クロウ隊3番機が着任しました   作:hamof15

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すっかり遅くなりすみません。
なかなか文章が頭の中で出来上がらなくて……
次回はできるだけ早くします!!


第6話 模擬戦争 後編

朝潮型三番艦「満潮」 後部甲板

 

俺は生きているようだ。

あのGには押し潰されるのではと思ったが、人間の体は予想以上に丈夫らしい。

浮き輪が投げ込まれ、引き上げられた。

そして今、駆逐艦の甲板にいる。

 

「低体温症なったら大変なんで、代わりの服着てくださいね」

 

妖精さんが急いで代わりの服を持ってきてくれた。

男性用のセーラー服である。

受け取り、着替えようとしたら。

 

「私たちの前で着替えないでください!」

 

と言われ、ビンタを喰らった。

予想以上の威力と、突然のビンタに驚く。

今思ったら、妖精さんも女性しかいないんだな。

ちょっと待て、ならどうして男性服が…。

止めよう、これ以上は踏み入ってはいけない領域な気がしてきた。

とりあえず、妖精さんに空いている部屋に案内してもらい、そこで着替える。

軍用船は何度か乗ったことあるが、ミサイルが開発される以前の船は乗ったことは無い。

窓からは巨大な戦艦が黒い煙を吐きながら動いていた。

生きているうちにこんな光景が見れるなんて、長生きはするものだな。

あっ、死んだから見れているのか?

 

「あの、着替え終わりましたか?」

 

「あっ、はい。終わりました」

 

扉が開き、妖精さんが入ってくる。

 

「それでは、艦橋まで案内します」

 

そのまま部屋で待機させられるのかと思いきや、艦橋に案内させられる。

できれば部屋でゆっくりしていたかったなんて口が裂けても言えない。

疲労で死ぬような気がしてきたが、仕方ないだろう。

 

「満潮さん、連れて来ましたよ」

 

すると、小さな子どもがこちらに近づいてくる。

 

「あんたが、あれに乗ってたの?」

 

多分、F-16のことを言っているのだろう。

 

「はい。 パトリック・ジェームズ・ベケット少尉です」

 

「満潮よ、一応よろしくね」

 

彼女は満潮というらしい。

本当に子ども戦場に立っているとは…。

今まで会ってきた人から想定すると、小型艦艇ほど年齢が若いのだろう。

つまり、俺が撃った駆逐艦の中にも…。

……演習では死なないと聞いたし、大丈夫だと信じよう。

 

「それじゃあ、本題だけど」

 

そう言い、この海域の海図だと思わるものを出した。

 

「敵艦隊の位置を知りたいの」

 

「えっ? この艦隊には偵察機は一機もないのですか?」

 

「敵攻撃隊に襲われて「最上」は中破し撤退、戦艦はカタパルトを損傷して使えないし、軽空母は一隻中破し撤退、二隻は無事だけど偵察機は既に全機撃墜されて無いのよ」

 

やはり、全ての敵を迷子にするのは無理だったようだ。

多分、艦隊の護衛に当たるために戦闘機隊の半数は撤退させたのだろうが、0にはしなかったようだ。

まあ、当たり前だろうが…。

艦隊が全滅するのを防げただけで万々歳だろう。

待って、空母が一隻中破? まさか瑞鳳さんでは…。

 

「中破した空母とは?」

 

「隼鷹よ」

 

隼鷹?

…ああ、あのいつも酔っぱらってる人か。

あの人を見て本当に普通の軍隊でないことを悟ったな。

あんな昼から瓶で酒を飲んでいる人なんてそうそう居ないだろう。

軍隊なら尚更だ。

いや、例外は居るかもしれないが…。

 

「攻撃機は残っているのですか?」

 

「少しだけならあるらしいわ」

 

少しだけか…、物量による飽和攻撃をしたいが、それは叶わなさそうだ。

ならどうする?

