ~」
「お前ら応援する気ねぇだろ」
誠意が微塵も感じられない山河とクリスの応援の言葉を聞いて、英は目元をひくつかせる。だが、こうした無遠慮な物言いができるのも2人が英と親しいからできることである。それに、下手に応援してもらっても恥ずかしさが割り増しとなるだけなので、むしろこれで良かったとも言える。
先にラーメンを食べ終えた山河は、食器を返却口へと返しに行く。2番目に食べ終えたクリスも同様に、食器を返しに行った。
後に残った英はカレーを黙々と食べる。そして、2人が戻ってくるまでの内に、先ほどポケットにしまった小さな紙をもう一度開いて中を見る。そのサイズと、罫線が引かれているので元はメモ帳だったのだろう。
(・・・・・・どういうつもりだ?)
紙に書かれていた文字を読み、英はそう思うしかない。
『今日3時45分
アイアンブリッジ棟3階3‐D』
それは、呼び出しの合図だった。
ホームルームが終わると、まず最初に英は『ハイランダー』棟の職員室へと向かい音楽室の鍵を借りる。もちろん、ナオミとの約束を忘れたわけではないが、まだどんなものなのかが分からないそのナオミの『用事』がどれぐらいの時間がかかるのか分からないので、先に鍵を借りておくことにしたのだ。そしてケイにも、『用事』があるのですぐにピアノが弾けないことを伝えるつもりだ。
鍵を借り、音楽室の前で英とケイは落ちあう。そして『用事』ができてしまったことをケイに伝えると、若干しょんぼりとした表情を浮かべるが、すぐにケイは笑みを浮かべた。
「そういうことなら仕方ないわね。それじゃ、第4図書室で待ってるわ」
第4図書室は、この『ハイランダー』棟にある図書室である。ケイは例え英のピアノが聴けなくとも、一緒に帰るつもりでいるようだった。
ちなみに、その『用事』がナオミに呼び出されたこと、とは言っていない。なぜか、言うと嫌な方向に事態が転がりかねないと英の勘が叫んでいたからだ。なので英はケイに嘘を吐いたことになるのだが、致し方なかった。
英はその嘘をついてしまったことも含めてケイに謝り、『アイアンブリッジ』棟へと向かう。
英は普段授業を受ける『デストロイヤー』棟、ピアノを弾く『ハイランダー』棟、録音室のある『コマンドス』棟にしか行かず、他の棟は移動教室で行くぐらいだった。
だから、『アイアンブリッジ』棟に足を踏み入れるのも初めてだったのだが、『デストロイヤー』棟と特に変わったところは見受けられない。教室のドアの色もカラフルではないし、床が普通の弾性ウレタンではなく大理石などという違いもない。せいぜいロッカーの型式が違う程度で、一目見てすぐにわかるような違いはなさそうだった。
英は初めて足を踏み入れた場所に対する好奇心は一先ず置いておいて、ナオミの指定した3階の3‐Dへと向かう。階段を上がり、廊下を歩いていてもすれ違う生徒は数える程度しかいない。いくらマンモス校と言えども、終業のベルが鳴ってからから少し時間が経っているので当然かもしれなかったが。
やがて約束の5分前に、『アイアンブリッジ』棟の3階、3‐Dの前に到着した。時間まではまだ少し時間があるし、今ここで入ってもナオミがいなかったらどうしようと思っていたら、ドアが内側から開かれた。そのドアを開けたのは、英を呼び出した張本人であるナオミで、突然ドアが開いた英はびっくりした。
「ああ、早かったな」
「・・・・・・マズかったか」
「いや、大丈夫だ。問題ない」
ナオミに招き入れられて、英は教室の中に入る。やはり教室も、『デストロイヤー』棟とは何も変わったところはない。強いて言うなら、窓の外の景色が少し違うことぐらいだ。
