クロウ隊3番機が着任しました   作:hamof15

7 / 7
サブタイトルのセンスのなさ……
遅くなってすみません!


第7話 演習後

基地航空隊 ハンガー

 

「……え?」

 

突然、目の前が真っ白になったと思ったら、自分はハンガーに戻っていた。

さっきまでは、駆逐艦の艦橋に居たはずなのに…。

負傷の度合いから、死んだことも一瞬考えたが、あの世では無いようなので違うだろう。

背中の怪我は無くなっており、痛みもない。

いや、まだ痛かった感覚は残っているが、それは薄れていっていて、追加の痛みはない。

しかも、俺は今、被弾し墜落してスクラップと化したはずの自分の愛機に乗っている。

演習で機体が破壊されても戻るのは、本当の事だったらしい。

 

「一体何がなんだか……」

 

ヘルメットを外し、キャノピーを開けて外に出る

 

「お疲れ様です! 少尉殿!」

 

元気が良い整備長の声で、ここが現世……いや、俺にとっては異世界であることを証明してくれた。

 

「ぷっ……何その腑抜けた顔」

 

補給担当の妖精さんが、こちらを見て笑った。

 

「こんなこと初めてだからだよ……」

 

「だからってその顔は…ぷぷっ」

 

「わかった。お前今日はベットで寝るの禁止な」

 

「えっ⁉︎ じょ、冗談じゃないですか〜」

 

「俺に冗談が通じると思うなよ、今日は床で寝ろ」

 

「そ、そんな〜……」

 

絶望した顔で、補給に戻っていった。

 

「その、少尉殿」

 

「ん? どうした?」

 

整備長が真剣な顔でこちらを見ていた。

まぁ、いつもこんな顔だが、今はそれを更に真剣にしたバージョンだ。

 

「鎮守府より呼び出しがかかっています」

 

その瞬間、悪寒が俺の背筋を走る。

まさか、何かやらかしたか?

確かに、演習で大暴れしたが……。

まさか、それが問題に?

様々な疑問が頭に浮かびあがってくる。

それがハッキリとしないまま、鎮守府より来て迎えの車に乗るのであった。

_____________

 

数分前 鎮守府 執務室

 

「まさか、勝つとはな……」

 

相手は海軍の主力艦隊、それが少しの力しかない我々の防衛艦隊に敗北をしていた。

信じられないを通り越して、何か細工があったのではないかと思う程だ。

 

「提督、彼の戦果です」

 

大淀がそう言い、資料を俺に渡す。

そこには信じられない戦果が載っていた。

————————————————

航空母艦 4隻、駆逐艦 2隻 撃沈

軽巡洋艦 1隻 小破

戦艦 4隻、重巡洋艦 2隻、軽巡洋艦 2隻 損傷

航空機 約80機 撃墜

————————————————

 

「彼だけで、ここまでやれるとは…」

 

「提督、やはり彼は危険です。早急に彼を除隊させ、追放すべきです」

 

「いや待て、ここまでやれる兵士を、捨てるのは勿体ない」

 

彼が居れば、新しい光が見えてくるかもしれない。

しかし、大淀はリスクの大きさから、それを否定する。

 

「もし彼が敵ならば、この鎮守府はどころか、大本営まで被害を被る可能性があります。それに、彼が優れているかどうかわかりません」

 

「と、言うと?」

 

「彼ではなく、彼の戦闘機が強いのです。危険分子は遠ざけ、機体だけ我々が接収し、解析し、量産すれば良いのです」

 

確かにそれは合理的だし、リスクが少ない。

しかし、全くないわけではない。

 

「だが、我々にあの機体の構造が理解できるのか?」

 

「それは、明石さんなどに解析してもらって……」

 

「そこでミスが発生し、戻せなくなったら? それこそ最高戦力が瞬間でスクラップになる。それに、あの戦闘機を不憫なく使えるのは、現状彼しか居ないんだ。彼が居なかったら、誰が操縦方法を説明し、熟練させていくんだ?」

 

