カードファイト!!ヴァンガードG IF 〜夜薔薇の先導者〜 作:バンドリーマーV
あと、ちょっとだけ新右衛門編を意識した描写があります(パラレルだけど)。
MCミヤ「FiVA主催!東京選抜VSユーロリーグ交流戦も、いよいよ大詰めだぁッ!」
MCミヤによる実況。大きなファイトスタジアムで、FiVA…ヴァンガード普及協会が主催する、ヴァンガードの国際交流戦が開催されていた。
アン「すごいですね…」
クロノ「あぁ…」
観客席のアン達は、ハイレベルなファイトの連続に驚くばかりだ。
MCミヤ「では最終戦の対戦カードをご紹介しましょう!FiVA本部所属の、シャドウパラディンクランリーダー!
かつて世界大会を席巻した、チームアブソリューツのメンバーでもある…!月城ルナ選手です!」
ルナ「……腕が鳴る…」
ルナの入場と共に、大歓声が上がる。
アン「ルナさんって、すごい有名人だったんだ…」
アンは知人の思わぬ一面に唖然としている。
MCミヤ「対するユーロ選抜!アクアフォースを相棒に、欧州リーグでトップクラスに上り詰めた、新進気鋭のファイター!ハイメ・アルカラス選手だ〜ッ!」
ハイメ「いえ〜いッ!」
ハイメも大歓声と共に入場する。
MCミヤ「さぁ〜勝つのは……どってぃだ!?」
ハイメ「行くよ、ルナ!」
ルナ「……望むところ」
満面の笑みのハイメ。ルナも珍しく好戦的な笑みを浮かべる。
「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」
───────
しばらくたち、ファイトは後半に突入していた。
ルナ「私のターン」
現在のルナのヴァンガード
【《撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン》G3 11000】
お互いグレード3。勝負はここからだ。
ルナ「ジェネレーションゾーン、解放…!」
ルナはGユニットのカードを手にする。
ルナ「黒き刃で、未来を阻むもの全てを斬り払え…。──ストライドジェネレーション」
《撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン》の姿が、天からの黒い稲妻に呑まれる。そして……
ルナ「──《真・撃退者 ドラグルーラー・レブナント》…!」
青白き刃の大剣を手にした黒竜が、その姿を現した…!
【《真・撃退者 ドラグルーラー・レブナント》G4 11000+15000→26000】
ルナ「……行くよ、ハイメ…!」
ハイメ「あぁ…!おもいっきり来なよッ!」
アン(……二人とも、笑ってる……楽しそう……)
ルナ「ドラグルーラー・レブナントのスキル発動…!リアガードの《氷結の撃退者》を退却させて、山札から《撃退者 ダークボンド・トランペッター》をスペリオルコール。自身とダークボンドにパワー+3000。
更にダークボンドのスキルで、山札から《恐慌の撃退者 フリッツ》をスペリオルコール…!」
【《真・撃退者 ドラグルーラー・レブナント》G4 11000+15000+3000→29000】
【《撃退者 ダークボンド・トランペッター》G1 6000+3000→9000】
【《恐慌の撃退者 フリッツ》G0 6000】
ルナ「アタック…!」
ルナの攻撃が決まっていく。
ハイメは一気にダメージを受けたが……
ハイメ「ハートに…、きたぁーっ!」
良い笑顔で叫ぶ。
ハイメ「流石だね、日本のエース!これが日本のヴァンガード!」
ルナ「ふふ…日本には、強いファイターが山ほどいるよ」
ハイメ「うわぁ~言うねぇ…!でも、俺もユーロリーグを背負ってきたんだ。簡単にアディオスってわけにはいかないよ!」
ハイメのターン。
ハイメ「俺のハートを震わせてくれたキミに、全力でこたえなくっちゃね!ジェネレーションゾーン、解放!!」
ハイメもGユニットのカードを手にする。
ハイメ「進め!我が導く運命の航路!!ストライドジェネレーション!!」
ハイメのヴァンガード《嵐を超える者 サヴァス》が光に包まれる。そして……
ハイメ「《天羅水将 ランブロス》ッ!」
【《天羅水将 ランブロス》G4 11000+15000→26000】
ハイメ「突き進め!ハートの燃えるままに!皆の思いを乗せて、打ち砕けぇえッ!!」
ハイメ怒涛の連続攻撃が決まり……ファイトは決着した。
「勝者、ハイメ・アルカラス選手〜ッ!!」
