カードファイト!!ヴァンガードG IF 〜夜薔薇の先導者〜 作:バンドリーマーV
シオン(東雲さんは、僕のことを詳細までリサーチしていた…僕は、彼の顔と名前しか知らないのに…)
試合前、偶然対戦相手の東雲ショウマと出くわしたシオン。東雲は至って紳士的にシオンと握手したが、その情報収集に隙はなかった。
MCミヤ『チームトライフォー、綺場シオン選手対、チームディマイズ、東雲ショウマ選手!試合開始です!』
アン(ここまでの二人、性格が悪いにも程があった…この人は…?)
シオン「フィールドは、東雲さんが決めて頂けますか?」
東雲「いいのかい?」
シオン「先程のお詫び、という程のことでもないですけど…」
東雲の服には、シオンと廊下でぶつかってしまった時にできたコーヒーのシミが。
東雲「では、遠慮なく」
会場の照明が消える。
東雲「光あれ」
東雲が指を鳴らせば、青い光が灯る。
東雲「ユナイテッド・サンクチュアリ、奈落の神殿」
いよいよファイト開始となる。
「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」
シオン「《閃きの騎士 ミーリウス》!」
東雲「《革の戒め レージング》」
シオン(ジェネシスか…)
そして、ファイトは進み…
シオン(読まれていた…僕の攻撃が…)
東雲「フッ…仕方ないさ。時間が無かったんだってね?今回」
シオン「そんなことまで…!?」
東雲「当然さ、君だって調べていたはずさ。時間さえあれば」
シオン「ッ!」
東雲「解き放て、滅びを告げる狼の顎門。ライド、《神界獣 フェンリル》!」
更に…
東雲「ジェネレーションゾーン、解放」
【コスト《幸運の女神 フォルトナ》】
東雲「フハハ…!黄昏の世界に…終末の裁きをッ!ストライド、ジェネレーション!《大天使 ドゥームブレイス》!超越スキル、ソウルチャージ!」
スキルで支払ったソウルを補充しつつ、ドロップしたカードを再コール、更にパワーアップまで。
クロノ「使った分のソウルを毎回補充出来るなら、息切れなしでスキルが使える。しかもユニットまで戻ってくる…!」
アン「こんなのがターン毎に続いたら…!」
アタックが続く。
東雲「俺みたいな庶民にはわからないけど、大変なんだろうなぁ…あの綺場一族の御曹司ともなればさ。」
シオン「ッ!」
ダブルクリティカルトリガーのアタックが決まる。
「言い訳はしません。みんなそれぞれ忙しいのは一緒です!」
「謙虚だな。だからここまでやって来れたんだろうねぇ。尊敬するよ、心から。でも不思議だなぁ。綺場の跡取りでフェンシングの選手。それだけでも大変なのに、どうしてヴァンガードまでやろうと思ったんだい?」
「特別なんだ…言い訳はしない。僕は、僕自身のために、必ず勝利を掴んでみせる!」
シオンのターン。
シオン「ストライドジェネレーション!《閃火の聖騎士 サムイル》!」
スキルでユニットを展開しつつ、サムイルのスキルで追加ダメージ。
東雲「すべてを取る…か。すごいなぁ君は…でもさぁ…」
完全ガード。
東雲「可能なのかなぁ、そんな中途半端」
シオン「ッ!?」
アン「…ッ!」
アタックは全て防がれ、シオンは動揺、アンは拳を握り締める。
アン(この人も…ッ!)
「ホントはとっくに気付いているんだろ?君では俺に勝てない…!ストライドジェネレーション!」
再びドゥームブレイスにストライドし、ユニットを展開、パワーアップする。
東雲「これが最近のお気に入りでね。大きな大会では使ってるんだ、いつも」
シオン(情報さえあれば、対策もできていたはず…!)
アタックが次々と決まる。
東雲「仕方ないさ、忙しかったんだ。準備が足りなかったんだよ、今回は」
シオン「ち…違うッ!」
アン(また、好き放題に…ッ!)