俺が別に作戦を立案する必要が無いが、協力している以上、少しは役に立ちたい。

しかし、艦対艦戦は専門外な上に、ミサイルが無い時代のものとなると俺の作戦は意味が成さない場合の方が大きいだろう。

 

「私の想定では、艦隊からこのあたりの数キロ圏内には敵艦隊は存在していると思います」

 

大体の場所を海図で指す。

敵艦隊だって移動しているのでどこまで動いているか分からないし、空母四隻を失ってまで攻撃してくるとは考えにくい。

演習だから、と言って攻撃してきたら別だが…。

 

「敵艦隊は空母4、駆逐2を失っているので…」

 

一瞬、艦橋の空気が凍り付いた。

俺の発言に何か問題があったのか?

 

「今、何て言ったの?」

 

満潮さんも、顔色が少し青ざめている。

 

「えっ、空母4と駆逐2を…」

 

「あ、相手は一航戦と二航戦よ? しかも今回の第一艦隊には防空巡洋艦や防空駆逐艦がいたはずよ…。なんでそんな被害が?」

 

きっと対空戦闘に優れている艦だったのだろう。

今思ったら、レーダーを照射されていた気がする。

しかし、回避するほどの命中精度ではなかったので無視していたが、そんなに凄いのか?

まあ、そんなことしているからほぼ無誘導の砲弾なんかに撃墜されるのだが…。

こんなんでは、笑い者にされるかもしれないな。

…そういえば、レーダーがまだ存在しないか出来立ての時代かもしれないな。

そう考えると、旧式でも映るだけで驚くのかもしれない。

ステルス性も潜水艦以外はまだ概念すらないだろう。

ちょっと待て、だとしたらずっとレーダー波を垂れ流してるのか?

そうだとしたら、レーダーを破壊するなら対レーダーミサイルが有効だったんじゃないか?

そんなもの確かハンガーの武器庫には無かったが、シーカーの構造は単純のはずだ。

受信した電波を辿ればいいだけだからな。

まあ、あくまで使う側の意見で、作る側はどうなのか知らないが。

明石さんに作れるか聞いてみるか。

そんな事より、質問に答えるべきか。

 

「自分が攻撃して、撃破しました」

 

艦橋が再びざわつく。

 

「ふざけてるの? たった一機の、しかも戦闘機が駆逐や空母を沈めるなんて…」

 

「事実ですので、疑うようでしたら演習後に相手に聞いてください」

 

「嘘だったら撃つからね」

 

撃つって…9mm弾だよな?

あの前に見えてる5インチの主砲じゃないよな?

て言うか撃たれるの⁉︎

 

「嘘だったらですよ…」

 

敵艦隊のレーダーの精度は知らないが、ここまで攻撃隊を誘導できるのだからもう探知できているのだろう。

俺が破壊したレーダーは多分対空レーダーだから艦隊戦には影響はそこまでないかもしれない。

艦橋内が破壊的な被害を受けてるなら指揮系統に影響が出ているはずだから有利だろうが…。

 

「敵艦隊がこのまま戦闘を継続しているなら、航空攻撃で可能な限りで相手艦隊にダメージを与えるべきです」

 

「あなた、なんで勝手に口出ししてるのよ」

 

確かに、部外者は黙るべきか。

 

「…まあ、参考にしてあげる」

 

そう言い、何かに語り掛ける。

無線か何かだろう。

…ん? 無線があるのか?

なら周波数帯を合わせれば通じたんじゃないか?

