俺ームアームズに乗ってオルフェンズ世界で無双する話   作:FAパチ組み勢

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 ※今作において、鋭角髭のオッサンはドルトの暴動工作に関わっていないとしています。
 統制局の仕込みなのでアリアンロッドは手を出していない、もしくは手が出せないのでは考えました。
 つまりイズナリオの仕業となっております。




 ビスケット、チャド、ダンテとかの花が決まらねぇ……


拾肆 ※宇宙戦はもうちょっとだけ続きます。

「納得できません!」

 

 大声を張り上げて部屋を後にするジュリエッタという名の少女。

 その目尻には、感情が昂る余り涙すら浮かんでいた。

 彼女は、モビルアーマーに襲撃されている火星への援軍の具申に来ていたが、尊敬する男は頑なに認めようとはしなかったからだ。

 

「……ふぅ」

 

 誰もいなくなった部屋で、重厚なデスクに肘を突いて鋭角なデザインの髭の生えた男は深く嘆息した。

 男の名は、ラスタル・エリオン。

 イズナリオたちと同じセブンスターズの一角、エリオン家当主その人である。

 

『嫌われたな』

「五月蝿い」

 

 秘匿通信機の通話先で彼女の言葉を共に聞いていた友人が笑いながら揶揄ってくる。色々と後ろ暗い事をさせてしまったというのに恨み言など一度も吐かない見上げた男だが、こういった揶揄い癖があるのはどうしても頂けない。思わず渋面になってしまう。

 

『だが、あの子の発言も頷ける点はあるだろう? 戦力の逐次投入は下策だが、それは斥候を出さないって意味じゃないぞ』

「分かっている」

 

 しかし、それでも組織に属している以上はその方針には従わなければならない。

 

「ギャラルホルン統制局司令官殿は、現状の火星で勃発しているモビルアーマー襲撃事件を、三百年前の生き残りの仕業だと結論付けた。……そしてさっさとまたアーブラウへ蜻蛉返りしたよ。よっぽど重要な案件があそこにはあるらしいな」

 

 皮肉混じりに言うが、しかしそれを可能にするイズナリオの手腕は凄まじい。

 イシュー家の後見人を解かれ、息子とされてきた青年との関係も明るみになり、少なくともイシューとボードウィン、二つの家から敵視されていると言うのに。

 

「……(いや、だからこそ、か。だからヤツは、ギャラルホルンではない己の地盤を固めようとしている)」

 

 それこそが、アーブラウ政権への介入。

 言うなればこれは、イズナリオによるアーブラウの乗っ取りだ。

 

『……見張らせている部下の話だとイズナリオは、やはりアンリ・フリュウと合流したそうだ。これを期に蒔苗陣営の切り崩しを加速させるつもりらしい』

「……余程百歳を越えたあの怪物が怖いと見える。まあ、俺もあの年齢まで現役でいられるかと問われたら無理だと思うが」

 

 会話を続けながら、彼は自分の端末を操作する。

 宇宙に一定間隔で存在していた長距離LCS通信にも使用されるアリアドネは、火星近郊にあるその殆どがモビルアーマーによって破壊された事で、地球のギャラルホルンは火星の異変に気付いた。

 だが肝心のアリアドネが破壊されたせいで火星の情報が収集出来ず、セブンスターズでも増援を送るべきか襲来を想定して防御を固めるべきかで判断が割れてしまったのである。

 イズナリオを筆頭とした防衛派と、ガルス・ボードウィンを筆頭とした増援派。

 しかし現状は防衛策が優勢だ。何せこちらには『アレ』があると分かっているからイズナリオもアーブラウへ向かったのだ。

 しかしガルスと同様に危機感を感じた男がいた。

 破壊されたアリアドネが送ってきた映像から、敵の正体と規模を割り出すよう部下に指示を出していた。

 そして送られてきた解析結果を読み、ラスタルは事態の想定が甘かった事を自覚した。

 

「……ケルビムか。指揮官機の大型モビルアーマーらしいが……これがアリアドネを破壊した犯人か」

 

 所詮は遠い過去の遺物と、イズナリオたちのように開き直る事が出来たらどんなに楽だっただろうか。

 しかし、『これが現実だ』とでも言うように端末には数秒で途切れる映像の中から切り取られた機械の敵の姿があった。

 