大淀が苦しそうな顔をした。

確かに、ものを真似するだけなら、彼を追放して、戦闘機と武器だけを量産すればいい。

しかし、ものがものだ。

この世でたった一機しかない最強の戦闘機を勝手に弄り、性能低下ならまだしも、スクラップにしては目も当てられない。

彼は、我々にとっては無くてはならない、貴重な戦力になる可能性を秘めた……いや、既に最高戦力として運用可能な優秀な兵士だ。

それを手放すのは、愚策に他ならないだろう。

ただ、大淀の言い分も理解できる。

さっきの報告書での戦果は、人間の域を完全に超越していた。

彼の機体のお陰、それもあるだろうが、彼の腕も確かにあっただろう。

そう考えると、彼は何を思って、これほどの数を撃破できるのか。

味方を撃つのは普通は躊躇する。

これは当たり前だが、彼の戦果は明らかに、機械的に敵を処理したよう見える。

本当に彼には、心があるのか?

すると、扉がノックされた。

 

「入りたまえ」

 

「失礼します」

 

彼が執務室に入ってきた。

大淀は複雑そうな顔をしながらも、静かに私の隣に立った。

 

「何か御用でしょうか?」

 

彼の身体、顔は人間に見える。

 

「まぁ、そこまで細かい理由があって君を呼び出した訳ではないが、一応聞いておきたいことがあってね」

 

大淀が先程と同様の内容の書類を少尉に渡す。

少尉はその書類を見ても、別に特別驚きもせず、数字を見ていた。

 

「そこに書かれている戦果は正確かい? どうも、信用できなくてね」

 

悪く思わないでくれと言葉を付け足す。

彼は、少し首を傾げながら言った。

 

「艦艇の撃破数は同じです。航空機は自分でも数えて無いので、何機墜とせたかは……」

 

彼は、艦載機の撃破数は分からないと言ったが、艦隊の撃破数は正しいと言った。

もしかしたら、虚偽の情報かもしれない。

しかし、報告書でも書かれているとなると、正しいとしか言いようがないのだ。

何故なら、現場を見た艦娘自身が提出した報告書だからだ。

これを信用しないのは、艦娘を信用しないのと同じだ。

それは、提督としてはありえない事である。

信頼するしかないようだ。

そうなると、彼の処遇はどうするかだ。

 

「ありがとう、もう下がっていいよ」

 

「わかりました、失礼しました」

 

彼を部屋から退室させる。

その時、電話のベルが鳴り響いた。

 

「はい、こちら横須賀鎮守府です」

 

大淀が応答する。

すると、先ほどから険しかった表情が更に険しくなった。

 

「……提督、大本営からです。直ちに出頭せよと」

 

その瞬間、俺の身に猛烈な寒気がした。

何故こんな時に限って情報の伝達は速いのだろうか…。

これはお偉いさん方と楽しい楽しいお茶会を楽しまないといけないらしい。

激しい腹痛に襲われながら、静かに執務室を出るのであった。

 

———————————————————

 

数分後 基地航空隊 ハンガー

 

「今戻ったよ」

 

ハンガーに戻ると、バルカン砲のオーバーホール中だった

ドラムマガジンから空薬莢を排出してるようだ。

すると、まるで5.56mm弾のような大きさの薬莢が排出される。

待て、20mmではなく、なぜ5.56mmが使われている?

まさか、弾数が多かったのは、小火器の弾を使ったからか?

なら、威力や貫徹力が低下するので、海中の魚雷を破壊できるわけない。

まさか、これが妖精さんの力か!?

 

「あっ、おかえり〜」

 

のんびり口調の武器整備員の妖精さんがこちらに気がついた。

 

「おう、これ、薬莢小さくないか?」

 

「あ〜、これ? 発射速度に比べて搭載弾薬数が少なかったから、私達の技術で装填の段階で通常の大きさへ、排莢の時はまた小さくするように加工したの〜」

 

何その技術すげぇ!