トコハ「何やってんのよ…!こんなの全然、アンタらしくないじゃない…!」
クロノ「しっかりしろ!お前のファイトを取り戻せ!一緒に上まで行くんだろ!」
東雲「新導クロノに、日下部アンさん、だっけ?君とチームを組んだことで、彼らは格段に強くなったな。俺の仲間もあっさり負けてしまった。きっともっと強くなる…ヴァンガードに全てをかけられるからね」
シオン「違う…言い訳はしない…!僕は…っ!すべてを掴んでみせる!僕は、綺場シオンだ!」
《神聖竜 セイントブロー・ドラゴン》にストライドし、猛攻を仕掛けるが、トリガーは引けず、防ぎ切られる。
東雲「ラストターンを君に」
《神界獣 フェンリル》の一撃が、アルトマイルに決まる。
東雲「残念だなぁ。この程度だったんだな…君のヴァンガードは」
シオン「──ッ!」
決着…チームは敗退となった。
シオン「…すべて僕の責任だ。すまなかった」
トコハ「やめてよ、そもそも最初に負けたのは私だし…!」
クロノ「誰の責任とかじゃねぇ、俺達はチームだろ…!」
アン「…っ…!」
リン「よくやるわぁ…お気に入りのシャツだったんでしょ?それ。そこまでするような相手だったの?」
東雲「天翔ける鳥を籠で飼うためには、どうすればいいと思う?」
リン「?」
東雲「──翼を折るのさ。また会える日が、楽しみだなぁ…」
アン「……」
しばらくして、アンは一人外を歩いていた。
シユリ「アンちゃん」
アン「あ…シユリさん。いつの間にいなくなってたから、どうしたかと…」
シユリ「ご、ごめんね、急用でさ…試合、最後だけ見てたんだけど…その…」
アン「──終わらせない」
シユリ「え?」
アン「…終わらせない…絶対に…
──許さない」
シユリ「──ッ!?」
ゾワリと寒気が走る。アンは無表情ながら、その目は憎悪に燃えている。
シユリ「…あ…ま、待って…」
我に返った時には、アンは既に歩き出していた。遠くなる背中を追おうとしても、足が震える。
ルナ「シユリ」
シユリ「あ…る、ルナ…」
シユリにルナが歩み寄る。
ルナ「大丈夫?」
シユリ「…怖かった…」
ルナ「…昔から、キレたら一番怖い」
シユリ「え…?」
ルナ「…今は何言っても聞かない…けど、注意しなきゃ…危ない、かも…」
帰り道。
アン(…私の友達を、あんなに、傷つけて…絶対に、許さない…ッ!強くなって、あいつらなんて、叩き潰して…ッ!)
デッキを握り締めた、その時。
『強くなりたいのか?』
アン「ッ!?」
デッキからカードが宙を舞い、放たれた光が視界を覆い尽くした。
アン『──!…ここは…?』
気付けば、アンは夜空の下、海賊船の甲板にいた。
『よぉ』
アン『!』
振り向くと、そこにいたのは…
アン『…ナイト、ローゼ?』
長い髪をなびかせる女海賊…ナイトローゼがいた。
ナイトローゼ『あたし達の先導者。お前はどうしたいんだ?』
アン『…私は…人を見下して嘲笑うような奴らが大嫌いです。何より…私の大切な友達を傷つけた奴らは、絶対に許さない…!私がこの手で叩き潰してやりたいッ!友達と同じ苦しみを、あいつらにも味わわせてやりたいッ!』
ナイトローゼ『──ハハッ!なるほどねぇ。大人しいいい子ちゃんに見えて、案外海賊向きなのかもねぇ。あたし達を選んだ理由が何となく分かったよ』
ナイトローゼは笑った後、表情を引き締める。
ナイトローゼ『だったらぶっ潰せ』
アン『!』
ナイトローゼ『その辺のゴロツキみたいな海賊と違ってな。誇り高い海賊ってのは、身内を傷つけた奴は絶対に許さない。それに…』
ナイトローゼ『気に入らねぇもんはぶっ潰す。それが海賊ってもんだろ』
アン「──ッ!」
ハッと我に返れば、元の帰り道。デッキは手の中にある。
アン(…気に入らないものは、ぶっ潰す…)
物騒な台詞が、今はやけに魅力的に思える。
「よ~お」
アン「…?…!」
声をかけられて顔を上げれば、見覚えのある三人組。アンは顔を顰める。
アン「…イカサマ野郎…!」
かつてクロノに暴力の濡れ衣を着せた、チームトリックトリックの三人だ。
「お~お~、怖いですねぇ。けどデカイのは口だけだよねぇ」
「中継見たぞ~?お前のチームボロ負けしただろ、情けね~!」
「残念だな~、弱いチームメイトのせいで負けちゃってさぁ」
アン「…は?」
──その言葉で、アンの中で何かが切れた。
アン(こいつら…ッ!イカサマして、新導君に濡れ衣着せて、綺場君とトコハちゃんまで馬鹿にして…ッ!許さない…許さない、許さない、許さないッ!!)
