クロスネタを書こうと思った時に浮かんでいたネタの一つです。
「主はそんな物で良いのか?もっと選ぶべきものがあるのではないか」
神と名乗る少年はそう言って、僕の手の中にある毒々しい色をした木の実を見る。
その瞳は優しげで、僕が要望した物が本当にそれでいいのか、幾度と無く問い返してきた。
初めて会ったときよりも随分と人間臭くなった彼・・・もしかしたら彼女かもしれないが・・・の様子に僕は微笑を浮かべる。
神様は病気で伏せる僕をたまたま地球に降りていた時に見かけて、声をかけてくれたのだと言う。
――何故そんな所で寝ているのか。空はこんなにも青くて、風はとても心地良いというのに。
魂の色を見ると言う神様は、年齢の割りに随分とややこしい色をしているという理由で僕を見つけたのだと言う。
その時の問いに僕は空なんて見た事ない。ネットの画面越しにしか見ることが出来ないと答えた。
恐らくその答えが神様の中の何かに触れたのか、
それから幾度と無く神様はやってきて、病室の僕に言葉をかけてくれた。
ここに来る途中の町の様子。僕と同じ位の子供が学校に通う様子や、鳥や獣と戯れたという事まで。
僕はその言葉を聴きながら、外に出たい。元気になりたいと思いを募らせた。
そんな時、神様は僕にこう言った。
――主はもう、長くはないだろうな。
覚悟をしていた言葉だった。
「はい。そうみたいです。お医者様からは今日が峠だって。さっき、お父さんやお母さんともお話しをしました」
――怖くはないのか?人は、死を恐れるものだろう。
「もちろん怖いですけど。でも、しょうがないですから」
そう言って無理に笑ってみたけど、顔が引きつってしまってうまく表情を繕う事ができなかった。
しょうがないなんて思ってない。本当は助けてほしい。
でも、神様は最初に僕に言ったのだ。運命を変えることは出来ないと。
僕は14歳で死ぬ。それは、決して変えられる事はないのだ。
――成る程、よろしい。
「え?」
神様の言葉に問い返そうとした時、視界が真っ暗に染まる。
あ、これは、と手を動かそうとしても動かない。卒倒した時と同じ感覚だ。
ナースコールを押さないと。何とか動こうとするけれど、体が重たい。
意識が、とぎ―――
かみ―――さ―――――ま――――
「何じゃ?」
「へ?」
意識が途切れたと思った時、僕の耳元で聞き覚えのある、けれどいつもより鮮明な声がする。
見上げる・・・という感覚はなかった。ただ、見ようとしたら視界が開けて、目の前に淡く金色に光る髪をしたすごく綺麗な顔があった。
「ふむ、まだ呆けて居るのか・・・そら、離すぞ」
そう神様が言うと、ふわり、とした感覚と共に神様と僕の距離が離れる。
押された、と思ったけれど足元の感覚がないし、腕の感覚も、自分がどうなっているのかも分からない。
混乱している僕を尻目に神様は色々な宝石をつけた大きな椅子に腰をかけて頬杖を付いた。
「ここに人を連れ込むのも久方ぶりだな。どうした?楽にしてもよいぞ」
「あ、その。楽にって言うか、僕どうなっているの?」
「うむ?ああ、肉の体を捨てた感覚が分からぬのか!」
合点が言ったとばかりに神様は頷いて、右手の指をパチン、と弾いた。
すると、急に腕や足の感覚が戻ってくる。唐突過ぎて倒れそうになったが、何とか踏みとどまる事ができた。
「さて、お前は運命どおりあそこでその命潰える事になった。後は自由だ。好きにするが良い」
「へ?」
「ああ、もしやあれか。他の神が言うていたちーととやらが欲しいのか。うむ、何でも言うて見るが良い。趣味が悪くなければ叶えてやろう」
「あの。すみません神様。ちょっと教えてもらっても良いですか?」
「うむ?」
僕が問いかけると神様は不思議そうに首をかしげた。
すっと左手を宙に浮かべるといきなりグラスが現れて、その上に赤い液体がトクトクトクと注がれる。
うわ、すげぇ・・・じゃなくて!
