クロウ隊3番機が着任しました   作:hamof15

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第1話 目覚めの日

1931年 7月28日 a.m.11:32 日本近海 第11駆逐隊

 

今日は晴天、波も穏やかだ。

ここまで天気が良いと気分も良くなれる。

 

「今回は比較的に被害は少なく済んだわね」

 

19隻の輸送船を見ながらそう呟いた。

 

『もう疲れた、帰ったら寝る』

 

初雪の面倒くさそうな声が聞こえてくる。

 

『そんなこと言わないで頑張ろ?』

 

私たちの長女の吹雪ちゃんがそう言うと、

 

『もう十分頑張った』

 

と明らか不満そうな声が帰ってきた。

 

『あたしはまだ行けるぜ‼』

 

とまだ元気な深雪ちゃんが反応してきた。

 

「もうちょっとで鎮守府も見えてくるから、もう少しの辛抱ですよ」

 

私も初雪ちゃんに頑張るよう伝える。

そんなことを言っているうちに、段々と陸地が見えてくる。

 

『それより帰ったら例の島に資材を輸送しないといけないよね』

 

例の島、なんとか港の機能を付け、深海棲艦への前線基地として機能しているガタルカナル島、通称「ガ島」だった。

港の機能は付けれたものの、資材は搬入し終わっていない。

当初の予定だったら輸送船が既に到着する予定だったが途中、深海棲艦の襲撃により輸送船団は壊滅し、燃料が圧倒的に枯渇しているらしい。

 

『またあそこ行くのかよ』

 

流石に深雪ちゃんもそれには不服らしい。

まあ、向こうは燃料が枯渇しているため補給できず、途中補給艦と合流しないといけないのは正直面倒くさい。

それにその後は補給艦も護衛する必要があるから護衛対象が一つ増えてしまう。

 

「資材を待っている人たちが居るんだから、そんなことを言わない」

 

『連日連日遠征はブラック、私たちも休養が必要』

 

『流石についた瞬間行けってことはないと思うけど…』

 

今の状況だと、ありえなくは無いのが困る。

 

『? なんかあそこにいるの明石さんじゃない?』

 

吹雪ちゃんがそう言い、遠くを眺める。

そこには何かを引き上げている工作艦の姿だった。

 

「なにかあったのかしら?」

 

『後で聞いてみようよ』

 

『賛成』

 

『あたしも賛成だぜ』

 

「そうしましょうか」

 

段々と母港が近くなっていくのが見えた

_____________________

 

3時間後 鎮守府 医務室

 

あれからどれ程たったのだろうか…

最後にアンノウンに撃ち落されたところまでは覚えている。

今は、何故かベットの上で寝ている。

俺は死んだんじゃないのか?

起き上がり、周りを見渡す。

見た感じは多分医務室。

すると、看護師と思われる人が俺が起き上がったのに驚き、急いで部屋から出て行った。

窓から外を見ると、外には海が見える。

 

「…どこだよここ」

 

確実にヴァレー空軍基地ではないのは確実だ。

しかも見た感じは海軍基地、しかも

 

「…俺はタイムスリップでもしたのか?」

 

明らかにあれは俺が生まれる遥か昔の兵器だ。

巨大な砲を載せ、圧倒的な雰囲気を醸し出している兵器。

戦艦だった。

まず俺が居た世界かどうかすら分からなくなってきたぞ。

記念艦としてBBは見たことあるが、これは完全に現在も使用中だろう。

 

「一体どうなってやがる…」

 

困惑していると、看護師が医師を連れて戻ってきた。

そして軽く身体検査を受けると、ここの指揮官に会うこととなった。

ここの海軍基地のトップとの対面、これは入隊式並みに緊張する。

医師に連れられ、執務室に案内された。

______________________

 

執務室前

 

医師がドアをノックして

 

「指揮官殿、連れて来ました」

 

と伝える。

 

「ご苦労様、入ってくれ」

 

中から返事が返ってきた。

 

「失礼します」

 

ドアを開け、医師に続いて入る。

そして中にはここの指揮官だと思われる若い男性が一名、そして隣には秘書と思われる女性一名だった。

 

(こんなに若いのが指揮をしているのか?)

 

どう見たって年齢は20代前半、新兵でもおかしくない年齢だ。

 

「まず、君の名前は?」

 

質問が来る。

 

「パトリック・ジェームズ・ベケット少尉です」

 

敬礼をし、自分の名前と階級を答える。

 

「君も軍人を?」

 

「空軍のパイロットです」

 

「空軍?」

 

えっ、まさか空軍がわからない?

 

「提督、たぶん航空隊の事だと思います」

 

隣の秘書がそう言うと納得したようだ。

 

「つまり君は航空隊所属の搭乗員ということだね。所属は?」

 

「ウスティオ空軍第6航空師団第66飛行隊、ガルム隊所属です」

 

そう言うと指揮官はまた不思議そうな顔をする。

 

「ウスティオ? 初めて聞く国だな」

 

そうかもしれない。

もし俺が過去にいるなら俺たちの国が独立したのが1988年だ。

ならベルカ連邦は知っているだろうか?

