仮面ライダーレーザーこと九条貴利矢は謎の仮面ライダーを追っている最中、とあるゲーマー少女と出会う。

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荒技 仮面ライダーレーザー~本能の対決! 仮面ライダーインスティン~

「ああ、愛しい私の志以(しい)……。……必ず、虜にしてみせるわ」

 

 

 ◆

 

 

 ドクターの証である白衣を纏い、自分、九条貴利矢(くじょうきりや)と宝生永夢(ほうじょうえむ)は謎の人物を追いかけていた。

 

「おい待て!」

「貴利矢(きりや)さん! あれって、まさか仮面ライダーじゃ」

「ああ、赤いゲムデウスの事件と同じだな。……って、おいおい……悪ノリが過ぎるぜ…………」

「こんな時にバグスターの集団が……」

「あのライダーが放ったんだろうな……」

「貴利矢(きりや)さん。ここは僕に任せて、先に行ってください!」

「おしノった。CRに保管してたプロトガシャット、いくつか持ってくぜ」

「待ってください!」

「ん?」

「貴利矢(きりや)さんの身体は、黎斗さんが遺したガシャットの影響で徐々に人間に戻りつつあります。そんな身体でプロトガシャットを使い続けるのはよくありません。……これも、持っていってください」

「……『マイティブラザーズXX』か。サンキュ」

 

 そうして自分は、空間がドット絵のように歪んでいるポイントへ飛び込んだ。

 

 

 ◆

 

 

 そこは、見慣れない町の風景が広がっていた。

 

「ここは……」

「……どうやら、弱い方が引っ掛かってくれたようだ」

「誰だっ!」

 

 自分の視線の先には、自分達が追いかけてきたライダーが立っていた。エグゼイドやゲンムとはまた違う、ピンクと紫の中間のような色合いをしたライダーだ。おまけに、奴が巻いている変身ベルト「ゲーマドライバー」も青カビのようなくすんだ色をしていた。

 

「『弱い方』だなんて、言ってくれるじゃないの。……誰だ、お前」

「私は、仮面ライダーインスティン。本能のライダーよ」

「本能? ……とにかく、仮面ライダーは自分達ドクターの役目だ。患者を助けず、人に危害を加えるようなら…………ノリノリで行っちゃうぜ」

「爆走バイク!」

「ギリギリチャンバラ!」

 

 自分は二つのゲームカセット型アイテム「ライダーガシャット(略して「ガシャット」)」を構え、起動させた。二種類のゲーム開始音声が流れ、背後に立体ホログラムが表示される。

 

 

「三速、変身!」

「「ガシャット!」」

「「ガッチャーン! レベルアップ!」」

「爆走! 独走! 激走! 暴走! 爆走バイク!」

「アガッチャ! ギリ! ギリ! ギリ! ギリ! チャンバラ!」

 

 自分の周囲を衛星のようにキャラクターセレクトアイコンが回り、レーザーのアイコンを回し蹴りで選択。と同時にゲーマドライバーの画面を構成する二枚のディスプレイが巨大化し、自分の肉体と重なる。このプロセスを経ることで、自分は「仮面ライダーレーザー チャンバラバイクゲーマー Lv.3」へと変身した。

 

「しゃおらっ!」

「ふんっ!」

 

 空中回し蹴りを連続で繰り出し、インスティンと名乗る仮面ライダーを後方へ押し込む。よく聞くと、インスティンは初期のゲンムのように機械を通した声をしていた。

 

「ガシャコンスパロー! ズ・ドーン!」

 

 一旦相手と距離を距離をとった自分は、武器「ガシャコンスパロー」を弓モードで召喚し、構えた。

 

「ここに誘きだして、目的はなんだ」

「あなたを呼んだのは他でもないわ。この…………」

「ガシャコンヴァーチャライザー! ビュ・イーン!」

「……「ガシャコンヴァーチャライザー」の実験台になってもらうためよ」

「お前……! バグヴァィザーみたいな武器も持ってんのか……」

「この武器はまだ未完成でね、戦闘データが欲しいの。……見なさい」

 

 奴が召喚した「ガシャコンヴァーチャライザー」なる武器は、先端にVRゴーグルのような意匠をもつナックル型の武器だった。

 インスティンが右手でヴァーチャライザーを構えると、先端から溢れた光が集束し、人の形を作り出した。

 