「……厄祭戦再び、か」

『おい、冗談だろう?』

 

 無言で端末を操作し、友人にも情報を送る。秘匿回線を利用し送信された画像は保存も複製も出来ないように特殊暗号化され、受信後閲覧すれば自動で破棄される。

 

『……これが、モビルアーマーか?』

「火星支部の生き残りがいれば、もっと詳細な画像もあるかもしれんが……アーレスの存続は望み薄だろうな」

 

 三百年という時間は、人の時間では余りに遠い。

 その姿を知っている人間など皆無だろう。だからあんなにもイズナリオを筆頭としたセブンスターズ共は暢気だったのだ。

 しかし部下たちがギャラルホルンの秘匿資料を漁って漸く見付けてくれたデータには、絶望的な内容が記されていた。

 ケルビムと戦闘した過去の記録には、絶望的な事しか書かれていなかったのである。

 要約すれば、ガンダムバエルに搭乗したアグニカ・カイエル以外の友軍の五割が、そのモビルアーマーに『喰われた』とあった。

 

「……兎に角、事こうなっては徒に地球圏の安定の為に混乱とガス抜きを――などと言ってはいられんな」

『……そうだな』

 

 ラスタルの声が硬くなった事を通信先の友人も理解していた。

 統制局が主導しているドルトコロニーの工作も、現在は消極化しているとの報告があった。状況次第で自分たちがドルトの鎮圧に出る可能性もあったが、引き金役の人間を用意出来なかったのだから寧ろ当然だ。

 

「一度、今の経歴を洗い直しておいてくれ。俺の子飼いの傭兵として働いて貰うぞ」

『何をさせる気だ?』

「ジュリエッタの言っていた偵察部隊だが、確かに有用だからな。……あの子が率先してその部隊に参加しようとしたから止めただけで、設立自体は進めるつもりだ」

『親馬鹿め』

「勿論それもある。だが……」

 

 友人の揶揄いに頷く。親馬鹿だとは自分も自覚している。

 恐らく自分の受け持つ部隊の連中も、好悪の感情の差はあれど彼女が偵察部隊に組み込まれるのを良しとはしないだろう。

 そしてそれ以前に、

 

「イオクが、な。どんなに説得しても、ジュリエッタに反発や嫉妬するかもしれん。……そうなれば、イオクの部下たちはアレの暴走に従うだろう」

 

 自分を純粋に慕ってくれている、いずれ同じセブンスターズとなる筈の青年。

 彼が幼少の頃に死去した先代に請われ養育したが、どうにも知恵が回らない男になってしまった。

 そこが可愛くもあるが、このような危機的状況で馬鹿を許せる筈もない。

 

『イオク・クジャン……か。ラスタル、敢えて言わせて貰うぞ』

「分かっている」

『いいや、それでも言うぞ。客観的に見て、アレに指揮官としての才能はない。戦闘に関しても、ジュリエッタ程の才は見られん』

 

 凡庸。

 それが傑物と称された先代クジャン公の忘れ形見の正体である、と友人は冷徹に告げる。

 

『ああいった手合いは、一度『総て』を喪うような経験でもしなければ、発展や成長以前に変化すら望めんぞ』

 

 傭兵として色々と見てきたが故の警告。

 似たような人間がどんな『末路』を辿るのか、彼はよく知っていた。

 良い方向へ行くのは極稀で、殆どが功名心や恐怖心に駆られて何も残せずに逝った。

 それ以上に最悪なのは、そういった人間は一人で死なない事が多いという事だ。高確率で周囲を巻き込んで被害を大きくさせる。

 傭兵稼業を続けていれば、そんな馬鹿の尻拭いをした事もあった。

 

『更に厄介なのが、アレにその自覚がないことだぞ』

「……」

 

 尊敬するラスタル様の薫陶を得た、故に自分は一廉の人間である。

 そんな自負心が全身から爆発しているあの青年は、いずれ小火(ぼや)を大火にする。

 事態の好転する事は少なく、悪化させてもそれが自分のせいだとは絶対に思わないだろう。

 仮に『尊敬するラスタル様』に叱責を受けても、周囲に相談せず良かれと思って最悪な方向へ突っ走るに違いない。

 友人には、そんな未来が見えていた。

 ラスタルが自分で反省しなければならない事に気付かせようとする教育方針なのは知っているが、あの凡庸な男にそれは致命的に合っていないのだ。まず反省するべき視点を見つけられないのだから。

