THE NOT SIGNALS −Segregated world−   作:穏詠 桜太

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富樫病にかかっていました。また、タイトルは「こがねいろ」と読みます。


#5 黄金色の瞳が語るもの

「......いたっ...うぐ」

 

 脈拍を打つ度に頭が痛い。血が脳を循環する度に――――。風邪でも引いたのだろうか、そんな感じに痛い。

『松下 一裕』は、幼少から病弱で、修学旅行前日に体調を悪くしていた。しかし、教師の目を掻い潜って

当日を迎えられたものの、さっきまでの衝撃なのか、余計に体調を崩したのだろうか。

 その痛みを堪えて、閉じている瞼を開けた。彼が目を覚ましてみた景色は、中央でに明滅する裸電球が

ぶら下がっており、目を覚ましたばかりの彼にとっては気に障るものだったため、ふと横を向くと――――。

 

「――――目が覚めたか。...よかった」

 

そこには白髪の和装の男が目の前に座っていた。松下の顔を見ると、

 

「なんだ、君はここの人間ではないようだな。まぁ、助けてもらったには礼を言ってほしかったな。

うちは診療所でも民宿でもないし。ともかく、どこから来た?名前は?」

 

 男は金色の眼で彼を見据えながら、返答を待つ。その間に、男は白髪のくせ毛を指で弄んでいる。

しかし、松下は「ここの人間ではない」と言われたことに少し苛立ちを感じた。何せこの

成人を迎えて数年もたってないような顔立ちに、不釣り合いな白髪に金色の目を兼ね持ってるからだ。

そうなったらこっちの話であることも解釈できる。もし、できるとしたならばコスプレといった類だろうか。

彼は自分自身の情報を晒すよりも、相手の情報を晒す選択をえらんだ。

 

「まず先に僕が聞きたいことですが...あなたは誰ですか?それに、ここは?」

「おいおい、先から聞くのか。わかった、僕が言うなら君の方からも口を出してくれ」

「わかりました、ありがとうございます」

 

 男は眼鏡を掛けなおしてから――――。

 

「『森近 霖之助』それが僕の名前。で、ここが『幻想郷』さ」

「――――――っ」

 

.........あまりにも最小限すぎる。松下は霖之助にもっと話が聞きたいがために、もう一言。

 

「あっ、あの、もう少し――――」

「今はこれだけだ。君に言えることは。さっき君が言った要求に僕はその通りに答えただけだ。

後に回してくれ。そして、君の番だ」

 

 霖之助は松下のもう一つの要求を一蹴させて、こちら側から要求を出した。

松下は会ったばかりの彼に論されて――――

 

「えっと、僕は『松下 一裕』です。修学旅行で......その、なんか事故にあってここに来ました」

「あ~、君がここ『幻想郷』の者ではないということが分かった。別の場所から来たということね」

 

 

 ここで、松下 一裕は別世界に来たことを初めて理解することになる。

すなわち『幻想郷』という箱庭に囚われていたことにも――――。

 

 

 

■■■■

 

 

「えっと、わざわざ助けにきて...っう......」

 

 自分のことを助けてもらった霖之助に感謝の述べを言おうとしたが、途端に頭痛がした。

ここで目覚める以前、自分はロープウェイの中にいたというくらいであろう。

眩い閃光に目を焼き付けられ、聞いたことのないような轟音がしたというところが最後に覚えていることだ。

――――あの後に自分は気を失い、その間に霖之助に助けられたのだろうと。

今はそう感謝したいのだが、あまりいい状態ではなかった。

 

「まだ、ここに入れたばかりだし、多分傷が癒えていないな。まだ痛いというのなら鎮痛剤を持っていこう」

 

 そういうと、霖之助は左手にある戸棚から小瓶を一つ取り出した。

その戸棚を見てみると、何やら大小異なるものが。

 

六角形で中央を囲うように文字のようなものが彫られた物や...

戸棚の側面に立てられた、ただの変哲もない箒だったり...

壁に掛けられた、作りかけの紅の巫女服...

古びた家具や比較的新しい機械など...

 よく見るようなものから見かけないものまでもが、数知れず置かれていた。

凝視している松下を見て霖之助は彼を横目に、戸棚の中から一つの小瓶を取り出した。

 

「うちの店に買えるものはないよ。まぁ、差し入れはある程度用意してるけど。ほら」

「待たせたかな。これを2粒飲んでれば痛みは和らぐ筈さ」

 

 

 その声で反射的に松下は飛び起きた。そして再び突き刺さる頭痛。彼は頭を抱えながら小瓶を手にし、

中に入ってる白い丸薬を2粒つまんでから口に放り込む。しかし、飲み込もうとしたが――――

 

臭い。

 

 長いこと放置されたのか、発酵のようなことが起きていたのだろうか。それが原因で飲み込もうとしても

どうしても躊躇いを持ってしまう。彼は薬を飲むことが苦手だ。『良薬は口に苦し』とか言われてても、

苦手なことに変わりはない。しかし、苦痛から解放されるというのなら、と

喉をやや過剰に鳴らして飲み込んだ。その時は唾が湧き出ていて、それをオブラートで包むようにした。

 ここまで飲むだけの過程で10秒は掛かっただろう。それだけの時間を使ったためか、

霖之助はそんな彼の様子を睨んでいた気がする。

確かに、霖之助の態度も分からなくもない。いい年して薬を飲めないのは、まさしく屈辱の言葉が似合う。

 

 それから間もなくして、頭の痛みは引いてきた。即効性が早くて余計に苦しまずに済んだことに安堵した。

 

「えっと...ありがとうございます」

「いいんだよ、礼なんて。君がここに来たということは、僕にとって初めてではないんだ。

ここ数年で君に似た姿をした人間を見るんだ」

 

 まだ言えなかった感謝の旨を告げた。簡素なものだが、言わないよりは人の心を穏やかにさせたほうがいいから。

 

「ほ、他の人は見かけましたか?このような、僕みたいな制服を着た人です」

「いや、最近は、見かけていない。だけど...言いづらいけど、君を見つけるごく最近に、

地鳴りとかがここで起きていたんだ。それに、空が――――」

 

 続きを言おうとしたその時、霖之助と松下に金切り声が響いた。

鼓膜を突き破る衝撃を受け、硝子にヒビが入る音が聞こえてくる。

 

「「――――いっ...!」」

 

耳を強く抑えてその音から逃れようとする。数秒経って、それは過ぎたが、意識がぼうっとする。

 

「――――大丈夫か・・・」

「ちょっと、まぁ大丈夫です・・・」

 

 過ぎた金切り声が静かになった。それは二人にはその残響が再現できるものだった。

 

「あれか・・・・・・ダメだな、こりゃ」

 

霖之助が小声で聞こえずにつぶやく。それは松下の耳には聞こえていなかった。




前述の前書きのように、作品が書きたくなくなる、いわば「富樫病」にかかっています。
最近某FPSの新作が発表され、過去作が無料で遊べるらしいので、全部入れて遊んでました。その前は、ちょくちょくノートに下書き書いてました。ある程度2~3話分投稿可能な範囲まで書き上げています。なんとか投稿したい。

以上。
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