世界樹の裾〰彼女が始めた街作りの物語〰   作:テオ_ドラ

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13.「……否定はできないんだよなぁ」

冒険になんか行くよりも

実は一番ゴーレムが役立つのは土木作業ではないだろうか。

建築を手伝いをしながらハツカはしみじみと思う。

操作には集中力を要するため長時間の作業と精密作業は無理だが、

人数が多くない現場の単純な力仕事においてはとても活躍する。

 

「……作業はどんなもんだ」

 

隣の工房からラエルが目をこすりながら出てきた。

普段のぼさぼさ髪が更にひどいことになっている。

どうやら作業の音がうるさかったらしい。

 

「もう1月もしないうちにできる、と思います」

 

ハツカが視線で問いかけると棟梁のザックは頷いた。

 

「ああ、とりあえずはできる。家具とかはオーナーの分しかないけどな」

 

確かに施工を依頼はしたが、オーナーと呼ばれるのはどうかと思う。

クライアントの方が正しい気がするが。

 

「まだこの騒音が続くのか……」

 

「ラエルが規則正しい生活をしていれば問題ありません。結局、寝たのはあの後ですか?」

 

「ああ、結局。二日通しで作業したよ。あの槍、結構酷くてな」

 

もう陽は暮れかかっている。

朝、アーデルハイドに槍を渡してから今まで寝ていたらしい。

 

「それにしても、良かったんですか? 代金をもらわなくて」

 

「当たり前だ。あんな作業、もうしたくないね。

 どうせ直してもまた歪んでボロボロになるんだ。正直。何度見るのはつらい」

 

そう、アーデルハイドの槍の調整をしたがお金を受け取らなかったのだ。

代わりに彼が放った言葉が

 

「それにしても、あのアーデルハイドに『二度と来るな』と言うマイスターがいるとは思いませんでした」

 

「言いたくなるさ、あの槍を見せられたらな。

 それにあんな性格じゃあ、そりゃ巷では有名人なんだろうな」

 

当然ながら、アーデルハイドは烈火のごとく怒った。

ハツカがゴーレムで止めに入らなければ恐らく暴れて工房ごとラエルを吹き飛ばしていただろう。

 

「……この工房、普段から儲かってないんじゃないですか」

 

「いいんだ。別に稼ぐためにやってるんじゃない」

 

呆れるようなハツカの口調に、拗ねたようにラエルは返す。

案外気にしているらしい。

 

「私は詳しくは聞いてないんですが、結局、この工房は何のためにあるんですか」

 

「村長は話してないなら俺からは言えないよ。そのうち、わかるだろうけどさ」

 

ハツカが住むにあたって、村長から実は少しだけ話をされていた。

それはこの工房はある目的のためだけに作られて、

それ以外の時はマイスターであるラエルが趣味で使ってるようなものだと。

 

「で、本当にミラリアに住むつもりなのか」

 

「ええ、決めましたから」

 

帰ったアーデルハイドもそうだが、冒険者というのはこうも一度決めたら聞かないものなのか。

彼女の乗るゴーレム――ミリアもまるで同意するように唸りを上げた。

 

「ラエルも、私とゴーレムがいた方が都合がいいでしょう」

 

「……否定はできないんだよなぁ」

 

ハツカが、というよりは冒険者は何かと重宝する。

特にミラリアには冒険者がいない。

何でも屋として雑用、狩猟、調査なども請け負ったり、

他の街に行く際のボディガードにもなる。

今までは「村からなんとか出ないで我慢して済ます」だったが、

依頼金はもちろん必要だが、金さえ出せば大体のことは解決するからだ。

ラエルにとっても工房に必要な素材を街から買い揃えてきてもらえるのは助かる。

 

「村長も、どういう風の吹き回しなんだろうな」

 

村は閉鎖的にしているではないが、それでも人の出入りなんてほとんどなかった。

それも当然だろう。

目的をもって作られた村である以上なくなることはないが、

僻地にあるため人が増えるということも今までなかった。

 

「私は居住許可をもらえたので良いんですけどね」

 

ゴーレムが建築作業再開する。

ラエルもあくびをしながら、今日はもう寝ようと工房に戻る。

 

「アーデルハイド=アイゾンウェルか」

 

もう二度と会うこともないだろう。

ラエルはそう考えていた。

 

けれど、世の中には必然というのものがある。

ハツカがミラリアに訪問して、ゴーレムの整備をしてもらった。

ラエルというマイスターが精魂込めて整備したからこそ、彼女がここにいる。

ハツカがいる、という事実がアーデルハイドをこの村に呼び寄せた。

そして彼女は『アイゾンウェル魔槍』を整備してもらっている。

彼女が姿を再び現したのはそれから一か月後だった。

 

 




ゴーレムが重機にしか思えなくなってきました。
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