黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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今話から停止教室編。
拙作から抜け出せないなと書いて、読み返して、落ち込む。
そんな今日この頃。
勉強しなきゃ(使命感)


停止教室のバリアントロード
プールに入る日


 コカビエルの襲撃からしばらくが忙しかった。

 いや、コカビエルを引き渡した後から結構大変だったのだ。部長殿がサーゼクス・ルシファーの到着と共に、神の不在について問い、そのまま何故、俺の持つ二天龍が別の世界のモノであったのかということについて問い詰められた。それから何故神の不在を知っていたのかも。

 サーゼクス様の目の前での事だったので、苦笑いしかすることが出来ず。……口八丁で誤魔化せなかった。事実を織り交ぜた虚構でなんとか、といったところだ。イッセーのドライグに教えるのは失敗だった、と後悔しながらリアス部長のお叱りは受けた。まぁ、神の不在はそれとなく、天野に作り替えるときに不可抗力で知ったと誤魔化しておいたけど。

 

『もしかしたら君の持つ、幾つもの神器は全部異世界のものかもしれないね』

 

 ――というのが俺の神器に関するサーゼクス様の見解。見事に真実を当てられたのだが、態々取りに行ったのはバレてないだろう。……うん。

 

 それから――。

 

『――今日から悪魔となった。ゼノヴィアだ。以後よろしく頼む』

『……ホントになりやがった』

 

 まぁ、案の定ゼノヴィアが悪魔になった。傷心気味の所に付け入るあたり、部長殿のやり口がえげつない。流石悪魔と言ったところだろう。

 

 ――むしゃくしゃしてやった。

 ――反省はしているわ……でも、後悔はしていない!

 

 ゼノヴィアとリアス部長のお凸にチョップが入ったのは必然だったのだろう。実行はアーシア。大体部長が悪いのだけど、彼女も彼女だ。もう少しよく考えて行動すべきだった。でも行き場のない彼女に甘い誘惑をするリアス部長はマジ悪魔。

 一応、ゼノヴィアには人間に戻せるがと進言したが「一度決めたことだ、二言はない」と男らしい返事をもらったので何とも言えない。

 その日一日「私、怒ってます!」なオーラを振りまきながら、元気になったアーシアの姿が部室にあった。

 まぁ、でも怒っている彼女はアレでも、部長に言われてから三日ほど悪魔になるべきか悩んでいる。……のだが、人間やめる覚悟を決めるにしては早すぎるので、知っている者達からしてみれば少し自分の事言えないのでは、と首を傾げるところだ。

 自分が早計過ぎた事への罪の意識が無意識下にあるのかもしれないが。

 

 小猫ちゃんによって丸刈りにされたケルベロスと戯れてもいたので、神の不在に関するショックは表面上、大丈夫そうに見える。

 

 で、件の実行犯であるコカビエルは、今のところバルパーと共に『神の子を見張る者』預かりだ。

 天使、悪魔への謝罪がある際には処遇が決まっているだろう。

 

 

 まぁ、コカビエルとの戦後処理は概ねそんな感じだ。

 

 で、存在自体がオカルトな我らは全然オカルトの研究なんてする気は無い。

 ――今はせっせと冷たいプールに入るため、苔の生えたプールの掃除を頑張っていた。

 

 -------------------------

 

 報酬、プールを真っ先に使って遊んでいいという事で、本来生徒会の仕事であるプール掃除を任された。

 そして今は、プールに水が張られて自由時間。

 

「リクト、あなたの彼女連れてきてもいいわよ?」

「マジで?」

「ええ」

 

 んー。部長のお許しは出たけども。

 

「……じゃあ想い人が居る部長の前で、俺は人目を気にせずイチャイチャしていいんですね?」

「……やっぱり駄目。貴方たちイチャつき始めたら殺意を抑えられるかどうかわからないもの」

「はっはっは。まぁ、そういうだろうと思ったので連れてきませんよ」

 

 やはり必要以上に接触はさせない方がいいだろう。

 この前はそれとなく情報を晒して、黒歌の主殺しについて調べてもらったけど――彼女、『猫俣奏音』が黒歌であるということに、勘付いているだろうなってのはなんとなくわかる。

 そうなると副部長の朱乃さんも知ってる可能性は高い。

 ――証拠として二人の小猫ちゃんを見る目が違うし。

 

 ……あ。

 

「……イッセーとゼノヴィアがボイラー室に――ってもう行ってたか」

 

 目ざといな。そして早い。

 ボイラー室の扉に風穴空いてるけど、修繕費とかどうすんだろうね。

 いや、魔力で治せるから経費掛からないのかな。

 

「お義兄さん。あの……泳ぎ教えてもらっても良いですか?」

「構わんよ。……一つ、白音ちゃんに話しておきたいこともあるし」

「……はい」

 

 水の中に浸かり、体をほぐしてから小猫ちゃんが入ってくるのを待つ。

 

「まぁ、でもまずは泳げるようになってからだな。じゃ、まずは淵に腰かけてバタ足の練習」

「はい」

 

 ばちゃばちゃという音がプールの水際から響く。

 

「泡を立てないように動かすのがコツね。出来るようになったら今度はビート板を持ってきて」

「持ってきてます」

「そっか。なら十分、いや五分くらいかな。バタ足しててね」

 

 はい、と頷いて小猫ちゃんは足を動かす。

 水の中での足を動かすコツを覚えたようで、水面があまり波立たないようになっていく。

 もういいだろう、と止めさせて水の中に浸からせた。

 