教室の中には誰もおらず、ナオミは英の先を歩いて窓際の自分の席に座り、その前の席に座るよう英に促す。言われた通り英は、ナオミの前の席の椅子の向きを変えて、ナオミと向かい合う形になるように座った。
傾き始めた太陽の光が、2人の他に誰もいない教室の中を照らし、そんな教室で向かい合って座る2人の男女。いい雰囲気と言えるかもしれないが、英はそんなことなど全く考えていない。ナオミがどういうつもりで呼び出したのかは知らないが、今2人の間には緊迫した空気が流れているし、表情はいつものように斜に構えたもので全く考えが読み取れない。
このまま黙ったまま向かい合って座っていても状況は変わらないので、とりあえず英は話しかけてみることにした。
「・・・まさか、ナオミが呼び出すとは思わなかった。それもあんなやり方で」
「急な話ですまなかったな。少し、お前と話がしたかった」
「話?」
「ああ。だが、淡々と向かい合って話をするのも少し退屈だろうし、これでもやりながら話そうか」
そう言いながら、ナオミは脇に置いてあった紙袋から、カサカサと音を立てながら長方形の箱を取り出す。その箱の蓋には、サンダースの所有する最大の航空輸送機・C5M‐スーパーギャラクシーが青空を飛ぶ写真がプリントされている。だがこの箱は、その写真が詰まった箱と言うわけではない。
「・・・パズルか」
「ああ」
そしてナオミは、同じ袋に入っていたプラスチック製のパズルフレームまで取り出してきて、この場で完成させる気満々だった。ピースの総数は300とそこまで時間はかからないような大きさだ。しかし、いくら退屈させないためとはいえ、なぜこの場でパズルなど持ち出してきたのかが英には分からなかった。
ちなみに、英は知らなかったがナオミの日課はジグソーパズルである。寮の自室にはポストカードサイズのパズルがいくつも保存されていて、どれだけ早い時間でパズルを完成させられるかに挑戦している身でもあった。
ナオミは、パズルのピースが詰まった袋を破って、裏返した箱の蓋に広げる。そして、下地となるボードにピースを置き始めた。それだけでもう、パズルを組み始めたのだと分かる。英も今の状況に少し困惑するが、ただ座っているだけなのも本当に退屈なので、ナオミと共にとりあえずパズルを完成させることにした。
パズルの基本中の基本は、ピースの1辺以上が水平で分かりやすい外枠から完成させることだった。ナオミと英はその基本に則り、ピースの山から外枠のピースを探してそれを嵌めていく。ナオミが日課としているだけあってか、外枠は10分と経たずに完成した。
「・・・・・・そろそろ、話してくれないか?俺を呼んだわけを」
その時を見計らって、英がナオミに話しかける。だが、それでも英とナオミの手は止まらない。ナオミはともかく英までそうなっているのは、ジグソーパズルを組むなど中学生以来のことで、久々に楽しくなってきてしまっていたのだ。
しかし、本来の目的である『話をする』ということは見失っていなかったので、それについてはっきりさせておきたかった。
「・・・そうだな。なら、そろそろ話すか」
「パズルも悪くないけど、そうもいかないからな」
「・・・・・・さて。どこから話したものか・・・」
そう言葉をかけあう2人の手は止まってはいないが、ナオミがわずかにペースを落とす。何かを話すサインだと気付いた英も、一度手を止めてナオミの方を見る。
「・・・・・・少し、本題からはズレた話だけど」
「?」
ナオミも手を止めて、英と目を合わせる。
「昨日、ケイは告白されたらしい」
それを聞いて、英は一瞬だけ目を見開く。だが、すぐにゆっくりと目を閉じて小さく息を吐く。
「・・・そうか」
「・・・・・・意外と驚かないんだな」