今度色々と弄ってみよう。

____________________

 

長門型戦艦二番艦「陸奥」

 

「長門、通信直った?」

 

返事が無い、まだ直っていないのだろう。

幸い私は電探と乗員が数名やられただけしか被害が無かった。

他の艦も対空電探をやられてしまっている。

艦隊の空母を全艦消失、対空砲は目測による射撃。

本当の戦闘ならば敗北だろう。

 

「他の娘は無事?」

 

『なんだよさっきのは!! あんなの聞いてねぇよ!!』

 

摩耶はだいぶご不満なようだ。

 

『落ち着いて、相手はもう撃墜したわ。もう襲ってくることはないはずよ』

 

鳥海が落ち着いて現状を整理していこうとする。

 

『さっきの航空機、プロペラが無いのを見ると噴進式航空機でしょう。たしか試験段階だったのでは?』

 

「そうだけど、実験しているのは九州の飛行場のはずよ。ここは横須賀よ」

 

『既に量産体制が整ったとかは?』

 

「あり得ないわ。それなら前線に最初に配備するだろうし、それに報告も挙がっているはずよ」

 

それが無いという事は、全くの最新鋭機か、同盟国の戦闘機、もしくは敵。

敵というのは演習と同じ現象が起こっているので、可能性は0に近いだろう。

なら、後は2択だ。

ただ、この2択はどれもあれの存在を証明してくれない。

横須賀の機能はほとんどが輸送艦隊の基地としてである。

建造も主に輸送艦、開発は航空機等もあるが、ほとんどが陸上攻撃機が作られているはずだ。

しかも実戦で戦うような部隊はトラック泊地やリンガ泊地などに送られる。

しかし、敵機は明らかな熟練だった。

空母をわずかな時間で殲滅、防空能力が高い防空駆逐艦を叩いた。

さらに機銃の攻撃で艦隊の空の目を破壊し、一部の艦には艦橋内のものが破壊されつくしている。

このような作戦を一人で遂行できるなんて、そんな熟練パイロットは聞いたことない。

仮に居たとしても、こんな後方な基地ではなく、前線の基地だ。

そんなことより、

 

「今の問題は、これ以上戦闘を継続するか。降伏するかよ」

 

降伏、演習とはいえ、帝国海軍最強の艦隊の顔に泥を塗ることとなる。

しかも降伏は今回の演習の目的の真反対の結果となってしまう。

今回の演習は練度の向上はもちろんだが、大きな目的は落ちた士気の回復だった。

前線での被弾や戦死者の続出により地まで落ちた士気を回復しないでは、本来の力を発揮できない。

そのため、後方の前線に出ない艦隊と演習し、彼女らの圧倒的敗北により士気を回復する予定だった。

予定だったのだ。

しかし、その予定はあの戦闘機により瓦解した。

 

『あの、相手艦隊に損失艦は一隻も居ないのでしょうか?』

 

不安げな神通の声が聞こえた。

 

「…いえ、中破で撤退した軽空母と重巡洋艦が居るわ」

 

『それ以外は?』

 

実質被害は無い。

しかし、敵艦隊の練度程度なら…。

 

『これが本当の戦闘なら、これ以上の戦闘は継続不可能では?』

 

確かにそうだ。

敵艦隊にはまだ無事な空母と戦艦が残っているのに対し、こちらは空母と駆逐が全滅。

更に対空電探は機能しない、通信も旗艦は音信不通。

普通の考えなら撤退だ。

しかし、このままメンツが丸潰れになる訳にもいかない。

ある程度は抵抗をしなければ…。

でも、どうやって?

これ以上の戦闘で、万が一、私たちが全滅したら?

それこそ前線の士気の低下は免れない。

なら、諦めるしか……。

 

『Hey girls!! あまり呑気に話している暇はないですヨ~』

 

そう言われた後に、電測員が声を上げる。

 

「報告!! 敵艦隊が我が艦隊に更に近づく。射程圏内まで残り僅か!!」

 

決断の時だ。

今ならまだ間に合う。

まだ、我々の士気を最低にしない方法が選べた。

 

「…各艦、砲撃戦用意!! 敵艦隊を仕留めるわよ!!」

 

しかし、自分の心には、負けを認めたくないという強いプライドが、降伏という言葉をかき消してしまった。

_______________

 

親潮型駆逐艦三番艦「満潮」

 

そろそろ、自分は艦橋から出してもらえないのだろうか?