 これではラスタルが望むような成長は望むべくもない。

 

『……いや?』

 

 ふと、思いつく。

 

『ラスタル。あの小僧、今回の偵察部隊に組み込め』

「正気かお前」

 

 ついそんな言葉が零れた。だが、それがラスタルのイオクへの評価でもあった。

 

『ただし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 荒療治だと友人は言う。

 こればかりは、情を抱き過ぎているラスタルには出来ない選択肢で、そして今のイオクに必要な事であるとも分かっていた。

 

「……だが」

『安心しろ、俺がいるんだ。最悪、アレが腕や足を失っても命だけは拾ってやる』

 

 いや、この友人ならば死ぬ寸前までイオクを助けないだろう。

 そんな信頼があった。

 ジュリエッタへの訓練を見たが、あそこまで容赦のないシゴキをする男だ。

 しかもコイツからすればイオクは、甘ったれた坊やでしかない。

 健康診断では何もなかった筈の胃がキリキリと痛み出すのを感じながら、しかしラスタルは友人の提案を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

「……そう言えば、次はなんと名乗るつもりだ?」

『そうだな、子飼いの傭兵なのに名前を知らないってのは確かにおかしいな』

 

 

 

 

 

『ガラン・モッサと名乗るつもりだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を、イサリビ・紅鋼と命名された大型戦艦のクルーたちは見た。

 

 極まった赫い光。

 

 奔流のようなその光波を受けて、射線上にあった敵機体の殆どは爆散した。

 原型を留めている子機は一つも残っておらず、ケルビム本体すらその身を残骸へと変えられた。

 

「……さっすが」

 

 外部との戦闘情報を知り、適切な整備をするために、と備え付けられたモニターで外の様子を見ていた整備班の少年が、改造された整備用スーツのヘルメットの中で小さく呟く。

 宇宙空間での戦闘がある場合、整備班は船外作業用のスーツの着用して整備をする事になっていた。というよりも、戦闘中は怪我人以外は、全員が生命維持装置が備え付けられたスーツを着なければならない、と社内規定で決定されているのだ。

 ユージンたちも例外無く生命維持装置付きのスーツに着替えていた。当たり前だが、艦橋に攻撃され、それが通ればどんな大きい戦艦であろうとも木偶の坊になってしまう。

 だがその当たり処が良ければ生きていられるかもしれない。逆に言えば、その時に格好つけて普段着や半裸でいれば助かる者も助からない、ということだ。

 格納庫内に漂っていた張り詰めた空気が弛緩していく。

 あの大型モビルアーマーを若社長が破壊した、と分かったからだ。

 赫い光がなんなのかは分からないが、あんなトンデモがやれるのはウチの若社長くらいだと誰もが身に染みていた。

 何故ならこの船がそうだからだ。

 元はモビルスーツを二、三機程度しか積み込めない強襲装甲艦をこんな何倍も巨大な大型戦艦にレストアーーというよりも魔改造してしまったのだ。

 経済や金勘定に明るいトドやデクスターは、もしこれをどこぞの会社に依頼した際の費用を考えて卒倒しそうになった。オルガやビスケット、ダンテは戦闘班だったので、開き直って長旅では長期滞在する事にもなる『イサリビ』が大きく高性能になるのを受け入れた。要するに無邪気に喜んでいた馬鹿共に倣った形だ。……因みにその馬鹿筆頭はユージンだった。操舵班を纏めている立場なら然もあらん。

 そんな戦艦となったイサリビの格納庫に、ラピエールが二機移送されてくる。

 

「医療班の出動要請を。バイタルの確認をして貰って」

 

