乃木さん家の園子さんに構われたすぎて夜しか眠れない   作:みそぎんちゃく

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エレンにお前の始めた物語だろって言われたので初投稿です

花結いのきらめきです。


天国地獄

「……」

「はぁ……」

 

 樹界内部、そこで私は大きめの根の影に座り、いつの間にか一緒にいた精霊を揉み揉みしつつ身を潜めていた。

 

「どうして樹海にいるんだろう、私」

 

 こんな事態に陥ったのはつい先程の出来事である。

 

「よおし! 勇者部一同、文化祭でやる出し物の練習に行くわよぉ!!」

 

 という風先輩の掛け声に続き、練習のために借りた教室へと向かおうと扉に手をかけた瞬間、気がつけば樹海に一人佇んでいたのだ。

 

「端末もないし、連れはこの子だけ……」

 

 膝の上でコロコロと転がる夜雀は、精霊の威厳……は他の子達も無いか、まあそんなもの無く、失われた野生タグを付けられそうな程のだらけっぷりだ。

 

 改めて手持ちのバックを開き、中身を漁ってみてもやはり中身は何も無い……いや、唯一東郷さんから貰った絶品ぼた餅だけは残っていたのだが、つい先程夜雀と食べきってしまった。

 

「空にはちっちゃいキモイやつ、遠くには大きめのバーテックス、私は変身できず夜雀と二人? きり……はぁ……」

 

 何度目かのため息。

 

 ぼた餅を食べた後の夜雀は完全におねむのようで、手の中にすっぽりと収まると身動きひとつ取らなくなった。

 

 もうやだ。

 

「貝になりたい……」

「千景さん?」

「ん?」

 

 訳の分からない状況に思考を停止させていたが、そんな私の耳に樹海に居るはずのない人間の声が聞こえてくる。

 視線を向けると、そこには三人の勇者装束を纏った少女達が立っていた。

 

「誰、ですか?」

「あれ? 別人……みたいですね。髪型が微妙に違う……」

「何? ということは、ただの一般人か? 何故こんな所に……巻き込まれたのか?」

 

 はて? 今代の勇者は私たちだけのはず……とにかく、話を聞かないことには始まらないか。

 

「えと、私は郡美影といいます。貴女たちはその、一体……」

「名前まで千景にそっくりだなぁ。って、ん? タマ達のこと知らないのか? けっこー有名だと思うんだけどなあ」

「たまっち先輩、私たちのことを見た事ない人だって沢山いるんですから、知らない人だって普通にいますよ」

「そっか? いやでも若葉はテレビとか新聞とか出てただろ?」

「その辺にしておけ、郡……さんが困惑しているぞ」

 

 よく分からないが、そんなやり取りをした後、あらためてこちらに向き直った若葉? さん達が自己紹介を始めた。

 

「すまない、私は乃木若葉。勇者をやっている」

「土居球子だ! タマって呼んでくれタマえ!」

「もうタマっち先輩ったら……えっと、私は伊予島杏といいます。よ、よろしくお願いします」

 

 ん? 乃木? 

 

「乃木若葉……土居球子、伊予島杏……? えっ! へ、平成の勇者じゃないですか!?!?」

 

 何が一体どうなっているんだろうか? 

 

「ん? 一応知ってはいたみたいだな、しかし、平成の勇者? 勇者は私達と長野の彼女くらいしか……」

「えっと、信じられないかもしれないですけど……かくかくしかじかで……」

 

 

「なるほど……いや、良くはわらないんだが」

「つまり、要約すると美影さんは私たちよりもあとの時代で勇者をやっていて、気がついたら樹界にいたということでしょうか?」

「そうなります……」

「しっかし、タマ達の後の時代だなんて想像出来ないなー」

 

 一通り説明を終えると、それぞれ反応を示しはするが、疑ったりはあまりされていないようだ。

 

「あの、疑ったりとかは……」

「ん? ああ、それに関してはまずその精霊? が郡の元に居るから勇者関係者だと言うのはわかる、実態化していることには驚いたが……それに勇者や精霊、神樹様みたいに、不思議な存在が普通に存在しているんだ、有り得なくはないだろう」

 

 たしかに。

 

「それに、郡さんは嘘をついているように見えませんでしたし……」

 

 とりあえず、話のわかる人たちでよかった……。

 

「それでなんだが、話した感じ知らなさそうだけど一応聞いておきたいんだが、他に誰か見なかったか? 実はもう二人仲間が居るんだがはぐれてしまってな……」

 

 仲間? もしかして。

 

「先程私に声をかけた時に言っていた千景という方ですかね?」

「ああ」

「すみません、私も今回は乃木さん達以外には……」

「いや、気にしなくていい。とりあえず今は変身ができないんだったな? 私たちから離れないようにしてくれ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