「よ~し、計画開始ですね…!」
「来い…!」
トリックトリックの一人が、アンの腕を掴んで無理矢理引っ張り…
アン「──ッ!」
「ぎゃああッ!?」
逆にアンが背負い投げした!
「いってぇ!?」
「「うわぁっ!?」」
アン「やることが小物くさい…。こう見えて道場通ってた時がありまして。特別強いわけじゃなかったけど、普通の人相手なら余裕です」
「くっそぉ…!これじゃあこいつらに痛い目見せる計画が…!」
アン「…へぇ、私の友達にも手を出すつもりなんだ…」
…やっぱりこいつら、潰さないと。
アンはデッキを取り出す。
アン「そうだなぁ…私に勝てたら、大人しく殴られてあげてもいいかなぁ」
「は、はぁ…!?」
アン「イカサマは、分かりますからね?…あぁ、イカサマしなきゃゲームにすらならないんだ?」
目の前の卑怯者達への怒りから、普段なら絶対出ないような言葉が、驚くほど自然に出る。
「ふ、ふざけんなッ!?やってやらぁっ!」
トリックトリックのリーダーがデッキを取り出し、ファイトが始まった…のだが…
ファイトは進み、お互いG3の中…
「はぁ、はぁ…!?」
アン「──大口叩いといて、呆気ないですね」
アン(…声が、聞こえる…)
カードに手をかけたアンの瞳に、虹色の光が輝いた。
『『『っ!?』』』
トリックトリックは、イメージに引きずり込まれ、気がつけばクレイの海賊船の中にいた。
『な、なんだよこれ…!?』
『あ、あれ…!』
『ひぃっ!?』
目の前に、ナイトローゼにライドしたアンがいる。
アン『──ストライドジェネレーション』
アンの姿が闇に飲まれ…《蝕骸竜 ジャンブル・ドラゴン》が、その巨体でトリックトリックを見下ろす。
『『『ひぃいいっ!?』』』
『『──ガァアアアアッ…!』』
ジャンブル・ドラゴンは、怨念のオーラを束ねた光線を、トリックトリックに向かって放った…!
『『『うわぁあああああああっ!?』』』
トリックトリックは為す術なく飲み込まれ…現実では6ダメージ目が通った。
「「「うわぁあああああああっ!?」」」
トリックトリックはその場にひっくり返る。
「あ、あぁああああっ…!?」
「ひ、ひぃいい…!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃ…っ!」
トリックトリックは涙と鼻水を垂れ流しながら
震え上がっている。
アン「……」
その姿を、目を見開いて見下ろすアン。クロノを陥れ、シオンとトコハを嘲笑った、許し難い卑怯者達が、目の前で震え上がっている光景を見て…アンが感じたのは、暗い喜びだった。
──あぁ、いい気味だ…!
久しぶりだ…長らく忘れていた感覚だった。
昔、こんな思いを感じた時があった…。
アン「…は…はは…あははっ…!」
口角が上がり、歪んだ笑みが浮かぶ。
アン「──アハハ…ッ!アハハハハハハハハッ!!」
《続く》