「まあ・・・ケイがどんな人で、どんな立場なのかを考えれば、そこまで驚かない」
「・・・・・・確かにそうだな」
英のその言葉は本心から来るものだ。英はケイと知り合う前、サンダースの中で流れる情報だけでケイの人となりを知ったし、だから彼女が全校に名が知れている有名人だということも知っている。好意を抱かれてもおかしくない人だということも分かっていた。
そして英もまたケイに恋をしたのだから、自分以外の誰かが告白しても不思議な話ではない。英のクラスにだって、ケイに告白して潔く散った者もいたぐらいだ。
それでも、先ほどナオミからケイが告白されたことを聞いた時には、動揺し、内心では焦っていた。それは、やはり英がケイを好きでいるからこそ、そのケイが誰かほかの人のものとなってしまうのを恐れて、そうなってしまうのではないかと不安を抱いたからである。
「ま、ケイは断ったらしいがね」
「そうか」
ナオミが肩をすくめてふっと笑い、その事実を告げると英は内心では安心した。フラれた者には申し訳ないが、本当によかったと英は思っている。
「断った理由は、別に好きな人がいるから、だそうだ」
だが、続けてナオミから齎されたその情報は、またも英の心を揺さぶるほどの威力を持っていた。
自分が好きでいるケイに他に好きな人がいるという話など、不安を煽るものでしかない。そのケイの好きな人物が自分と言うのは自惚れにもほどがあるし、そこまで楽観的に物事を考えられはしない。故に英は不安になったのだ。
「・・・いるんだな。ケイにも、そんな人が」
「ああ、そのようだ」
「あのケイのお眼鏡に適うなんて、どんな奴なんだろうな」
「・・・それは、私にも分からないさ」
平然としている風を装って英がそう言うが、心はぐらぐら揺れていた。気を紛らわせようと思ってパズルピースの山に伸ばした手も、注意深く見なければわからないほどではあるが震えているし、英の視界はゆらゆらと揺れている。目の前のナオミの姿が陽炎のようにぼんやりとしてきた。
そんな英の様子に気付いているのかいないのか、普通に話を続けてきた。
「で、そろそろ本題に移ろうと思うんだが」
「・・・ああ」
ようやく本題か、と思って英は嘆息する。前置きでまさかここまで動揺するとは思っていなかったし、なぜ本題の前でケイが告白されたなどと言う話を持ち出してきたのかが分からない。
「影輔は、ケイと知り合ってからどれぐらい経った?」
「え?そうだな・・・大体3週間ってところか」
「そこまで日にちは経ってなかったか。随分と仲が良さそうだから、旧知の仲かと思ったよ」
「まあ、そう思うのも無理はないか。ケイはフレンドリーなのもあるし、俺だってそう勘違いすることもある」
パズルの外側は既に完成し、後は中心に向けてパズルを広げていけばいい。まだ青空の部分しか完成していないが、内側に進んでいけばスーパーギャラクシーのピースも嵌めていけるだろう。英とナオミは、互いにまたピースの山からピースを摘まんでいき、嵌める。
「もしかして影輔は、ケイと会う前から、噂だけでもケイのことを知っていたのか?」
「ああ。ケイは人気者だし、普通にしていても情報は自然と流れてる」
スーパーギャラクシーは未だ見えてこないが、その周りの青空は完成へと近づいていた。
「実際にケイと会って、どうだった?」
「そうだな・・・噂通りの人だと思ったよ。フレンドリーで、明朗快活で。笑顔も明るいし、人気なのも頷ける」
「・・・・・・そうか」
また、ナオミのペースが落ちたように感じた。それを不審に思いながらも、英はピースを嵌めていく。
ナオミの言う『本題』とは、ケイとの近況報告を聞くことなのだろうか?