「あの、ここはどこで、僕は何故ここにいるんですか?」
「・・・・・・ああ!そうか。まだ呆けているのか。ここは儂の住居で、天界に決まっておろう。主は先ほど寿命を迎えて魂だけの存在になった故運命の鎖から解き放たれた。故に儂がここに連れて来たのだ」
「うん、意味不明!」
「うむ?」
またも小首を傾げる神様にこっちが疑問符を使いたいよ!と叫びたいが我慢する。
神様は美味しそうにグラスの飲み物を飲んでいるし今の感じなら質問にはきっちり答えてくれそうだ。
だから、幾つかの質問を一つずつ神様に投げかけてみた。
何故ここに連れて来たのか?
→生前は助けられなかった故
助けると言うとどういった形で?
→外を見てみたいと言っていただろう。連れ出してやったぞ
・・・・・・ちーとって何さ
→お前が欲しい力でも環境でも何でもだ。ただし気に入らなければその時は別の物にする。
うん、気分で助けられたんだね、僕は。
ありがたいけどさ!あのまま真っ暗闇の中で消えていくよりは!
「いや、お前は両親を残して逝っているから、あっちの地獄にある河原で石を積まないといけんな」
「そこ和式!?助けてくれてありがとう!」
「うむ。もっと感謝せよ」
ふんぞり返る神様にありがとう!大好き!と声をかけると神様は存分にドヤられた。
会話だけは長い事してきたから、互いの考えは何となく分かる。本当にただの自慢だ。
・・・・・・あ、もしかしてこれチャンスなのでは?
「そんなウルトラすごい神様。力でも環境でもって例えば複数でも大丈夫なんですか?」
「ん。能力一つ、環境も一つだな。何でも良いぞ。なんせ儂、ウルトラすごい神様だからな」
「じゃあ・・・その、ワンピースの世界に降りたいとか」
「うむ、構わんぞ」
「本当ですか!あ、じゃあ、オリジナルの悪魔の実を食べたいです!」
「おお、そんなことでいいのか。勿論構わんぞ。どんなものが欲しいんだ?」
「はい!じゃあ、ヒトヒトの実系列で、」
モデル:スーパーヒーローを下さい!
神様は心配そうにするが、僕は大丈夫だと思う。
この実に宿る力が何かはわからない。けれど、きっと元の世界で白い部屋の中で過ごす日々よりもずっとずっと楽しい日々が送れるだろう。
次の人生を楽しみ切った時、土産話を聞かせてくれ。神様はそう言って僕を見送ってくれた。
ありがとうございます。僕は貴方に出会えた事。お話して、そして・・・・・・初めて友達になってくれた事。絶対に、絶対に忘れません。
神様が用意してくれた扉を潜り、悪魔の実を齧る。
次に戻ってきた時は、きっと
ピチューン
「へ?」
「で、たった一歩踏み出した所で体がバラバラにはじけて世界中に散らばったと」
――は、はい、そうですぅ・・・
「えーと、もしかしてあの神様ってボケの神様なのかな?お笑い系列で」
――わ、私からは何とも
妖精のようなサイズの羽が生えた小人・・・神様の使いを名乗る小天使は、そういってしおらしく頭を下げる。
いや、あの神様が若干ボケ入ってるのは分かってたんだ。分かってたんだけどこれはないだろう。
何だよキャパオーバーで爆発って。中国製か?もしかしてこの世界はチャイナボカンシリーズなのか?
