「恐らく、キャンフロストっていうアーティファクトだと思う」
村長から依頼を受けた後、ラエルが教えてくれた。
「キャンフロスト、ですか?」
マイスターは頷き「俺も実物は見たことはない」と言ってから続ける。
「水を自在に操り、更には瞬時に凍らせることができるらしい」
ハツカとアーデルハイドは顔を見合す。
「そいつあちょっと、強力すぎるんじゃねぇか」
「完全な形だと、そう『予想』される。
ただ、このアーティファクトはいくつか発見例はあるらしいけれど
……どれもこれも欠陥品だからきちんと機能するのはないだろうって話」
しかしどれほどのものかわからないが、
水を支配下におけるというのは非常に危険な能力。
「多分、キャンフロストに自立型防衛機能をつけた亜種が
湖に陣取っているんじゃないかって俺は考えている」
「そこにいるアーティファクトはどれくらいきちんと機能していると推測しますか?」
「多分、凍らせる能力はほとんどない。
聞いた話では水で『押し潰す』ような攻撃をしてくるだけらしい。
もし凍らせる機能が生きているなに氷柱でも飛ばしてくるか、
相手を水で濡らしてから凍らせるはずだ」
ラエルは村長がまとめていた過去の資料を見ながら話す。
村長は前々からかなり調べてはいるようだったが、排除する戦力がなかったのだろう。
「湖からどれくらいの距離まで襲ってくるのでしょう」
「多分、50メータは出てくる。
湖から水を引っ張って『伸びて』くるらしい」
「オイオイ、随分と遠くまで来るじゃねぇか」
「ああ、でも水源から離れれば離れるほど弱くなるはずだ。
水を引っ張るのも簡単ではないから。
逆に湖の傍では絶対に勝てない。水中に逃げられたらお手上げだ」
ハツカは考えて、作戦を決める。
「防衛機能、ということは敵対する意思のある者に襲い掛かってくるんですね。
では、できるだけ遠くに誘き出し……逃がさないように排除するのが一番ですか」
「単純ではあるけれど、それが一番だと思う。
ただ実際に正面からきちんと戦った人はいないから、
力押しだけて勝てるかわからないって不安はあるけどな」
迫りくるミヅチの音を聞きつつ、
出発前のラエルとの会話を思い出してハツカはため息をつく。
ミラリアに住むと決めた時は、正直もう危険な依頼を受けることはないと思っていた。
精々が近場の獣退治か、商隊の護衛か……その程度。
だというのに一番初めの依頼からハードなものを持ってくるものだ。
村長はミヅチを大蛇だと言っていた。
だが実際に相対してみれば蛇というのは正しくないと思った。
ズルズル……
ハツカとアーデルハイドが陣取ったのは森の中でも開けた場所。
だから向こうからゆっくりと迫ってくる「それ」をきちんと確認することができた。
「蛇……というよりはワームといった方がしっくりきますね」
「想像以上に気持ち悪いモンが出てきたな」
奥から出てきたのは水の塊。
直径は2メートルはあるだろうか、
まるで脈打ってるかのようにビクンビクンと水が揺れる。
湖の水というだけあり、中には魚や木々のゴミなどが浮いてるのが見えた。
頭、というより先端は確かに蛇の頭に見えなくもないが、
もっと曖昧で適当なフォルムをしている。
「あれが、アーティファクトか」
アーデルハイドが槍の矛を向けた先、頭の中の部分であり
「間違いないでしょう。あれはを破壊すれば止まるはずです」
黄色く点滅する拳大くらいの球体が浮かんでいた。
事前にアーティファクトと知らなければ中々に気づきにくい。
「ミリア、いきましょう」
ハツカが威嚇するようにゴーレムの拳を地面にドンドンと叩きつける。
――ッ!
ミヅチは声を上げたわけではない。
だが、それでもこちらを「敵」として認識したのは間違いなかった。
首を持ち上げ、じっと睨みつけてくる。
ハツカはゴーレムを戦闘態勢で迎え、
アーデルハイドは横に距離をあけて槍を構える。
にらみ合っていたのは数瞬、
ズルルルルルル!
ミヅチが猛然と襲い掛かってきた。
本当は戦闘シーン入れて倒すところまで書きたかったんですが、
意外と戦闘前が長くなってしまったので分けることにしました。
自分でも中途半端だなぁと感じていたり。