 

「どういう原理なんだ?」

 

「それは企業秘密ってやつよ〜」

 

まぁ、そうそう教えてはくれないのはわかっていたが、気になるものは気になる。

 

「少しだけでいいから、教えてくれよ」

 

「駄目〜」

 

「よし、教えてくれたらなんでも奢ろう」

 

「実はね〜」

 

「少尉殿でも駄目です! あなたも買収されない!」

 

ちっ、惜しいところだった。

整備長がすんでの所で話を中断させた。

 

「少尉、ミサイルなどは補給した状態の方が良いでしょうか?」

 

補給員の一人が尋ねてきた。

 

「AIM-9とバルカン砲だけ装填状態にしといてくれ」

 

万が一、スクランブルが出ても最低限出撃できるような装備だけでもつけておこう。

ここは本土だが、敵の艦隊が優勢なら、空襲が来ても可笑しくない。

今回戦闘してわかったが、やはりレシプロ機は超高空まで昇るまで時間がかかる上に、特別速いというわけでもない。

空襲があれば、飛び立つ前に地上撃破される可能性もある。

勿論、それは自分も同じだが。

今度は空ではなく地上で死んだら、次は海で死んでコンプリートだな。

宇宙で死ぬのは面倒くさい。

ん? 海は実質さっき死んだか?

いや、そんなことはどうでもいいだろう。

それと、別に死にたく訳でもない。

だからこそ、敵が来ても、迅速に対応するために、用意は怠らない。

まぁ、間に合わなかったら仕方ない。

せめて俺だけでも生きれるように神にでも祈ろう。

 

「ベケット少尉は居るかね?」

 

ハンガーの入り口から声がした。

俺を呼んでるようだ。

誰かとお茶する予定は居れていないのだがっと冗談は置いとこう。

 

「はい。ここに居ますが」

 

入口の方に目をやると、一人の年配の男性が立っていた。

一瞬で鍛え上げられた俺の目が明いての服装を確認をする。

戦闘服ではなく正装、肩の階級章、略綬(勲章や記章)。

これは予想だがここの航空隊基地のトップ。

これは言動に気を付けなければ。

 

「君の戦果を見させてもらったよ。実に素晴らしいものだった。ここではなんだ、ゆっくり部屋で話そうじゃないか」

 

「わかりました」

 

うっわ、最悪だ。

こういうトップとの話し合いは大抵面白くない上に、階級の下の俺は胃痛に悩まされながら言葉選びというゲームを常にしなければならない。

面倒くさい上との会話から離れていられた3番機だった頃が懐かしい。

まあ、尉官クラスの俺も一応上って言ったら上だが……。

仕方ない、楽しい楽しい言葉遊びと行こうか。

_______________________________________

 

数分後 基地航空隊入口

 

「あのぉ、銀の飛行機に乗ってた人って居るかしら?」

 

珍しい、ここに艦娘が来るなんて。

普通は艦娘は海での活動のため、何か行事やらが無い限りここには来ない。

ただ、彼カノとかこの世に存在してはならないものでない限りだが。

 

「銀の飛行機? あぁ、新人の事ですか。残念ですが、今基地司令とお話ししているので会うことはできません。伝言でしたら伝えておきましょうか?」

 

「……そう、大丈夫です。また次の機会に来ます」

 

そう言い、彼女はとぼとぼと帰っていく。

あの新人の野郎、どうやらもう女を作ってるらしい。

後で絞めておくべきだろうか…。

 

一方、不運に襲われた扶桑は、自分の運の無さを恨みながらも、いつもよりも不思議と暗い気持ちにはならなかった。

 

「ふふ、これもあの人の力かしら……」

 

もしかしたら、今の自分は幸福なのではと考え始める姉さまであった。

一方、帰還後にそそくさと何処かへと向かった姉さまに山城は何か不吉な事が起こるのではと寒気を感じている。

更に瑞鳳も同時に違った意味で寒気を感じたようだった。




遅くなって申し訳ありませんでしたぁ!!!!
一体何ヶ月放t…ゲフンゲフン、予定が開かないなんて…(すみません言い訳です全然ネタが出てこなかったんです)
次回こそはもっと早く…せめて一ヶ月以内に出します!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。