今まで感じていた感謝の念が薄れていくのを『俺』は感じた。
いや、まぁ。形はともあれ生きてはいるんだけど。
全身余す所なくはじけ飛んでバラバラに分裂した状態からバラバラに再生した今現在を、生きていると表現できるんならな。
「それで、結局俺等はどうすればいい?他の連中も結構離れてるみたいだけど」
――あ、その辺りは感覚で分かるんですね。何分我々もこんなケースは初めてで・・・・・・一先ず、皆さんが亡くなった時は全部神様の元に戻る手はずなので、そこで統合される事になるのではないかと。はい。
「ああ・・・ならまぁ・・・良いのか?」
でも別々の人生歩んだ奴が急に統合とか出来るもんなんだろうか。いや、まぁあんなんでも神様だし出来るんだろう。うん。
それに『俺達』が耐えられるかは別として。
「まあバラバラになっちまったのはしょうがないとして・・・・・・そういえば分裂してる奴に女の子居るんだけど大丈夫?その、色々」
――その辺りはそっちの小天使が色々補助しますので・・・・・・出来れば暖かい目で見守っていただければ
「今なんかすっげー弄り倒されてる。心の中で」
――どんな状況なんですか!?
いや、何か提示版っぽい奴がね。頭の奥のほうで何か言うと反映される的なのがあるんだよ。
あ、ちょっとまて。新世界でいきなり原作キャラに襲われ取る奴がいるな。ええっと・・・・・・上条当麻(偽)か。
不幸まで再現するのか。すげぇな悪魔の実。
いや、それよりヤバイぞ。近くに他には・・・ガッツ(偽)が居るけどあいつの足じゃ間に合いそうにないな。
「しゃーないか。えーっと。名前なんだっけ」
――パルモです!最初に名乗ったじゃないですか!
「あー。うん。覚えた覚えた。じゃあ、パルモ」
逝くぞ
――へ?
小天使を胸に抱き、出来るだけ衝撃から守るように抱えて、全力で足に力を込めて跳ぶ。
上条当麻の気配は体内センサーによればおよそ数百キロって所か。水に落ちるのは怖いから、近くの島に着地してから近距離ジャンプと行こう。
雲を突き抜けて空を飛ぶ。上から見る青い海はどこまでも続いているようで、気持ちが高ぶるのを感じた。
心の提示版に上空数万メートルなう。見渡す限りの青い海と書き込むと、上条当麻からたすけて~たすけて~と返事が返ってきた。
待ってろ、すぐつく。と返事をして、最寄の島に着地。
ガタガタと震えるパルモを抱えなおして、目標を目視で捕らえてジャンプする。
「すすすみません、本当に悪気は無いんですごめんなさあああい!」
「じゃかぁしぃ!悪気がないで脳天カチ割られて笑ってられるかボケぇ!」
当麻の頭の横をナイフが通り過ぎた。勿論当てるつもりで投げられたそれで、当たればほぼ間違いなく死んでいる。
不幸だ!幾らなんでも落ちてきた瞬間これはないだろうが!
便りの小天使もあっちの赤毛の兄ちゃんに捕まって弄られてるし!お前それでも神様の使いか!
てかあれシャンクスじゃね?うっわ若・・・え、ここ結構原作前?
「死ぃねええええ!」
「うぉお!?」
ズダン、と連続で投げられたナイフをかろうじて転がって交わし、俺はマストの影に身を隠す。
心の中ではやくきて~たすけて~と繰り返すも誰も来ない。場所まで運が悪すぎるってどういう事だよ!弾けた時はまだ上条当麻で再生する前だろ!
いや、流石に海に落ちるよりはマシかも知れないが・・・
――あ、海に落ちてたら私らの力で陸にワープさせてました。
「お前意外と余裕あるな!?」
――いえ、それほどでも・・・・・・あ、来ましたよ。
「おしゃべりとは余裕じゃねぇかおい」
「オワタ」
再生して5分で死亡って・・・それは流石にないよ神様。
赤鼻が特徴的な男・・・・・・恐らく原作のバギーの若い頃の姿だろう・・・・・・はナイフを振りかざし、血走った目で上条当麻を見る。
もう駄目だ、と振り下ろされたナイフを右手で受けようとした、その時。
ドォオオオン!