「……お義兄さん、それで話っていうのは……」

「あぁ、うん。まずは白音ちゃんに、先に謝らないといけないことがあるんだよ」

「はぁ……。何か私に悪い事でもしたんですか?」

「まぁ、気づいてはいないみたいだけどね。俺がさ、君のお姉さんに向ける好意じゃないけど……ヒトとして、俺の事は好きかい?」

 

 もう止めていいよ、と言ってバタ足を止めさせる。

 ビート板を持って彼女はプールの中に入った。

 

「ええっと。……まぁ、それなりには。……それが何か?」

 

 さて、言わなきゃいけない。

 ……俺は過ちを認めて。彼女には俺の犯した過ちを認識させるべきだ。

 

「……実は、恋愛から親愛の感情になるようずらして、思考を誘導した。白音ちゃんが、俺に恋心というべき感情を抱かないようにした」

「その、急な話で驚きなんですが……それは」

「最低で最悪で、吐き気を催す程邪悪といっても過言でない、洗脳行為に近い行いだよ」

 

 リアス部長も兵藤家のご両親にやっていたが、アレと同じ行いだ。

 直接洗脳して居るわけではない分、痕跡も跡形もなく残らないため、自分から明かさない限り判らない。

 

「聞かせてください。……どうしてそんなことをしたんですか?」

「兵藤みたいに、俺は欲望に忠実な悪魔じゃないんだ。……いや、確かに黒歌一筋だし、俺は全力をもって彼女を愛したい。そういう欲望はある。……でも別の誰かにも愛を注ぐなんてこと、俺には出来そうになかったんだ。だから」

「……私が、お義兄さんの事を好きにならないよう――あのライザー戦前の合宿の時にしたんですね」

「あの時、格好よく見えたって言ってたね」

「はい。先輩がかっこいいなぁ、と思ったのに……でもなんだか異性として好きだって思えなくて」

 

 ずらすということ。

 それは強力な薬には副作用があるように、ずらすモノに引っ付いているモノが多く、大きいほど後になって影響が出てくる。

 都合よく、無かったことに出来ることもあるけれど……特に人の心、考え方が関わってくると、どうしても関わった者達は違和感を覚える。

 違和感を感じないという風にずらすことが出来るが……一つ一つをずらすという事は面倒な事この上ない。

 仮に全てを都合が良いようにずらしたとして、最終的には、概念をずらしたという事になる。

 概念をずらすことは理を変えるという事。

 万人が黒を白だと何の疑問を抱かず、思うようになるということだ。

 誰も気づくことのできない矛盾を内包してしまう。

 この矛盾は目に見えるモノの方が小さく、目に見えないことへの影響が大きく。

 『ずらしの能力』はバタフライエフェクトのようなもので、『ずらす』ということだけでは完璧ではない。

 ……だからなのだろう、自分が『私』になったのは。『ずらせる』ようになり、『揺らぎ』になった。

 でも『私』が『私』のまま人になることは不可能だったのだ。

 そもそも、人から外れた存在である『(揺らぎ)』が人になろうだなんて、聞けば呆れるほど無理な話だ。

 だからこそ『私』は妖怪が混じっているとはいえ自身を人に『ずらし』、変えたんだろう。

 

「それは、俺がやったんだ。……だから、改めてごめん。いや、ごめんなさい。俺は……人として、やっちゃいけないことを白音ちゃんにやってしまった。……許してくれとは言わないけど、どうしてやったのかはわかって欲しい……」

「……そうですか」

 

 自分勝手で、利己的で。自己満足の塊である自分。

 白音ちゃんに謝る事もまた、自分の都合だ。

 自分自身が罪の意識から逃れるため、ケジメをつけるためなのだ。

 

「別に良いですよ、お義兄さん。こうしてちゃんと言ってくれましたし、何よりも悪魔になるくらいお姉ちゃんの事が好きなのはこの前わかりましたから。……だから、余り自分を責めないでください」

「……でも」

「でも、なんて言わないでください。私が許すって言ったら許すんです。それに間に入る余地が無いくらい二人とも好きあってるのに、私がお義兄さんの事を好きにならない方がいいに決まってます。――先輩の力でお姉ちゃんに関わる事を解決しないのも、何か理由あっての事なんですよね?」

「あぁ、そうだよ。この世の出来事、良し悪し問わず解決できる。完結させれる。でもそれをやってしまったら全てが無意味、無価値で終わらせてしまう」

 

 黒歌が白音ちゃんのため、主殺しを決意して殺した事。

 それを、ちょっと「無かったことしよう」と思って第三者である俺が解決するということは、黒歌の行いを否定するということだ。

 ――人が人らしくあるために。

 自分が自分らしくあるためには、七大罪の「怠惰」を甘んじてはいけない。

 

 『揺らぎ』である『私』が自分と同じように黒歌を愛したのは、人になりたかったからだ。

 考えることを出来るのが人だ。色々な理不尽を抱える世の中でも愛の意味を知ることが出来る生き物。

 『(揺らぎ)』はそんな、人になりたかった。

 

「……甲斐性さえあれば、こんなことしなかったと思う。……本当にごめん」

「別に、私が先輩のこと異性として好きだなんて思った事無い(、、)ですし、謝らないでくださいって。あ、でも勿論、先輩の思惑通りお義兄さんとしてはかなり好きですよ?」

「……うぐぅ」

「さぁさぁ、唸ってないで泳ぎを教えてくださいお義兄さん」

 

 しばらく弄られるな、と思いながら小猫ちゃんを見ると、くすくすと笑っていた。

 ため息を吐いて、朱乃さんのイッセーへの悪戯が原因で起きた部長職二人の喧嘩を見て、もう一度ため息を吐いた。

 

 

 余談だが、この後滅茶苦茶会長に怒られた。





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