大歓声が上がる。
ルナ「負けちゃったか……ありがと、いいファイトだった」
ハイメ「こっちこそ!」
ルナとハイメは握手を交わした…。
───────
クロノ「………………」
数日後…町を歩きながら、クロノはルナとハイメのファイトを回想していた。
クロノ「俺だったら、どう戦う…?」
自らのクロノジェット・ドラゴンと、ハイメのサヴァスの戦いが頭に浮かび……
アン「何やってるんですか…?」
クロノ「ハッ!?」
クロノジェットと同じように拳を突き出しているところを、たまたま通りかかったアンに目撃された。
クロノ「な、なんでもねえよっ!?」(///)
アン(かわいい……)キュン…
アンがキュンとしていると……
クロノ「……ん?あれハイメか?」
アン「?……あ」
荷物を持ったハイメがキョロキョロとしていた。
クロノ「ハイメ?」
ハイメ「おぉ、アミーゴ!いい所に!ちょっとミミハンバイ頼むよ。」
クロノ「耳販売…?」
アン「道案内じゃないですか?」
ハイメ「そう、それ!」
クロノ「あ〜…」
───────
ハイメ「とうちゃ〜く!ココだ!」
アン「ここって…」
到着したのは、児童養護施設だった。
ハイメ「エミリオ!」
エミリオ「よく来た!遅かったじゃないか。心配しちゃったよ~、タントティエンポ(久しぶり)!」
そう答えた男性・エミリオは、この施設の管理者らしい。
ハイメ「元気そうだねエミリオ。ちょっと道に迷っちゃってさ。アミーゴに道案内してもらって…ん?」
クロノ「泣くな泣くな、ちょっとすりむいただけだろう?後で消毒してもらえ」
アン「あっ、私持ってますよ」
クロノが足を擦りむいて泣いている子供に声をかけており、それを見たアンが駆け寄る。
その近くでは、別の子供がなにやらもじもじと……
アン「?」
クロノ「あ…。あぁ待て待て!すみません、トイレの場所ってどこに…!」
そんなこんなで、クロノは慣れた様子で、率先して子供達の面倒を見ていた。
ハイメ「おぉ…アミーゴ、案外子供好き?」
クロノ「あ、いや……俺も前、こうゆう所にいたんでさ…慣れてるだけ。」
アン(……え)
ハイメ「…!……そっか、キミも…」
アン「………………」
───────
ハイメ「ハートにきたー!こっちも、全力でいくよっ!」
子供「望むところだ!」
ハイメ「ノーガード!」
子供「ノーガードかよっ!?」
庭で子供達とファイトするハイメ。アンがそれを見ていると……
少女「ね〜、おねぇちゃんもヴァンガードやるの?」
アン「え?あ、うん…」
少女「じゃあ私とやろ!」
アン「……うん、いいよ!」
そんな声が聞こえる中、クロノは建物の中でエミリオと話していた。
エミリオ「ハイメと出会ったのは、もう10年以上前になるのかな…。
僕はずっと世界中であの子達のような子供を助ける仕事しててね、
でもそろそろ歳だから、僕の実家のあったここに戻ってきて、みんなの面倒をみてるのさ」
クロノ「……俺のいた施設にも、ヴァンガードがあったらよかったのにな…」
エミリオ「……じゃあ、昔やれなかった分、これから楽しもうじゃないか!」
エミリオもデッキを取り出す。
クロノ「……はい!」
───────
……夕方、帰り道の橋の上。
ハイメ「グラシアス、アミーゴ!このゴホンは一生忘れないよ!」
アン「それをいうなら御恩です」
クロノ「まぁ俺も案外楽しかったし、気にすんな」
ハイメ「そーだねー、最後は一緒になって騒いでたもんね~♪」
クロノ「そ、それはお前だろ!?」(///)
クロノもアンも、子供達とのヴァンガードを楽しんでいた。
クロノ「……別にさ、俺も嫌な目にあったわけじゃないんだ。いじめられたとか、そういうのも無かったし。でも……」
アン「………………」
クロノ「……あっ、わりぃな暗い話して」
アン「い、いえ!お気になさらず…」
ハイメ「……俺もそうだったよ。エミリオと出会うまでは」
ハイメは、《嵐を超える者 サヴァス》のカードを取り出す。
ハイメ「エミリオにもらった、俺の宝物だ。こいつが全部、教えてくれた。何もかも変えてくれたんだ」
クロノ/アン「「…………」」
そう時。
ハイメ「ああっ!?」
近くを大型トラックが通ったことで風が起こり、サヴァスのカードが飛ばされ……
ハイメ「うおおおおおおっ!!」
ハイメは手すりから身を乗り出してキャッチしたが、バランスを崩してしまう。
アン「あぶないっ!」