 ヤマギがそう指示を出す。

 指示を受けた仲間がタブレット端末を操作すると、専用通路からナースキャップ型の追加パーツを装着した真っ白いサポロボの集団が飛び出してきた。

 これこそが、鉄華団付きの医療チームである。

 人の医者も必要だったが、火星でそんな医療知識のある人間などそうはいない。だから若社長がサポロボたちの中から希望者を募り医療チームを結成させたのである。

 彼ら医療チームが発足した事により、再生治療用ポッドは真価を発揮できるようになった。

 実は発掘される類の厄祭戦時の医療ポッドには、複雑且つ専門的な知識があればこそ使用可能な機能が幾つも存在したのである。

 ある種のセーフティーだと龍治は言っていた。

 物を知らない人間に医療用語満載の説明をしても分からないが、図解で手順を説明すれば物を知らない子供でもポッドを稼働させられるのだから。

 そう言われて納得する社員は多かった。

 若社長が来る前のCGSがそうだった。大人の言う通りにモビルワーカーに乗り込み、または生身で、弾除けとして死んでいく。オルガや三日月がいたからこそ鍛えるという行為に真剣に取り組み、自発的にトレーニングを積むことが出来たのだ。あのままだったら、体の良い肉壁として大半の仲間が死んでいっただろう。

 話を戻すが、医療チームのサポロボたちは社員/団員のバイタル測定を行って体調面での不調を調べる事が主な業務だ。中には病気になっても仕事をしようとする社畜精神溢れる馬鹿(三日月等)もいるので、そういった連中を縛り上げてベッドに放り込む事もあった。

 サポロボたちが、ラピエールへと通信を入れる。

 

 コクピットから出てきて欲しい、体調の状態確認を行いたい。

 

 しかし、数分。

 ラフタもアジーも反応しなかった。

 

「……もしかして、疲れて気を失ってるとか?」

 

 ヤマギが呟く。

 しかしサポロボはこれを否定。

 ラピエールのコクピットをセンサーでスキャンし、動きがあったのを確認したからだ。

 

 彼女たちは、シートに拳を一度だけ、大きく振り下ろしていた。

 

 しかしそれをサポロボたちがヤマギたちに報告する事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人は、自分の不甲斐なさに唇を噛み締めていた。

 震える拳をシートに叩きつけ、溢れそうになる罵声と悪態をなんとか腹の底に沈め込んだ。

 大きく息を吐き、ハッチを開ける前にヘルメットを脱いで滲んだ涙を拭う。

 

「……あー、カッコ悪」

 

 ラフタがそう吐き捨てる。

 タイミングが悪かったのは分かっていた。それでも新しい面白い機体だったから、調整をおざなりにしてしまった。

 そのツケを姉貴分であるアミダに支払わせたのだ。

 ラフタも、黙り込んだアジーも、恥ずかしさと情けなさと申し訳なさで、どうにかなりそうだった。

 だがいつまでもそうしてはいられない。

 ハッチの向こうには、可愛がっている少年たちがいる。

 彼らにこれ以上無様な姿は見せられない。

 そう思って呼吸を落ち着けて、ハッチを開放する。

 コクピットから降りると、白いサポロボの集団が二人を待っていた。

 医療チームのサポロボたちらしい。

 指示されるままにパイロットスーツにサポロボのケーブルコネクターを接続する。

 若社長から買ったスーツには手首にコネクターがついており、そこからパイロットのコンディションを読み取れるようになっていた。

 勿論そんな機能は普通のスーツには付いていない。

 ギャラルホルンのスーツにもあるかどうか。

 サポロボたちから、軽い疲労と脱水症状との診断が出る。

 水分補給と休息を指示され、二人がそれに従おうとした時に、()()は起きた。

 

「……え?」

 

 ケルビムは既に機能を停止している。

 龍治のヴェスパーファルクスからの一斉砲撃を受け、子機諸共にズタボロにされた。

 だが、そんなケルビムが動いた。

 破壊されていないカメラアイが光り、何かをしようと動こうとしてーーしかし紅色の鷲と赫い魔王がそれを阻んだ。

 フレズヴェルク=ルージュのベリルスマッシャーが翻り頭部を両断し、その傷口にヴェスパーファルクスの持つ二丁のイーグルハントが差し込まれ銃撃を撃ち込まれる。

 そして、ケルビムは全身から無数の赫い結晶の槍を生やして、今度こそ機能停止した。

 結晶は直ぐに砕けて消えたので、モビルアーマーの巨体は穴だらけになった。

 だが、それを狙っていたヤツらがいたのである。

 子機だ。

 モビルアーマー・ケルビムより最後の命令を受け取った無数の子機は、親機であったケルビムの体内へと殺到する。

 数を頼んでの特攻のようなものだ。

 勢いに押されて距離を取る龍治とアミダ。

 無数の子機が、ケルビムを喰らっていく。

 装甲を、内部機構を、フレームを、そしてーーリアクターを。

 

