7月31日 a.m.7:30
普段、この基地には大規模改装や修理などでしか全く大型船は見ることはできない。
しかし今日は、巨大な戦艦や空母が停泊していた。
今日の演習は艦娘たちも注目していた。
理由は、
「あれが一航戦と二航戦…」
前線で華々しい戦果を挙げ、無敵の艦隊を構成してきた主力空母たち。
それが今、目の前に居るのだ。
更に戦艦は連合艦隊旗艦を務める長門型、最近改装され最新鋭の装備を載せた金剛型などが停泊していた。
歴とした前線の主力艦隊である。
「私も、あそこでいつか…」
軽空母だけど、性能は優秀なはず。
これでも、前世はレイテ沖まで生き残った主力の空母だった。
努力すれば、きっと…。
「…PJさんも戦うのかな」
今回の演習は、特別ルールで行われる。
相手はこちらの鎮守府を射程に捉えれば相手の勝利、こちら側は相手を戦闘不能にすれば勝利になる。
更に、艦隊だけでは敗北するのは分かっているので、こちら側は航空隊の使用が許可されていた。
それはつまり、彼が飛んでいるのが見れる可能性があるという事だ。
「ちゃんと、私たちを守ってよ」
演習開始は一一三〇から、気合を入れないと‼
他の子たちと作戦を考えるために、その場から去るのだった。
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海軍航空基地 a.m.11:20
「これより、本日の演習について説明を始める‼」
朝、提督から説明を受けた。
全く信じられない事だ。
攻撃したら沈まず大破まで、しかも乗員は死んでも戻ってくる。
航空機は撃墜されたら演習終了と同時に格納庫に戻ってきて、パイロットも無事。
これは新兵の訓練にうってつけだろう。
実際に動き、抵抗する敵に対して撃てるのだ。
ダメージコントロールも実際の損傷で試すことができる。
他の人が犠牲になっても平常心を保てるような心も訓練できる。
前の世界なら、どれほど重宝されるだろうか。
「~~より、間もなく防衛演習が開始される! 敵は艦隊の編成は空母4、戦艦4、防空巡洋艦2、巡洋艦2、駆逐2である‼」
敵はだいぶ大規模のようだ。
「味方は軽空母3、戦艦2、重巡1、駆逐4である‼」
あれ~? これ勝てる気がしないぞ~。
「敵艦の位置はすでに把握しており、演習開始と同時に攻撃を仕掛け、敵戦艦の排除を行う‼ 味方が出番が無くなるほどに叩くぞ‼ それと本作戦では新しく入隊したジェームズ少尉も参加する。少尉は第二次攻撃隊として、待機していろ‼」
「了解‼」
「それ以外のものは編成はいつも通りだ。以上」
そして一斉に敬礼をする。
俺もワンテンポ遅れてしまったが、敬礼をする。
「解散‼」
「「「「「おう‼」」」」」
各自が自分たちの機体の元へ走っていった。
俺もその中の一人である。
武装は、少し考える必要があるだろう。
急いで妖精さんと相談しよう。
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ハンガー
「武装はどうする~」
妖精さんが既に待機していた。
「AGM-65を六発、近距離対空ミサイル二発、中距離対空を二発だ」
「だいぶ重たくなるよ」
「構わない、飛べたらこっちのものだ」
「わかったよ~」
整備員が一斉に機体のチェックに入る。
弾薬が装填され、ミサイルがパイロンに取り付けられていく。
「少尉殿は先に乗っておいて構いませんよ。そこの方が落ち着くでしょう」
「ああ、ありがとう」
緊張しているのがバレたか、昔から顔によく出るからな。
梯子からコックピットに入る。
そして計器の類に目をやる。
この世界に来て初の戦闘、ここで周りからの信用を集めなければ。
この機体も、ここでただの鉄の塊と言われてだいぶ傷ついているだろう。
それを全て敵にぶつけてやる。
そして、サイレン音が鳴り響く。
周りの機体がエンジンをスタートさせ、プロペラを回し始めていた。
俺は、しばらく待機だな。
ヘルメットを被り、静かに離陸する機体を眺めているのだった。
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数分後 航空母艦「赤城」
『赤城さん、偵察機から敵航空基地から多数の戦闘機と爆撃機が近づいていると報告が入りました』
「分かりました。直掩隊、発艦してください」
最近配備された最新鋭艦載機、烈風改が空へと羽ばたく。
私が載せていたのは零戦だった頃が懐かしい。
「…時代は変わるものですね」
艦隊は敵の防衛艦隊を撃滅してから、敵鎮守府を攻撃することで意見が一致した。
理由は敵艦隊を温存させると別の鎮守府で運営され、再び攻撃してくる可能性があるからだ。
今は魚雷に換装された流星改が次々にエレベーターから上がってくる。
敵艦隊の位置は大体把握できている、後は換装が終わるのを待つだけ。
それでも、何か嫌な予感がする。
まるで、あの日みたいに…。