ハイメ「クロノッ!」
クロノ「うおっ!?」
なんとかクロノにサヴァスを渡すが、体勢を戻すことはできず……
ハイメ「良かっ……たぁああああああッ!?」
アン「あっちょっと!?……ひゃあああああああああああああッ!!?」
クロノ「おぃいいいいッ!!?」
助けようとしたアンまでバランスを崩し、カードを受け取るのに踏み出した際に足を滑らせてその場に転んだせいでクロノの助けも間に合わず、ハイメとアンは川にドボンと墜落した。
クロノ「大丈夫か〜ッ!!?」
アン「ぷはっ…!な、なんとか…!」
ハイメ「ぷはっ!ご、ごめんアン!巻き込んじゃった…!」
アン「あっ、いえ大丈夫です…」
ハイメ「よかったぁ…!……ハッ!クロノ、カードは無事!?」
クロノ「えっ!?お、おう!」
ハイメ「あぁよかった…ぶあっはっ!助けてえ!アミーゴぉ!!」
アン「泳げないんですか…?」
アンの手助けで、ハイメも揃ってなんとか陸に上がった。
ハイメ「助かったぁ……グラシアス、アン…」
アン「いえ……寒っ…!」
クロノ「大丈夫か!?……うっ……!?」
アン「…?……なんで目を逸らすんですか?」
クロノ「……あっ、いや……」
アン「……なんですか?……ちょっと、あの…?」
クロノ「………………………………す、透けてる……」
アン「へっ?……あっ…!」(///)
濡れたせいで服は体に張りつき、体のラインが はっきりでているだけでなく、色の薄い服を着ていたのもあってうっすら下着が見えていた。
アン「……ば、ばかぁああああああッ!!?」
バチィンッ!!
クロノ「ぐはぁッ!?……り、理不尽、だ…」バタッ
アン「……あっ」
ハイメ「わぉ、ナイスビンタ…」
───────
とあるマンションの、クロノの伯母の部屋。
クロノは現在ここで暮らしており、一番近かったここに3人はやって来た……のだが。
アン「………………」
アンはシャワーを浴びていた。
ずぶ濡れの二人を、クロノは自宅に案内した。
レディーファーストと、ハイメは先を譲ってくれたのだが……
アン(……な、なんか、緊張しますね……///)
体を洗い終わったアンは、クロノがお湯を張ってくれた湯船に浸かりながら考える。
……同級生の男の子の家でお風呂を借りている。
なんだか妙に意識してしまい、お風呂の中だというのにまったくリラックスできない。
アン(……あったまりましたし、そろそろ上がりましょうか……ハイメも待ってくれてますし……)
……脱衣場に出て(出たら鉢合わせというラッキースケベのテンプレなんてことはなかった)タオルを巻き、髪を乾かし、下着もドライヤーで乾かして身につけてから、クロノに借りた服を着る。
アン(……こ、これはいわゆる彼シャツというものでは……って彼氏じゃない彼氏じゃない…!)
……まだ自分の服が乾いていないし仕方ないのだが……
アン(……新導くんの匂い……)スン……
アン「……って私は何を〜ッ!!?」
クロノ『どうした!?』
ハイメ『え、なに!?』
アン「あっ……な、なんでもないですッ!」(///)
思わず出した大声はリビングまで届いていたらしく、何やってんだと頬を叩きつつ、アンは身支度を再開した。
───────
クロノ「ほら」
アン「あ、ありがとうございます…」
交代したハイメがシャワーを浴びている間、 クロノが淹れてくれた暖かいココアを飲んでいた。
アン「何から何まですいません…」
クロノ「気にすんな。……っと、ハイメの着替えも用意しねぇと……」
クロノはリビングを出ていく。
アン「……ふぅ……」
やっぱり緊張するなぁ……と思いつつ部屋を見回す。なかなか広いマンションだ。
アン「……?」
ふと、目立たない場所にある写真立てが目に入る。倒れていたので、直そうと手に取る。
写真に写っていたのは数人の男女。
まず幼少期のクロノ…幼稚園の年少ぐらいか。
彼を抱き抱えるのは、父親と思わしき男性。紺色の短髪で、目元がクロノにそっくりだ。
次に、自分やクロノと同じ晴見中学の制服を来た二人。
1人は少女。エメラルドグリーンの瞳にオレンジ色の長髪。前髪の一房が異様に長く、後ろから首に巻き付くようにカールがかかっている独特の髪型だ。クロノの親戚だろうか。現在は社会人だろうし、もしかしたら彼女がクロノの伯母なのかもしれない。
もう1人は少年。灰色の短髪で、後ろ髪がふんわりと少し広がる、温和そうな見た目だ。
あとの二人は大学生ほどの青年。