「まさか……ケルビムのエイハブリアクターを、食ってる?」

 

 誰かがそう呟いた。

 別の誰かがタブレットを操作して、ケルビムの情報を検索する。

 基本的にMSGの保有する拠点や戦艦のデータベースには、モビルアーマーの情報は搭載されていた。ケルビムの交戦記録も記載されていたのである。

 そこには、戦闘不能となったケルビムを無数の子機が大型リアクターとは別に内蔵してある多数の小型リアクターを食って自機の動力にする場合もあるとあった。

 

「でも、なんでそんな事を? あの二人なら普通に負けないだろ」

 

 そう。

 ケルビムを瞬殺したヴェスパーファルクスは当然だが、フレズヴェルク=ルージュも改造された子機程度では負ける事はない。

 機械であれば戦力差など分かっている筈だろうに。

 なのに、何故そんな事をするのか?

 

「あ、分かった」

「マズい……っ」

 

 気付いたのは、ラフタとアジー。

 

「ユージン、直ぐにイサリビで子機を攻撃しな!」

「もう一度ラピエールで出るよ!」

 

 艦橋に通信を入れるアジーと再度出撃しようとするラフタ。

 

『ちょ、どーしたんスか?』

 

 ユージンが訊ねる。

 

『あんな雑魚、ウチの若社長とアミダの姐さんが負ける筈が……』

「逃げるつもりなんだ!」

 

 アジーの発言に、全員が驚愕する。

 

「多分、あの子機たちがケルビムを食ったのは、戦う為じゃない。ケルビムにある戦闘記録をどこかに持ち出すつもりなんだ!」

「拠点に二人の情報を持ち帰られたりでもしたら、絶対ヤバい! 今ここで仕留めないと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 慌てる二人の剣幕に圧倒される面々だが、そこは艦長兼操舵手であるユージン。

 彼は即座に指示を出した。

 

「戦闘準備っ! ボサッとしてねぇで動けテメェら!! 若社長たちん所まで突貫すんぞ!」

「「「了解っ!!」」」

 

 ユージンが艦長席に設置されているパネルを操作すると、床からヴェスパーファルクスに搭載されているものと同じような操縦端末が上昇してきた。

 ユージンがその端末を掴む。

 阿摩羅識システムが発動し、三つのコネクターが繋がり彼の手の甲が発光した。シートに隠れて分からないが、背中もだ。

 システムオールコネクト。

 これにより、イサリビはユージンと一体となった。

 

「往くぞイサリビぃ!!」

 

 ユージン・セブンスターク。

 彼は最初、花を選べなかった。

 MSG戦闘部隊『鉄華団』の副団長であり鉄の花こそ自分の矜持だ、と周囲には言ったが、しかしその実オルガや三日月、昭弘などは結構早めに己の矜持たる『花』を見付けていた。

 

 オルガはヤドリギ(困難に打ち勝つ)

 三日月は紫のオダマキ(勝利への決意)

 昭弘はミツマタ(肉親の絆)

 

 オルガは若社長と同じ意味の花言葉を背負い、三日月は負けて奪われぬように、そして昭弘は『家族』を護ると誓った。

 だが、そんな彼らの姿を見て、ユージンは気付いてしまった。

 

 自分には確固たる思いがない、と。

 

 それもそうだろう。

 寧ろそういった人間の方が少ないのだ。

 多少は俯瞰して物事を見る事が出来ると自覚しているが、しかしそれはビスケットに比べれば拙いと分かっていた。

 だからだろう、ふと――虚しくなったのは。

 

 

 

 ――なに黄昏てんの?

 ――ビスケット。

 ――そんなに大事? 花を背負うの。

 ――まあ、な。

 

 MSGを発足させ、誰もが忙しく動いている頃。

 しかし、ユージンは夜中に基地を離れて一人夜空を見ていた。

 ビスケットが追い掛けてきたので、ユージンは彼にだけ胸の内を語った。

 

 ――分かったんだよ。俺には何もねぇって。

 ――なにが?