「グラファイト……だと」

 

 やがてその光は、緑色の「グラファイトバグスター」へと変化した。

 

「ヴァーチャライザーには様々なキャラクターを召喚する機能があってね。……けど、ダメージは本物よ」

「ったく、面倒な奴を……。だったらこいつだ」

 

「ガッチョーン!」

「爆走バイク!」

「ドラゴナイトハンターZ!」

「爆速!」

「「ガシャット!」」

「「ガッチャーン! レベルアップ!」」

「爆走! 独走! 激走! 暴走! 爆走バイク!」

「アガッチャ! ド・ド・ドラゴナ・ナ・ナ・ナイト! ドラ! ドラ! ドラゴナイトハンターZ!」

 

 レベル0用の爆走バイクガシャットとドラゴナイトハンターZガシャットを使い、チャンバラバイクゲーマーに変身したときと同じ要領で自分は「仮面ライダーレーザー ハンターバイクゲーマー Lv.0 フルドラゴン」へと変身した。

 

「一気にノっちゃうぜ~!」

「ガシャット!」

「キメワザ!」

「ドラゴナイトクリティカルストライク!」

 

 ドラゴナイトハンターZガシャットを左腰の「キメワザスロットホルダー」に装填し、スイッチを二回押して必殺技を発動させる。すると全身に装着されたドラゴン型のアーマーから色とりどりのビームが発射され、反撃の隙を与えないままグラファイトバグスターを倒した。

 

「ふむ……。ちゃんと当たり判定も付いているようね。それじゃあ次は……」

「ガッシューン!」

「ガシャット!」

「キメワザ!」

「ガシャットで必殺技が撃てるかどうか……ね」

「モウレツクリティカルフィニッシュ!」

 

 続いてインスティンは自身のゲーマドライバーから体と同じ色のガシャットを引き抜き、ヴァーチャライザーのスロットに装填。射撃系の必殺技を放とうとしている。あの攻撃にどんな効果があるか分からない。当たらないに越したことはないはず。自分は右に回転し、それをかわそうとした。

 

「…………ん? あれ?」

「なにっ!?」

 

 発射の直前、突然なんの前触れもなく自分の背後に高校生くらいの少女が現れた。

 

「くそっ、ぐあぁぁぁっ!」

「ガッシューン!」

 

 一般人があれを食らったらただではすまない。盾となった自分は、奴の攻撃を真正面から受けてしまった。この攻撃で一定以上のダメージを受けたことにより、ドライバーの安全装置が働いて変身が解除された。

 

「くっ!」

「ちょ、ちょっと大丈夫!?」

「来るな!」

 

 倒れ込んだ自分に駆け寄ろうとした少女に叫んで制止させた。

 

「……実験台が戦闘不能になっては意味が無いわ。予定外だけど、代わりにあなたが変身して戦って?」

 

 そう言うと、インスティンは青カビ色のゲーマドライバーと朱色のガシャットを少女の足元に投げた。

 

「そのドライバーを使えば、適合手術を受けなくてもライダーになれるわよ。まあその機能無しでも、仮想現実であるここでは関係ないけど」

「自分が……変身……?」

「駄目だ! その話にノるな!」

「爆走バイク!」

「ガシャット!」

「ガッチャーン! レベルアップ!」

「爆走! 独走! 激走! 暴走! 爆走バイク!」

「乗れ!」

「え……」

「いいから乗れ!」

 

 力を振り絞って自分は「仮面ライダーレーザー バイクゲーマー Lv.2」に変身し、少女を乗せて逃走した。

 

 

 ◆

 

 

「くそっ、もう……無理だっ……!」

「ガッシューン!」

 

 流石に無理をし過ぎたか。力尽きた自分は変身を解除し、倒れ伏した。

 

「だ……大丈夫か」

「う、うん。ありがとう…………」

 

 見たところ、ここは公園のようだ。自分と少女は少しだけ距離を空けて、木製のベンチへと腰掛けた。

 

「自分、九条貴利矢(くじょうきりや)。君はどうしてここに?」

「うーん……。VRゲームで遊んでいたら、いきなりここに来てた」

「そうか……。……それより、奴が言っていた『仮想現実』……。参ったな。永夢(えむ)にマイティクリエイターVRXを借りておけば…………」

「まいてぃ……なにそれ?」

「いや、こっちの話だ。……とにかく、君を帰すのが先決だ」

「うん…………。早く、帰らないと。大事な女(ひと)が、待ってるんだ」

「だったら、なおさらだな。……大丈夫だ。自分はドクターだ。安心しろ」

「医者がバトってたの?」

「ああ、まあな」

「ふーん……。ところでさ、本当に帰れるの?」

「ああ、必ず帰す」

 

