【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
「お久しぶりね……」
港に接舷された聖グロリアーナ学園艦から、しゃなり、しゃなりとゆっくり下船してやってきた淑女の鑑は、ゆっくりと視線を合わせたまま真っ直ぐに、二回りほど小さい少女の下へ歩み寄って―――
「本日は直々の要請痛み入る」
「……どうも」
数メートル手前で割って入ってきた女性の射貫く様な視線に制止され、挨拶を交わす。一瞬だけ口元がヒクついていた辺りに被った淑女の仮面が伺える。体制を立て直すように紅茶を一口傾け、微笑んで見せた。
「では、本日は良い勝負をしましょう?」
差し出された手に一瞬逡巡の様子を見せる女性に、淑女は微笑みを崩さない。
「こんな言葉をご存知?『握り拳とは握手はできない』」
「インドの政治指導者、マハトマ=ガンジーの言葉ですね」
淑女の斜め後ろに控えていた少女が淑女の言葉を補足し、女性は戸惑うようにゆっくりと、ただし確りと握手を交わした。
その様子をじっと見つめていた少女はゆっくりと歩み寄って、言った。
「宣戦布告な雰囲気のとこ悪いが、
「―――それはできれば先に言って欲しかったのだけど……あなたたちと関わると調子が狂わされますわ……本当に……」
困ったような苦笑とともにやってきた小柄な少女とその後ろに控える二人の女生徒を紹介する小さな少女に、重い重いため息を吐きながら、淑女は微笑みの仮面をかぶり直すのだった。
>> Side Change (Maho)
「では、本日は良い勝負をしましょう?」
そう言って手を差し出すダージリンに、握手を返すべきか迷った。
というのも、私は別に『大洗女子学園戦車道科の代表』というわけでもない。
そんな私が、さも『学園代表です』という態度で握手に応えて良いものか……?
そんな風に逡巡していると、ダージリンがいつものように「こんな言葉をご存知?」と格言を披露して、一歩後ろに引いているオレンジペコが補足する流れを行う。ダージリンがいつも行っているルーティンの様なものなのだろうが、言っている意味は甚だ理解の範疇外にある。
“要は「細かいことはいいんだよ」という意味なのだろう”と判断し、手を取り握手を交わす。にこやかに微笑むダージリンに、笑みを返すことにした。
本来、西住流としては無駄なことだが、幸いにして私は今【西住流ではない】ので問題ない*1
わずかに口角を上げて笑みを見せると、一瞬強張った様子を見せたのは少々不審ではあったが、すぐ後ろに歩いてきたエミの言葉に所在無さげな様子を見せるダージリンからは、強張りはなくなっていたので気のせいだったのだろう。
ともあれ、今回の練習試合の目的は【現状把握】のため。
そのため、ダージリンと相談した内容で試合を行った。
1試合目は「私及びティーガーⅠ、そしてフリューゲル小隊の乗員と戦車を封印した八九式、Ⅳ号、Ⅲ突、M3リー、38tの5輛での試合で「黒森峰勢の戦力が無い状態での自分たちの力量をしっかりと把握してもらう」ものとする。
ただしこれだけで終わってしまうのでは、ダージリンたち聖グロリアーナの人々を小間使いにしてしまっただけで終わってしまうので、ダージリンに「第2試合」を提案した結果、快く受諾された。何やらエミが言いたげな様子だったが、ダージリンがエミに対して宣戦布告をやり直していたため尋ねることができなかった。
1試合目は―――惨敗と言って良い。作戦参謀が立てた作戦は立案としては妥当ではあるが、【教科書通り】と言ってよいお手本のような作戦で、ダージリン相手では流石に通用せず、足並みのそろわない一斉砲撃はまばらな砲撃に終わり、戦線離脱者も含めて―――『散々な結果だった』と言えよう。最後まで粘っていたのは生徒会長の38tだったが、砲威力が低すぎてマチルダを始めとした聖グロリアーナの戦車群相手ではダメージと与えられなかった。戦車の攻撃力の強化は最重要課題になりえるかもしれない。
そうして満を持しての2試合目。
“ティーガーⅠとヤークトティーガーの2輛に対し、聖グロリアーナは大会規定上の決勝戦での規定数。つまり20輛までならば自由に参加させて良いという特殊ルールによるエキシビションマッチ”
にこやかに微笑みながらエミと談笑しているダージリンと、いつもの調子でダージリンを揶揄うエミの様子に少々気を揉んだが、エミがダージリンに対してい抱いている感情は『倒すべき敵』だと以前に言っていたし、ダージリン自身も己の本心よりもプライドの方が先に立っている。
エミがあそこまでざっくばらんに対応している姿というのはとても貴重なので感謝すべきという考えと、それとは別に何故その雑な対応を私に向けてくれないのかというそこはかとない嫉妬を感じなくはない。
大体にしてエミは私に対してどこか線引きをしている感覚が否めない。親友であり、戦友であり、ライバルであるという認識は共有されていると思っているのだが―――
そういう距離感を感じさせないあけすけな立ち位置はどちらかというと
千代美の方が―――
『作戦は?』
隣から聞こえるエミの声で我に返った。現在位置はティーガーⅠの車上。
戦場で居並ぶ2輛の“虎”と、それを迎えるようにそびえる戦車で構築された城壁を前に―――
「勿論。“いつも通り”だ」
「……だろうねぇ」
―――そんな風にエミと語り合い、何の憂いもなくただただ真っ直ぐ突撃した。
この背に『翼』の助けがあるならば、いつどこの戦場で、誰が相手であろうと私は舞える―――!!