「・・・影輔、一つだけ聞かせてほしい」
「何?」
改まってナオミが問いかける。英は、ピースの積まれた山から1つを摘まんだところで手を止めてナオミを見る。ナオミもまた同じように、手を止めて英のことを見ていた。
「影輔は今、ケイのことをどう思っているんだ?」
英の全身が一気にスッと冷える。そしてすぐ、背中を中心に全身が熱くなっていくのを感じる。
「・・・どう、とは?」
「そのままの意味だ」
一応聞き返してみたが、予想通りの回答しか得られない。
そして英は、ようやくナオミの真意に気付いた。先ほど、ケイが告白されたという話をして、さらに他に好きな人がいるということも打ち明け、英とケイのことについて訊いたのも、ナオミが恐らく英のケイに対する気持ちに『気付いているから』この質問を投げかけてきた。
気づいていても敢えて問うのは、英の口から直接聞いて、ナオミ自身の中ではまだ推測と言う段階でしかない、英のケイに対する気持ちを確信に変えるためだろう。
英は、昼休みに山河から自分がケイに対して恋をしていることに気付かれたのを思い出し、自分の態度はそこまで露骨だったのかと不安になり、かつての自分を疑問視する。それと、山河のような穏やかな者が気付いたのだから、観察眼と洞察力が優れているナオミが気付かないはずもない。
とすれば、ここで英が気持ちを隠しても無駄かもしれなかった。しかしながら、昼休みと同じで、自分はケイのことを好きだとここでストレートに言うつもりも無かった。
「・・・そう、だな。嫌い、ではないか。仲のいい友達だと、思ってる」
「・・・・・・そうか」
好きとは言わず、婉曲的に表現した。これが最善だと、英が思ってのことだった。
スッと、ナオミの目が鋭く細くなる。英の言葉如きでナオミが納得しないことは想定の範囲内だし、そんな反応をするのも分かっていたが、背筋が凍るような思いだ。端的に言って、ものすごく怖い。
ナオミは、ピースの積まれた山から適当に2つのピースを摘まみ取る。
「・・・・・・人と人との付き合いは、パズルに似ていると私は思う」
突然ナオミが、哲学的というか、ロマンチックなことを言ってきた。この状況で何を言い出すのかと、英はついていけなくなりそうになる。
そんな英に気付いているのだろうが、ナオミはその手に取った2つのピースを英に見せる。どちらも、青空がプリントされていた。
「このピースにプリントされているものを人の性格や内面。このピースそのものを人としようか」
「・・・・・・・・・・・・」
「この2つのピースは、同じ青空の写真がプリントされてはいるが、穴の大きさと出っ張りの大きさが違うから、ぴったりとは嵌らない」
2つのピースをナオミが合わせようとする。だがナオミの言う通り、片方のピースのでっぱりはもう片方のピースの穴よりも大きいせいで、嵌ることはなかった。
「同じ空の背景なのに合わない。つまり、性格が似ていても、合わない人は合わないんだ」
持っていたピースの内の片方を山に戻し、もう片方は既に出来上がっている空の背景と合うように嵌める。今度はぴったりと嵌った。
「こっちのピースは、同じ空の背景のピースと合った。こちらは同じ背景、つまり同じ性格同士で合ったわけだ」
ナオミはまた、ピースの山から2つのピースを摘まむ。片方にはスーパーギャラクシーの機体らしき白い金属的な何かが一部分だけプリントされていて、もう片方にはまた青空のピースがプリントされている。
「さて、この空が背景のピースだが、これはスーパーギャラクシーが写ったピースには合わない」
またナオミが、手に取った2つのピースを合わせようとするが、今度は片方のでっぱりが小さく、穴が大きいせいでこれもぴったりとは合わない。
「しかし、このスーパーギャラクシーの機体が写されたピースは、この青空のピースに合う」
ナオミの言う通り、既に出来上がっている青空しかプリントされていないピースに嵌ったのは、青い空とスーパーギャラクシーの一部がプリントされたピースだった。
「この通り背景が違う・・・性格が違うピース同士でも合うものはあるし、性格が違う上に合わないピースだって存在する」
