世界樹の裾〰彼女が始めた街作りの物語〰   作:テオ_ドラ

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11.「アタシは、退屈なんだよ」

(こいつ、ホントに何をしたいんだ?)

 

キルテッドでハツカに同行していたがあまり目的はわからなかった。

ザイネンホースの毛皮を商人に売り渡し、街のギルドで報酬を受け取る。

どうやら商隊のコースだったため討伐の依頼も兼ねていたようだ。

そして肝心の脚は大工に渡していた。

窯を作る、というのは何かの比喩などではなく用途はわからないが本当に窯らしい。

 

「私の用事はこれで終わりましたが、アーデルハイドは残るんですか?」

 

てっきりそのまま街に滞在するかと思っていたのが、そのままどこかへ行くつもりらい。

一日くらいゆっくりすれば良いのに忙しないものだ。

 

「ん、ああ……もうアタシは暇だからな。

 もう少しついていくぜ」

 

「……あなたも物好きですね。

 引く手あまたの『アイゾンウェルの魔槍』使いが暇なんてことないでしょう」

 

「いいじゃねぇか。たまの休暇だよ」

 

正直に言うと、もう既に飽きていた。

面白いことをしているかと思っていたのだが、どうにも当てが外れたようだ。

だがこんな普段来ないような地域に来てしまったので、

たんに見て回ろうと思っただけである。

 

「リンデ、運ぶものはありますか?」

 

ハツカが街を出発前に立ち寄ったのは宿を兼ねている酒場だった。

ウグイス亭という名前だが、泊まるわけではないらしい。

 

「たくさんあるよ。まとめて置いてあるから積み込むね」

 

看板娘が何やら樽やら木箱やら色々と用意してくる。

てっきり輸送の依頼かと思ったが……ハツカが支払いをしていた。

ゴーレムが引っ張る荷台に積み込みをした後、そのままハツカは出発をした。

 

「……もしかして、これお前が買ったのか?

 何が入ってるんだ?

 まるで店でも開くみたいじゃねぇか」

 

「色々、です。

 まあ……説明はし辛いんですが、別に私のものというわけでもないんですけれど」

 

相変わらず荷台に居座るアーデルハイドが一つ木箱を開けると

そこには食器が並んでいた。

ハツカが一人で使うにはあまりにも多い。

その隣の木箱には干し肉や干物といった保存食が詰まっている。

 

「開けないでください」

 

「いいじゃねぇか、見るくらいよ」

 

宴会でも開くつもりだろうか。

ハツカはゴーレムを操り街から出ていく。

ここ数日で荷台に慣れたアーデルハイドは地図を広げ眺める。

 

「アーデルハイド、野宿の際は交代で晩をしてもらってもいいですか。

 臭いに釣られて獣が来るかもしれませんから」

 

「構わなねぇけどよ。どこに向かってんだ?」

 

「……ミラリア、です」

 

「ミラリアだあ? どこだよ」

 

地図を見て探すと、確かに名前があるにはあった。

そこまで遠くはないがしかしこれまた辺鄙なところである。

 

「アーデルハイド、何度も言いますけど来ても何もありませんよ」

 

「じゃあ何しに行くんだよ、ハツカ=エーデライズは」

 

その問いに彼女は「うーん」と言い辛そうにしてから、

 

「私の家があるからです」

 

とポツリとつぶやいた。

 

「はっ?」

 

「だから、家ですよ。今、私はミラリアで暮らしてるんです」

 

アーデルハイドはハツカが根無し草であることを知っている。

普段は宿に泊まって暮らしているはずだが……

 

「男でもできたのか?」

 

「違います。どうしてそうなるんですか」

 

「いや、それ以外に思いつかねぇよ」

 

アーデルハイド以外でも大体の冒険者なら同じ発想に至るだろう。

それくらいしか冒険者があえてこんな場所に居を構える理由がないからだ。

 

「あなたには関係ありません」

 

それ以上はハツカは語らなかった。

アーデルハイドは一度は萎えた興味も、またむくむくと湧き上がるのを感じた。

やはり何かある、と。

家をわざわざ用意したのも変であるし、

この今運んでいる荷物もその話にはどうにもあわない。

明らかに一人分ではないからだ。

 

(ミラリアねぇ)

 

明日の夜にはつくはずだか、どんな場所かと期待に胸を馳せた。

 

「アタシは、退屈なんだよ」

 

この時、彼女は予感すらしていなかった。

単に興味本位だけでついてきたこの旅路の先に、

自分の生き方を変える出会いが待っていることを。

くすぶっていた彼女の人生が一変することになる。

 

アーデルハイド=アイゾンウェル。

世界樹の裾と呼ばれることになる街において重要な人物となる冒険者の名前だ。

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