そんな事を思ってから、一体どれ程経っただろうか。

そこまで時間は過ぎていないのかもしれない。

しかし、ずっと立ってるのは苦痛以外の何でもない。

他の妖精さんたちはよく我慢できるなと、感心する。

ただその我慢で俺が苦しむ。

俺まで座る事を許されていない感が漂ってきている。

 

「敵艦隊は?」

 

「まだ見えません」

 

「攻撃隊を要請するにも敵艦隊を見つける必要があるわ。少しの変化も見逃さないで」

 

「了解!」

 

双眼鏡を構え、敵艦隊を捜索する見張り員。

偵察機が使えない以上、目視で探し出すしか敵を見つける方法は無い。

駆逐艦が先行しているので先手を取られれば圧倒的に不利だ。

戦艦は遅れて到着するが、その前にやられてしまう可能性が大きすぎる。

先に敵を捕捉し、先手を取らなければ…。

 

ズドォォォォォン……

 

突如、周りに水柱が立つ。

その大きさはこの船の大きさを遥かに超えている。

船内を振動が襲った。

 

「っ!? 敵による砲撃!! 至近弾です!!!」

 

「回避行動を取りなさい! どこから撃たれたの!?」

 

「不明! まだ水平線の向こうだと思われます!!」

 

そうなると、レーダー射撃か?

いや、敵艦が戦艦だと仮定すると、あれだけ巨大な艦橋からだったらこちらが見えてる可能性もある。

小型な駆逐艦だと、分からないが…。

船での射撃がどれ程のものか知らないが、GPS誘導砲弾でもないのに最初の砲撃で至近弾は凄いのだろう。

つまりそれを修正した第二射は……。

次の瞬間、耳障りな金属音が大音量で響き渡った。

鼓膜を破くような轟音と共に、先程よりも巨大な衝撃が体に響く。

 

「後部甲板に被弾! 貫通した模様!!」

 

「被害は!?」

 

「過貫通したようです。被害軽微です」

 

「各部兵装健在です」

 

「機関部にも異常ありません。問題なく航行できます!」

 

装甲が薄いお陰で助かったようだ。

多分AP弾頭だったのだろう。

もしHE弾頭だったら、今頃海に散っていただろう。

 

「敵艦発見! 10時の方向!!」

 

ほとんどの乗員が一斉にその方角に顔を向ける。

その方角の水平線の所に、それは居た。

巨大な船体に、高層ビルを彷彿とさせる艦橋、それを向けられた敵の運命を示す巨砲。

まさに力の象徴である戦艦が、こちらに砲を向けていた。

それが放つ威圧は、恐怖で背筋を凍らせる。

しかし満潮さんの目は、戦意が一切消えていないのを物語っていた。

 

「進路を敵艦に取りなさい!! 砲雷撃戦用意!!!」

 

その言葉に、俺は耳を疑った。

あんなの勝てるわけがない、勝てない戦いは避けるべきだ。

 

「満潮さん! あれには勝てません!! どうか考え直してください!!」

 

俺が満潮さんに忠告する。

しかし、彼女は聞かなかった。

乗員たちもその指示に従い、敵艦に進路を取り、戦闘配備につき始める。

それは狂気とした考えられなかった。

 

「満潮さん!!」

 

「あなたは味方に戦わせておいて傍観する人なの!? このクズ!!」

 

その言葉に、俺は言葉を失った。

クズという言葉もそうだが、傍観するという言葉に俺は固まる。

俺は傍観するのが嫌で、この世界の軍に入った。

しかし、俺は今ここで、逃げるよう発言した。

それは他の艦が突撃してるのを、遠目で傍観しろと同じ意味だ。

いや、本当に同じ意味か?