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「機長、今回の演習、どう思いますか?」
周りには一式戦闘機「隼」や陸攻が爆音を奏でながら飛んでいた。
「これほどの大編隊を、一機も残さず迎撃するのは不可能だろう。敵さんにはしっかりダメージを負ってもらう。それで我々の友軍艦隊が一網打尽だ」
「そうですね、犠牲は出てても、最終的には勝てば…」
「犠牲はつきものだが、それを最小限に抑え、敵艦隊に辿り着くのだ」
すると、遠くの空から芥子粒のようなものが点々と見えてきた。
あれは…
「‼ 敵機‼」
相手は完全に直掩機の速度を上回っていた。
増槽を捨て、敵機に機首を向ける隼。
敵機は恐るべき速度でこちらに近づいてくる。
そして直掩機の機銃から火が吹くのが見えた。
曳光弾がまっすぐ敵に吸い込まれていく、はずだった。
「!?」
まるで人が、飛行機ができるか分からない機動で敵が弾丸の進路から外れた。
そして次は敵の機銃が光る。
隼が得意とするロールで回避する。
機動性辛うじて勝っているが、総合的な性能は敵の方が上だろう。
激しい格闘戦が繰り広げられていた。
「今のうちに敵機から離れ、敵艦隊に辿り着くぞ‼」
しかし、敵機の統率の取れた動きに各個撃破され、着実に数を減らす味方。
敵は無線を積んで、連絡し合いながら戦闘している事は彼らに知る余地はなかった。
乱戦を得意としている者は格闘戦に持ち込もうとするが、無線で確実な指示により自分たちのペースに持ち込めない。
翼が折れ、回転しながら墜ちる機体、爆散する機体、海面に突っ込む機体、そんな直掩機が増えるばかりだ。
「敵機、こっちに来るぞ‼」
ついに攻撃機編隊を襲撃してきた。
周りの陸攻が防衛機銃が射撃を始める。
しかし、効果があるとは思えない。
一機、また一機と数を減らしていくだけだった。
「振り切れ‼ 何としてでも敵艦隊に辿り着け‼」
生き残っている直掩機が必死に追い払おうとするが、返り討ちにされている。
しかし、彼らの働きは一瞬の隙を作ってくれる。
その隙に敵機から離れる。
そして水平線の先に、巨大な船が見えてきた。
「敵艦だ!」
ようやくここまで来れた。
残りの陸攻は我々を含めて3機、10機以上がやられた。
この魚雷で、仇を‼
そう思った瞬間、敵駆逐艦から砲弾が飛んできた。
最新鋭の電探を搭載し、信管が調整され放たれた対空弾は陸攻の近くで破裂し、破片をまき散らいした。
その破片が運悪く魚雷に当たったのか、一機が爆散する。
「相手は、強すぎる…」
次の瞬間、風防を破り、巨大な円錐状のものが機体に入ってきた。
そして、体が押し潰される感覚が来る。
それを最後に、意識は空の彼方へと飛んで行った。
彼の機体は10cm連装砲の直撃を喰らった。
そして機体内部で破裂した砲弾は、機体を空中で一瞬でスクラップとしたのだった。
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海軍航空隊基地
『第一次攻撃隊は全滅した模様。至急第二次攻撃隊は離陸せよ』
スピーカーにより報告が入る。
予想していた通りの結果となっていた。
しかし、たぶんこの無線も通じないだろう。
通じるのなら無線で呼びかけるのが普通だからだ。
そうなると、連絡や戦略の組み直しを戦闘中にできないのは相当痛い。
外では他の戦闘機や爆撃機が離陸を始めた。
「少尉殿‼ いつでも行けます‼」
燃料のホースが外される。
こちらも行くとしよう。
スイッチを押し、計器などの電源をオンにする。
「こちらPJ、だれか聞こえるか?」
一応無線で呼びかけてみるが、反応が無かった。
仕方ない、独断の判断で行動しよう。
エンジンを始動させる。
外からターボファンエンジンの独特な音が聞こえてくる。
エンジンを起動させたのはこの世界では今日が初めてだ。
妖精さんは驚いたような顔をする。
操縦桿を動かしたり、ラダーを踏んだりして、翼を動かす。
機体整備員がそれを確認して、親指を立てる。
そしてチョーク(車輪止め)が外された。
ゆっくりと機体が格納庫の外に出る。
本当に動くのを見た妖精さんは目が輝いているように見える。
他の整備員も初めて聞く音に外に出て、俺の機体が動くのを見て驚いていた。
なんか少し恥ずかしい。
滑走路上には他の機体はない。
「どうか凹凸が一つもありませんように‼」
少しその場に止まり、最終チェックをする。
レーダーは正常、計器も正常、機体も正常。
俺の体は常に正常‼
「よっしゃ! 行くぞ‼」
アフターバーナーを吹かし始める。
機体が一気に加速を始め、離陸速度まで近づく。
そして操縦桿を引く。
すると機首が上を向き、体から重力が一瞬消えた。
そして浮くような感覚が体に伝わる。
高度計の数が段々と大きくなる。
この世界の空を始めて飛んだ瞬間だった。
「? これは?」
レーダーに明らかに味方編隊とは関係ない機体が映る。
帰還した味方か? それとも敵機?