 ――若社長やオルガみてぇになれねぇ、三日月みてぇにやれねぇ、昭弘みたく思えねぇ。なのに立候補したからって俺ぁ鉄華団の副団長サマだ。

 ――そうだね。選んだのはユージンだ。

 ――それが酷く……重ぇ。情けねぇったらねぇや。

 ――……別に良いんじゃない? 無理に決めなくたって。

 ――は?

 

 そんなユージンの背中を叩きながら、ビスケットは笑いかけた。

 

 ――信念や決意ってさ、そうそう簡単に決まるもんだと思う?

 ――いや、だってよ。

 ――若社長たちはさ、多分半分は願いも込めてるんだと思うよ。『こうありたい』ってさ。

 ――……こう、ありたい。

 ――ユージンにはないの? なりたい自分。

 ――なりたい自分、か。

 ――うん。

 ――よく分かんねぇけど……頼られてぇ、かな。

 ――なら、まずはそれを『自分の花』にしたらどう? 後で変えても良いんだしさ。

 

 

 

 そしてユージンはとある赤い花を背負った。

 花の名は、ストレプトカーパス。

 意味は、『信頼に応える』。

 頼られる男になる。

 そんな理想を叶える為に、ユージンは奮闘していた。

 同じイサリビの艦橋で過ごす仲間は、副団長の頑張りを揶揄い交じりにではあったが応援していた。

 だから、彼の指示に従っているのだ。

 

「前方に大型のリアクター反応!! デカい反応だっ!!」

 

 観測している仲間がそう叫んだ。

 すると、光学迷彩を解いた大きい何かが進路上に現れたではないか。そこから子機も無数に出てくる。

 

「データ照合! ――あれ、モビルアーマーの生産工場だ!! 多分あれで火星に落下したヤツらを作ったんだ!!」

 

 確かにそれならあれ程の戦力を用意出来た理由になるだろう。

 よしんば違っていても、生産工場なぞ残していてはこちらの害にしかならない。

 

「大技ぶつけんぞ! ドリル回せぇ!!」

 

 ユージンが吼える。

 その要請に仲間たちが応えた。

 

「艦橋収納完了!」

「戦艦前部超大型回転衝角、TC障壁展開!」

「各砲座、発射準備! ――発射ぁ!」

「衝角、回転開始!」

 

 艦橋が艦体へと沈み、各砲座が唸り、そして――超大型のドリルが回り始める。

 元より向こうもその巨体をぶつけるつもりだったのだろう。

 急拵えのブースターが火を噴き、こちらへと迫る。

 しかし。

 

 

「その程度で!」

 

 

 ユージンの花が光る。

 

 

「このイサリビを潰せると思うなよぉっ!!」

 

 

 イサリビ・紅鋼もまたブースターを点火し、速度を上げる。

 

 

「各員、ショックに備えて!!」

 

 

 オペレーターの一人が艦内に通達する。

 その直後、

 

 

「ぬぅううおりゃあああああああああああああああああああああああ――っ!!」

 

 

 強い衝撃が艦内に走った。

 堅い何かが抉り砕かれていく。

 

 

 

 程なくして――

 

 

 

「後方確認――敵工場、撃破完了!!」

 

 

 

 歓声が上がった。

 勝った。

 それに湧く艦橋の皆。

 だが、

 

「まだだ!」

 

 ユージンだけは、その眼を先へと向けていた。

 

「若社長とアミダの姐さんに合流すっぞ!! 喜ぶのはそっからだ!!」

 

 誰もが気を取り直し、自分の仕事へ戻る。

 

 

 

 

 

 

「……へっ。やりゃあ出来んじゃねぇかよ、俺でも」

 

 

 

 

 

 

 阿摩羅識を解除して、ユージンは小さくそう呟いた。

 

 

 

 

 





 お調子者の副団長が見せた漢気。
 それは自分の不甲斐なさに唇を噛んだ女たちには眩し過ぎた。

 しかし未だに距離は遠く、姉たちはまだ敵の狙いに気付いていない。

 焦燥に揺らぐ彼女たちに、ヤマギたちから無情の言葉が投げかけられる。


 次回――翔ける二人


 男が意地を見せたのだ。
 ここで見せねば女が廃る。

サポロボ(チビスケ)の外観について ※どちらも出ます

  • TAMOTU
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