味方が集結するまで、攻撃はしない。

戦力集中、各個撃破。

基本の戦法の一つだ。

現在、敵艦と接敵してるのは我々のみ、勝算は0。

せめて、味方が来るまで……。

 

「敵艦、更に発砲してきます!!」

 

しかし、もう引き返せないようだ。

航空支援はもうすぐだろうが、有効な損害を相手に与えるとは限らない。

 

「回避行動を続けながら接近しなさい!」

 

「よーそろー!」

 

舵輪を激しく回し、ジグザグ航行で敵艦に接近する。

周りには距離が近づくにすれ、量が増える水柱。

轟音が鼓膜を破かんばかりに鳴り響いている。

俺が普段見下ろし、小さいと思っていた戦闘が今は巨大な恐怖として襲い掛かってくる。

しかし、恐怖で怯えては何も始まらない。

今考えるのは、この負け戦をどうマシな方向に転がすかだ。

俺には機体が無い以上、味方任せにしかできない。

なら、満潮さんには納得できるような説明をどうしたらいい?

彼女は、自分が戦うことしか考えていない。

このままでは確実に……。

 

「友軍機、到着しました!!」

 

次の瞬間、頭上を大型な航空機が飛び去って行った。

あれは……銀河?

その後から次々に戦闘機や攻撃機が敵艦隊へと向かって飛んでいく。

何とか、基地航空隊と味方空母の支援が前線に間に合った。

_________

 

基地航空高速雷撃小隊1番機

 

「俺たちが居ない間に、仲間が世話になったな…」

 

他の陸攻と比べ、圧倒的な速度の違いで、いち早く敵艦隊まで接近していた。

敵直掩機が一機も上がってこなかったので、目視範囲まで余裕で到達する。

下には、砲撃を回避しながら、敵に近づこうとしている味方駆逐艦。

俺たちはそれを援護、もしくは近づく必要が無いように敵艦を叩くのが任務だ。

少し遅くなってしまったが、まだ味方の損害が少ない内に攻撃できる。

仕事を果たすには、絶好の機会だ。

 

「全機突撃!! 敵艦を海底に落とすぞ!!」

 

我々、高速雷撃隊のみに配備された無線機で攻撃を開始を合図する。

先頭で攻撃してるのは長門型といったところか。

その奥には金剛型がいて、周囲に高雄型、川内型が並んでいる。

敵はこちらに気付いてないのか、対空砲火は全く無い。

相手は対空電探を装備してるはずだが、何故だろう?

砲撃に夢中になっているのか?

まあ、それはそれで好都合だ。

目標は……先頭の長門型、多分陸奥だろう。

 

「全機、我に続け!!」

 

無線に叫び、陸奥の右舷に突撃する。

相手はようやく気が付いたのか、対空砲をこちらに撃ってきた。

相手は慌てているのか、俺たちから遥か遠くの空で炸裂した。

信管の調整も上手くいってないらしい。

これは貰ったな。

魚雷投下のために高度を落とすので、対空砲は更に当たりにくい場所となる。

 

「投下!!」

 

九一式航空魚雷が機体から落とされた。

合計で5本の魚雷が敵艦に向かう。

俺たちは敵の反撃を避けるために反転し、距離を取る。

すると別の敵艦には遅れて来た陸攻や艦攻、艦爆が攻撃をしているのが見えた。

魚雷だけでなく、爆装した銀河が急降下爆撃をする。

敵艦は航空機による同時攻撃に晒された。

回避行動をするため、砲撃は少し収まる。

しかし、鈍足な戦艦の回避行動は酷く遅い。

そして、陸奥から3本の水柱が立った。

魚雷は3本当たったようだ。

避雷により速度が落ちた陸奥に対し、爆撃が襲いかかる。

陸奥は黒煙を上げるが、流石は戦艦、まだ浮いている。

他の艦は戦艦を残し、殆ど全て停止していた。

しかし、戦艦は中々落ちない。

3発の魚雷を喰らっても尚、浮き続ける装甲の硬さは異常と言ってもいいだろう。

しかもまだ砲撃を続けている、まさに化け物だ。

航空攻撃はこれ以上は無理だ、後は海の仲間に任せよう。

そう思い、現空域を離脱するのだった。

_____________

 