「それで千景のやつがな!」

「あはは……タマっち先輩、バレたら怒られちゃうよ」

「おおっと、それはタマったもんじゃないぞ! 美影、今の話は聞かなかったことにしてくれ!」

 

「たのむ!」とん言いつつ手を合わせて懇願してくる球子さんに苦笑いをしつつ、少し気になっていたことを聞いてみることに。

 

「そう言えば、西暦の勇者たちはどんなふうに勇者装束に着替えていたんですか?」

 

 大赦では、勇者システムの改良などを行っていると聞いたため、過去から何が変わったのかが気になったのだ。

 

「ん? 私たちか? 私たちの場合はこの携帯アプリでだな……」

「あれ? ……これは……若葉さん、タマっち先輩。このアプリって入っていますか?」

「どうしたんだ? あんず」

「これは、初めて見るな……」

 

 ? 

 

「どうかしましたか?」

「いや、実は知らぬ間にスマホの中に初めて見るアプリが入っていてな……」

「何でしょうか……これは、私たちの使ってる樹界の地図?」

「どれどれ……?」

 

 あ

 

「これ、私たちが使っているアプリですね……」

「何?」

「一体どうなっているんだ!? よく分からないぞ!?」

 

 確かに、知らぬ間に勝手にアプリが入っているだなんてどんなホラーだ……。

 

 だけど

 

「ちょうど良かったです」

「?」

 

「実はこのアプリ、他の端末を持っている勇者の居場所が分かるんです。だから他の皆を探す手間が省けるんですよ」

「ああ、タマ達の使っていたのと同じ感じか! でも、あれってここまで範囲広くなかったよな?」

「まあ、乃木さん達の時代から多少は勇者システムもアップデートされていますし」

「こうすると……? すごい、こんなに遠くまで把握できるだなんて……仲間と敵の場所を細かく把握できるだけで、できることは全然違ってきますね」

 

 各々がアプリにあーだこーだ言いつつ弄っていると、その中に他の勇者たちの名前を見つけたようだ。近くには見覚えのある名前も見えたので、どうやら先輩や園子さん達と合流していたらしい。

 

「さて、それなら話は早い。早く千景や友奈達と合流しよう」

 

 パンパンと乃木さんが手を鳴らして注目を集めると、次の行動方針を口にする。

 もちろん皆異論はなく、名前のあった方へと歩みを進めようとしたときに珠子さんが「あっ」と声を上げた。

 

「どうした?」

「赤い点ってバーテックスだよな?」

 

 そう言って土居さんが見せてきた画面には、密集しすぎて見えづらいが、多量の赤い点に囲まれ始めている勇者達の名前が表示されていた。

 

「そ、そうです! つまり……」

「囲まれているな、援護しに行くぞ!」

「それじゃあ急いで……あー」

 

 勇者の身体能力で一気に行こうとしたのだろう乃木さんが、こちらを見て踏みとどまった。

 

(すみません足手まといで……)

 

「若葉、杏! 美影のことはタマが背負うからもし敵が出てきたら頼むぞ!」

「すみません……」

「郡は気にするな、変身できないのではどうしようもない……いくぞっ」

「「「はい! (おう!)」」」

 

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

「ちっ数が多い」

「まあでも、これくらい気合と根性と女子力で何とかなるわ!」

 

 少し離れたところから聞きなれた声が複数聞こえてくる。

 

(((女子力って……?)))

 

 風先輩の発言に慣れていないメンバーが固まった一瞬の隙に、樹さんの後ろにバーテックスが迫っているのが見えた。

 

「樹! 後ろ!」

「え? きゃあっ!」

 

「はあああああ!」

 

 何とか若葉さんが敵と樹さんの間に割り込み一閃。

 

「無事か!?」

「えっええあああはい!! どちら様で「樹ぃぃいい!」お、お姉ちゃん」

 

 状況を呑み込めていない樹さんへと風先輩が飛びついたことでさらに混乱しているのを尻目に、こちらを認識していなかった敵たちを横から伊予島さんが射抜いてゆく。

 一度包囲網を崩せたおかげか、そこからは一方的に敵を殲滅することが出来た。

 

 念の為にと小さなからだで私を姫抱きにして立ち回っていた球子さんに下ろしてもらうと、淡い金と紫色の影が音もなく"二つ"飛びついてくるのが一瞬見え_______

 

 

 

「うぐっ」

 

 

 

 左右からの容赦ないサンドイッチ攻撃により、変身していなかった私は意識を刈り取られるのだった……

 

 

 あ、やわっこいい匂________

 

 




「「ごめんなさい〜…………」」
(私は悪い子ですの看板を首から提げながら。)
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