 未知のエリアに飛ばされて不安になっているのだろう。自分とって精神カウンセリングは管轄外だが、元気づけることくらいならできる。

 

「さっき『参ったな』って言ってたけど? 帰れる確証は、ないんじゃないの?」

「……確かに、君の言う通り確証はない。でも、自分が『帰れるかどうか分からない』と言ってしまったら、君はもっと不安になるだろ? ……だったら『必ず帰れる』と嘘をついた方が、希望が持てる。……自分は、真実を言ってしまったせいで親友を失った。『下手な真実なら、知らない方がいい』って、痛感したんだ。だから、時には嘘が人を救うことだってある。嘘をつくことも、その嘘にノることもな。……それが、自分なりの患者の助け方だ」

「……そうなんだ。さすが、お医者さんだね」

 

 

 

「休憩は、このくらいでいいかしら?」

「インスティン……!」

 

いつの間にか、ここを嗅ぎつけられていたようだ。

 

「九条貴利矢(くじょうきりや)。あなたが無理なら、彼女に戦ってもらうけれど?」

「一般人にそんなことさせるワケにはいかないんでね」

「爆走バイク!」

「ジェットコンバット!」

「爆速、変身!」

「「ガシャット!」」

「「ガッチャーン! レベルアップ!」」

「爆走! 独走! 激走! 暴走! 爆走バイク!」

「アガッチャ! ぶっ飛びジェット! トゥザスカイ! フライ! ハイ! スカイ! ジェットコンバット!」

「これでも食らえ!」

 

 飛行能力とガトリング砲による火力がウリの「仮面ライダーレーザー コンバットバイクゲーマー Lv.0」に変身して、上空からの攻撃を狙った。けれど、自分のその考えは甘かった。

 

「飛べるのはあなただけじゃないわよ」

 

 インスティンはヴァーチャライザーで「バーニアバグスター」と「コラボスバグスター(ジェットコンバット)」を同時に召喚し、先ほどの戦闘で体力を消耗していた自分はいとも簡単に撃墜された。

 

「ぐあぁっ!」

「ガッシューン!」

「あら、また? まったく……無敵な方を連れてきた方が良かったかもね」

「……に、逃げろ…………」

 

 自分が少女の方へ振り向くと、なぜか少女は笑っていた。ニヤリと。

 

「それ、持ってきちまってたのか…………」

「さっきから思ってたけどさ。それ、ゲームカセットだよね? 見たことない形だけど」

「ああ?」

「そうね」

「…………ゲームなら、自分に任せてよ。これでも、世界一の実力なんだよね」

「あら……」

「よせぇっ!」

「……よせって言うけど、このままだと自分が一人で戦うことになるよ。お医者さんとして、それでいいの?」

「そんなの、見過ごせるワケが……」

「だったらサポートしてよ。その『ライダー』ってやつの先輩として」

「……ったく」

 

 ……言うねぇ。

 

「……よっこいしょ……っと。……んじゃ、先輩としていいトコ見せないとな」

「よろしく、先輩」

 

 青カビ色のゲーマドライバーを腰に巻いた少女の左に並び、自分は再びガシャットを起動させた。

 

「爆走バイク!」

「マイティパーティプラス!」

 

 自分に倣って、少女も朱色のガシャットを起動させる。タイトルからして、複数人でプレイするすごろく形式のパーティゲームのようだ。「プラス」と付いているところから、どうやら続編らしい。

 

「ゼロ速、変身!」

「ゼロターン、変身!」

「「ガシャット!」」

「「ガッチャーン! レベルアップ!」」

「爆走! 独走! 激走! 暴走! 爆走バイク!」

「マイ! マイ! マイティ! パーティ! プラス!」

 

 自分は回し蹴り、少女は一回転からの裏拳、のスタイルでお互い変身を完了させた。「ゼロターン、変身!」なんて、いつ考えたのか。

 

「ようやく面白くなりそうね」

 

 インスティンがそう呟くと、地上に降り立った二体のバグスターが襲ってきた。

 