「・・・・・・何が言いたい?」
英はそう言うが、パズルを人と人との付き合い、ピースそのものを人間、ピースにプリントされた背景を性格・内面と例えている時点で、何を言いたいのかはなんとなくだが掴めた。
ナオミは無駄なことはしない主義だと聞いていたので、この一連の会話も何かしらの意味があるものだというのは既に気付いている。だが、それでも英は、ナオミの口から直接聞きたかった。
「『性格が同じだから合う』『性格が同じでも合わない』『性格が違うけれど合う』『性格が違うからこそ合わない』・・・・・・人と人との付き合い方は、大きく分けてこの4つがある」
「・・・・・・」
「その中でも影輔とケイの付き合いは、『性格が違うけれど合う』に近いと思うのは、私だけか?」
「・・・いや、その通りだ」
確かにナオミの言う通り、英とケイの性格はお世辞にも同じとは言えない。英は悪く言ってしまうとサンダースの中でも暗いイメージがあり、その自覚もある。周りからも良く『もっと愛想よくしろよ』と言われたものだ。一方でケイは英と対極の位置にあり、明朗快活でフレンドリー、笑顔もばっちりと2人の性格はまるきり違う。それでも英とケイの仲は良好であった。
ナオミは再び、パズルのピースを嵌め始める。英も同じようにしようとするが、先ほどよりもペースが格段に落ちている。
「さっきの話で、私はピースに写った背景は『性格・内面』を表していると例えたが、それを『立場』に置き換えても意味は通じる」
「・・・・・・・・・・・・」
パズルを嵌めてから少ししてナオミがそう話す。パズルはもう、8割方完成に近づいていた。
英は、ナオミの言葉を噛みしめてその通りだと頷く。『立場が同じだから合う』『立場が同じでも合わない』『立場が違うのに合う』『立場が違うからこそ合わない』と、確かに違和感はなく通じる。
「だが『性格・内面』と違って、『立場』と言うものは当人たちが気にしなくても、周りは大いに気にする。それで不満や疑念、あるいは嫉妬心を抱くこともあるだろう」
「・・・・・・・・・・・・」
極端な話、一国の王と貧民が恋に落ちて『付き合う』と宣言したところで、周りは果たしてそれに諸手を挙げて賛成するだろうか、と言うわけだ。
例え2人が自分たちの立場など顧みずお互いの気持ちを尊重していたとしても、周りはそれを良しとしないだろう。ナオミの言う通り、不満や疑念、嫉妬心を生みかねない。
「そんな時はどうすればいいか」
「・・・・・・・・・・・・」
「それは、どちらか一方が相手の立場に歩み寄ることだ」
「・・・・・・それも、立場が下の者が上の者に近づく形の方がいいと」
「そうだな。その通りだ」
ナオミと英は、それぞれピースを嵌めていく。ナオミは不敵に笑いながらピースを嵌めていて、一方で英は顔を上げずナオミと顔を合わせようとはしない。今自分の顔を見せると、色々と自分の気持ちを見透かされてしまいかねないからだ。
それはともかくとして、立場が違う者同士が親しくなり恋に落ちてしまったとすれば、周りを納得させるために最も有効な手段の1つとして、まずは双方の立場を同等のものとするべきだろう。それも英が言うように、上の者が下の者に歩み寄るのではなく、下の者が上の者へと近づくべきだ。
上の者が下の者へと近づけば、それは近寄る者の価値そのものを貶めることになってしまい、その人自身の周りからの評価も余計に下がってしまう。それを避けるために、下の者が上の者へと歩み寄るべきなのだ。
「まあ、何が言いたいのかと言うとだな」
「?」
パズルはもう9割近く出来上がっており、完成も目前に迫ってきている。
そこでナオミが一区切りつけるような言葉を告げて、英もそちらに意識を向ける。顔を上げて、ナオミの顔を真っ直ぐに見て次の言葉を待つ。
「もし、仮にもし、だ。性格も立場も正反対な影輔とケイが付き合うことになったとしたら、それを周りはどう思うだろうな、って話だ」
英の摘まんでいたピースが机の上に落ちる。