 

「あの、ベルカ公国という国をご存知ですか?」

 

「それも初耳だ」

 

秘書も全く知らないらしく、世界地図を持ってきますと言って執務室から出ていった。

まさかベルカが独立するより前の世界?

そんな馬鹿な事があるわけない。

 

「失礼ですが、今は何年ですか?」

 

「? 1931年だが?」

 

は? マジで時間巻き戻ってるの?

ウスティオ共和国まだできてないじゃん。

それでも、ベルカ公国はあるはずだ。

まさか、巻き戻ている上に別の世界?

そんなバカげたことがあるわけない…

 

「すみません、ここの国名を教えてください」

 

「大日本帝国ですけど、知らずにここの近海に落ちたのですか?」

 

全く知らない国名来ました~、これまさかの別の世界の可能性が一気に上がりました~。

すると秘書が戻ってきた。

 

「やはり、うすてぃお?と べるか?とかいう国は存在しませんね」

 

「ありがとう大淀」

 

彼女の名前は大淀らしい。

ってそんなこと思っている場合か‼

 

「少し見せてください」

 

「よろしいですが…」

 

奪い取るように世界地図を取り、見てみた。

そこに書かれているのは、全く知らない国名と国土が記されており、自分が居た世界の国家は一つも存在しなかった。

 

「あなた、本当はスパイでは?」

 

大淀が眼鏡越しにこちらを睨んできた。

 

「違いますよ! 俺はただV2を止めるためにアヴァロンダム上空で‼」

 

「そこが架空の場所で嘘を述べているだけでは?」

 

駄目だ、世界が違うとすると何を言っても無駄だろう。

 

「そう決めつけるな、もしかしたら本当かもしれないだろう」

 

指揮官のフォローのお陰で一旦スパイ容疑は保留となる。

 

「まず、君が最後に知っている事を言ってくれないか」

 

正直に言うべきか、記憶が曖昧だと嘘をつくかだ。

しかし、ここで記憶を曖昧にするとスパイ容疑がより濃くなってしまう。

ここは正直に全て言おう。

 

「私は1995年12月31日に国境なき世界というクーデター軍が接収しているダム擬装型ミサイルサイロ基地「アヴァロンダム」に我々連合軍は攻撃を仕掛けました」

 

まず年代の時点で、驚いた顔をする。

 

「私の部隊はB7Rで空戦後、アヴァロン上空に到達、多数の犠牲を出しながらもなんとかサイロまで辿り着き、ミサイル発射システムを破壊しましたが、その直後にアンノウンにより私は撃墜され、気が付けばここに居ました。簡単に言えば、たぶん自分はここの世界の人ではありません」

 

大雑把な上に信用しがたいことだが、信用してくれるだろうか?

知っている事はこれくらいしかない。

 

「嘘だとしたら、ある意味才能の持ち主ですね」

 

「嘘じゃないから淡々と述べられるのだろう。君を信用するよ」

 

ここの指揮官はお人好しのようだ。

ここまで人の話を信じる人は久しぶりだ。

 

「…私もこの世界がどんな場所か知りませんので、説明してくださると助かります」

 

「分かった、私たちの世界を教えよう」

 

これも、俺には信用しがたいものだった。

1914年、ヨーロッパといわれる州で極度な緊張状態に達していたらしい。

そしてサラエボ事件というとある国の皇太子暗殺により大規模な戦争が勃発した。

しかし、その翌年、謎の艦隊によりヨーロッパが火の海に飲まれる。

正体不明の艦隊は当時世界最強のいぎりすという国の最新鋭艦隊をも全て撃沈し、本土を焦土とした。

それを受けたあめりかという国が参戦を表明するも、戦況は変わらず最終的には海軍がほぼ壊滅状態となった。

この艦隊を、世界は「深海棲艦」と呼称するようになった。

深海棲艦は、この大日本帝国にも襲ってきたらしく、海軍は無いに等しい状態となる。

輸送艦隊も潜水艦により一方的に沈められ、資源も枯渇していたそうだ。

そこで奇跡が起きた。

深海棲艦出現からから4年後、1918年に奇跡的に一隻の深海棲艦を撃沈することに成功する。

そして沈めた地点に、一人の少女が居たそうだ。

これが、この世界の希望「艦娘」らしい。

彼女らは深海棲艦と渡り合える武器を持ち、唯一深海棲艦と対等に戦える存在だった。

しかし、この戦いが長期化し、資材の枯渇や敵の物量により戦況は悪化の一方らしい。

 

「そこで私から君にお願いしたいことがある」

 

「何でしょうか?」

 

出ていけなどと言われたら、居場所なんてどこにも無い場所ですごさなければいけなくなる。

 

「我々と共に戦ってほしいのだ」

 

「えっ?」

 

「提督!?」

 

ここからが、俺のこの世界の生活の始まりだった。




どうも皆さんこんにちは、作者です。
二次創作は初めて書くのでなれない部分があるので何か不備や改善してほしい点がありましたら教えていただけると助かりますm(__)m
それと超不定期更新で月単位で放置とかありえますのでその点をご了承ください。

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