*******
>> Side Change (Darjilling)
“得難い経験を得るために”
そう、紅茶の園のお歴々を説得して、こちらから声を掛けた。
―――西住まほ。黒森峰の“虎”
―――天翔エミ。黒森峰の“虎の翼”
そして―――あと一人。
黒森峰最強伝説となった10連覇を達成した結果、【黒森峰には勝てない】と、周囲の心が圧し折れるのはどうしようもないことであり……
『何か最近おかしいんだよ。相手の手ごたえが“無さ過ぎる”って言うか…‥』
そんな風に、何もわかっていない顔で訊ねて来た彼女に、思わずつっけんどんな返事で返してしまった。
そうして、黒森峰が他の学園艦との練習試合を断るようになり―――
―――ある日唐突に齎された情報は、
【戦車道を再開した学園艦に、西住まほと天翔エミが在籍している】というものだった。
当然、その日からありとあらゆる情報網を使い、黒森峰と大洗学園艦について情報を探り続けた。その結果として分かったのは【天翔エミと西住まほが揃って黒森峰から離れ、大洗女子学園に転校している】という情報と、【黒森峰内部で西住まほと天翔エミを失ったことで混乱が起きており、最近対外試合を受けていないのは内部で改革を行っているため】というものだった。
一体何がどうなっているのかと混乱もしたけれど、それと同時にこうも思ってしまった。
――“今なら弱体化した黒森峰を倒して、大会優勝も夢ではないかもしれない”
そんな風に思ってしまった自分への自己嫌悪とともに、私は気づいてしまった。
―――【今回の“これ”は、それが目的なのだ】と。
気づいてしまった後にやってきたのは、【怒り】だった。
『強者に弱者の気持ちなどわかるはずがないでしょう?』
そう言ったのは過去の私で、
その後で、天翔エミと西住まほが揃って黒森峰からいなくなって、
そして、弱体化した黒森峰相手ならばワンチャンスをモノにできるのではないか?なんて、希望を持っている自分の姿に、他の学園艦の戦車道乙女たちの姿が重なって見えた。
「―――何処までも……人を虚仮にするのが得意な娘たちですのね……!!」
憎しみと悔しさと哀しさと虚しさに塗れたそんな言葉が口の端から漏れる。
幸いにもそれを聞いた人物は誰もいなかった。
*******
大洗学園艦との練習試合で“彼女”の姿を見て、衝動的に踏み出していた。
彼女を前にして、何を言おうとしていたのかは今考えてもわからない。
「ごめんなさい」なのか「馬鹿ですか?」なのか「ふざけるな」なのか。
幸いにというか、無作法にもというか、彼女の前に踏み出す数歩手前で遮るように前に出てきた西住まほに静かに差し止められた。まるで守護るような姿にほんの少しだけ苛々した気持ちが過る。それでも淑女の仮面は守り通し、握手を交わす。
……ニヤリと、口元だけ歪に曲げてほほ笑む姿に死神を見て、一瞬だけ淑女の仮面が剥がれかけて、「ひっ」と小さな悲鳴を上げそうになった。抑え込んだ自分を本当に本当に本当に褒めてやりたい。
―――もう少し早く説明なさい天翔エミ。もしくはご自身が釈明なさいよ西住まほ口下手にも程があるでしょう?!ああもう私たちの向こう側で所在無さげにしている生徒会長の角谷杏さんがどうしたらいいか困ってるじゃないのこの空気をどう取り繕えというのよ!!?