ナオミの言葉を受けて、英は改めて自分とケイの立ち位置を見直す。ケイはサンダースの星たる人気者で、フレンドリーで快活なマドンナのような存在。片や自分はちょっとピアノができる程度で他には別に何の取り柄も無いサンダースの一生徒。月とすっぽんもいいところだ。
確かに英はケイのことを好いていて、万が一、億が一、自分の告白にケイがOKしたとしたら、英はそれはもう喜ぶだろう。だがしかし、周りはそれを決して良しとはしないだろう。ケイのことを好いている人物は他に大勢いるだろうし、その中には英よりもヒエラルキーがずっと上の人だっているに決まっている。そんな人物からすれば英は妬まれて当然だろうし、下手すると背中を刺されるかもしれない。
そして、英を選んだケイだって非難される可能性もある。そうなれば、例え自分の恋が実ったとしても英は喜ばしくは思えないし、むしろケイに対して申し訳ないという気持ちが積もっていって、付き合うどころではなくなるだろう。
そうなる可能性だって存在するということに、ナオミの話を聞いて英は気付かされた。
恋心を抱いた時から、自分の中にある想いはいずれは全て告げるべきだと思っていた。しかし、今のままでは告白をして仮にケイが応えてくれたとしても、行き着く先は針の筵で心が折れるだけだ。
「よし、完成だ」
気づけばナオミが、英の手元に落ちていたピースも回収して、ジグソーパズルを完成させていた。完成図の写真通り、青空を飛ぶスーパーギャラクシーが写っている。パズルが完成する最後の瞬間ぐらいは見届けたかったのだが、最後の方はナオミの言葉を頭の中で反芻していて、パズルのことなど頭からすっぽ抜けていた。
時計を見ると、下校時刻まで15分も無いような時間だった。これでは今からケイの下へ向かっても、音楽室でピアノを弾く時間は残されてはいない。
「・・・・・・随分、回りくどいやり方をするんだな、ナオミも」
「・・・・・・さて、何のことだろうな」
英のケイに対する好意に気付いたうえで話をしたナオミにそう告げると、ナオミはニヤリと笑う。しらばっくれているのは目に見えているが、これ以上言ってもナオミは態度を変えないだろうし、多くを言うのは諦めた。
「ナオミも結構、深い考えを持ってるんだな」
「半分は小説の受け売りだけどね」
「何だそれ」
パズルフレームに完成したパズルを嵌めて、満足げな表情をナオミはする。それを英は腕を組みながら眺めていた。
先ほどのナオミの哲学じみた言葉は、小説の受け売りだったとは。しかし、残りの半分は持論ということだろうし、その思考は果たして同じ高校生なのかと問いたくなる。
そんなナオミは、今付き合っている男子がいないと言う。それは恐らく、先ほどナオミ自身が言っていたように、周りからの評価と言う人気者故の要因があるせいで、自分の思うように付き合うこともできないせいだ。時として人気があるというのは、足枷でしかないのだと思わされる。
「さて、これで話は終わりだ。急に呼び出したりして悪かったな」
「いや、おかげで大事なことに気付けた」
「そうか」
事実、ナオミの話を聞いて英の中にはある決断が生まれていた。幼いころに、プロのピアニストからピアノを教わることを辞める時に値する、英の人生の道を分けるほどの大きな決断だ。
だからこの時間も全くの無駄ではなかったし、何よりためになる話も聞けたのだから、これを無駄な時間ということなどできはしなかった。
「もう時間だし、何なら途中まで一緒に帰るか?」
ナオミが提案してきたが、英はそれを申し訳なさそうに断る。
「・・・・・・悪い。ケイと約束してるんだ」
「・・・そうか。なら、仕方ないな」
ケイと同じ寮で暮らすナオミなのだから、ここで一緒に帰ろうと言うこともできたはずだった。それでも言わなかったのは、ナオミが英の気持ちに気付いているから、英とケイを2人だけにするように計らってのことである。
「・・・影輔」
「?」
席を立ちあがり、教室から出ようとする英の背中にナオミは声をかける。英が立ち止まってナオミの方を振り向くと。
「Good Luck」
「・・・・・・サンキュ」
