出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第1部最終話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
警察上層部side
激闘から一夜明け、我々警察上層部は緊急会議を開いた訳だが…
「捕えた脳無はいずれも、これまで同様人間的な反応がなく、新たな情報は得られそうにありません」
「また、保管されていた倉庫は
「その為、脳無の製造方法については、不明のままです」
今回の作戦で入手出来た情報は、微々たるものだった。
「そもそも、その倉庫というのも
「生体実験なぞ行える環境じゃねえし、場も安易過ぎる。バーからも連中の個人情報はあがってねぇんだろ?」
「…その件につきましても、現在調査中です」
俺の問いかけに答える部下の声を聴きながら、資料に目を通すが…こちらも
「大元は捕えたものの…死柄木をはじめとした実行犯らは丸々取り逃がした…とびきり甘く採点したとして…痛み分けといったところか?」
「馬鹿野郎。
自らを安心させたいのか、1人の参加者が口にした
「オールマイトの弱体化が世間に晒され、もう今までの
「たった1人にもたれかかってきたツケ…だなぁ…」
誰かが漏らした呟きに頷きつつ、俺は本題へと入る。
「正直言って、俺は恐れているよ。最初期…雄英高校を襲撃した際のプロファイリングじゃ、
「保須市での件といい、
「オールマイトが崩れ、以前にも増して抑圧が無くなろうとしている今…確実に言える事は、奴を…
「我々警察も、『
そう言い終えると同時に室内を沈黙が包む。それを破ったのは―
「会議中失礼します。護送部隊より連絡が入り、
会議室へ入室してきた部下の報告。何の妨害もなく、奴を特殊拘置所へ収容出来た事に、僅かながら安堵の声が上がるが…
「ですが…その…」
部下が躊躇いがちに報告した…オール・フォー・ワンは
そんな怪物を捕えられたのは、数少ない成果…と言って良いのか悪いのか…
オールマイトside
戦いの後、警察病院に搬送された私は…処置室へ運ばれる途中で、
私が意識を取り戻したという連絡を受け、次々と病室へ入ってくる吸阪少年、緑谷少年、グラントリノ、塚内君、そしてデヴィットとメリッサ。どうやら、皆近くで待機してくれていたようだ。
「俊典…今まで良く頑張った」
「いえ、私の力だけではありません。皆の助けがあったからこそ、この勝利は掴む事が出来ました」
グラントリノの声にそう答えた私は、デヴィットとメリッサの方を向き―
「デイヴ、そしてメリッサ。君達の作ったアイテムのおかげで、吸阪少年と緑谷少年は命を拾う事が出来た。本当に…感謝しているよ」
深々と頭を下げた。
「頭を上げてくれ、トシ。お礼の言葉なら、2人から十分に貰っている」
「そうよ、おじ様。それに、私達は私達に出来る事をやっただけ。何も特別な事じゃないわ」
もっとも、2人は特別な事をした等一欠片も思っていなかったようで、笑ってそう返してくれた。私は2人の笑顔に笑みを返しつつ―
「皆…聞いてほしい。私の中の『ワン・フォー・オール』、その…残り火の事だ」
静かに呼吸を整え、
「
「
出久side
「残り火が…残っておるじゃと!?」
「はい、自分でも不思議なのですが…確かに、残っています。制限時間にすると、15分ほど…それもこれ以上小さくなる気配が、無いのです」
驚きの声を上げるグラントリノに対し、戸惑いながらそう答えるオールマイト。
「パパ、“個性”の専門家としての見解は?」
「流石にこれまで前例のない事例だ…仮説を立てようにも、情報が少なすぎる…」
「…そうね。今のままだと、突拍子も無いようなトンデモ説すら出せそうにないわ」
メリッサさんとシールド博士は、分析を試みて頭を抱えている。そんな中―
「あ、あの…」
僕は静かに手を挙げていた。
「どうした? 出久」
「うん、実は…あの戦いの途中、『浮遊』と『黒鞭』が覚醒した時に…夢の中で話をしたんです。歴代の『ワン・フォ・オール』継承者、その内のお2人と」