「まあ任せてよ。……さあ、ターン始めのサイコロタイム!」

 

 朱色のライダーに変身した少女はおもむろに懐から三つのサイコロを取り出し、インスティンとバグスター達に投げつけた。見事に命中したサイコロは着弾と同時に爆発し、空中に「1」と「3」と「1」の目が表示された。

 

「うん。じゃあ三人は、その数しか行動できないからね!」

「!?」

「!?」

「あら……」

「うっわチート」

「さ、今のうちに」

「お、おう」

 

 行動制限以上に制限能力そのものに困惑している敵集団にここぞとばかりに隙が生まれた。

 

「マイティブラザーズXX!」

「これを使え!」

「ありがと!」

「ゲキトツロボッツ!」

「爆速!」

「ガシャット!」

「「ガッチャーン! レベルアップ!」」

「爆走! 独走! 激走! 暴走! 爆走バイク!」

「アガッチャ! ぶっ叩け! 突撃! 猛烈パンチ! ゲキトツロボッツ!」

 

 過去にライドプレイヤーがやっていたようにマイティブラザーズXXガシャットを使ってガシャコンキースラッシャーを召喚すると、少女にそれと爆走バイクガシャットとギリギリチャンバラガシャットを手渡した。彼女がキースラッシャーの見た目で使い方を察したのを確認してから、自分は「仮面ライダーレーザー ロボットバイクゲーマー Lv.0」へと変身した。

 

「自分の技にノせろ!」

「オッケー!」

「ガシャット!」

「キメワザ!」

「ゲキトツクリティカルストライク!」

「ガシャット!」

「キメワザ!」

「ガシャット!」

「キメワザ!」

「チャンバラ!」

「バイク!」

「「クリティカルフィニッシュ!」」

 

 ロケットパンチの要領で飛んでいった自分のパンチングユニットがインスティンに命中し、それに追い打ちをかけるように少女の斬撃エネルギーが衝撃波になったものが三人同時に命中した。

 

「グレイト! パーフェクト!」

 

 二体のバグスターが爆発。と同時に、どこからともなくゲームのナビゲーションボイスが聞こえてきた。

 

「くっ……。弱い方と素人だと思って、流石に舐めプが過ぎたようね……。でも、ヴァーチャライザーの戦闘データは十分に溜まったわ……。それじゃあ、ここから生きて帰れたらいつかまた会いましょ」

「おい待て!」

 

 インスティンは、自分達二人を残してドット状に消えてしまった。

 

「……窮地は脱したね」

「だな。……しっかし、これからどうするかな~」

 

 

 

「貴利矢(きりや)さん!」

「永夢(えむ)!」

 

 空。本当に何もない青空から、「仮面ライダーエグゼイド クリエイターゲーマー」に変身した永夢(えむ)が降りてきた。そのナイスタイミングっぷりは、さながら神のようだ。…………ん? 神?

 

「大丈夫ですか!?」

「平気平気~。この通り、ピンピンしてるぜ」

「……その割には、ずいぶん疲れているみたいですけど」

「そこは自分の嘘にノっとけよ。……それより、どうしてここに?」

「驚きましたよ。飛び込んだと思ったら、貴利矢(きりや)さんが突然倒れたので。だから仮想空間に精神だけが飛ばされたんじゃないかと思って、ムテキでバグスターを倒してから黎斗さんが遺したマイティクリエイターVRXで助けに来たんです」

「流石だな、永夢(えむ)」

「……ところで、この子は?」

「あー。自分と一緒にここへ飛ばされたらしい。これは推測だが、あいつが持っていた武器が不具合でも起こしたんだろうな」

「……あいつ?」

「それについてはあとで話す。……あと」

「……ん? 自分?」

「君はガシャット……これのことを『ゲームカセットだよね?』と表現したな?」

「うん。なんかそれっぽいなって思って」

「君は『ゲンムコーポレーション』を知っているか?」

「なにそれ?」

「……やっぱりな。永夢(えむ)、彼女は別の世界の住人らしい」

「……パラドが別の世界に行ったのと同じような感じってことですね。分かりました。……ノーコンティニューで、別世界への扉を開けるぜ!」

 

 出来るとは信じていたが、改めてあの「神」が作ったガシャットはヤバいと思った。

 

 その後、自分達と彼女が元々居た世界に帰れたのは、言うまでもない。



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