ナオミがサムズアップをしていた。英は同じようにサムズアップを返し、教室から出て行った。
ナオミはそれを見送ると、完成したパズルを紙袋に丁寧に仕舞って、帰り支度を始める。
結局、ケイの待っている第4図書室に着いたのは、下校時刻の5分前になってしまった。これでは流石に曲を弾くのも不可能だったので、今日は大人しく帰ることにした。結果的にケイは待ちぼうけを喰らうことになってしまったのだが、それでも気にはしていないようだ。
「悪かったな・・・待たせた上にピアノもできなくて」
「それはもういいわ。影輔に悪気が無いのは分かってるんだし」
「・・・・・・すまない」
鍵を職員室に返し、昇降口で靴を履き替えて、今は家路を歩いている。
昨日までは、ケイとは仲良くなれたのだしこうして一緒に帰ることも不思議ではないと思っていた。だが、ナオミの話を聞いた今では、英と違う立場にいるケイが自分の傍にいることが変に思えてきてしまっている。
「・・・・・・影輔、大丈夫?」
「え?」
「何か顔色悪そうだけど・・・?」
歩きながらケイが英の顔を覗き込み、問いかけてくる。英は『何でもない』と首を横に振るが、ケイはそれでも納得していないようだ。
何か別の話でもして気を紛らわせようと思い、英は肩に提げている楽譜の入ったトートバッグを見る。その中の、ケイのお気に入りだというあのラブソングが目に入り、さらに先ほどナオミの言っていた言葉を思い出す。
「・・・・・・なあ、ケイ」
「何?」
「1つ、変なこと聞いてもいいか?」
「えっ、何なに?」
『変なことを聞く』と前置きしたはずなのに、なぜかケイが目を輝かせている。普通はそんなことを言われたら身構えたり多少なりとも狼狽えるだろうに、どうしてこうも反対の反応をするのだろうか。いや、それはケイの性格だろうな、と英は自問自答する。
とりあえずは本題に移るために、そのトートバッグの中のラブソングの楽譜を取り出してケイに見せる。
「この曲をケイが気に入ってるって聞いた時から、気になってたんだけどさ・・・・・・」
「?」
少しだけ言い淀んでから、英は訊いた。
「ケイには・・・好きな人がいるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
英は今初めて、全ての表情が抜け落ちたようなケイの顔を見た。
昨日ケイは、告白を受けた際に『他に好きな人がいる』と言う理由でそれを断ったと聞いた。ナオミが嘘をついているとは信じたくはないが、それが本当なのかどうかを確かめたくて、その質問をしたのだ。この反応を見るに、どうやらそれは図星、ナオミの話は本当だったらしい。
だが、間違ってもそのことは言ってはならないと分かっていたので、これまで英が思っていた疑問だけを伝える。
「こういうラブソングが気に入ってるって言ってたから、もしかしたらケイにもそういう人がいるんじゃないかって思って」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
時間にしてケイは1分ほど黙りこくっていたが、それが10分ほどの時間に思えた。
やがてケイは、言葉を洩らす。
「・・・・・・・・・この曲を聴き始めた頃は、いなかったわ」
過去形の話し方をするだけで、今は違うというのがわかる。
「・・・でも、今はいる」
夕暮れ特有の茜色に染まる空を見据えながら、ケイはそう答えた。それを聞いた英は、『そうか・・・』と力なく答える。
その相手がどんな人なのか、までは聞かない。聞いたところでその人物のスペックが英よりも遥かに高かったら、本当に勝ち目がないと悟ることになる。英の決意が折れるかもしれなかった。
「で、影輔にはいるの?そういう人」
「はっ?」
全く同じ質問を返されたことについては、完全に英の予想外だった。ケイは、夕暮れでそう見えているだけかもしれないが、僅かに顔を赤くして問いかけてきている。
答えたくはなくて背を背けようとしたのだが、ケイは見逃してくれなかった。
「私だけ答えるっていうのも、ちょっとアンフェアじゃないかしら?」