「2人…お師匠と、『黒鞭』本来の使い手…だね?」
オールマイトの言葉に僕は頷き、夢の内容全てを話していく。そして―
「最後にオールマイトのお師匠…志村さんから伝言を預かったんです。オールマイトと、グラントリノに…」
先々代の『ワン・フォー・オール』継承者、志村菜奈さんからの伝言を口にした。
-俊典。長い間、よく頑張ったな。『ワン・フォー・オール』を磨き上げ、私達の悲願をよく叶えてくれた。お前は、私達の誇りだ-
-お前の中に残ったその火は、頑張り続けたお前への、私達からのささやかな
「お師匠…お師匠っ!」
-空彦。俊典をよく鍛えてくれたね。ありがとう。あとは私の分まで、長生きしなよ-
「志村の奴…」
志村さんからの伝言に、オールマイトは号泣し、グラントリノは苦笑いしながら、涙を拭う。
「力を蓄え、別の人間に譲渡する“個性”『ワン・フォー・オール』。トシが緑谷君に譲渡した際、全て移る筈だった力の一部が、トシの中に残留していた。残り火ではなく力そのものだから、これ以上は消耗しない。という事か…」
シールド博士が半ば独り言のように仮説を呟く間も、オールマイトは泣き続け、一頻り泣いたところで―
「………お師匠や、歴代の継承者の皆さんのおかげで、僅かにでも力が残っているのならば、私にはまだやらねばならぬ事がある」
「死柄木弔。志村の孫………か」
グラントリノも、オールマイトの覚悟を察したのか…どこか遠い目をして、死柄木の名前を口にしている。オールマイト…まさか…。
「
「ああ…志村は、夫を殺されていてな。我が子をヒーロー世界から遠ざけるべく、里子に出している」
「儂や俊典には、『私にもしもの事があっても、あの子には関わらないでほしい…』と念を押された……」
「故人との約束が仇に…やるせないな…」
塚内さんの言葉に、僕や雷鳥兄ちゃん、シールド博士達が静かに頷く中―
「お師匠がせめて平穏にと決別した血縁…! 私は死柄木を見つけなければ…見つけて、彼を…」
オールマイトは拳を握り締めながら、決意を口にしかけ―
「駄目だ」
グラントリノに止められていた。
「見つけてどうする? お前はもう奴を
「………」
グラントリノの指摘に、オールマイトは言葉を失い―
「死柄木の捜索は、これから儂と塚内でやっていく。お前は雄英に残って、すべき事を全うしろ。平和の象徴でいられなくなったとしても、オールマイトはまだ生きているんだ」
「……はい」
死柄木の件は、グラントリノと塚内さんに一任する事で、一応決着した。
AFOside
「やれやれ…死にかけの老人1人に、大層な対応だね」
何重もの拘束に加え、無数のセンサーとカメラで監視された独房の中で、半ば呆れたように呟く。
私をここへ運んだ刑務官が、『死刑すら生温い程の罪人が行き着く場所』と言っていたが…たしかに
「所詮は
この監獄の関係者が耳にしたら、間違いなくひっくり返るような事を静かに呟き、体の回復に努めていく。
オールマイト。今回私は君に敗れ、物語の第一部はこちらの敗北で幕を閉じた。だが、これはあくまでも第一部。カーテンコールはまだまだ先だ。
私を超える悪の帝王となるのも、時間の問題だ。
「人類史上最高の巨悪となったあの子を前にした時、君や君の弟子達がどんな反応をするのか…楽しみにさせてもらうよ」
第二部の幕開けは、もうすぐだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
昨年の1月に連載を始めて約1年と10ヶ月半。無事に第1部最終回を迎える事が出来ました。
これも偏に読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
近い内に第2部の連載を開始する予定ですが、もしかしたら幾つかアイデアが浮かんでいる作品を先に執筆するかもしれません。
アイデアに関しては、活動報告に記載しますのでご覧いただき、ご意見などいただければ幸いです。