朝潮型3番艦「満潮」

 

「扶桑が敵艦隊を捕捉しました!!」

 

すると、敵艦の付近に巨大な水柱が上がった。

敵艦隊は既に駆逐や軽巡を失っている。

素早い駆逐艦を大口径砲で仕留めるのは至難の業のはず。

 

「突撃するわよ!! 酸素魚雷を叩きつけなさい!!」

 

「了解!!」

 

機関が唸り声を上げ、速度が一気に上がる。

敵からの攻撃は明らかに減っていた。

敵戦艦はこちらの戦艦の対応に主砲を使用し、駆逐艦には構っていられる状況じゃなくなったようだ。

副砲は先程の航空攻撃で機能がほとんど失われているのか、砲撃による煙は主砲以外は出てこない。

先程までは優勢であった敵艦隊は、一瞬で窮地に陥っていた。

全速力の駆逐艦は僅かな時間で敵艦との距離を詰める。

魚雷の射程距離まで一瞬のうちにして接近した。

すると艦の中央を敵にさらけ出すように向ける。

 

「魚雷、いつでも撃てます!!」

 

「敵艦に大穴を開けてやりなさい!!!」

 

「魚雷用意、てぇ!!」

 

駆逐艦という小柄な船体からは想像ができない高威力な魚雷が一本ずつ海へと落とされていく。

海中に入った酸素魚雷はその独特な機関から気泡をあまり発生させること無く、静かに敵へと向かっていく。

しかし、敵は静かにこちらを眺めているだけじゃない。

敵戦艦は旋回を行い、こちらに腹を向けた。

一見すれば、被弾箇所が増えるだけの無謀な行為だ。

しかし、空軍で鍛えられた目には確かに見えた。

一本の船体から飛び出した筒がこちらを睨んでいる。

次の瞬間、筒から噴煙が上がった。

無意識に俺は満潮さんを抱え込むようにして背を敵艦に向ける。

刹那、敵艦から放たれた副砲弾は艦橋の下部に命中、爆発した。

艦橋のガラスは砕け散り、爆風が体を押し潰す。

意識を失いそうになる衝撃が体を圧迫する。

衝撃により俺は満潮さんを押し倒すように倒れてしまった。

満潮さんは衝撃により、僅かに朦朧とするが、すぐに意識を取り戻した

 

「うっ……!? ちょっとあんた!? どきなさいよ!!」

 

そう言い、俺を押しのけた。

この状況でも、まだ強気らしい。

その精神を見習わないとな……。

 

「っ!!!」

 

体を動かそうとするが、激痛が襲う。

先程の砕け散ったガラスの一部が背中に刺さってしまっているようだ。

パイロットスーツならある程度は防げたかもしれないが、今は布のセーラー服。

凄まじい勢いで飛散するガラス片は防げなかったようだ・。

 

「ちょっと、あんた怪我してるじゃない!?」

 

満潮さんが気が付いたようだ。

 

「私なんか庇うからよ!!」

 

背中に刺さったガラスは、大小さまざまだ。

露出しているものもあれば、体内に入ってしまっているものもある。

 

「私はいいですから、指揮を……」

 

俺が指揮に戻るよう促すが

 

「黙ってなさい」

 

そういい、自分の制服の一部を千切って、俺の身体に巻き付けた。

 

「こうなったのは私のせいでもあるし……ありがとう」

 