そうだった。ケイの人気の要因の一つにはフェアプレー精神があった。戦車道ではたとえ勝つためであっても彼我を問わず卑劣な手段を認めず、身内が恥を晒した時は素直に頭を下げる人柄だ。ここでそう言われたのはとても痛く、逃げることなど許されなかった。
観念して、英は話す。
「・・・・・・ああ、いるよ。俺にもそういう人は」
「・・・・・・・・・そっか」
ケイの声が少し落ち込んでいるように聞こえたのは、多分英の気のせいではないと思う。その落ち込む理由までは英にも分からなかったが。
だが、ここでケイの顔を見ると、言外に『ケイのことが好きだ』と言っている風に捉えられてしまうかもしれなかった。だから今ここでケイの表情を窺うことはできない。
そして今の状況を作り上げてしまったのは英の質問が原因だったので、この重い空気をどうにかするべきだと思った。
「あ・・・・・・悪かったな。バカな質問して。忘れてくれて――――」
その直後、英の手に柔らかい感触が伝わってきた。
見れば、英の右手を、ケイの左手が小さく握っている。しかもその手は、僅かに震えていた。
まるで、何かに縋るように。
「・・・・・・これで、忘れてあげる」
そこで初めてケイの顔を見ると、ケイは笑みを浮かべてはいた。だが、その笑みは不安を押し殺すかのような、哀しみを帯びているようにしか見えない。
「・・・・・・本当に、ごめん」
その哀しさを晴らすように、その震えを止めるように、英はその手を握り返す。そして、そんな不安で哀しい気持ちにさせてしまったことを謝った。
いつもの十字路で別れるまで、2人はお互いに手を強く握り合ったまま離すことはなかった。
夜、夕食を食べ終えて食器を片付けた英は、スマートフォンを手に取りある人物へと電話を掛けていた。その相手は3コール目が鳴り終わる直前で電話に出た。
『もしもし?』
「山河。悪いな、こんな時間に。今大丈夫か?」
『うん、大丈夫。どうかしたの?こんな時間に』
その電話の相手、山河はいつものようなのんびりとした口調で電話に出てきた。
英は普段、この時間帯に家族以外へ電話をすることは全くと言っていいほどない。友人知人であっても、夜が更けてから電話をするのは気が引ける。
だから夜は基本メールで済ますのだが、こうして電話をかけているのはメールなどでは伝えられない用件だからだ。そして、眠っている間に決意が薄れることを恐れて早急に伝えるべきだと思ったからである。
「・・・・・・山河」
『なに?』
「あの、クイズ大会の特別コーナーの話・・・・・・どうなってる?」
英が問うと、山河は電話の向こうで『あ~、あれねぇ~』と捻り出すような、本当に悩んでいるのだと分かる声を上げた。
『それがさぁ、まだアイデアが出てないんだよねぇ~。このままじゃ本当に特別コーナー無しで本番迎えることになりそう』
「・・・・・・そうか」
『で、それがどうかしたの?もしかして、引き受けてくれる気になったとか?』
「ああ、そうだ」
『だよねぇ。無理だよねぇ。どうしたもんかなぁ・・・・・・・・・・・・・・・って、え?今なんて?』
山河も本気で聞いたわけではなかったのだろうが、その問いに英があまりにもあっさりと、さらっと答えたせいで、山河もすぐに反応できなかった。だがすぐに正気を取り戻して聞き返す。
英は、すぅっと息を吸って、改めて自分の答えを告げる。
ここでその答えを言うと、もう自分は引き返せなくなる。
しかし、もう英は覚悟を決めていた。
だから、その答えを告げる。
「山河の言っていた企画・・・引き受けるよ」
1週間も待たせてしまった上にヒロインの出番が少なくて大変申し訳ありません。
ただ、人気ある人と付き合うためには、相応の立場にいることも重要だということを、
ケイと親しくてなおかつ同じ人気者であるナオミに気付かせるという場面は最初から考えていたので、今回はその場面を書かせていただきました。
感想・ご指摘等があればお気軽にどうぞ。
余談
Variante4巻、面白かったです。
個人的に好きなアッサムや審判娘、直下さんバミューダの出番が多くてとても満足でした。