轟音を立てて船が大きく揺れた。
悲鳴を上げるバギーから転がるように上条当麻は距離をとる。
「なんだ!?」
「おい、何が起きた!別口か!?」
上条当麻の脅威度が低いと判断したのか、笑ってバギーとの追いかけっこを放置していた船員達も慌てた様子で武器を取り周囲を確認する。
死にかける前にバギーを止めるか、程度に考えていたがまさか隠し玉でもあったか。しかし、明らかに戦う人間の動きではなかったが・・・・・・
彼らが音のした方向を見ると、転がるように音の発生源であろう黄色いタイツをはいた男に駆け寄るツンツン頭の小僧と小動物の姿があった。
「た、助かった!」
「おー。生きてるな。よかったよかった」
男の背後には大きくへしゃげた船の甲板がある。その様子に船員達は事情はどうあれただで返す訳には行かなくなった事を悟った。
小僧を庇うように前に立つ男は、キラリと光る頭を左右に振って周囲の様子を見る。
「悪いんだが、後ろの奴は俺の仲間でな。死なせるわけにはいかんから連れて行くぞ」
「・・・・・・この状況で、ハイさようなら、が出来ると思うのか?」
「だよなぁ・・・うん」
困った困ったと首をかくハゲ男に、隙を見つけた一人の船員が覇気を纏った剣で切りかかった。
その動きに合わせて周囲の船員も思い思いに得物を持ち、男に襲い掛かる。
「あ」
間抜けな声を上げた男を覇気を纏った連撃が襲い掛かり、パキィン、ベキィ、という音を船上に響かせた。
「・・・・・・馬鹿な」
「あー。破けちまった。おい、パルモ、これ治せるのか?」
――あ、はい!それくらいなら後で針と糸があれば!
「裁縫すんのかよ」
グランドライン後半の海。新世界で、しかも恐らく最上位の練度を男達は持っていた。
海軍本部の猛者たちや新世界の荒くれどもにだって一歩も引かず・・・むしろ優勢に立って戦える自信もあった。
そんな自信が、今。自慢の得物と共に砕け散った事を男達は悟る。
「あー、すまん。どいてくれると助かるんだが」
相手にすら、されていない。
腰砕けたようにその場に座り込んだ男達に「お、サンキュー!」と軽口を叩いて男達の間から抜け出ると、男は上条当麻に歩み寄ろうとして、ピタリ、と足を止めた。
船の中に続く階段から、誰かが上がってくる足音がする。
「止めろ、シャンクス。無駄死にするだけだ」
「・・・・・・あんた、誰だ?」
背後から切り掛かろうとしていた赤髪の青年が足を止める。
男には彼をどうこうするつもりは無かったのだが・・・向かってこないなら何かする気はない。
男が声をかけると、階段から1人の男が船上に上がってきた。背後からも数人。恐らくこの船の幹部か。
男から見ても強そうだと感じられる何かがある。
「俺の名前が知りてぇか?知りたきゃ教えてやる」
にやり、と先頭に立つ、ボサボサ髪の男が笑った。
「俺の名はゴール・D・ロジャー。海賊王になる男だ!」
名乗りの瞬間、圧力のようなものが彼を中心に放たれる。
ただ名乗っただけだというのに、思わず頭を下げそうになる不思議な感覚が彼と上条当麻を襲った。
「俺は名乗った。次はお前さんの番だ。そうだろうお客人」
「・・・ああ、そうだな」
ロジャーと名乗った、後の海賊王の言葉に彼は頷いた。
さて、これは少し困った事になった。名乗るとしたら何になるのか。前世の名前は流石に不適切だろう。人数が多すぎるし全員が名乗るのは不便すぎる。
かといって適当に名前をつけても反応できる気がしないし何より不実だ。
となると。残るは一つしかない。
この名を背負う覚悟も何も出来ていないが。いや、今覚悟を決めれば済む話だろう。
一つ息を吸って、彼はこう答えた。
「俺の名はサイタマ。趣味でヒーローをやっているものだ」
サイタマの言葉に、ロジャーはにぃ、っと笑った。
これが後にこの海の歴史を変える出会いになるなどとは、この時はまだ誰も知らない。
没ネタ理由:郡体ヒーロー達は皆同一人物からの派生になるせいで、口調が似たり寄ったりになってしまうため回しきれないと感じた事。途中で投げそう(震え声)
サイタマは好きなんでブラック・ジャックの方に出せれば良いな、と考えてたらつい完成してた・・・・・・