1人は外国人らしき金髪碧眼の青年。何故かちょんまげで、忍者っぽいポーズをとっている。
そしてもう1人は眼鏡をかけた青年。少し緑がかった黒髪が大きく跳ねているが、どこかで見たような……
アン「……店長さん…?……う〜ん……違うかな……?」
クロノ「日下部?」
アン「あっ…!す、すいません勝手に見て…!」
クロノ「いや、いいけど…」
ハイメ「上がったよ〜!」
クロノに続いて、クロノのシャツを着たハイメが入ってくる。
ハイメ「クロノのマンション、広くていいとこだね!」
クロノ「おばさんの家だよ。俺は住まわせてもらってるだけだ」
ハイメ「伯母さん、何歳?」
クロノ「25、6?」
アン「お若いですね…」
ハイメ「わーお!紹介してもらっていいかな?」
クロノ「おい…」
ハイメ「クロノの部屋はどこー?こっち?」
クロノ「あっおい待て!?」
───────
クロノの部屋。
アン(……必要最低限のものしかない……)
ハイメ「げっ…イクエーション…!」
本棚は教科書のみ。クローゼットには制服と、私服は2、3着だけ。机の上も時計ぐらい。
あとはベッドぐらいか。
私物はヴァンガードのデッキとファイカ以外全くない、殺風景な部屋だ。
ハイメ「うぅん、何もない…」
クロノ「いいんだよこれで。物が増えると出る時面倒だろ?」
ハイメ「出る?」
クロノ「俺、早く自立したいからさ」
アン/ハイメ「「………………」」
アン「……新導くん」
クロノ「ん?」
アン「……あんまり急いで大人にならなくても、いいんじゃないですか?」
クロノ「…………」
アンは自覚していなかったが、その寂しげで暖かい笑顔に、クロノは不思議な感慨を覚えた。
クロノ「……俺もさ。何かが変わるような気がしたんだ。ヴァンガードに初めて出会った時。
あんな熱さ…初めてだった。何だったんだろう、あの感じ…。俺の知らない俺と、出会ったみたいな…」
ハイメ「……キミと、俺の人生は違う。だから…答えは、自分自身のファイトで掴むしかない」
───────
二人の服は渇き、時間は夜。
すっかり暗くなり、女子中学生1人の夜道は危ないと、クロノとハイメもアンと一緒だ。
そこで、クロノはハイメに声をかける。
クロノ「ハイメ。……俺とファイトしてくれないか?」
ハイメ「…!」
クロノ「お前が凄いファイターで、俺なんかじゃ全然相手にならないことは分かってる。
けど…確かめたいんだ。俺が今感じているものが何なのか!」
アン「新導くん…」
ハイメ「……アミーゴ。ヴァンガードファイターは挑むものさ!」
クロノ「…!」
ハイメ「遠慮なんか捨てなよ。強い者にこそ、挑む価値がある。違うかい?」
クロノ「ハイメ…」
そしてハイメは、マモルに連絡を入れた。
ハイメ「俺は、あさっての午前中の便で帰国しなくちゃならない。だから、ファイトは明日の午後!場所をセッティングしてほしい!」
マモル『わかった、手配するよ』
ハイメ「ありがとう!それともう1つ!クエストを登録させてほしい。
俺のために、クロノにクエストをキャンセルさせちゃったからね」
そう。実は今朝、クロノはクエストに向かう途中だったのだ。
───────
グレード7 A.ハイメ 使用クラン:アクアフォース
【新導クロノ殿!】
君の情熱を俺に見せてくれ!!
ハートに来たら200ポイント!!
───────
ハイメ「じゃあ、明日!」
クロノ「──あぁ、明日!」
ハイメと別れ、アンの自宅までやって来た二人。
クロノ「けっこう立派だな」
アン「そうですかね?……両親は海外勤務ですし、姉さんも大学ですから……私1人じゃ、ちょっと広すぎますね」
クロノ「……そっか」
アン「……明日、見に行きますから。──がんばってくださいね♪」
クロノ「──おう!」
《続く》
ED「Hi×Touch大丈夫!」戸倉ミサキ〈橘田いずみ〉・新田シン〈森嶋秀太〉
アン「カードが無事でよかったですね」
ハイメ「あぁ!サヴァス…このカードはエミリオからもらった大切なものだからね!」
アン「だからあんなに…」
ハイメ「それだけじゃない!サヴァスは俺が手にした時はひとりぼっちだった。
だけど、ある時を堺にどんどんと仲間を増やしていったんだ!俺と歩んできた道とそっくりなんだよ!
俺達は、特別な運命で結ばれているのさ!」
アン「ハイメとサヴァス、強い絆で結ばれているんですね…!」
次回 第8話「クロノVSハイメ」