初めて、満潮さんから優しい言葉を聞けたことに感動した。

これに感動できるくらいだから、まだ余裕はあるのだろう。

そして、外では敵戦艦から巨大な水柱が立つ。

魚雷が命中したようだ。

780kgの炸薬が海中で爆発し、敵艦に穴をあける。

更に、爆発により海中に形成された無の空間に、海水が一気に流れ込む。

これが魚雷の大きな能力だ。

急に発生した空洞の空間に僅か数秒で大量の海水が雪崩れ込む。

それは強力な破壊能力を持ち、敵艦に穴を作り、海水を侵入させる。

それが何本も当たり、敵艦が動かなくなった。

撃沈判定で、停止したのだろう。

他の敵艦が狩られるのも、時間の問題だった。

________________________

 

数分後 扶桑型戦艦一番艦『扶桑』

 

最後の敵艦が爆発した。

とどめを刺したのは多分戦艦だろう。

巨砲から撃たれた徹甲弾は爆撃により疲弊した金属を貫通し、内部で爆発した。

派手な爆発を起こし、それを最後に静寂が海に戻った。

先程までの戦闘の激しさを物語るように、船の残骸が海面を漂っていた。

 

「終わりましたね」

 

「そうね。でも、まさか私たちが勝てるなんて……」

 

「帰ったらお祝いですよ!!」

 

乗員たちが盛り上がる中、扶桑一人は、不安に感じていた。

勿論、勝ったことが嬉しくないわけじゃない。

この演習が後々に影響してくることについてだ。

我々の後方艦隊に敗北する最強の第一艦隊。

もうそこには、最強ではなく、最弱のレッテルが張られても可笑しくない。

彼女たちはこれからどのような運命を辿っていくのだろう。

過去の私みたいに、戦場に出れずにずっと内地にいる?

一見、平和で幸せかもしれないが、様々な戦場を渡り歩き、激戦を潜り抜けてきた彼女たちには苦痛だろう。

今までは尊敬されていたのも、内地で邪魔者扱いされる。

昔の私みたいに……。

 

「そんな暗い顔しないでくださいよ、今回は勝利を素直に喜びましょうよ」

 

副艦長の妖精さんが話しかけてきた。

確かに、今はそんな事より、喜ぶべきかもしれない。

でも、彼女たちの事が頭から離れなかった。

 

「えぇ、そうね。とりあえず、演習を終わらせましょう」

 

演習は勝利側艦隊の旗艦(旗艦が撃破されていた場合は指揮権の持つ艦)が終了宣言することで終了する。

 

「演習終了、用具収め!!」

 

すると、一瞬時が止まったように、周りの世界が静止する。

そして瞬きすると、そこは演習を開始した最初の位置へと戻っていた。

これも演習の謎の一つである。

演習が終了すると、まるで時が巻き戻ったかのように場所や状況が戻される。

しかし、実際の時間と使用した弾薬や燃料類は消費した状態だ。

この事象を解明するには、100年近くかけようと不可能だろう。

研究員たちは毎回、意味不明な現象に頭を抱えるだけで、演習は終わってしまう。

お気の毒だが、毎回毎回研究のために仲間同士で撃ち合うのはあまり気分はよくない。

できれば、二度と味方と撃ち合うような演習が無ければいいのに……。

そうは思うが、確かにこの演習は多くの課題点を見つけ出したり、成長ができたりする。

多分、やめたくても、この演習は残り続けてしまうのだろう。

もっと平和な生活ができる一般人として生まれたかった。

軍艦として再び生まれた事に、何度も不幸だと感じる扶桑だったが、今回は嬉しい事もあったし、気になることもあった。

今回は、この演習と艦娘として生まれたことに感謝しましょう。

そう思いながら、水平線を眺めていた。




久しぶりの投稿に、私の事を覚えている人が居るだろうかと不安に思いながら投稿します。
これで誤字があったら結構……。
あっ、これは書き終えてすぐに投稿してますのでお察しください。
感想をくださった方々、評価してくれた方、お気に入り登録してくださった方々、本当にありがとうございます!!
それを励みに頑張っていますので、これからもご付き合いくださいm(__)m
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