……正直、淑女の仮面をかぶり続けきちんと挨拶を交わして場を纏められたことは、今年一年自分を褒めたいくらいだった。
その後西住まほと天翔エミも交えて、角谷杏さんとミーティングという名の『詰め』を行った。
第一試合で胸を貸し、第二試合で胸を借りる。
そういう取り決めを行い、恙なく第一試合を終える。
総評としては―――『拍子抜け』の一言に尽きる。
戦おうという意思が強い組、弱い組がないまぜ状態で、教本通りの隊長の下でまとまりのない戦いをしている。まさに初心者。
こんな状態の“お荷物”を率いて大会に挑む。その心境たるや想像できない。
逆に、『何故、そうまでして戦車道を再開して、大会に挑むのか?』という理由が気になった。
第二試合は―――散々たるものだった。
堅固に固められた防壁を、砲撃と突撃で滅茶苦茶にぶち抜かれ、寸断された戦車群を突撃する戦車が刈り取り、遠間から狙う砲撃支援が突撃する戦車を狙うこちらの戦車を各個撃破していく。たった2輛の戦車にボコボコにされていく自分たちの布陣に、もう幾何も猶予のない戦車道大会への期間にやるべきこと、すべき対処という素晴らしい課題が積み上がっていく。問題があるとすれば、【時間】。圧倒的に足りない。
嗚呼全く―――
「大会で戦う日が楽しみになるじゃありませんの……!!」
《えみにっき》
――月――日
時は20XX年。大洗は、戦車道の熱に包まれた!!
履帯は切れ、店は大破し、全校生徒の心が圧し折れた―――かに見えた!
しかし!原作メンバーの心は折れていなかった!! (千葉御大感)
聖グロとの練習試合で大洗原作メンバー(マイナスみぽりん)で戦った結果、
半端なくくそみそな結果で終わり、ボッコボコのボコにのされて見学メンバーが
ドン引きしていたところに第二試合ってことで聖グロのメインレギュラーがもう
ガッチガチのガチでバチバチにキメてきた布陣を
ヤークトがぶち抜きーの
ティーガーが突撃ーの ぶち抜き―の とつげきーの(エンドレスワルツ)
一部の恐慌状態に陥った若手の聖グロ車輛が
「市街地なら小回りの利かないヤークトの砲撃から逃げられるかも……?」
という希望に縋って逃げ込んだとこに高台からドッカンドッカン砲撃しかけたり、
第一試合では市街地まで行かなかったので原作で破壊されてた店舗が無事なままだったのが原作再現とばかりに巻き込まれて吹き飛んだり、
それを見て「これで建て替えできるぅ!」と狂喜乱舞する爺様がいたり……。
第二試合では逆にたった2輛の戦車相手にボロボロになった聖グロメンバーだったが、ダージリンが滅茶苦茶イイ笑顔で「得難い学びを得ましたわ」とか言ってたので、それほど気にしないでも良いんだろう。
それはそれとして、生徒会長には色々と気を引き締めるきっかけになったっぽいのか、より練習に気合が入る様になったのと―――
―――残ってた生徒たちが原作メンバー以外戦車道専攻を諦めた。
まぁ、実質ノーダメなのはいいのだが……弊害っぽいバタフライエフェクトがひとつ起きた。先も書いたが【原作メンバー以外の生徒はいなくなった】のだ。
……この時期に加入されるのは予想外すぎる……風紀委員とねこにゃーさん……!!
――月――日
一足先に三式中戦車チヌが自転車置き場から解放された(ゴマダレー)
同時にねこにゃーのネッ友のぴよたん、ももがーも参入した(ゴマダレー)
あと風紀委員のために沼なのか池なのかわからないとこに沈んでたルノーB1も回収することになった(ゴマダレー)
戦力拡充はいいことなのかもしれないが……これサンダース戦に確実に影響することになるやつやで工藤……おケイさんの「フェアプレイ精神」があってこそ5輛しかいない大洗がほっそいほっそい勝利の糸を勝ち取ったのだし、この分だと「アンフェアよね」が起きない可能性すらある。
―――そんな考えを巡らせていた俺を今まさにぶん殴ってやりたかった。