味方編隊とは関係ないし、第一次攻撃隊は全滅したと聞いた。
なら、消去法で考えて…
「敵か」
敵をロックする。
この距離なら短距離ミサイルでも当たる。
「FOX2‼」
操縦桿の赤いボタンを押す。
すると機体の右横から白い煙を引きながらミサイルが敵機に向かっていった。
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加賀所属偵察機「彩雲」
「第二次攻撃隊の発進を確認、そちらに向かっています」
『こちら加賀、了解』
加賀さんに報告を出し、一時的に敵滑走路から離れる。
あまり長居するとバレるかもしれないからだ。
「敵基地には対空電探が無くて助かったよ」
電探はこの基地ではなく、南方の基地に多く製造されていた。
「離脱する?」
操縦手が聞いてくる。
「そうだね、あれが最後っぽいしね」
そう答え、外を見ると見たことがない機体が滑走路に止まっていた。
「なんだろう?」
「どうしたの?」
「ほら、あれ」
すると、その機体の後ろから火が吹き出すのが見えた。
「まさか、噴進弾の新型!?」
最近改修された伊勢型や、こちらの重巡洋艦が12cm30連装噴進砲を装備しているが、その噴進弾を飛行機に付けたのか?
まさか…特攻兵器?
「とりあえず、連絡しないと…」
無線機を手に取った時、噴進式の飛行機がこちらに何か撃ってきた。
「噴進弾‼」
機体が大きく旋回を始める。
この距離から噴進弾?
射程はともかく、まっすぐ飛ぶだけのものをどうして遠いところから…。
しかも弾幕を張る訳でも無く…。
しかし、次の瞬間、自分が想像していなかった事態が起こった。
「!? こっちに来る‼」
噴進弾が方向をこちらに向け、想像できない速度で接近してきた。
そして、それは機体の近くで爆発し、破片をばら撒く。
機体と体は八つ裂きにされ、地面へと墜ちていった。
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加賀型航空母艦一番艦「加賀」 艦橋
『噴進弾‼』
偵察機から緊迫した叫び声が響き渡る。
「こちら加賀、どうしました!?」
『こっちに来る‼』
次の瞬間、耳障りな音が聞こえ、無線から音が消えた。
…不味い事態になりました。
「長門さん、偵察機が敵の攻撃により撃墜された模様です」
『そうか、敵基地に近かったから無理もない。作戦には支障ないだろう』
飛行甲板では流星改、彗星一二型甲が飛び立っていった。
撃墜されたのは敵の基地だから?
それだけじゃない気がする…。
何か、あの運命の海域と同じ感じが…。
『第一次攻撃隊、全機発艦。これより敵艦隊を撃滅する』
加賀は不安を感じながらも、そのまま作戦を継続するのだった。
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鎮守府沿岸上空
編隊とバランスを取るためにぎりぎりまで速度を落としながらついて行っていた。
操縦桿がプルプルと震えている、失速しかけているのだ。
「レシプロは遅い‼」
この高度と速度では燃料効率は最悪だ。
そういえばさっき墜とした敵機、なんでこちらを攻撃してこなかったんだ?
離陸中を攻撃すればひとたまりもないのに…。
まさか、偵察機か。
そうなると我々の出撃は敵に報告されている、第一波が何もできず全滅したのはそれもあるだろう。
しかし、それでも理解できない。
なぜ我々を攻撃できる位置にいといて、本拠地は放置する。
まさか、対艦攻撃にリソースを割いて…。
「そうなれば、狙いは味方艦隊の撃滅か」
ここから味方艦隊の位置はこいつなら遠くない。
「すみません、少し編隊を離脱します」
無線は通じないので、言っても意味がないが…。
スロットルを上げ、機首の向きを変える。
気が付けば編隊のどの機体よりも加速した戦闘機は、味方艦隊の方向へと飛び去って行った。
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祥鳳型航空母艦二番艦「瑞鳳」
攻撃隊を発艦させたが、予想通り全機撃墜されてしまった。
格納庫では彗星が爆装されていっていた。
「もう墜ちちゃったのかな…」
陸攻の第一次攻撃隊が全滅したと報告を受け、もしかしたらと頭の中に駆け巡る。
演習でも、周りで誰か死ぬ、それも面識がある人というのは辛い。
「無事でいてね…」
そう思いながら、空を見つめていた。
『偵察機より敵機捕捉の報告‼ こっちに向かってきてる模様‼』
「対空電探でも確認‼」
旧式だが、対空電探を一応積んでいてよかった。
「戦闘機隊、全機発艦して‼」
飛行甲板から零式艦上戦闘機五二型が飛び出す。
そして敵機編隊が居る方向にへと飛び去って行ったのだった。
書けました~
次回は少し遅くなるかもしれません…
ご了承ください